これに対して「必ずしもそうではない」という反論を繰り返し行ってきたわけですが、卑近な例をもって説明を加えます。
《輸出免税を見たら脱税だと思え》思想 〜消費税法の理論構造(種蒔き編23)
○
私の事務所、もともと「居住用」で募集が出されていたマンションの一室を借りています。当然のことながら、「事業用」で使うことについて事前に大家さんに承諾をもらっています。
家賃については、募集時に出されていた10万円のままで(金額は仮です)、「事業用だから。」といって消費税を上乗せされることはありませんでした(勝手な想像ですが、現状免税事業者だと思われます)。
賃貸借契約書には、特にお願いしたわけではないのですが、
「賃料 100,000円(うち消費税9,090円)」
と記載されていました。
○
さて、このような事実関係のもとにおいて、私が大家さんに対して「インボイス発行してくれないなら消費税分払わねえぞ!」「このネコババ野郎!」みたいなことを言ったとしたら、皆さんどのように感じるでしょうか?
どう考えても私のほうが悪者ですよね。無知な大家さんを騙して値引きを迫る悪徳税理士。
大家さんが親切で契約書に消費税を記載してくれたことを悪用してネコババ呼ばわりするなんて、許されるはずもない。
○
と、免税事業者が請求書などに消費税を表示していたからといって、それをもって不当に利益を貪っている、とは言い切れないということです。
「免税事業者が請求書に消費税を記載している」という現象だけをみて、十把ひとからげにネコババ呼ばわりするのは間違い、ということがお分かりいただけたでしょうか。
仮に、家賃が110,000円といかにも10%乗っかっている風の金額だったとしてもです。
同じマンションの202号室が居住用、203号室が事業用で家賃はいずれも110,000円だったとして。事業用が110,000円だったのにあわせて居住用も便乗値上げしたのか、それとも居住用がもともと110,000円で事業用をお値段据え置きにしたのか、いずれであるのかは表面上は分かりません。
一連の流通過程の中で、消費者だけが消費税を全額負担し、かつ、免税事業者だけがまるまる消費税を着服しているなどという想定は、およそ現実とは異なります。
消費税のない世界から消費税のある世界に移行したとして、従前の取引価格に一切の変化がなくそっと消費税がのっかる、などということにはならないはずです。それが出来るとしたら、小売価格を強制的に税率分値上げできるような商品に限られるでしょう。
《免税事業者は消費税をネコババしている》思想に安易に乗っかってしまった方々は、誤導によるプロパガンダに惑わされることなく、ちゃんと現実を観察してほしいところです。
租税作法論 〜消費税法の理論構造(種蒔き編25)
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