2021年12月31日

供え本(法学体系書編)

 「供え本」(そなえぼん)とは、読まなくてもよいからさしあたり書棚にお供え(備え)しておきなさい、という本です。

 一度も開かないまま、改訂版が出ても逐一悲しまない(繰り返し経験済み)。
 むしろ改訂版を出してくれたことを喜びましょう。
 持っててよかった、と思うときがくるかもしれないし。 

 ラインナップ、万人向けと個人的嗜好との葛藤が垣間見えるかもしれません。

【憲法】
戸松秀典「憲法 」(弘文堂2015)

【行政法】
宇賀克也「行政法概説1 第7版」(有斐閣2020)
宇賀克也「行政法概説2 第6版」(有斐閣2018)
宇賀克也「行政法概説3 第5版」(有斐閣2019)
宇賀克也「地方自治法概説 第8版」(有斐閣2019)
藤田宙靖「新版 行政法総論 上巻 」(青林書院2020)
藤田宙靖「新版 行政法総論 下巻 」(青林書院2020)

【民法】
中田裕康「債権総論 第4版」(岩波書店2020)
中田裕康「契約法 」(有斐閣2017)
奥田昌道,佐々木茂美「新版 債権総論 上巻 」(判例タイムズ社2020)

【会社法・商法】
江頭憲治郎「商取引法 第8版」(弘文堂2018)
黒沼悦郎「金融商品取引法 第2版」(有斐閣2020)

【民事手続法】
伊藤眞「民事訴訟法 第7版」(有斐閣2020)
新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019)
中野 貞一郎,下村 正明 「民事執行法 」(青林書院2016)

【倒産法】
伊藤眞「破産法・民事再生法 第4版」(有斐閣2018)
伊藤眞「会社更生法・特別清算法 」(有斐閣2020)

【刑法】
裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 四訂版」(司法協会2018)
西田典之,橋爪隆「刑法各論 第7版」(弘文堂2018)

【刑事手続法】
酒巻匡「刑事訴訟法 第2版」(有斐閣2020)
三井誠,酒巻匡「入門刑事手続法 第8版」(有斐閣2020)

【租税法】
金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)

【労働法】
菅野和夫「労働法 第12版」(弘文堂2019)

【知的財産法】
中山信弘「著作権法 第3版」(有斐閣2020)
中山信弘「特許法 第4版」(弘文堂2019)

【独占禁止法】
白石忠志「独占禁止法 第3版」(有斐閣2016)

【信託法】
新井誠「信託法 第4版」(有斐閣2014)
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2020年02月10日

最近の気になる本

 前回まで法規範に関する記事を数週にわたって書いてきましたが、ここで終わりにしておきます。
 考えればもっと詰められるのでしょうが、とりあえずここまでで。

 ということでまた日常回へ。

 この、一話完結がメインでたまに中編・長編がはいる構成、私が思い出すのは『銀魂』です。

 とすると、今回は長編が終わった後のゆるーい回、ということになります。
 (メガネ置きが、先週までのは何だったんだ!と突っ込む感じの)


 


 町野朔 刑法総論 (法律学の森) (信山社2020)

 町野朔先生の体系書。

 まさか出ると思わないじゃないですか。
 なので、ごくごく最近、下記の講義案1を購入してしまったわけですよ。
 1998年に第2版が出たきり音沙汰なかったし。



 町野朔 刑法総論講義案 1 (講義案シリーズ) (信山社1998)

 かなりショックが大きい。
 講義案を買ってなければ速攻で購入していたと思いますが、未だ講義案を完読できていないので保留。

 いやしかし、刊行計画ってのを公表してくれないものかと。
 2、3カ月先程度じゃなくて。

 直後に改訂されてゲンナリするか、買い控えをしてしまうか、いずれにしてもマイナスしかない。




 新堂幸司 新民事訴訟法 第6版 (弘文堂2019)

 言わずとしれた名著ですね。
 たぶんですけど、買ってしまったら、本来やるべきことを脇に置いて読みふけってしまうおそれがあるので、こちらも保留。




 田村善之 知財の理論(有斐閣2019)

 私の問題関心からすると、知的財産法それ自体よりも、田村先生の思考方式を学ぶため、というのが田村先生の本を読む理由。



 機能的知的財産法の理論 (知的財産研究叢書) (信山社1996)
 競争法の思考形式 (北海道大学法学部叢書)(有斐閣1999)
 市場・自由・知的財産 (21世紀COE知的財産研究叢書)(有斐閣2004)
 特許法の理論 (グローバルCOE知的財産研究叢書)(有斐閣2009)

 私が自然権や自然法にどちらかというと否定的な評価をしがちなのは、法学学習のかなり初期に田村先生の「インセンティブ論」に影響を受けたから、のような気がします(熱い風評被害?)。

【自然権思想イジり】
ホッブズ『リヴァイアサン』 〜彼の設定厨。
戸松秀典『憲法』(弘文堂 2015)



 内田貴 民法3 第4版(東京大学出版会2020)

 ついに出たな総本山。

 こちら、長らく改訂がされていませんでした。
 にもかかわらず、帯には『最新法改正に対応』なんて書かれていて、2017年の民法(債権関係)改正に対応していると誤信した人がいたんじゃないですかね(他分野の人なら特に)。

 ・債権法改正の勉強しておきたいな
 ・債権法改正といえば内田貴先生の名前をよく聞くな
 ・内田先生が教科書出してる!
 ・帯に「最新法改正に対応」と書かれているぞ!
 ・二色刷りで図表も豊富、分かりやすそう!

