2024年09月14日

眞鍋淳也「税務調査は弁護士に相談しなさい」(ディスカバー2024)

 「税理士に故郷の村でも滅ぼされましたか?」と思わされるくらい、税理士に対するルサンチマンがアツい!

眞鍋淳也「税務調査は弁護士に相談しなさい」(ディスカバー2024) Amazon

【税理士に向けられた怨嗟の数々】
・納税者の利益を守ってくれるかと言えば、残念ながらそうではないのが実情
・法律の専門家ではないため、税務署の要求が法律を遵守したものかどうかを判断できず、要求にそのまま従ってしまう
・法律的な知識に乏しく、先を見据えたアドバイスができない
・税理士が税務署側の立場についていることがある
・一部の税理士においては税務署職員に頭が上がらない
・保身を考えて、納税者の意図とは異なる方向、すなわち税務調査官に言われるままの金額を支払うように促す
・国税庁から「指導監督を受ける立場」であり、国税庁の考える「適正な納税」を、納税者に指導することが義務化されている
・自然と冷静さや客観性を欠き、ロジカルなやり取りができなくなる
・他でもない「国家権力」である国税局の職員が間違ったことなど言うわけはない、というのが一般的な考え方
・言わないでよいことを言ってしまう
・元国税調査官が顧問税理士であるという場合に、税務調査が厳しくなる
・第三者として客観的に見ることができない
・防御一辺倒になりがち
・納税者を守るということに手が回らない
・税理士も文書を出せるのですが、あまりしないようです。理由はわかりませんが、「税務署にそんなことをしていいのか」という気持ちがあるように思われます。
・税理士は国や税務署に怪しいと言われると「もう難しいですね」と、言われた通りに修正申告してしまうことが多い
・税理士は申告が仕事です。税務署が申告の代理を税理士にさせている、つまり国の作業を税理士に託している
・顧問税理士は税務調査には立ち会わないほうがいい
・顧問税理士だけが調査に立ち会うのは避けるべき

 著者のまわりにばかり、やたらとデキの悪い税理士が集結している様を想像すると、微笑ましくも思えます。が、下記のものなど、税理士制度そのものまで貶めようとするのは、認識として相当歪みきっていますよね。

・国税庁から「指導監督を受ける立場」であり、国税庁の考える「適正な納税」を、納税者に指導することが義務化されている
・税理士は申告が仕事です。税務署が申告の代理を税理士にさせている、つまり国の作業を税理士に託している


 他方で、弁護士に対する評価(ごく一部)。

・数々の刑事事件において、一見すると不利な状況を覆した経験があるからこそ、税務調査における不利な状況でも、どのような手段が適切なのかということについて、冷静に判断することができる
・弁護士は刑事事件で検察官の尋問に対して意義を出すことに慣れています。再尋問をすることによって正しい答えを導き出すこともできます
・法律を扱う弁護士というのは、あらゆるシチュエーションを考えることが商売のようなものなので、極端に言えば1つの事象について、未来にどうなるかということを無限に考えることもできます


 刑事の否認事件で無罪を勝ち取った弁護士なんて、そんな多くいるわけでもないでしょうに。「逆転裁判」の世界観ですか。
 
逆転裁判123 成歩堂セレクション-Switch(カプコン) Amazon
逆転裁判456 王泥喜セレクション-Switch(カプコン) Amazon

 弁護士の上層と税理士の下層を比較して、「だから税理士はダメなんだ」という、いわゆる《上澄み/澱み論法》が展開されています。海外出羽守(カイガイデワノカミ)の皆さんがよくやっていらっしゃるやつです。

 「税理士が教えてくれない◯◯」みたいな、節税ライターの方が書いた与太本だったら相手にしなくてもよいのでしょうが。実績のあるであろう弁護士先生に、「税理士は調査に立ち会うべきではない」とまで言い切られてしまっていて。

 《税務調査に強い税理士》を謳っている皆様、きちんと反論されたほうがよろしいのではないでしょうか。

 「事実とは異なる」と太字にしたうえで書きますが、弁護士に対する評価として、
・タイムチャージ制だと、交渉を長引かせがち。
・追加報酬がもらえるから、交渉で終わらせずに訴訟に持ち込ませたがりがち。
・日弁連、単位会の会長経験者に頭が上がらない。
・裁判官に嫌われたくないから、裁判官の言いなりになりがち。
みたいなことを他士業の人間が言い出したら、弁護士側からボロクソに反論されるはずで。

