【違うシリーズ】
使途不明金と使途秘匿金 〜だから違うっつんてんだろ!!
税理士が教えてくれない、免税と非課税が違う《理由》
何が違うの?休日と休暇。
輸出免税と免税事業者の「免除する」について、藤間大順先生のブログ記事きっかけで、下記のようなポストをしました。
【藤間大順先生のブログ記事】
消費税法における2つの「免税」について:輸出免税取引と免税事業者制度の違い - What Do We Pay for Civilized Society?
【私のポスト】
「輸出免税と免税事業者とで「免除」の意味が違うと説明されることが通常だが、売上課税ルールとしての「免除」は同じ意味で、法30条1項一つ目の括弧書きによって仕入控除ルールでの扱いがズレると整理した方が、文理に適うのではないか。」
https://x.com/YUU__KO/status/2051261166052430216
あとから思い出したのですが、この問題については、例の教科書を批判しまくる流れの中ですでに検討ずみでした。
免税事業者Requiem(第2曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編28)
今回は、この記事に対する補足となります(以下、条文にあわせて「免除する」と記述します)。
◯
7条と9条とで、まったく同じ「免除する」という文言が使われています。
法第七条(輸出免税等)
1 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
2 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。
法第九条(小規模事業者に係る納税義務の免除)
1 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 前項に規定する基準期間における課税売上高とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。
一 個人事業者及び基準期間が一年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。)の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額
他方で、非課税については6条で「課さない」という文言が使われています。
法第六条(非課税)
1 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
租税法律主義あるいは文言解釈の原則からすれば、同じ文言を使っている以上、同義に解するのが原則となるはずです。
他の法分野の概念ですら、原則としてそのまま使おうなんていうのが税法学上の標準的な見解であって。
【借用概念論】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その11)
同じ法律の中の、ひとつ挟んだ隣の文言なんて、当然に同じに解さなければ理不尽すぎるでしょう。
◯
では、実際に両条の「免除する」が、どのような《法的効果》をもたらすかというと(以下、すべて取引は「課税資産の譲渡等」に該当することを前提とします)。
7条(輸出取引)
ア 納税義務を負わない
イ 課税売上には含まれたまま
9条(免税事業者による取引)
ア 納税義務を負わない
イ 課税売上には含まれたまま
いずれも全く同じ法的効果が発生することになっています。効果の及ぶ範囲が「物的か人的か」という違いはあるものの、法的効果そのものは全く同じです。
6条の「課さない」と対比しておくと、
6条(非課税取引)
ア 消費税が課されない
イ 課税売上から除かれる
アについて、表現は変えていますが、そのかぎりでは免除のアと同じ法的効果をもたらします。
違いがでるのはイのところです。基準期間の課税売上や課税売上割合の分子に入るか、といった点で違いが現れます。
なお、非課税と免除の違いについて、「そもそも課されない」が非課税、「本当は課されるけど」が免除、などと言われることがあります。が、このような言いまわしの違い、どうとも表現できるのであって、それだけで区別するのはおよそ不可能です。
【休日と休暇の区別について】
何が違うの?休日と休暇。
以上、7条と9条の「免除する」は同じ意味です。
と言って終わらせてもよいのですが、なぜ、世間の皆様は「違う」と言いたがるのか、以下、そのあたりについて触れておきます。
◯
本ブログにおいて、「消費税法の理論構造」なるサブタイトルのもとで繰り返して論じていたことのひとつ。
例の教科書が『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などと宣わっているの、実際の日本の消費税法の規律をあまりにも無視しすぎの理想論だろうと。
実際の日本の消費税法では、売上課税ルールと仕入控除ルールとが別々に規定されているせいで、「損税」やら「益税」が生じてしまうのが現実です。
【両輪駆動テーゼ批判】
免税事業者Requiem(第3曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編29)
にもかかわらず、条文から入らない系の方々は、消費税法上の各制度を「売上課税&仕入控除」の融合した《パッケージ》として捉えがちです。
輸出取引、免税事業者についても、《パッケージ》として捉えると、
輸出取引:納税義務を負わないが、仕入税額控除はできる制度
免税事業者:納税義務を負わないかわりに、仕入税額控除もできない制度
となります。
それゆえ、全く違う制度であるという頭の中のイメージが先行してしまい、7条・9条で同じ「免除する」という同じ文言が使われていても、当然に違う意味だろうと、思考が流れていってしまうのでしょう。
もちろん、輸出免税と免税事業者とで導入理由が異なる以上、異なるイメージを持つこと自体は間違ったことではありません。
が、売上課税ルールと仕入控除ルールを分断している現行消費税法の条文に落とし込んだ場合、売上課税ルールのかぎりではどちらも同じ法的効果が発生するという点で共通しているのであって。同じ文言で括ることは、条文作成上、おかしなことではありません。
かつて、(新)会社法の条文が「因数分解的」だと評されていた覚えがあるのですが。
"条文作成のお作法"として『同じものは、できるかぎりひとつにまとめる』ということが要請されるのは当然です(これを突き詰めると"パンデクテン方式"となる)。
7条と9条についても、同条の《法的効果》としては全く同じものがもたらされる以上、同じ文言を使うことが要請されるのは当然です。分岐が生じるなら、分岐させる箇所で書き分ければいいだけの話。
実際に消費税法では、売上課税ルールである7条・9条では同じ文言を使い、仕入控除ルールである30条1項で分岐をさせています。
輸出取引と免税事業者とで「同じ文言を使うのは紛らわしい」などと批判するのは、《パッケージ》としての制度を記述する際の"通称"に向けていうことであって。7条か9条の文言を修正しろなどと批判するのはお門違いです。
《パッケージ》としての通称を、どなたかが開発すればよいだけのことです。
◯
法制度というものは、個々の条文の組み合わせによって形作られているのであって。
たとえば、「消費税は最終消費者に転嫁されることが予定されている」などといったスローガンから先入観をもってしまうのではなく。個々の条文が実際にどのように機能することで、そこでいう転嫁を実現しようとしているのか、正確に理解すべきなのだと思います。
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