2024年06月27日

「反制定法的解釈について」 〜問d(フリマアプリ等により商品を仕入れた場合の仕入税額控除)

 タイトルはもちろん、広中俊雄先生にあやかって、です。

広中俊雄「民法解釈方法に関する十二講」(有斐閣1997) Amazon

 本ブログは、あくまでも「法令の」条文イジりを旨としております。ので、通達やらQ&Aがどう変わろうが、基本的には無関係です。
 が、ド派手な条文ガン無視「反制定法解釈」をカマされると、とてもそのままの内容では維持しがたい、ということが生じます。

 それが、今回のQ&Aの「古物商等特例」に対する「差し支えありません」ラッシュ。条文ガン無視の運用が乱舞しています。

令和6年4月以降版 お問合せの多いご質問(令和6年6月26日)
P.6(フリマアプリ等により商品を仕入れた場合の仕入税額控除)問d

 下記記事における「古物商等特例」の姿と比べて、本当に同じ制度の説明だろうかと、書いた自分でも疑念を抱いてしまうほど。

《特定業種優遇税制》としてのインボイス特例(その1) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編33)
《特定業種優遇税制》としてのインボイス特例(その2) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編34)
《特定業種優遇税制》としてのインボイス特例(その3) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編35)

 あまりにもあまりにも、なので、Q&Aの中身について説明する気もありません。し、Q&Aに合わせて、当ブログの記事を個別に修正するつもりはありません。法令上、間違ったことを書いているわけではないですし。

 が、さすがに運用と差が出すぎ、なので、法令と違って「運用ゆるいよ!」という《注意書き》のかぎりで、本記事を作成しておきました。


 しかしまあ、「8割控除」のときもそうでしたが、Q&Aが、条文とは別世界に行ってしまっている。

【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版余滴
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 確定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 決定版

 「適格請求書発行事業者を除く」とある以上、適格請求書発行事業者である限り、消費者としての取引であっても除外しなければならないのが、文言解釈からの帰結であり。また、そのことは「事業として」と「事業者」を用語として区分している、消費税法の基本構造にも関わるものでもあるはずです。

消費税法における「事業/事業者」概念の機能(その1) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編46)
消費税法における「事業/事業者」概念の機能(その2) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編47)
消費税法における「事業/事業者」概念の機能(その3) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編48)

 だというのに、そんなことお構いなし。いくら納税者有利だからといって、条文ガン無視な運用を、安易に認めてしまってよいものかどうか。

 ここまでド派手な「反制定法的解釈」、さすがに公式で謳うことはできない、ので、(民間の)業界誌経由でリークする、という遣り口で公表していくものだと思っていました。表向きとはいえ、最低限の遵法意識はあるぞ、という姿勢を崩すことはないだろうと。

 が、そんなものは単なる買いかぶり、にすぎませんでした。


 なお、Q&Aの「差し支えありません」が、「フリマアプリ等」の行きずり感のある取引の場でのみ通用するものなのか、それともがっつり店舗を構えているような大手買取業者も含めた全ての古物商等に通用するものなのか。

 大手なんて、すでに法令通りにシステム構築していたはずで。今さら緩められても遅せーよ、という感じかもしれませんが。
 私はもう知らんので、ご不安な方は各自、管轄税務署までお問い合わせされたらよろしい。
posted by ウロ at 16:50| Comment(0) | 消費税法
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