 そのレベルの与太話を、本書では税理士に向けてぶっ放しているわけです(ここに、旧司法試験/新司法試験、予備試験/法科大学院間で能力差があるかのような物言いを入れ込んでもよいでしょうか)。

 《税理士は、国税庁が考えたとおりの「適正な納税」に従って、国の代理で申告作業するだけの奴ら》とか言われちゃっているわけで。「官報vs院免vs国税OB」などと、内輪でイチャコラやっている場合ではない。


 数々の罵詈雑言に対するプロテストは、《税務調査に強い税理士》の皆様にお任せするとして。

 私がやりたいことは《揚げ足取り》です。細かいツッコミは色々あるのですが、一箇所だけ(P100〜)。
 以下、太字が原文からの引用です(「使徒」の誤記は原文ママ。ユダ(イスカリオテ)の受け取った「イエス暴露金」(マタイ書第26章、マルコ書第14章、ルカ書第22章参照)の反対概念か)。

 交際費として計上したものが税務署から認められず、使途秘匿金ではないかと指摘されたという案件です。
 その会社は大学の先生にかなり高価なブランド品を渡していたそうです。ところが税務署から、〇〇大学のxx先生だというふうに明らかにしないと交際費と認めないと言われたとのことでした。ブランド品の領収書を交際費として計上したことに対して、誰に渡したかまで教えろという要求があったわけです。これは簡単には教えることができません。
 なぜなら、収賄・贈賄という話になりかねないからです。


 「贈賄」に該当するなら損金不算入ですよね(法人税法55条6項)。これを確認するために、調査官には質問検査権(国税通則法74条の2)がありますし、不答弁には罰則(同法128条2号)があります。
(なお、調査官が贈賄罪の構成要件該当性を判断できるのか、という疑問はあるものの、法人税法に刑法がビルドインされている以上、判断せざるをえないのでしょう)。

 しかし、使徒秘匿金とは、次の要件を満たすものです。
 @支出先の氏名または名称がわからない
 A住所または所在地がわからない
 B支出した理由がわからない


 使途秘匿金は「わかる/わからない」で判定するのではなく。「記載されている/されていない」で判定します(租税特別措置法62条2項)。「相当の理由」も、記載しないことに対するものです。
 それゆえ、厳密に言えば、交際費該当性と使途秘匿金該当性はそれぞれ別々に判定する必要があります。なのに、本書の一連の記述は、これがまぜこぜになってしまっています。ので、以下でも、本書の記載に沿った形で記述することとします。

 この案件の場合、@は明かすことができなくてもABは明かすことができるので使徒秘匿金とは言えません。

 A住所・所在地も明かせないのでは(あそこの大学でこの会社に関係のある研究をしている教授といえば・・)。そもそも、事後的に明かしたところで、使途秘匿金該当性には影響しないのが、法律上の建前。
 もちろん、運用上は各種事情を考慮して、穴埋め的に判断してくれることになっています。が、「高額なブランド品」の領収書だけがあって、「誰に渡したかは教えられるわけないだろ。ビジネス知らんのか。」という対応では厳しいんじゃないですかね。

 まあ、「ゴネればどうにかなる」という領域も、あるにはあるのでしょう。が、それは「法律の専門家」としてのお仕事ではなく、ゴネ屋さん(綺麗にいうと「交渉の専門家」)としてのお仕事です。

 依頼者側としては贈り物をすることで仕事が得られるわけですから、誰に渡したかを明かして関係が壊れてしまっては意味がありません。したがって、それを知らせることはできないというのはおかしな話ではありません。それについて立証せよと要求するのは無理というものです。自分たちで「交際費ではない」という立証ができないからといって、こちらに立証させるのは変な理屈です。
 しかし、税務署はこういうことをよくやります。納税者に立証を求めて、それは言えないとなると、言えないのなら課税だというのです。これにはしっかり反論しなければいけません。まず、税理士が納得してしまってはいけません。「そうか、教えられないなら経費として認められないのか」という話ではないのです。
 交際費は一般的に得意先から仕事を取るために使われる費用です。相手の名前を公表することによって仕事がなくなるという本末転倒の結果になるのでできません、と反論するのは正当です。「公表できないから経費として認められないなどとどこに書いてあるんですか、税務署さんが立証してください」と言えばよいのです。


