それゆえ、会社の立場からすると「これは休日としたい」「これは休暇としたい」という誘因が働くことになります(最低賃金を下回らないようにしつつ、割増単価をあげないようにしたい)。
休日と休暇、会社都合で自由に設定できるものなのでしょうか。
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休日/休暇の違いにつき、一般的には次のような定式で説明されています。
休日:そもそも労働義務が課されていない日
休暇:本来は労働義務が課されている日であるが、労働義務が免除される日
が、具体的に考えると、どちらに該当するのかよくわからないところがあります。
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たとえば、「誕生日」をお休みとする制度を設けたとします。
ア 誕生日は必ず休み
イ 労働者の申請により誕生日を休みとできる
この場合、アは休日、イは休暇となりそうです。
では、次の場合はどうでしょうか。
ア 誕生日前後1週間のうちいずれか1日を指定して休まなければならない
イ 誕生日前後1週間のうちいずれか1日を指定して休むことができる
休む日にバッファーを設けた場合です。この場合でも、アは休日でよいのかどうか。
会社が一方的に指定する場合は休日でいけそうですが、労働者の希望に基づいて決定した場合は休暇っぽい感じになってきますよね。
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また、「リフレッシュ休暇」と呼ばれる制度がありますが、これを「休日」として運用することはできるでしょうか。
ア 年間7日間を会社指定により休まなければならない。
イ 年間7日間まで申請により休むことができる。
アのように運用した場合、「休日」扱いとなるのか、ということです。指定の時期も、年度はじめに一括指定する場合や月ごとに指定する場合などがあると思いますが、どのタイミングで指定しても「休日」でいけるのかどうか。
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結局休みの日、という結論が変わらないのに「そもそもない」とか「あるけど免除される」とか言われても、どこにその違いを見出すのかがはっきりしないわけです。
「そもそもない」というのが、どの時点でどの程度まで決まっていなければならないというのか。
これが、
休日:会社が指定する休みの日(実際に休む日数が事前に決まっている)
休暇:労働者が指定する休みの日(実際に休む日数が事前に決まってない)
という区別であれば、明確に判断できます。
のに、なぜか《労務お役立ち記事》の類では、どれもこれも上述したような「そもそも/免除」定式で説明されています。
手元の、「休日・休暇」がタイトルに入った書籍も見てみましたが、休暇については「年次有給休暇」について触れているだけで、「休日/休暇」の区別に触れているものが見当たりませんでした。
労務についても税務と同様、お馴染みの論点にばかり議論が集中しがちで。こういった地に足のついた議論が展開されることが少ないのが現状。
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なお、会社が「休日」扱いにしたいからといって。
実際は労働者の申請によることになっているのに、雇用契約書・就業規則で「リフレッシュ休日」などとネーミングしさえすれば「休日」扱いとできる、ということにはならないのだと思います。あくまでも実態で判断、となるはずです。
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