 買っちゃうね、これは。

 まあ、内田先生が実現したくても立法過程における「妥協」で実現できなかったあれやこれやを知るには、旧版を読む意味があるのかもしれませんが(マニア)。

 しかしまあ、読まざるをえないですよね。主にツッコミ目的で。
posted by ウロ at 10:59| Comment(0) | 法律書マニアクス

2019年06月10日

白石忠志「技術と競争の法的構造」(有斐閣1994)

 この本、扱っている論点としては、知的財産権の排他的利用(ライセンスの拒絶)が、どのような場合に競争の観点から問題となるか、というものです。

 法解釈論的には、独禁法21条が主たる対象、ということには一応なります。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 第21条
 この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。




白石忠志 技術と競争の法的構造 有斐閣1994

 で、例によって、私個人の業務には関わりがないのですが、頭のいい人の鮮やかな分析を読むのは面白いよね、ということで読んでみました。

【身の丈に合わない研究書を読む所作について】
法学研究書考 〜部門別損益分析論


 この手の研究書、私の能力が追いつかないこともあって、註を読み飛ばしてしまいがちなところ。
 が、ちらっと目に入った註の記述で気になるところを見つけてしまい、註もしっかり読まざるを得ないことに。

 本文の内容については、門外漢の私が評価できるものではないです。
 ということで、註の中でいいなと思った記述を引用したうえで、気に入ったフレーズを摘示させていただきます。

【これらと同じノリ】
ホッブズ『リヴァイアサン』 〜彼の設定厨。
金子宏・中里実『租税法と民法』(有斐閣2018)
ミシェル・トロペール(南野森訳)「リアリズムの法解釈理論」(勁草書房2013)



10頁
 筆者の感覚では、独禁法をめぐる制作を論じる者の多くは、自らが信じる「私家版独禁法像」に基づいて自説を展開しているにすぎず、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の条文すら丹念に読んだことがないのではないかと思われる。

⇒私家版独禁法像

22頁
 結局この点は、「本来的行使」を適用除外としながら、「本来的行使」であっても行為者に「独占の意図、目的」があれば独禁法を適用可能とする独自の見解を根拠づけるための場当たり的論理にすぎないということであろう。

⇒場当たり的論理

23頁
 ○○は、知的財産権の濫用は権利の社会的経済的目的に照らして判断されるもので、すべての競争抑圧的な行為を濫用と性格づけることはできないとするが、根拠を明示しない独自の解釈論であるにすぎない。

⇒根拠を明示しない独自の解釈論

24頁
 旧不競法6条の削除は、政策の変化を意味しているのではなく、同条所掲の知的財産法の権利行使を絶対視する者が二度と出ないようにするための措置であるということであろう。

⇒二度と出ないようにするための措置

37頁
 以上の論述からわかるように、「独禁法」なる語は、競争的規整の象徴として用いられる場合と、独禁法という法律そのものを指す語(公取委の縄張りを表す語)として用いられる場合とがある。この区別を明確に認識しないまま「☆☆と独禁法」なる問題のたて方をすることが、同床にいて異夢を見るさまざまな論者による複雑怪奇な議論の混乱を招いていることは想像に難くないであろう。

⇒同床にいて異夢を見るさまざまな論者による複雑怪奇な議論の混乱

46頁
 経済法研究者の多くが、第二章第一節第一款で見たように排他権神聖視の傾向をとりながら、本章に示した規整の傾向に特に異論を唱えていないのも、複数の事業者による排他的利用の場合には当該論者の頭の中での排他権の神聖度が低減するからであるのかもしれない。

⇒論者の頭の中での排他権の神聖度が低減する

84頁
 essential facility理論の日本語訳としてはさまざまなものが考えられるが、辞書的直訳である「不可欠な施設」という訳が適切でない以上、いかなる訳語をひねり出してもそれは当該論者独自の訳とならざるを得ない。訳語の見本市を開いても仕方がないので、本書ではあえて訳を付さないことにする。

⇒訳語の見本市を開いても仕方がない

114頁
 なお、これらの概念の名称は文献によってさまざまであり、混乱している。同じ概念を違う名称で呼んだり、違う概念を同じ名称で呼んだりすることが少なくない。

⇒同じ概念を違う名称で呼んだり、違う概念を同じ名称で呼んだり

122頁
 これらの論考においては「技術革新の効率性」なる語が用いられている。この語は本来、将来における経済的厚生を指すにすぎず、どのような場合にそれが増大するかについては中立的な色彩をもっているはずであるが、実際には、現時点での競争がそれを増大させるという論者の信念が注入されていることが少なくないことに注意する必要がある。

