2025年09月29日

非課税売上押し付け課税 〜消費税法の理論構造(種蒔き編68)

 長らく続いたこのシリーズ、あと数回で終われるはずです。

インボイス百景(その6) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編67)


 本来、消費税の課税対象となる取引につき、「消費税を課さない」とされているものがあります。

法 第六条(非課税)
1 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
2 保税地域から引き取られる外国貨物のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。


 別表にはあれやこれやの取引が節操なく列挙されていますが、代表的なものとして、土地の譲渡・貸付け、医療、居住用賃貸の条文のみ抜粋しておきます。

別表第一(第六条、第十二条の二、第十二条の三、第三十条、第三十五条の二関係)
一 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
六 次に掲げる療養若しくは医療又はこれらに類するものとしての資産の譲渡等(これらのうち特別の病室の提供その他の財務大臣の定めるものにあつては、財務大臣の定める金額に相当する部分に限る。)
十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。)に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)


 「消費税が課税されない!ラッキー!」などということではないことは、これまでもちらほら触れたとおりです。
 あらためて整理しておきます。


【事例】
 C(居住者・消費者):
  Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
 B(建物所有者・課税事業者):
  居住者から家賃100000をもらった。Aに委託費77000支払った。
 A(管理受託業者・課税事業者):
  住居の管理業務を受託し、Bから委託費77000をもらった。


 これまでの事例だと物がAからCに流れていくというものでした。が、この事例ではCから記述しています。
 また、お金の流れは(Aが回収代行も受託するため)一般的にはC→A→Bかもしれませんが、便宜上、C→B→Aとしました。

【帰結】
 ・CB間取引は居住用賃貸のため「非課税売上」となり、消費税は発生しません。
 ・Bは、Aに消費税7000を払っていますが、「非のみ仕入」となるため控除はできません。
 ・Aは、Bからもらった消費税7000を納付します。

 非課税取引だからといって、およそ消費税負担が発生しないのではなく。
 賃貸の段階で発生しないというだけで、それ以外の取引段階においては消費税負担が発生することになっています。

 表向きの非課税売上で綺麗事を謳っておきながら、「用途区分」によって裏口から消費税負担を持ち込んでいるわけです。


 では、誰が消費税を負担していることになるでしょうか。

 上記事例では、Bが7000負担しているように思われるかもしれません。
 が、Bは消費税が発生しなければ家賃をもっと安くできたところ、消費税が発生することを考慮して家賃を値上げしたのかもしれません。そうすると、経済的な意味では、Cが消費税を負担していることになります。
 他方で、家賃の値上げができないとすれば、Aへの委託費を値下げしてもらったかもしれません。

 要は、ABC間の力関係に応じて、税の押し付け合いがなされているということです。

 これまでに検討したとおり、
  1 何が課税対象となるか
  2 誰が納付するか
までは法によって規律できるとして、
  3 誰が負担するか
は法で直接規律することはできません。

 《直接税/間接税》というカテゴリは、立案者の「そうなってくれたら、いいな。」という願望を表したものにすぎず。現実にどのように機能するかは、もっぱら《経済原理》に従うことになります。
 税制というものは、国が私人の(広義の)経済活動からいくら巻き上げるかを設定できるにとどまり。私人間において、誰がいくら負担するかまでは強制しようがない。


 仮に、消費税法が、消費者の消費活動に担税力を見出して税負担を発生させているという《設定》を受け入れるとして(消費そのものは捕捉しきれないので、代替として購入時点で課税)。

 では、この事例で国に流れていく「消費税7000」というのは、一体何に対して課税されたものなのでしょうか。

 「非課税取引」というカテゴリを設けて、消費者に消費税を負担させないようにするところまでは、まあわかります。
 その先、そのしわ寄せを別の誰かに負担させることに対しては、どのように正当化でできるのでしょうか。未だに、まともな説明を受けたことがない。


 この問題、流通過程に「免税事業者」や「非適格事業者」が闖入してきた場合と、同じ構造ではあります。

 確かに、免税事業者や非適格事業者に対しては「皆様に迷惑をかけたくなければ、とっとと登録しろ」といえたかもしれません。が、非課税取引に関しては「税負担したくなければ、居住用で貸すのはやめろ」というわけにはいかないでしょう。

 ではあるのですが、現行の「用途区分」ルールのままでは、どうにもなりません。

 「非課税取引&用途区分」という極悪カップルの存在を容認している以上、消費税法は決して《消費課税》などではなく。むしろ個々の《流通》ごとに課税しているといってしまったほうが、実態にあうのではないでしょうか。


 「消費税」と名乗ることによって、消費者に転嫁してもよい《空気感》を醸し出していますが。そのことに対する税法上の担保は何もありません。
 ですし、流通過程に非課税取引や免税・非適格事業者が紛れ込んだ途端、消費者まできれいに流れるはずの転嫁の流れがせき止められ(てお国に掠め取られ)ることになります。

 消費税法の解説書、建前や綺麗事ではなく、こういった消費税法の現実の機能に即した記述をしてくれないか、と願う(絶望的)。

ゼロ税率の世界へようこそ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編69)
posted by ウロ at 15:03| Comment(2) | 消費税法
この記事へのコメント
>Cは、Bからもらった消費税7000を納付します。

この部分、
CではなくAではないでしょうか?

Aは、Bからもらった消費税7000を納付します。
Posted by いつも勉強させてもらっている税理士です at 2025年09月29日 16:15

ご丁寧に、ご指摘いただきありがとうございます!

訂正しておきます。
Posted by ウロ at 2025年09月29日 16:45
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