2025年02月24日

いろんな親族(所得控除編)

 前回に引き続き、今回は(配偶者以外の)「親族」について。

いろんな配偶者(所得控除編)

 「親族」のほうは、配偶者以上に令和7年度改正によって影響を受けるところです。が、さしあたり改正前の状態のものを整理しておきます。


 なお、単に「親族」というと配偶者も含んでしまいます。

民法 第七百二十五条(親族の範囲)
 次に掲げる者は、親族とする。
 一 六親等内の血族
 二 配偶者
 三 三親等内の姻族


 ですが、本記事では配偶者を除いた親族のことを「親族」ということにします。

 ちなみに、所得税法の条文には、配偶者を含めた親族を表すときに、わざわざ「配偶者その他の親族」と、配偶者を頭出ししているところがあります。
 配偶者を含めるならば、単に「親族」とだけいえばいいはずです(お前、借用概念なんだろ)。「高見沢俊彦その他のTHE ALFEE」なんていうのかって話ですよ(軽々しく例に出すのも失礼)。

 他方で、他の箇所では「居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)」と、民法上の「親族」に忠実な用い方をしているところもあり。

 文脈によって使い分けているのでしょうかね。


 前置きはさておき。
 まず、2条(定義)で用意されているもの(上記のとおり、令和7年度改正前の状態です)。

A 扶養親族
  親族(配偶者除く)、里子、被養護老人
  生計一
  合計所得金額48万円以下
  事業専従者(青色、白色)除く

B 控除対象扶養親族
  扶養親族
  (居住者) 16歳以上
  (非居住者)16歳以上30歳未満or70歳以上
        留学・障害者・仕送り38万円

C 特定扶養親族
  控除対象扶養親族
  19歳以上23歳未満

D 老人扶養親族
  控除対象扶養親族
  70歳以上

 配偶者の場合は「法律婚」単騎なのに対し。扶養親族の場合は、民法上の親族(養子はこちらに含む)だけでなく、里子や被養護老人(しかるべき略語が不明なため、そう略しておきます)も含むことになっています。
 意外なことに、それらを含みながら「扶養親族等」などとはせず、シンプルに「扶養親族」とネーミングしています。

 その他、配偶者と比較した場合、
 ・B 控除対象となるために、納税者所得は要求されていない
 ・B 源泉控除専用の用語が用意されていない(現時点では扶養控除あり=源泉控除あり)
 ・C 高等教育優遇(?、おおむね大学生に相当する年齢)がある
といった違いがあります。

【無理やり用語対比】
 A 同一生計配偶者   ⇔A 扶養親族
 B 控除対象配偶者   ⇔B 控除対象扶養親族
             ⇔C 特定扶養親族
 C 老人控除対象配偶者 ⇔D 老人扶養親族
 D 源泉控除対象配偶者 ⇔B 控除対象扶養親族(兼用)

 こうやって用語を並べてみると、控除対象扶養親族に70歳以上が加わると、「老人控除対象扶養親族」とはせずに「控除対象」を外しているのとか、どういうつもりなのかよくわかりません(「老人配偶者」だと失礼っぽいから、老人感を薄めている?)。

 なお、令和7年度改正で「特定親族特別控除」が導入されたら、「特定親族」と「源泉控除対象親族」という新規の用語が追加される予定となっております。

 念のため。
 配偶者は扶養親族から除かれているため、19〜23歳の配偶者は特定扶養親族にはなりませんからね。


 次に、所得控除(72条〜)での扱いについて。

1 親族が出てこないもの。

・小規模企業共済等掛金控除
・寄附金控除
・勤労学生控除

2 親族

・生命保険料控除
 一般・介護: 親族(が受取人)
 個人年金:  なし

 皆さんどれくらい真面目に処理されているのか知りませんが、配偶者以外の親族の場合、一般・介護と個人年金とで扱いが異なります。


3 生計を一にする親族

・雑損控除
 生計を一にする親族(が有する資産)
 総所得金額等48万円以下

 扶養親族と違って親族所得要件が内蔵されていないため、外付けする必要があります。
 合計所得金額ではなく総所得金額等としてるのが、芸が細かい。

・地震保険料控除
 生計を一にする親族(が有する資産。納税者が支払ったもの)
・医療費控除、社会保険料控除
 生計を一にする親族(納税者が支払ったもの)

 この3つは、生計一で納税者が支払いさえすれば、親族の所得の多寡は問題とされないわけです。


4 生計を一にする子

・ひとり親控除
 生計を一にする子
 総所得金額等48万円以下

 親族のうち、子だけを対象としています。
 親のほうは「ひとり親」という名称が与えられていますが、子のほうは専用の用語がありません。


5 扶養親族

・障害者控除
 扶養親族(が障害者)

・寡婦控除
 扶養親族(を有すること) 離婚の場合

 ひとり親に該当する場合はそちらが優先適用されることになっています。

(・所得金額調整控除)
  扶養親族が障害者or23歳以下
  所得控除ではありませんが、参考としてここに入れておきます。


6 控除対象扶養親族

・扶養控除
 控除対象扶養親族
 特定扶養親族、老人扶養親族は控除額アップ


 こう並べてお気づきになったかどうか。
 里子・被養護老人は、あくまでも「扶養親族」の中に含まれているものにすぎず。ゆえに、これらの人が対象となる所得控除は、5と6に出てくるものだけになります。
 対象とならないもののうち、「医療費控除」あたりは特に問題がありそうですが、こういう理解で本当によいのかどうか。

 また、ひとり親控除は4(生計を一にする子),寡婦控除は5(扶養親族)となっています。
 そうすると、里子がいる人が離婚した場合、ひとり親控除はおよそ不可で、あとは寡婦控除の適用を検討するだけ、ということでよいのでしょうか。
 当然ながら、男性里親は「寡婦」にはなりえないわけで。「ひとり親控除が新設されてよかったね」では済まない《性差別》があるように思うのですが(児童福祉法の規律は考慮せず、あくまでも所得税法内部の問題として考えています)。


 上述したとおり、このラインナップに「特定親族」「源泉控除対象親族」が加わりますので、さらにしんどいことになります。

 ということで、改正後すぐに修正が必要となる、消費期限短めの記事でした。
posted by ウロ at 10:20| Comment(0) | 所得税法
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