⇒論者の信念が注入されている

159頁
 なお、競争者被害型抱き合わせについて「自由な競争の侵害」の観点から「公正競争阻害性」を想起することに批判的な主張も根強く、最近では○○がそのような主張をおこなっている。このような反応があることは白石〔註(341)〕においてすでに予測済みのことであり、したがって○○への返答としては白石〔註(341)〕をもってすれば足りるのであるが、その論法があまりにも予測どおりの典型的な反応であるだけに、ここで簡単に検討しておくことがむしろ後学のためになろう。

⇒あまりにも予測どおりの典型的な反応

166頁
 この種の主張に対する常套的反論として、かりに競争者排除が成功して独占状態が形成されても、そのときに新規参入や再参入が起こるから問題はない、というものがある。

⇒常套的反論

166頁
 略奪的価格設定の場合でも、参入障壁がまったくないとすることは非現実的な空理空論に近いであろう。

⇒非現実的な空理空論

166頁
 第四章第五節では、経済的厚生最大化論に対する外在的反論と内在的反論とを分けて紹介したが、本文のように見ると、外在的に反論しても、内在的に反論しても、結論はほぼ変わらないということになる。いずれにしても結論が同じとなるということについては、偶然であるというよりも、むしろそのことがこの解釈の正統性を増幅させていると理解するのがよいのではないかと思われる。

⇒正統性を増幅させている

167頁
 なお、「有効な牽制力ある競争者」の有無を価格・品質の支配の有無に結びつける考え方は、八幡富士事件同意審決で明確に示されたが、これに対しては批判が多い。しかし、この批判は、批判者の主観においてどのように考えられているかはともかく、これを冷静に検討するなら、「有効な牽制力ある競争者」という一般論への批判であるというよりは、その一般論の当該事案へのあてはめへの批判であるにすぎないと理解できるのではないかと思われる。

⇒冷静に検討するなら

177頁
 ともあれ、ここで問題とするべきは、○○に垣間見える思考枠組み、つまり、「競争秩序維持」とは異なる「政策」なるものを脇に追いやり、臭いものには蓋をしたうえで、あくまで「競争秩序維持」を全面に押し出そうとする思考枠組みであろう(この種の思考枠組みは、本章第二章で取り上げた独善的な「悪しき独禁法中心主義」と根底でつながっているものと思われる)。しかし、公取委が決して取り上げないという事案が定型的に存在するなら、そのような「政策」を「競争秩序維持」に加味し、違反の範囲を縮小して提示するのが経済法研究者の責務ではないのであろうか。決して取り上げられない事案を含んだままで基準の明確性を標榜することに、どれほどの意味があろうか。

⇒脇に追いやり、臭いものには蓋をしたうえで

177頁
 「競争の実質的制限」ないし「公共の利益に反して」のレベルでの違反範囲の縮小に対する右のような過剰反応は、「公正競争阻害性」のレベルでの縮小解釈に特に異論が出ないことと顕著な対照をなしており、「競争の実質的制限」ないし「公共の利益に反して」に関する激しい論争の落とし物であると位置づけることができよう(いわば、論争参加者の「意地」)。この事態を見るとき、論争に参加した世代と論争が昔話にすぎない世代との間に断層があるとの指摘がますます説得的となる。

⇒激しい論争の落とし物
⇒論争参加者の「意地」

182頁
 「独禁法違反行為の私法的効力」と呼ばれる論点において有効説や折衷説が唱えられてきたことには、註(395)で見たような経済法研究者の非現実的解釈態度があずかる部分も少なからずあるのではないかと思われる。すなわち、独禁法違反(ないし下請法違反)か否かの判断基準が現実離れしているため、民事裁判官が本能的にそれを受け付けなかった例が、ないとはいえないであろう。

⇒非現実的解釈態度


 なんか悪口批判部分ばかり抽出してる気がしますが、表現が秀逸、と思ってしまったもので。

 このブログでも、イジり系の記事が結構ありますが、こういった洗練された表現を使いこなせるようになれたらいいなと。

 なお、この本、とても面白いと思うものの、オンデマンド版になってボリュームとお値段が相当アンバランスな状態に(マケプレのクレプラよりはまともですが)。なので、万人にお薦めしにくいところ。
 もちろん、本の価値をボリュームで図るな!と個人的に思うものの、それを無闇にひとに薦められるとかというと、さすがにねえ。

 ので、「読む」のは全力でお薦めしつつ、「買う」のは一度読んでめちゃくちゃ気に入ったら、でいいのかなと。
 が、読むにしても普通の図書館にはないであろうことが難点。


 ということで、まずは教科書から買ってみたらどうでしょう。
 教科書なので、さすがにここまでのエスプリの効いたフレーズはありませんが。



白石忠志「独禁法講義 第9版」(有斐閣2020)

 体系書と事例集もあるので独学体制も盤石。



白石忠志「独占禁止法 第3版」(有斐閣2016)
白石忠志「独禁法事例集」(有斐閣2017)
posted by ウロ at 11:03| Comment(0) | 法律書マニアクス

