「資産損失」絡みということで、事業所得など個別の所得類型における損失の扱いとの関係も気にしなければならないところですし。
ということで、雑損控除の要件について、条文(所得税法72条)ベースで整理しておきます。以下、入口である要件の整理までで、控除額の計算には触れません。
◯誰の資産が対象か?(ヒト)
居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるもの
・居住者
・生計一配偶者(総所得金額等48万円以下)
・生計一親族(総所得金額等48万円以下)
本人の資産だけでなく、配偶者・親族の資産も対象となります。
所得要件はおなじみ「合計所得金額」ではなく「総所得金額等」となっています。
「政令」には、所得要件とどの居住者につけるかのルールが書かれています。
◯どのような資産が対象か?(モノ)
資産(第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)及び第七十条第三項(被災事業用資産の損失の金額)に規定する資産を除く。)
「全ての資産から一定の資産を除外する」という書き方で対象資産を絞り込んでいます。
対象資産を漏れなくカバーしたいということかもしれませんが、裏から規定するのは、理解を妨げる大きな要因。
下記記事のとおり、国税庁が分かりやすさを重視して、条文を勝手にひっくり返して類型化する、という所作がしばしば観測されているところですが。
リーガルマインド年末調整(その1) 〜規範論的アプローチと類型論的アプローチの相克
リーガルマインド法定調書合計表 〜規範論的アプローチと類型論的アプローチの相克
雑損控除については、なぜか条文どおりの慎重な書きぶりとなっています。
No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
・
仕方がないので、除外資産を抽出すると次のとおり。
【除外する資産】
・生活に通常必要でない資産
・棚卸資産(事業用)
・固定資産(事業用)
・繰延資産(事業用)
・山林
巷の《税務お役立ち記事》でも、タックスアンサーに右ならえで同様の書きぶりであるものがほとんど。が、中には勇気を出して『対象資産は「生活に通常必要な資産」です。』と記述しているものも見かけました。
が、これではきちんとひっくり返せていません。
これを理解するには、所得税法全体における「資産」の分類を把握しなければなりません。ので、この点については次回検討することとします。
◯どのような事由が対象か?(コト)
災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合(その災害又は盗難若しくは横領に関連してその居住者が政令で定めるやむを得ない支出をした場合を含む。)
・災害
・盗難
・横領
そして、これらによる損失額及び関連支出が対象になるとされています。
◯
以上、条文上の要件を軽く交通整理しただけのものとなります。
このうち、政令や通達でびっちり詳細が詰められているものについては省略して。2点ほど理解しにくいところを次回以降で検討します。
雑損控除における「盗難」「横領」 〜立てよ!借用概念論!
雑損控除における「資産」について 〜或いは所得税法におけるヒトの活動領域
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