2025年07月21日

インボイス百景(その4) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編65)

 その2、その3までがインボイス制度における原則的な処理となります。

インボイス百景(その3) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編64)

 今回は、「仕入税額控除の特例」によってどのような影響があるかを確認します(経過措置系は省略)。

 仕入税額控除の特例なので、買主が「課税(本則)」の場合のみが検討対象となります。

 また、特例といっても一枚岩ではなく、売手側が
  ・適格者かどうかにかかわらず適用される
  ・適格者に限って適用される
  ・適格者以外に限って適用される
と、中身の異なるものが混在していることにご注意ください。

◯媒介者交付特例

  売手          買手     特例
 4 課税(本則)適格,INV無◯ 課税(本則)◯ 媒介者
 7 課税(簡易)適格,INV無△ 課税(本則)◯ 媒介者

 媒介者交付特例を最初に出したのは、特例といっても他の特例ほど「原則ルール」から外れていないからです。

 この特例は、売手が適格者の場合に、自分ではなく媒介者(適格)がインボイスを発行すればよいというものです。消費税法上は、売手の発行義務の特例であって、買手側にとっての優遇措置ではありません。

 あくまでも、売手自身が「適格者」であることが要求されています。
 上記では「INV無」としましたが、これは売手自身のインボイスが発行されていない、という意味で、媒介者のインボイスは必要となります。


◯郵便ポスト特例

  売手          買手     特例
 4 課税(本則)適格,INV無◯ 課税(本則)◯ 郵便ポスト

 必然的に買手は「日本郵便」になるので、特例が働く場面としては、4のみあげておけば足りるかと思います。「買手は必ず適格者だろ」という点が、インボイス無しでもよいことを基礎づけているともいえます。
 この先に、「そもそも原則ルール自体、インボイスなくても適格者ならいいだろ」という主張があるのですが、要インボイスという原則ルールが崩れることはないのでしょう。

 ポスト投函時にインボイスが発行されるような「メカポスト」でもできないかぎり、必要な特例でしょう。


◯公共交通機関特例(3万円未満)

  売手          買手     特例
 4 課税(本則)適格,INV無◯ 課税(本則)◯ 交通機関

 郵便ポスト同様、こちらも「どうせ売手は適格者だろ」というのが背後にあるかと思います。
 この考え方からすると、電気・ガスなどのインフラ企業だって「どうせ適格者だろ」が通用すると思うのですが、なぜか交通・通信(の一部)だけ特別扱いされています。

 他の事業者が、不特定多数に向けたインボイス発行用のシステムを作るのに手間暇かけているというのに、特定の業種だけ露骨に優遇されているというバランスの悪さがよく分かります。


◯入場券特例

   売手          買手      特例
 2 免税事業者×       課税(本則)× 
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(本則)◯  入場券
 5 課税(本則)非適格◯    課税(本則)× 
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(本則)◯  入場券
 8 課税(簡易)非適格△    課税(本則)× 

 こちらは鉄道などに限られないので、適用対象となるパターンがいくつかあるだろうと。
 と、思ったのですが、簡易インボイスが回収された場合が要件となっているため、適格者が簡易インボイスを発行した場合に限られます。
 上記で「INV無」とあるのは、一度簡易インボイスが発行されたが回収されて買手の手元にない、という意味です。そもそも簡易インボイスを発行していない場合は対象外です。

 わざわざインボイス対応するくらいなら、買手の手元にインボイスとしての半券を残すとかするはずなので、実際に、この特例が使われることはあるのかどうか。クラシカルな劇場みたいなものが想定されているのでしょうか。


◯自販機特例(3万円未満)

  売手           買手      特例
 2 免税事業者×       課税(本則)◯  自販機
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(本則)◯  自販機
 5 課税(本則)非適格◯    課税(本則)◯  自販機
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(本則)◯  自販機
 8 課税(簡易)非適格△    課税(本則)◯  自販機

 売手の属性にかかわらず、「自販機」で買うならインボイス不要という、特例感強めのルールです。

 実務的には「そりゃまあそうだよね」というぐらいの感覚ではありますが。残念ながら「自販機(自動販売機又は自動サービス機)」というものが限定的に解釈されているので、こぼれ落ちるものが相当あります。
 なお、帳簿の記載事項については特例の適用がないので、売手の「住所」「氏名」を書かなければならないというのが「法令上の」ルールです。

条文解析《インボイスいらない特例》の法的構造について(その2) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編37)


◯出張旅費特例

  売手           買手      特例
 1 使用人等−        課税(本則)◯  出張旅費
 1 使用人等−        課税(本則)◯  通勤手当

 使用人、役員に出張旅費等として支払った場合です。

 会社名義で領収書もらってきた場合とか、立替経費として実費精算した場合との適用関係がとても微妙。
 使用人の支払先が「免税事業者・非適格者」であることが明らかであっても、出張旅費として使用人に支給するかぎりは控除可能ということでよいのかどうか。

 「使用人等」の番号を1としたのは、売手のポジションとしては消費者が一番近いと思ったからで、それほど厳密な区別ではないです。
 また、出張旅費と通勤手当を二行に分けたのは微妙な違いがあるからですが、詳細は省略。


 残り、いくつかの特例が残っていますが、次回にまわします。
posted by ウロ at 10:19| Comment(0) | 消費税法
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