2023年04月03日

《輸出免税を見たら脱税だと思え》思想 〜消費税法の理論構造(種蒔き編23)

 輸出免税というと、事柄の性質上還付と結びつくせいで、輸出免税自体が脱税の温床であるかのような見方をされることがあります(件の教科書も、そうと思わされる書き方になっているように感じます)。

 ということで、一応確認をしておきます。

オフィシャル村八分 〜消費税法の理論構造(種蒔き編22)


 まずは消費税法の条文から。

消費税法 第七条(輸出免税等)
1 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
2 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。


 国内における資産の譲渡でも、輸出なら消費税は免除するとされています。
 念のため、輸出であっても「国内で譲渡」しているから課税対象、という前提があります。消費税法の発動条件が、消費でも譲受でもなく譲渡になっているせいで、そのままだと輸出も課税対象に入ってしまうということです。

 ちなみに、括弧書きに書かれている「免税事業者」の条文。

消費税法 第九条(小規模事業者に係る納税義務の免除)
1 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。


 輸出免税は「消費税を免除する」、免税事業者は「消費税を納める義務を免除する」と書きぶりが異なります。この書きぶりの違いがどういうところに表れるか、なんとなく思うところはありますが、そのうちネタにするかもしれません。


 話は戻って。
 簡単な事例で輸出免税のあてはめをしておきましょう。

 対比としての国内事案から。

【事例1】(国内販売)
 A(課税事業者・国内)
  Bに88000で売った。
 B(課税事業者・国内)
  Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
 C(消費者・国内)
  Bから110000で買った。


 Aは8000を消費税として納税します。
 Bは2000(10000-8000)を消費税として納税します。

 結果、消費者Cの負担した10000が国に流れてくることになります。

 では、輸出の場合はどうなるか。

【事例2】(輸出販売)
 D(課税事業者・国内)
  Eに88000で売った。
 E(課税事業者・国内)
  Dから88000で仕入れてFに100000で売った(輸出)。
 F(消費者・海外
  Eから100000で買った。


 Dは8000を消費税として納税します。
 Eは8000(0-8000)を消費税として還付してもらえます。

 結果、国の消費税収入は0(8000-8000)ということになります。


 この結果に対して、一部界隈では次のようなことが言われることがあります。

 「Eが還付を受けられるのは、不当な輸出業者優遇だ!」
 「Eが消費税分安く販売できるのは、不当な輸出業者優遇だ!」
 「要するに、輸出販売できるような大企業優遇だ!」

 が、これは消費税法が「仕向地主義」をとっていることの帰結であって、それ自体は何ら不当なものではありません。

 Eは10000で販売しているものの、Fのほうでは輸入する際に「輸入消費税」を負担しているはずです。現地国との税率差次第ですが、必ずしもEが競争上有利とは限りません。
 仮に税率が同じだったとして。Eが還付を受けられなければ、国内・海外双方で消費税が発生することとなり、逆に競争上不利となってしまいます。


 このように、輸出免税制度自体は、何ら不当なものではありません。

 件の教科書でも、輸出の前段階に密輸入、無申告、架空取引などをかませる事例があげられています。だというのに、輸出免税制度のもとで還付を受けることが悪であるかのような、誤導的な記述となっています。

佐藤英明,西山由美「スタンダード消費税法」(弘文堂2022)

 ムゲンエステート事件・エーディーワークス事件に対する評価の点でもそうですが、とにかく《還付が悪》だといいたいらしい。「課のみ仕入」で処理するのが不当だというのであれば、用途区分制度のどこに反しているのかを指摘すればいいのに、そういったことは言わず。「仕入税額控除は請求権だから仕入時に用途が固定される」とかいう、悪しき概念法学のごとく、請求権概念の悪用だけで事足れりとしてしまっている。

虚弱判決(その1) 〜ムゲン・ADW事件判決(最判令和5年3月6日)
虚弱判決(その2) 〜ムゲン・ADW事件判決(最判令和5年3月6日)

 一部業者の無茶な脱税スキームと、一部界隈の単なる誤解と、一部学者先生の《還付は悪》思想の悪魔合体により、輸出免税についてもおかしな制度(過小課税から過大課税へ)が出来上がらないだろうか、と心配でならない。《さよなら仕向地主義》なんて記事を書くようなことにならないよう、祈っておきます。
posted by ウロ at 10:35| Comment(0) | 消費税法
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