2018年12月03日

「法律学大系」(有斐閣) 〜或るstalk。

 以前の記事でも書いたんですが、有斐閣の「法律学大系」というシリーズ、私にとって、文字組みや装丁、紙質なんかがもの凄く好みのタイプでした。

  前田庸『手形法・小切手法入門』(有斐閣 1983)

 が、いつの間にか企画中止になってたらしいです。
 スタートするときには大々的に宣伝してたのに、中止しますごめんねなんてお知らせ、一般読者にはなかったはず。

 好きであればあるほど、失ったときの悲しみは強烈、てことで、備忘のために私のストークっぷりを残しておきます。
 下にあげた水野忠恒先生の「大系租税法」のまえがきに、実は「全80巻」の予定だったとかちらっと書かれてたもんで、それでかつての未練が再発したようなものです。

 ちなみに、当時刊行予定となっていたのに未だに出ていないものは、割愛しました(20年経ってもまだ出てないってことだし)。

1 シリーズで出したっきり。

 ・宇賀克也 国家補償法 1997
 ・前田庸  手形法・小切手法 1999
 ・樋口陽一 国法学 2004 補訂2007
 ・大村敦志 消費者法 1998 第2版2003 第3版2007 第4版2011



2 シリーズで出たあと改訂版が単行本で。

 ・西谷敏  労働組合法 1998
              ⇒第2版2006 第3版2012
 ・戸松秀典 憲法訴訟 2000
              ⇒第2版2008



3 シリーズで出たあと改訂版が単行本で。その後なぜか他社へ。

 ・水野忠恒 租税法 2003 第2版2005 第3版2007
          ⇒第4版2009 第5版2011
          ⇒大系租税法 2016 第2版2018(中央経済社)



4 シリーズで出る予定が、いきなり単行本として。

 ・大塚直   環境法 2002 第2版2006 第3版2010 第4版2020
 ・新井誠   信託法 2002 第2版2005 第3版2008 第4版2014
 ・西村健一郎 社会保障法 2003
 ・中山信弘  著作権法 2007 第2版2014 第3版2020
 ・山口厚   刑法各論 2005 第2版2010
 ・道垣内弘人 担保物権法 2004 第2版2005 第3版2008 第4版2017
 ・田中成明  現代法理学 2011





 時系列でいうと、4で、シリーズで出る予定だったものが単行本として出版されだしたり、2で、改訂版がシリーズから外れたりしたので、あれ?と思いつつ、大村敦志先生や水野忠恒先生のようにシリーズ内で改訂されてるのもあるし、まだ続いているのかな、と思っていたんですが、2011年以降はその改訂版も出てこない、ということで、もう終わったんだなと。

 で、水野忠恒先生の「大系租税法」のまえがきに、はっきり「中止」と書いてあったのでフィニッシュ。

 全80巻の予定が7巻。厳しいですね。
 昔の全集モノみたく、ナンバリングしておかなくてよかったね、としか。
posted by ウロ at 09:22| Comment(0) | 法律書マニアクス

2018年11月26日

積読ループ

 私、かなり重度のツンドラー(重度積読症)です。
 しかも、電子書籍で読むのが苦手というスペック持ちなので、紙の書籍を買わざるを得ない。
 そもそも、私が読む分野はそれほど電子書籍化進んでないし。

 現状困っているのが、

  A:本を読める「時間」は有限である。
  B:本を置ける「場所」も有限である。

という制約条件の中で、

  対B:場所を空けるために、1回読めばいい本から先に読むべき

という方針と

  対A:手元に残しておきたい本ほど重要な内容なんだから優先して読むべき

という方針が対立。

 そして、そんな対立お構いなしに、

  γ: さらに購入する奴

も出てくるし。


 私なりに、自分にとっての書籍を分類すると、

 1 紙で1回読めばいい本
 2 紙で1回読んだらデータで残したい本
 3 紙で残したい本
 4 紙とデータで残したい本

とあって、

 1は読んだら売る
 3は読んだら本棚にしまう

でいいとして、

 2は自炊せざるをえないんでしょうけど、手間だなあということで、1か3へ移行。
 「紙の書籍を出版社に返すと電子書籍がもらえる」みたいなシステムがあったらいいのに。

 4に対しては、今だと紙とデータの「セット割」みたいのがないので、2冊分の値段が掛かってしまうわけです。

 あと、改訂版がでたときの「アップデート版」みたいなのがないと、つらいですよね。


 なお、こんな人もいますけども、これは紙の世界の超イレギュラー存在。

【こんな人】
人類は、差異を産み育むことでマニアとなる。 〜法律書マニアクス全開
タグ:積読
posted by ウロ at 10:20| Comment(0) | 法律書マニアクス

2018年07月23日

法学研究書考 〜部門別損益分析論

 一昔前は、法学分野の「研究書」をよく読んでいました。
 たとえばこういう。



 その本で扱われている研究対象に興味がある、というよりも、頭のいい人の、アプローチの仕方とか分析の仕方とか、そういったものを読んで、自分の頭もブラッシュアップする、という使い方です。

