【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺
下記8の者から仕入れた場合に8割特例を受けられるかについての話。
8 課税事業者(適格者) インボイスなし
「Q&A」及びそれを母体とする巷の解説の類では、8割特例の要件として「適格請求書発行事業者以外の者」から仕入れた場合に適用を受けられると、「ヒト」の観点から記述がされていました。
これに対して、実際の条文では「モノ」の観点から規定されているということを指摘しました。
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この点についてもう少し深掘りすると。
30条1項(以下、1項は省略します)は、新旧とも、「誰から仕入れたか」については何ら触れられていません。
もちろん、新30条の場合はインボイスが必要となるため、結果として「適格者」から仕入れた場合に限られることになります。が、条文上は「インボイス」というモノの側からしか記述されていません。
で、通常の場面であれば、「適格者から仕入れたら」と書こうが「インボイスがあれば」と書こうが控除不可という結論は同じになるので、問題はありません。「控除できません残念でした。」で終わる話です。
が、8割特例の場面に限っては、新30条の適用を受けるが控除額は0円になるのか、そもそも新30条の適用を受けないのかによって、結論が変わってきてしまいます。
たとえば、新30条の書きぶりが、
・適格者からの仕入なら適用あり(ヒト)
・その控除額はインボイス記載の金額に従う(モノ)
と、ヒトとモノの両面から規律していたならば、8の場合は、新30条の適用はあるが控除額は0円、となるので、8割特例の対象とはなりません。
ところが、実際の新30条は、ストレートに「インボイス記載の消費税額を控除できる」と、モノの側からしか記述していないため、8の場合は、インボイスがないから新30条適用なし⇒旧30条なら適用できた⇒ゆえに8割特例の対象となる、という結論になってしまうように思えます。
つまり、旧30条、新30条、H28法附則52条のすべてが「モノ」の観点からしか対象範囲を限定していないせいで、8がすり抜けてきてしまったということかと。
さすがに運営側が、条文も読まずに条文見出しだけみて「Q&A」を作成するはずはないでしょう。なので、気づいちゃった上で、あえて触れていないように思えます。
触れていないだけで「控除できない」とまでは明記していないので、決して嘘を書いているわけではありません(巧妙)。運営の公表する情報が「裏表両面を書かない」なんてことはいつもの手口であって。この場面かぎりの特殊なやり口ということでもないので、紛れてしまいますし。
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さて、ここまで書いてきて、ふと「仕入税額控除は単なる『計算要素』ではなく『請求権』だ!」みたいな議論を展開されている件の教科書の存在を思い出しました。
佐藤英明,西山由美「スタンダード消費税法」(弘文堂2022)
こういった問題に対して何かしらヒントにでもなるかと一応少し考えてみたものの、何の役にもたたなそうです。具体的な規定に基づかない空中戦を繰り広げてみたところで、どうにもならない。
いやほんと、虚無が過ぎる。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 確定版
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