 租税特別措置法61条の4によれば、「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する」ものであることが要求されています。もちろん、同条の「交際費等」は損金不算入となるものを括りだしたものではあります。
 が、「費用性」(法人税法22条3項2号)を判定するには、「誰に渡したか」も当然に重要な判断要素となります。

 これが、「お花屋さんから「生花1万円」を購入した」みたいな事例であれば、誰かに送ったかははっきりしなくても、まあ贈り物ってことでいいか、と判断されることはあるでしょう。
 また、実際の裁判例の中にも、相手方が明らかであることは必須ではないと判断したものもあります(東京地判昭和51年7月20日。ただし、結論自体は課税処分是認)。
 が、「業務に関係のある誰かには間違いなく渡っている」程度の事実すら明らかにできない(そしてその原因は納税者の非協力による)事案では、「費用性なし」と判断されてもおかしくはないでしょう。

 「課税要件事実論」や「立証責任論」における《原則論》のみに胡座をかいていると、足元を掬われかねない。「誰」だけはどうしても明かせないというならば、納税者側としては、それ以外の事情を積極的に明らかにすることで、費用性の証明に協力していくべきではないでしょうか。
 本書では、頻繁に《疑わしきは被告人の利益に》《疑わしきは納税者の利益に》というスローガンを持ち出しているのですが。刑事裁判においては、残念ながら、必ずしもこのスローガンが額面通りに適用されているわけではないのが、現実ですよね。

 というか、調査官から「収賄・贈賄にあたりかねないので言えないというならば、捜査機関と協力できないかを検討します」とか言われたらどうするんでしょうか(また、「青色承認の取消し」も射程内です)。
 最初っから白旗あげて、「役員貸付金または認定賞与で勘弁してくだせえ。どうしてもというなら使途秘匿金課税も受け入れるので、これ以上突っ込まないで。」と懇願する、「法律に疎い」クラシカルな税理士の対応も、現場判断としては、そう筋の悪いものではないのかもしれない。


 以上、《人を呪わば穴二つ》という具合に、税理士をボロクソに貶しまくっている本書の中にこういう記述があると、まあツッコミたくなるよなあと。
 が、《税務調査に強い税理士》を自称しているわけでもないのに、こんな記事を書くだけ消耗するだけな気がしますけども。


 ちなみに。

 「弁護士/税理士」という職種のみをもって、税務調査につき何か有意差があるかといえば。
 「訴訟に対する抵抗感がない」ということに尽きるのではないでしょうか(あくまでも、「職種のみで比較するならば」の観点からにとどまります)。

 税理士にしても調査官にしても、「訴訟」に移行するとなると、それなりの抵抗感があるでしょう。ので、お互いに、それなりのところでおさめがち。
 に対して、弁護士にとっては、「いざとなったら訴訟やればいいし」という気持ちで調査対応ができるので、強気に出られる面があるのかもしれません。

 弁護士から、「弁護士は誰もが否認事件でガンガン無罪判決を勝ち取っている」みたいなことを言われたとしたら、外野としては「そうなんだ〜」と思ってしまいます。また、《疑わしきは被告人の利益に》《疑わしきは納税者の利益に》が憲法上の大原則、なんて言われたら、ウブな調査官なら額面どおりに受け取ってくれるかもしれません。
 ので、実際に訴訟に手慣れているかどうか、というよりも。調査官に対して「カジュアルに訴訟提起してきそう」と思わせられることが、弁護士という職種の強みかと。

 逆にいうと、職種だけで比較するかぎり、そういう姿勢の違いにとどまるのであり。調査対応において、「弁護士一般が有能で税理士一般が無能」などという能力差が、あるはずもない(と信じてよいですよね)。

 もちろん、個人ごとの能力差があることは、また別のお話し。
posted by ウロ at 12:48| Comment(0) | 税務

2019年10月21日

税金(地方税)の納付の仕方(前進)

 以前、地方税の納付方法をまとめた記事を書きましたが、そのころからぐっと前進したので更新しておきます(2019.10.1〜)。

税金(地方税)の納付の仕方(いまいち)