 ので、特定の分野に偏らず、それぞれの分野での頭の良い人の著者買いすることが多かったです。

 こういう研究書、前に紹介した森田宏樹先生の『契約責任の帰責構造』のような例外はあるにしても、基本的には実務に直接役立つことはありません。

森田宏樹『契約責任の帰責構造』(有斐閣2002) 〜印紙税法における「結果債務・手段債務論」の活用
Janusの委任 〜成果報酬型委任と印紙税法



 で、私は難しい本は線を引きながらじゃないと読めないので、借りるのでなく買わざるをえない。
 1頁あたり単価、とかいうのはなんですが、一般書にくらべて高いのでそうお気軽には買えないです。


 最近は、こういう本ほぼ買わなくなりました。

 というのも、昔は、その手の研究書が置いてある大きい書店とか、あるいは法律書専門の古書店とかによく行ってて、中身を確認することができてました。で、散々迷ってよければ買うと。
 のに、最近はほぼ行かなくってしまって。法律書専門の古書店なんて、どんどん無くなっていくし。

ネット古書店 購入お作法(含、小トラブルご報告)

 ネットでタイトルだけ見て、なんか良さそう、と思っても、中身が分からないんじゃ買えないじゃないですか、高いし。

 じゃあってことで、ネットで情報収集しようと思っても、まあ情報がない。
 著者名+書名で検索しても、Amazonを始めとするネットショップがまず出てきて、あとは出版社のページ、くらいでおしまい。

 Amazonレビューなんて当然ついてないし、じゃあ、出版社のページでは、て思って見てみても、ほんのり紹介文と目次だけしか書いてない。
 川柳みたく文字制限ルールでもあるんですか、と思いたくなるような短文。サーバー容量が数MBしかない、大昔の『○○のホームページ』みたいな。

 あのころの雰囲気を思い出したい方は、下記サイトをご参照ください。

阿部 寛のホームページ
(背景の「ABE Hiroshi」とかグッときますよね。「あなたは○人目のお客様です」とか「無断リンク禁止」とあればもっといいんですけど。)

 その出版社の紹介ページに「購入ボタン」が付いてたりするんですが、はじめから買う前提で見た人以外で、そのページ読んで買いたくなって押しちゃった(=お気ポチ=お気軽にポチる)、なんて人いないと思う。


 でもまあ折角だし、ということで、一応その目次みて買う気になるかどうかを検討してみるんですが、こういう感じの目次だと一気に萎える。

【萎え目次】 (括弧内は私の想像)
 序論 問題の所在 (短そう)
 第1章 ドイツにおける○○ (長そう)
 第2章 フランスにおける○○ (長そう)
 結語 日本法への示唆 (短そう)

 まあ、業界的にはそういうお作法で書かないとダメなんだろうな(特に若手の場合)、という気はしますが、読み物としてはつまらないです。
 これが、ドイツ・フランスに限らずもっと複数の国での議論をシームレスに紹介するとか、対象を絞るにしても、もっと絡みを多めにするとかすれば面白くなりそうなんですけど。

 たぶん、ドイツではこうです御仕舞い、フランスではこうです御仕舞い、日本ではドイツのこれが参考になるかも、フランスのこれが参考になるかも、くらいのご紹介論文で終わるんだろうな、と想像できるわけです。


 また「はしがき」によく、

「出版状況の厳しい折、このような利益の見込めないものを出版していただいた出版社には感謝の言葉しかありません」

みたいな感じのことが書いてあったりします。

 や、感謝とか本当に思ってるんだったら、ちゃんと自書アピールしなさいよ、て思う。昔ならともかく、今だったらブログでもツイッターでも媒体はいくらでもあるでしょうに。

 出版社自身の公式ツイッターもあったりしますが、型通りの新刊案内なだけで、思わず興味が沸くような宣伝文句って書いてないんですよね。
 研究者本人は、自分の研究書を出せただけで満足なのかもしれませんが、出版社にとってはできるだけ売れて利益出したほうがいいと思うんですけど、なんかやる気を感じられない。


 この、対外的な売る気のなさを、出版業界ド素人の私が「邪推」するに、

・出版社の利益構造的には、自社で出してる教科書と小型六法を、大学の授業で指定してもらえることが重要である。それによって1年の収益が大きく変わるからである。

・授業に指定してもらうのは、授業を担当している教授次第である。

・とすると、研究書を出してあげる、あるいは研究書を出してもらえるかもという期待をもたせることが、指定してもらうためには重要である。

・ゆえに、研究書の出版は教科書・小型六法を指定してもらうための手段にすぎないのであって、そこに経営資源を投入してはならない。

ではないかと。

 もしそうだとすると、研究書の出版は出版社にとってはある種の「交際費」みたいなもので、はじめからそれで利益を出すつもりはない、というのは理解できます。
 手間ひまかけてまで、ネット上で販促しないというのも、極めて経済合理性があるわけです。顧客を、一般層ではなく大学の「授業」に絞るという戦略。

