中川一郎「税法学巻頭言集」(清文社2013) Amazon
機関誌「税法学」
当時は毎月刊行されていたため、要するに、創刊号の昭和26年1月から昭和42年8月までの200ヶ月分が収録されているということです。
昭和42年に出版されたものを、清文社様が復刊されたとのことで。大変よいお仕事をされておられますね(偉そうに)。
私自身、あまり「史」に関する記述は好みではなく。教科書に書かれている「租税法の歴史」「租税法の展開」みたいな箇所は読み飛ばしがち。
なのに対し、本書は大変興味深く読み進められました。
おそらくですが、教科書に書かれているような、要領よく後知恵的にまとめられた記述とは異なり。その時々ごとの出来事を、臨場感をもって読めるから、ではないかと思います。
シャウプ勧告からはや3年とか、これから国際連合に加盟するとか、さらっと書いてあって。まさにそのとき起こっていることが書かれていて、その時代を追体験できているように感じました。
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「巻頭言」ゆえ、論点の深堀りは本論文に譲られているわけですが。その時々の税法上の重要問題に触れられていて。
大きめのイベントに絞っても、
・国税通則法の制定
・所得税法、法人税法の全文改正
・相続税財産評価基本通達の制定
などがこの期間に行われています。
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で、中川先生ご自身が、本書の中で繰り返し主張されている主なものとして、
・税法が複雑になりすぎ。シンプルにすべき。
・税法で経済政策を実現しようとするのやめろ。
・措置法を縮小、整理しろ。
・通達行政やめろ。
といったものがあります。
これを見ていただいて分かると思うのですが。現代においてもほとんど解消されていない、どころか、むしろ悪化していますよね。
「組織再編税制」絡みの条文なんてお見せしたら、どういう反応をされたでしょうか。
本書には、現代だったら《検閲》に引っかかって掲載されないであろう、不穏当な表現もそのまま残されているのですが、相当キツめの表現で批判されていたのではないでしょうか。
措置法ならまだしも、法人税法本法に突っ込まれているわけで。
また、「通達行政」に対する批判があるのは、現代も同じはありますが。
本書の中に、かつて通達は『国税速報』(大蔵財務協会)でしか公表されていなかったのが、官報に掲載されるようになってちょっと早く入手できるようになった、みたいなエピソードがでてきて。
同じく「通達行政」とはいっても、紛いなりにも公式サイトに一通り掲載されている現代とは、酷さの度合いが違っていたのではないでしょうか。
法令解釈通達(国税庁)
とはいえ現代では、通達ですらない「Q&A」や、公式ですらない「民間の業界誌」を経由して運営の見解が公表されるという、新たなステージに突入しているところであり。
「反制定法的解釈について」 〜問d(フリマアプリ等により商品を仕入れた場合の仕入税額控除)
「税務DX」がどうこうとか、そういうハイカラな問題に飛びつくよりも前に、もっと根本的な部分の見直しが必要ではないのか、と思っております。
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200号どまりで、続刊が出ていないのは残念。
まとめて一気読みできることに意味があるのであって。ひたすら丹念に「税法学」を1号ずつ追っていくのとは、GROOVE感が全く異なる。
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