※eLTAXの「利用届出」は提出済みであることを前提とします。
※税理士事務所で「電子申告」済みであることを前提とします。

1 銀行窓口+納付書

 ・従来の納付方法です。

 × 時期により待たされることが多い。
 ○ 納付書は各自治体のサイトにエクセルの書式あり。

2 銀行ATM+Pay-easy

 【事前準備】「PCdesk(DL版)」で納付先を登録しておく。

 【PCdesk】DL版orWEB版 納付情報発行依頼 ⇒ATMで納付

 × Pay-easy対応ATMに限られます(コンビニATMは不可)。
 × 時期により待たされることが多い。
 × ATMで納付情報を入力する必要がある。
 ○ 個人/法人いずれの口座からでも納付できる。
 ○ ネットバンクの開設不要

3 ネットバンク(+Pay-easy)

 【事前準備】「PCdesk(DL版)」で納付先を登録しておく。
 【事前準備】ネットバンク開設(個人/法人いずれでも)

 【PCdesk】 DL版orWEB版 納付情報発行依頼 ⇒ネットバンクで納付

 ○ 個人/法人いずれの口座からでも納付できる。
 × ネットバンクへのログインが必要。

4 ダイレクト納付

 【事前準備】PCdeskで「口座振替依頼書」を作成し提出しておく。
 【事前準備】「PCdesk(DL版)」で納付先を登録しておく。

 【PCdesk】 DL版orWEB版 納付情報発行依頼 ⇒ネットバンクで納付

 ○ ネットバンクの開設は不要です。
 × 対応金融機関が限られます(ネット専業銀行は不可)。
 × 本人名義の口座である必要があります。


※上記のとおり、納付先の登録は(DL版)のみなので注意。


○おまけ

 利用者情報のフリガナ欄は、以下のように変更しておく必要があります。

 小文字 ⇒大文字
 長音 ⇒全角マイナス
 中黒 ⇒削除or全角ピリオド

※利用者情報を変更できるのはDL版のみ。
posted by ウロ at 08:36| Comment(0) | 税務

2017年10月05日

税金(地方税)の納付の仕方(いまいち)

※2019/10/1以降の前進具合を記事にしました。
税金(地方税)の納付の仕方(前進)



法人地方税の納付方法について整理します(記事作成日現在の)。

国税と比べると、電子化がほとんど進んでない状況です。

自治体によって、また税目によって対応状況が異なりますので、以下、東京都、神奈川県、横浜市の、確定法人事業税・確定法人住民税のみに絞って整理します。

※eLTAXの「利用届出」は提出済みであることを前提とします。
※税理士事務所で「電子申告」済みであることを前提とします。

1 銀行窓口+納付書

 ・従来の納付方法です。

 × 時期により待たされることが多い。
 ○ 納付書は各自治体のサイトにエクセルの書式あり。

2 銀行ATM+Pay-easy

 ・【事前準備】パソコンに「PCdesk」をインストールしておく。
 ・【PCdesk】 納付情報発行依頼 ⇒ATMで納付

 × Pay-easy対応ATMに限られます(コンビニATMは不可)。
 × 時期により待たされることが多い。
 × ATMで納付情報を入力する必要がある。
 ○ 個人/法人いずれの口座からでも納付できる。
 ○ ネットバンクの開設不要

3 ネットバンク+Pay-easy

 ・【事前準備】パソコンに「PCdesk」をインストールしておく。
 ・【事前準備】ネットバンク開設(個人/法人いずれでも)
 ・【PCdesk】 納付情報発行依頼 ⇒ネットバンクで納付

 ○ 個人/法人いずれの口座からでも納付できる。

現状、2・3ができる自治体が限られています。
地方公共団体ごとのサービス状況で[電子納税]のアイコン表示がされている自治体だけです。
posted by ウロ at 10:05| Comment(0) | 税務

2017年09月29日

税金(国税)の納付の仕方(いろいろ)

​税金の納税方法についていろんな方法がとれるようになってきたので、整理しておきます。
国税と地方税でぜんぜん違うので、今回は「国税」のみです。

※「電子申告開始届出書」を提出済みであることを前提とします。
※税理士事務所で「電子申告」済みであることを前提とします。

1 銀行窓口or管轄税務署+納付書

 ・ 従来の納付方法です。

 × 時期により待たされる。
 × 納付書がないと納付できない。銀行に用紙があればそれを使う。

2 銀行ATM+Pay-easy

 ・【入力方式】ATMで直接納付

 × Pay-easy対応ATMに限られます(コンビニATMは不可)。
 × 時期により待たされる。
 × ATMで納付情報を入力する必要がある。
 ○ 個人/法人いずれの口座からでも納付できる。
 × 税目は、所得税・法人税・消費税に限られる。
 ○ ネットバンクの開設は不要