 研究者側も、教科書指定してあげたじゃん、という気持ちなので、感謝の「言葉」をはしがきに書くことはしても、感謝の「販促活動」をしない、理由もよくわかります。

   「教科書」の指定 ←等価交換→ 「研究書」の出版

 でも本当に、教科書部門と研究書部門のそれぞれの部門別損益がどうなっているのか、興味あります。

     教科書部門 研究書部門
出版売上   ○円    ○円
出版仕入   ○円    ○円

ではなく、

           教科書部門
出版売上(教科書売上)  ○円
出版仕入(教科書仕入)  ○円
交際費(研究書仕入)   ○円
雑収入(研究書売上)   ○円

みたいな感じだったら笑える(泣ける)。
posted by ウロ at 13:48| Comment(0) | 法律書マニアクス

2018年04月06日

潮見佳男『民法(全) 第2版』(有斐閣 2019)

※以下、初版当時の記事になります。



潮見佳男 民法(全) 第2版(有斐閣 2019)

 700頁足らずで民法全体をカバーした本。

 700頁というとボリューミーに感じるかもしれませんが、民法って、

  民法総則
  物権法
  担保物権法
  債権総論
  契約総論
  契約各論
  事務管理・不当利得・不法行為
  親族法
  相続法

とジャンル分けされてて、

同じく潮見先生の書いた『新債権総論1(法律学の森)』『新債権総論2(法律学の森)』だと、債権総論と契約総論だけで1770頁もあったりするので、なかなかの圧縮ぶりがイメージできるのではないかと。
 この本で対応する箇所は140頁程度。

 実際、余計な記述がないので、民法を一通り勉強した人が知識をすっきり整理するのによさそうです。
 逆に言うと、初学者がいきなりこの本読んで民法を「理解」しようとするのは、無茶だと思います。


 この本、改訂前は『入門民法(全)』て名乗っていたんですが、全然入門感なかったです。
 ので、タイトル変更は正解(偉そうに)。



 潮見佳男 入門民法(全) (有斐閣 2007)


 この本の厄介なのが、H29民法改正で改正された部分については、当然のように改正後の規定だけで書かれていることです。
 まだ施行されてないししばらくは経過措置で混在するので、併記したほうがいいと思うんですけどそういう配慮が無くって。
 改訂前の『入門民法(全)』も買ってね、てことですか。

 経過措置って、学者本だと疎かにされがちですけど、実務的には超重要です。
 せっかくだから、民法で経過措置ルールを学ぶいい機会だと思うんですけど。

 あと、改正されてない部分は判例・通説ベースで書いてるんですが、改正された部分については、潮見先生の理解するところの改正法解釈をベースに解説されているんですよね。
 この本のコンセプトからすれば、もう少し公式見解(と言ってよいかどうか)寄りに記述したほうがいい気がしますけど。


 ので、この本を読む意味がある人って、

 ・一通り民法の知識はもっている
 ・普通の改正法の解説書を読んでいる

人で、間違い探し的に改正法がどこに紛れ込んでいるかを見つけるとか、改正法が民法体系の中にどんな感じで溶け込んでいるのか確認したいとか、改正されたばかりでも民法学者がどんな感じで解釈論を展開していくのかを知りたいとか、そんな読み方をしたい人向けなんじゃないかと。

 出版社側の売出し方に反して、まさしく「法律書マニアクス」ジャンルに入れておくに相応しい(全力で褒めている)。
posted by ウロ at 10:38| Comment(0) | 法律書マニアクス

2018年03月13日

人類は、差異を産み育むことでマニアとなる。 〜法律書マニアクス全開

「マニア」というのは、その対象となる分野の中で、普通の人が意識することもない差異を見出しその違いを嗜む人種、ではないかと思っています。

 普通の人にとっては「鉄道」という一括りのものを、○○鉄、○○鉄、とジャンルを分け、そしてさらに、その中でも何が好きかで細分化されていく、みたいな。

 私がマニアクスを自称している「法律書」についても、なんで同じような本買ってるの?という疑問をもたれたりするので、その違いを類型別(言い訳別)に解析してみます(便宜的にグレード付けしてみました)。

1 新版がでたので(法改正・新判例反映型) beginner

 ・山下 友信/神田 秀樹 金融商品取引法概説 第2版(有斐閣2017)

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 法律書の場合、法改正やら新判例やらが出ると内容が古くなってきますので、それを反映した「新版」が出ることになります。

 この場合に買い換えるのは、まあ普通の行動です。読み終わらないうちに新しい版がでると悲しくなりますが。



2 同じジャンルだけど著者が違うので intermediate

 ・林幹人 刑法総論 第2版 (東京大学出版会 2008)
 ・山口厚 刑法総論 第3版 (有斐閣 2016)

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 たとえば、同じ『刑法総論』の教科書でも、著者違いで何冊か買ったりすることがあります。

 司法試験受験生のときには、基本書は一冊に絞るべきで何冊も買うやつは受からない、とか言われていましたが(そもそも学者本が不要、という風潮も)、ここではあくまで「マニア道」の話し。

