2025年07月28日

インボイス百景(その5) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編66)

 前回の、特例ルールの続きからです。

インボイス百景(その4) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編65)

◯農協・漁協特例

  売手           買手      特例
 2 免税事業者×       課税(本則)◯  農協・漁協
 3 課税(本則)適格,INV有◯  課税(本則)◯
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(本則)◯  農協・漁協
 5 課税(本則)非適格◯    課税(本則)◯  農協・漁協
 6 課税(簡易)適格,INV有△  課税(本則)◯
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(本則)◯  農協・漁協
 8 課税(簡易)非適格△    課税(本則)◯  農協・漁協

 委託方式に制限があるものの、農協をかますことで農家自身が登録する必要がなくなります。ノーマルの《媒介者交付特例》と比べて、農協・漁協の優遇っぷりが突出しています。
 特例欄が空欄なのは、インボイスがあるなら特例によるまでもなく控除可、ということです(以下同じ)。まあ、特例あるのに、わざわざインボイス発行なんかしないでしょうが。


◯卸売市場特例

  売手           買手      特例
 2 免税事業者×       課税(本則)◯  卸売市場
 3 課税(本則)適格,INV有◯  課税(本則)◯
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(本則)◯  卸売市場
 5 課税(本則)非適格◯    課税(本則)◯  卸売市場
 6 課税(簡易)適格,INV有△  課税(本則)◯
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(本則)◯  卸売市場
 8 課税(簡易)非適格△    課税(本則)◯  卸売市場

 こちらも農協・漁協特例と同じく、卸売市場をかますことで登録不要となります。


◯古物商等特例

  売手           買手      特例
 1 消費者−         課税(本則)◯  古物商
 2 免税事業者×       課税(本則)◯  古物商
 3 課税(本則)適格,INV有◯  課税(本則)◯
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(本則)×
 5 課税(本則)非適格◯    課税(本則)◯  古物商
 6 課税(簡易)適格,INV有△  課税(本則)◯
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(本則)×
 8 課税(簡易)非適格△    課税(本則)◯  古物商

 こちらは上2つと違い、「適格者以外から」という要件が乗っかっています。
 そのため、奇妙な確認作業が必要になるということは以前検討しました。

《特定業種優遇税制》としてのインボイス特例(その1) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編33)

 「まとめて取引」(農協等)と「個別で取引」(古物商等)の違いがあるから、ということなんでしょうか。あるいは、単純に政治力の違いなのかどうか。


 以下、おまけで「居住用賃貸建物の特例」についても整理しておきます。

◯居住用賃貸建物の特例(買手本則)

  売手           買手      特例
 1 消費者−         課税(本則)×  居住用建物
 2 免税事業者×       課税(本則)×  居住用建物
 3 課税(本則)適格,INV有◯  課税(本則)×  居住用建物
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(本則)×  居住用建物
 5 課税(本則)非適格◯    課税(本則)×  居住用建物
 6 課税(簡易)適格,INV有△  課税(本則)×  居住用建物
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(本則)×  居住用建物
 8 課税(簡易)非適格△    課税(本則)×  居住用建物

 売手の属性にかかわらず、買ったモノが「居住用賃貸建物」ということだけで問答無用で控除が否定されます。

◯居住用賃貸建物の特例(買手簡易)

  売手           買手      特例
 1 消費者−         課税(簡易)(△) 居住用建物
 2 免税事業者×       課税(簡易)(△) 居住用建物
 3 課税(本則)適格,INV有◯  課税(簡易)(△) 居住用建物
 4 課税(本則)適格,INV無◯  課税(簡易)(△) 居住用建物
 5 課税(本則)非適格◯    課税(簡易)(△) 居住用建物
 6 課税(簡易)適格,INV有△  課税(簡易)(△) 居住用建物
 7 課税(簡易)適格,INV無△  課税(簡易)(△) 居住用建物
 8 課税(簡易)非適格△    課税(簡易)(△) 居住用建物

 面白いのが買手簡易の場合。
 取得時点では、簡易ゆえ建物分の控除は取れないわけですが、その後売却した場合には「みなし仕入」経由で控除が取れてしまいます(そういう意味でのカッコ△。事業区分は個別検討)。
 本則でも「調整期間」内であれば調整が入りますが、簡易の場合はそのような期間制限がなく、売って課税されると同時に控除できるということです。


 いくつか省略は入れているものの、主要なものは検討できたので、次回で全体の考察をします。
posted by ウロ at 11:50| Comment(0) | 消費税法
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