3 ネットバンク+Pay-easy

 ・【事前準備】ネットバンク開設(個人/法人いずれでも)
 ・【登録方式】e-Tax 電子申告or納付情報登録⇒メッセージボックス
        ⇒受信通知[インターネットバンキング]から納付
  または
 ・【入力方式】ネットバンクで直接納付

 ○ 個人/法人いずれの口座からでも納付できる。
 × 入力方式の税目は、所得税・法人税・消費税に限られる。

4 ダイレクト納付

 ・【事前準備】税務署へダイレクト納付の「利用届出書」を提出しておく。
 ・【登録方式】e-Tax 電子申告or納付情報登録⇒メッセージボックス
        ⇒受信通知[ダイレクト納付]から納付

 ○ ネットバンクの開設は不要です。
 × 対応金融機関が限られます(ネット専業銀行は不可)

5 振替納税

 ・【事前準備】税務署へ「口座振替依頼書」を提出します。

 ○ 自動振替のため納税手続が不要です。
 ○ 確定申告の振替日は3/15より後ろにずれます(4月中旬から下旬)
 × 税目が個人の所得税・消費税に限られます。
 × 対応金融機関が限られます(ネット専業銀行は不可)。

6 クレジットカード納付

 ・専用サイトから納付します。
 ・【登録方式】e-Tax 電子申告or納付情報登録⇒メッセージボックス
       ⇒受信通知[クレジットカード納付]から納付
 または
 ・専用サイトで直接納付手続

 × 1回1000万円未満(ただし複数回手続可能)
 × カード利用限度額以内
 × 決済手数料が1万円ごとに76円(税別)かかる。
 ○ ポイントがつく場合がある(各カード会社へ確認)。
 ○ 個人/法人いずれの名義でも納付できる。
 ○ 引落日がカードの引落日になる。
 ○ 分割払いも可能(各カード会社へ確認)。
posted by ウロ at 11:42| Comment(0) | 税務

2017年08月23日

肩たたき券取引と税務


「肩たたき券」というのは、敬老の日とかに孫が祖父母にあげるアレのことです。

ただでお小遣いをあげるのでは教育上良くないってことで、孫に肩たたき券を発行してもらって、その対価として代金を支払った場合に、どのような課税がされるかを考えてみましょう。

たとえば、祖父が孫から肩たたき券(1分間・1回)を「1000万円」で買ったとしましょう(1000万円です。1000円では問題になりませんので)。

肩たたき券の時価ですが、数円くらいの価値はあるのかもしれませんが、あくまで不特定多数の間で成立する価格ですので、まあ0円とします(ごめんなさい!どうしても納得できなれけば、肩たたき「をしてもらえるかもしれない」券だと読み替えてください)。

そうすると、いわゆる個人間での高額譲渡にあたるため、

売主(孫):  譲渡価額−時価 ⇒贈与税
売主(孫):  時価−取得価額 ⇒所得税(総合課税の譲渡所得)
買主(祖父): 課税なし

が発生します。時価より高い分は、単純に祖父から孫への贈与でしょ、ってことで「贈与税」がかかるわけです。

(※肩たたきというサービスの対価という意味では「雑所得」もありえますが、そのサービスの時価は0円だし、肩たたきというサービスを受けられる地位が券面に化体していてその証券の譲渡をする、ということで「譲渡所得」としておきます。)

で、孫は自分で発行してるから取得価額は0円だと(券作成費用ぐらいはあるでしょうか)。

そうすると、

譲渡価額 1000万円
取得価額 0円
時価   0円

なので、贈与税は1000万円(1000万円−0円)に対して課税され、所得税は0円(0円−0円)となります。

贈与税の税額は、他に贈与がないとしたら、直系尊属から孫への贈与のため「特例税率」が適用されるので、

(1000万円−110万円)×30%−90万円=177万円

が贈与税額となります。

No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)


では祖父が、孫から取得した肩たたき券を祖母(自分の配偶者)に2000万円で転売したらどうなるでしょうか(とんでもない家族ですね)。

(上述のとおり、券面に肩たたきサービスが化体しており証券の所持人がサービスを受けられることになっていることから、肩たたき券取引市場が成立します、家族内で。)