 同じジャンルでも、書く人によって自分にとっての理解しやすさが違ったりするので、色んな本を読んでみるのもいいと思うのです。

 皆さんだって、同じブル9でも、指揮者違い・オケ違い・ホール違い・演奏日違い・レコード会社違いで、何枚もCDお持ちですよね。

【極々一部の例】
カイルベルト/ブルックナー:交響曲第9番
カール・シューリヒト&ウィーン・フィル/ブルックナー: 交響曲第9番



3 同じジャンルで同じ著者だけど対象読者が違うので intermediate

 ・井田良 入門刑法学・総論 第2版 (有斐閣 2018)
 ・井田良 講義刑法学・総論 第2版 (有斐閣 2018)
 ・井田良 刑法総論の理論構造 (成文堂 2005)

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 3冊とも井田良先生の『刑法総論』の本ですが、対象読者が違っています(初級・中級・上級)。

 ある程度勉強が進んでいても、あえて初学者向けの本を読むことがあります。というのも、頭のいい先生が初学者向けに書いた本てとても理解しやすくて、一応理解しているつもりだったけど実はちゃんと理解できていなかったことが分かったりすることがあるからです。

 中には対象読者が別なはずなのに、自分の他の本のコピペで済ましている不埒な輩もいたりするので、注意は必要ですが。



4 弟子が改訂したけども advanced

 ・四宮和夫/能見善久 民法総則 第9版 (弘文堂 2018)
 ・四宮和夫 民法総則 弘文堂 第4版補正版 (弘文堂 1996)
 ・芦部信喜/高橋和之 憲法 第7版 (岩波書店 2019)

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 名著だと、著者がお年になったり亡くなったりした後も、その弟子の方が改訂し続けることがあります。

 が、元の本が名著であればあるほど、弟子が本文に手を加えることに異論が出たりします。

 この四宮=能見『民法総則』、私が中身をどうこういうつもりはありませんが、能見先生が全面的に手を加える前の「第4版補正版」も並行してオンデマンド版で出したりしてるのも、何かを示唆しているような。

 私自身も写真のとおり「第4版補正版」を手元に残していたりして。

 さらに突き詰めると、補正版も補正箇所は四宮先生ご自身によるものではないようなので、純粋な四宮先生単著である「第4版」が欲しかったり。

 ちなみに、芦部信喜先生の『憲法』は、高橋和之先生が改訂し続けていますが、こちらは本文には手を加えず新判例を註で追加してるだけだそうで。こういう場合は安心して旧版とさよならすることができます。

 まあ、憲法というのが(いまのところ)法改正が無いおかげで、そういう改訂の仕方で済んでいるのかもしれませんが。



5 新版がでたので(著者改説嗜み型) advanced

 ・山口厚 刑法総論 第3版(有斐閣 2016)
 ・山口厚 刑法総論 第2版(有斐閣 2007)
 ・山口厚 刑法総論 (有斐閣 2001)
 ・山口厚 問題探究 刑法総論 (有斐閣1998)

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 1と外形的には全く同じ行動ですが、こちらはちょっとアレです。

 普通、新版が出た場合には、古い版は使えなくなるので売るか捨てるかしてしまうのですが、稀に、版ごとの著者の改説を嗜む、という貴族の遊びをすることがあります。

 たとえば、山口厚先生の『刑法総論』というのが第3版まで出てるんですが、論点本である『問題探求刑法総論』を含めて順に読んでいくと、当初はゴリゴリ理論重視の見解だったのが、徐々に判例寄りの規範を取り入れるようになっていって、そしてついに最高裁判事になられる、というシンデレラストーリー(?)を味わうとか。



6 新装版がでたので advanced

 ・白井駿 新装版 白井教授の刑事訴訟法講義(白順社 2004)

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 新装版て、基本的に装丁が新しくなっただけで、中身が変わることってほとんどないです。

 白井先生のこの本は、統計データが新しくなったのと新装版のあとがきが追加されたくらい。それでも買ってしまったわけです。



7 オンデマンド版がでたので advanced

 ・林屋 礼二 新民事訴訟法概要 第2版 (有斐閣 2004)
 ・林屋 礼二 新民事訴訟法概要 第2版【オンデマンド版】(有斐閣 2004)

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 法律書の場合、名著でも平気で売切・絶版とかになったりします。そう古い本じゃなくても。

 一昔前は、古本屋で高値がついてしまって買えなかったりしたんですが、オンデマンド版というのが普及するようになって、多少は手に入りやすくなりました。

 そうはいっても、オンデマンド版自体も当時の値段よりは高くなってしまうんですが。

 で、古本屋で運良くオリジナルを安く手に入れたとしても、安いってことは状態があまりよろしくないってことなので、愛着が持ちにくいわけです(赤鉛筆、青鉛筆の書き込み、線引きをよく見かける)。

 そんなときにオンデマンド版が出てると、つい買ってしまうことがあります。

 とはいえ、林屋先生のこの本は当時新刊で買ったやつなので、この理由では説明が付きません。もちろん当時の自分自身の書き込み・線引きが黒歴史感あって嫌だ、というパターンもありえますが、この本に関してはそういうわけでもありません。

 なぜ買ったんでしょう?



