「通勤手当の非課税限度額の引上げ」と就業規則 〜国税庁『Q&A』解釈方法論の展開
同記事でも書いたとおり、税務と労務と社保は絡み合っているところであり。のに、税務と労務との絡みには触れて、社保との絡みについては触れていませんでした。
ということで、今回の記事では、税の改正が、労務・社保それぞれにどのような影響があるかを整理しておきます。税務・労務・社保が足並みを揃えて《Q&A》を出すならこういう感じでやるんですよ、という一つのお手本となれば幸いです(偉そうに)。
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以下では、就業規則の書きぶりによってパターン分けをして、税務・労務・社保それぞれがどのような影響を受けるかを検討します。距離については「55km以上」の場合のみ抽出し、それ以外の距離は省略します。
事例1 『55km以上の場合は40,000円支給する』
これが今回の改正により直接影響を受けるパターンです。
税務:
改正による差額7,100円を課税から非課税に修正します。年末調整で反映することになります。
労務:
税の扱いが変わるだけで、労務には影響しません。
社保:
通勤手当は、課税/非課税いずれも社保報酬なので、内訳が変わっても影響しません。
事例2 『所得税の非課税限度額を支給する』
このような書きぶりの場合、税の遡及に従って、4月支給分から遡って追加支給が必要になるのかどうか。前回の記事で述べたとおり、遡及説/非遡及説いずれもありえます。
・遡及説 :税に従うと書いている以上、追加支給が必要
・非遡及説:労働条件は支給時に確定しているので、追加支給は不要
労働法学においても、ハイカラな論点にばかり議論が集中してしまっており。こんな領域に《通説》なるものが形成されることは、およそないのですが。
もしも、労働法学者の皆さんが議論に参加してくれたら、ということを妄想するならば、おそらく「遡及説」が通説になるものと思われます。
ということで、「遡及説」を前提にすると次のとおりとなります。
税務:
非課税分を追加支給するだけなので、税の修正は入らない。
労務:
4月分から遡って追加支給が必要。
社保:
「支給時は正しかったが遡って追加支給した」という事例だと捉えると、たとえば12月にまとめて追加支給したら、12月から月変判定がスタートすることになります。
判定につかう金額は、追加支給分全額ではなく、あくまでも12月分からの1ヶ月分ずつです。ので、これだけで2等級アップは考えにくいです。が、月変判定がスタートしちゃった以上、その他の報酬も含めなければなりません。
もし、年末年始でガッツリ残業代出ちゃった場合には、2等級上昇することがありうるのではないでしょうか。
3 『55km以上は31,600円支給する』
これについても見解が分かれる可能性があります。
遡及説 :所得税と同じ金額としているということは、所得税に従うという趣旨。
非遡及説:金額で特定している以上、所得税には影響されない。
こちらの場合の《通説》は、「非遡及説」になるでしょうか。そこで、「非遡及説」を前提にすると、次のとおりとなります。
税務:
なにもしない。
労務:
追加支給は不要。
社保:
なにもしない。
追加支給しないで済むなら、極めてシンプルになります。前回述べたとおり、「遡及しない」と明記するなどの対応が、会社にとっては望ましいことになるわけです。
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なお、論点の指摘のみにとどめますが、「退職者・死亡者」の労務上の扱いについては、不明なところがあります。
事例1では、税務上「源泉徴収票を再発行する」というだけの話で終わります。
問題は事例2で、在職者に追加支給する場合に、退職者・死亡者(の相続人)にも追加支給する必要があるのかどうか、という点です。
「追加支給は在籍者のみ」と限定するのは、上記で遡及説を採用してしまうと難しいように思いますが、どうでしょうか。
(なお、死亡者の場合には、追加支給されたものが相続財産に含まれるのか、それとも相続人の固有財産となるのか、といった点も問題となりえます。)
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以上、「税務」については取扱いは明確なので、どんなに面倒だろうと、国税庁《Q&A》に従って粛々と処理をするだけです。
問題は事例2と3における「労務」で、《通説》に従うのかどうか、ここは会社の判断が必要なところであり。そして、税理士からはおよそ口出しができない領域となります。
もしも、社労士先生に相談したのに「今回の改正は税のお話しだから、税理士さんに聞いてください。」なんて言われたとしたら、おやまあって感じかと。
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