ここでもやはり1と同じルールが適用されます。

売主(祖父): 譲渡価額−時価 ⇒贈与税
売主(祖父): 時価−取得価額 ⇒所得税(総合課税の譲渡所得)
買主(祖母): 課税なし

で、祖父の取得価額ですが、祖父が孫に払った1000万円は売買代金ではなく贈与したものと扱われているため、1000万円ではなく0円ということになります。

そうすると、

譲渡価額 2000万円
取得価額 0円
時価   0円

なので、贈与税は2000万円(2000万円−0円)に対して課税され、所得税は0円(0円−0円)となります。

贈与税の税額ですが、夫婦間の贈与でもあくまで「一般税率」が適用されるため、

(2000万円−110万円)×50%−250万円=695万円

が贈与税額となります。


要するに、時価のないものとか低いものに勝手に著しく高い値段をつけて売買しても、時価との差額は贈与とみなされてしまう、ということです。もちろん、そこでいう時価をどう評価するか、という問題はありますが。

4(※以下は先走って書いてますので、あくまでひとつのありうる見解にとどまります。)
ちなみにですが、上記事例で代金をいまどき流行りの「仮想通貨」で受け取ったとしても、取引時点で円換算した価格が譲渡価額となります。で、納税は原則「円」でしないといけないので、贈与税の納税資金を用意するには、「仮想通貨」を円転するか、別途円を用意しないといけない、ということなります。

最悪のパターンで、「仮想通貨」の対円価値が取引時から暴落した場合、たとえば、取引時には2000万円相当の「仮想通貨」を得たとして課税されるのに、納税するにあたって急いで円転しようとしたら200万円にしかならなかった、という場合でも、贈与税695万円納税しないといけない、ということです。

で、その円転ででた損失を何かと通算できるのかというと、この損失が譲渡所得か雑所得か、という問題はありますが、おそらく他の所得とは通算できない、てなる可能性が高いです(ただし、仮想通貨に対する課税については扱いが固まるまでもう少し様子見の必要ありです。)。

たまに税のことを書いたかと思うと、何の話しをしているんですかね。
posted by ウロ at 13:59| Comment(0) | 税務

2017年07月06日

あるべき税理士

税理士登録をすると、登録時研修というのを受けなければなりません。
それが3日連続丸1日使ってやりますので、ひたすら座って講義を聞くだけではありますが、なかなかハードです。

講義内容は、税理士制度や税理士業務のほか、租税法概論と憲法、行政法、民法、会社法、争訟法といったものがありました。

法律の解説は弁護士の方が講師をされていたのですが、あんまり税理士実務には繋がらない内容なのでは、と思うところもありました。たとえば、会社法といっても、弁護士が関わる会社法と税理士がかかわる会社法って、結構なずれがあります。で、税理士実務を知らないと、どうしても弁護士からみた会社法の説明になってしまうので、税理士にとって必要な会社法の知識の説明が不十分だった気がします。

私にやらせてもらったら、「税理士実務に効く!会社法の基礎知識」とかって、いい講義できそうですけど。


あと税理士制度の講義テキストの中に、とても共鳴できる記述があったので、孫引きになってしまうのですが引用させていただきます(新井隆一「税理士業務契約にもとづく税理士の業務」『税理士の民事責任』日税研論集39巻)。

新井先生によると、税理士に求められる善管注意義務として次の能力を有しているべき、とのこと。

1 租税に関する法令を熟知していること
2 租税に関する通達など行政規則に通暁していること
3 租税に関する判例・学説を熟知していて、租税に関する通達など行政規則による租税法令の解釈を、租税に関する判例・学説による租税法令の解釈が否定する可能性ないし蓋然性を判断する能力を有すること
4 租税法令の解釈・適用にあたって、制度上選択の可能性がある場合に、より合理的な選択をすることができる能力を有していること
5 自己固有の租税法令の解釈というべきものを有していること
6 租税の実務に豊かな経験を持ち精通していること
7 これらの能力を活用して、委嘱者に、真正にして適法な納税義務の過不足ない実現をめざしてこれに到達するために必要な資料・情報を提供し、それに資する助言を行う能力を有すること

まさに、私が税理士として理想とする姿なので、これら一つ一つの能力をより高めていけるよう、日々努力をしていきます!
posted by ウロ at 19:34| Comment(0) | 税務