『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その5)
なんですが、消費税法における「帳簿」の位置づけにつき、まとめ損ねたままだったので、どうにか整理しておきます。
「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編71)簡易課税なら「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編72)
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前2つの記事にて、消費税法における「帳簿」体系について整理をしました。
【消費税法における「帳簿」の位置づけ】
+ 売上 記帳 58
− 課税仕入 帳簿+適格請求書 30
− 特定課税仕入 帳簿 30 (+でもある)
− 特定課税仕入返還 帳簿 38-2 (+でもある)
− 輸入 帳簿+輸入許可証 30
− 売上返還 帳簿 38
− 貸倒れ 記帳+書類 39
+ 課税仕入返還 記帳 58
+ 輸入返還 記帳 58
(「記帳」は帳簿保存が要件となっていないこと、「帳簿」は帳簿保存が要件となっていることを指します)
税額プラス側には形式要件が課されていないのに、税額マイナス側にはやたらと厳格な形式要件が課されていることが、よく見て取れました。
『消費税法は、消費者の消費に課税している』
『消費税法は、事業者の付加価値に課税している』
『仕入税額控除の制度趣旨は、税負担累積の排除』
『消費税は、税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』
これらの戯言は、もっぱら消費税法の「実体要件」だけしか見ずに、「形式要件」をガン無視することでしか出てこないものです。現行の・日本の消費税法を正確に記述したものではありえない。
では、現行の・日本の消費税法をあるがままに捉えたとして、一体何に課税していると説明できるかといえば。一連の記事でも書いているとおり、もはや説明不可能だと、私は思っています。
「消費に課税」だとか「付加価値に課税」だとか、どれかひとつだけで一元的に説明しようとすると、それと矛盾する箇所をガン無視しなければならなくなります(あっちが立てばこっちが立たない)。
『消費税法は○○だ!』と言い切れてしまう方々を見るにつけ、《思考の省略》ができて羨ましいですねと思いつつ。「矛盾に満ちた存在を、あるがままにしか受け入れられない」という志向、これと私は、一生付き合っていかなければならないのでしょう。
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ところで、例の平成16年の最高裁判決(第一、第二小法廷どちらでも)。
「消費税法施行令50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである」
判決は平成16年に出ていますが、事案としては、第一小法廷のほうは平成2年(下記1)、第二小法廷のほうは平成7年から平成9年(下記1から2)当時のものとなっています。
【帳簿・請求書要件の改正の変遷】
1 H1.4 帳簿 又は 請求書
2 H9.4 帳簿 及び 請求書
3 R1.10 帳簿 及び 区分記載請求書
4 R5.10 帳簿 及び 適格請求書
帳簿要件はそのままで、請求書要件がどんどん厳格化していった歴史。
これ要は、仕入税額控除を適正化するには「請求書」のほうが重要であって。帳簿なんて《添え物》にすぎないということではないのでしょうか。
とすると、帳簿要件は税額控除の要件からはいなくなってもらって。法58条(令74→規27)の記帳義務だけ課しておけば十分なのではないでしょうか。
第二小法廷のほうは、事案が1から2にまたがっていて。「帳簿」の役割が相対的に弱化したというのに、そういった問題意識は一切なく。
条文の意味が、
1 帳簿の保存 又は 請求書の保存 (どちらかでよい)
から
2 帳簿の保存 及び 請求書の保存 (どちらも必要)
に変わったというのに。帳簿と請求書とで「保存」の意味を分岐させる必要はないか、という点には一切触れられず。
改正前後でも何の区別もせずに第一小法廷とおなじ結論を導いてしまっているのは、(民事・刑事以外の分野でしばしば観測される)いかにも大味な最高裁判決。
もちろん、本件が徹底抗戦系の事案であり。「課税仕入れの請求書だけは提示したが帳簿は提示しなかった」みたいな事案でもないかぎり、わざわざ《保存二分論》なんてトリッキーな議論を展開する必要がない、というのはそのとおりです。
○
「消費税、インボイスを採用するの当たり前。今までが異常なだけ。」みたいなご見解を開陳される方が、専門家の中にもいらっしゃいますが。
現行の・日本の消費税法における仕入税額控除ルール、次のようなものとなっています。
【いろんな仕入税額控除ルール】
ア インボイスがなければ税額控除できない
イ インボイスがあっても「帳簿」がなければ税額控除できない
ウ インボイスがあっても「課税資産の譲渡」でなければ税額控除できない
エ インボイスがあっても「非課税売上対応分」は税額控除できない
オ インボイスがなくても「特定業種」なら税額控除できる
(以下略)
仕入税額控除ルールが、あたかもアだけしか存在していないようなフリをして、「インボイス当たり前!」とか言ってしまっているわけです。
インボイスが「控除証明書」だなどというのであれば、
・インボイスがあれば税額控除できる
単騎でいいはずで。
ところが実際には、上記のとおりあれやこれやのルールが付加されてしまっています。
もし売手(適格事業者)が、「非課税売上」なのに間違えてインボイスを発行してしまったとしても、買手の税額控除は認めた上であとは売手とお国とで後始末をする、というように、仕入税額控除の要件はインボイスのみにしてしまってもよいのではないでしょうか。
売上課税: 問答無用の譲渡課税(実質要件のみ)
仕入控除: インボイスさえあれば税額控除(形式要件のみ)
○
ということで、ようやく今回でタイトル回収。
税額控除の要件としての「帳簿」はいらないのでは、という《立法論》としての主張であり。また、「保存」の解釈を展開するにあたっても、「請求書」要件の強化に伴う相対的弱化を反映すべきではないのか、というお話しでした。
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