8 同じですけど何か? maniacs

 ・奥田昌道 債権総論 増補版 (悠々社 1992)
 ・奥田昌道 債権総論 増補版 (悠々社 1992)

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 はい、同じです。

 ここまでは、似たような本でも何かしら違うんですよ、と、どうにか差異を見出してきましたが、ここに至ってついに全く同じ本、爆誕。

 や、さすがに両方とも定価で買うってわけではなく、持ってる本なんだけど名著が古本屋でお安く売ってるのを見かけてしまってなんか可愛そう、という感じで買うわけです。

 これこれと同じノリですね。

【事務所メンバー紹介(寂しくはない)】
押収品
私たちのファームに新しいクルーがジョインしてくれました!!!!!!

 事務所用と自宅用、とか、あるいは自炊用にするかどうか。

posted by ウロ at 09:34| Comment(0) | 法律書マニアクス

2017年07月24日

石田穣「民法総則」(悠々社1992・信山社2014)

○『法律書マニアクス』て?

 以下、完全に趣味の話しです。
 なので、ブログをお客さんに対する情報提供活動の一環として用いるという観点からすると、まるで無意味なカテゴリとなります。

 通常、本の紹介をするブログであれば、皆さんに役に立つ、読んでもらいたいビジネス書みたいのを紹介するのが王道なんでしょうが、このカテゴリでは、私がただ書きたいから書く、そして読んでもらうことは基本的におすすめしない、という本の紹介記事が続いていく予定です。


 で、本題。

 大学の法学部に入学して以来、なぜか法律学の「体系書」というものが好物になりました。体系書というのは、たとえば民法とか刑法とかの学者さんが、自分の思うところの体系に従った構成で全体を網羅し、各種論点につき詳細に判例・学説の検討、自説の披露をする、というものが典型的なものになります。

 今どきは、ユーザーフレンドリーな「薄い本」とか、判例・実務寄りの本とかが法律書のメインを占めてしまっていたり(判例=攻め、実務=受け、で学説がモブでしょうか)、有力学者がロースクールやら何やらで忙しいのかあまり本格的な体系書が出てこなくなってしまっており、体系書不遇の季節が長らく続いています。

 そんな中でも、少ないながらも素晴らしい体系書が出版されることがありますので、これから少しづつ紹介していければと思います。
 もちろん、私などが学説の評価などするのはおこがましいので、日本酒の記事と同様、のみやすい、後味がすっきりしてる、味がしっかりしてる、程度の私の主観的な感想を書かせて頂きます。
 ただ、「体系書」に絞ってしまうとネタが限られてしまいそうなので、広く「法律書」という括りで進めてみます。


 そして、やっと紹介。

 何よりも最初にどうしても紹介しなければならないのが、石田穣『民法総則』(悠々社、1992)です。
 この本は、私が大学1年のときに購入し、それ以降体系書集めに散財するきっかけとなった本です。



 民法は、大学のカリキュラムでいうと

  民法総則
  物権法(担保物権法含む)
  債権総論
  債権各論(契約総論、契約各論、法定債権)
  親族法
  相続法

と分かれています(大学により編成や順序は異なります。)。

 大学1年生は民法総則からはじめるのですが、扱っている概念が抽象的だったり、まだ学んでいない部分を知らないとちゃんと理解できないところがあったりで、授業がとても理解しにくかったです(私の学力の問題でもあるのですが)。

 そういう場合、通常は「わかりやすい」「薄い」入門書を読むのが正解なんでしょうが、私の場合は、なぜか、できるだけ厚くて詳細に書かれている本のほうが理解できるんじゃなかろうか、と思ってしまい、当時大学の書店で一番ページ数の多かったこの本を購入しました(657頁あります・・・)。

 で、実際、普通の教科書では理由付けもなく結論だけ書かれているようなところも、しっかり言葉を尽くして説明がされていたので、曖昧に理解していた部分がだんだんはっきりとしてきました。
 ただ、多くの点においていわゆる通説的な理解とは異なる異説が多い、ということに、段々気がついていきます。

 なので、学部のテスト向けには、この本で一回理解を深めた上で、頭を通説的な発想に戻す、という大人の対応をすることになりました。
 とはいえ、この本のおかげで、通説を曖昧なまま丸覚えせず、どこに問題があるかを内在的に把握できていたので、展開もしやすかったです。

 司法試験などではさらに、判例・通説をベースに記述を展開しなければならない度合いが強まりますが、やはり一回深く理解した上で判例・通説に戻ってくる、という過程は無駄ではなかったと思います。
 試験対策一般、ということでいうと、合格ラインが70%だからといって70%の理解をしておけばいいのではなく、100%にできるだけ近づくように普段から勉強しておくことが、本番で70%の出力をだすためには必要、ってことだと思います。

 その後、この本は絶版となり、実質的な改訂版が別の出版社から出版されています。
 石田穣『民法総則』(信山社、2014)で、これはさらにパワーアップして12,960円で1216頁もあります。



 出版後さっそく購入したものの、比較的時間のあった大学時代と違い、ほかにも読むべき本があったりでなかなか読めずにいます。
 2017年に民法改正があって総則部分にも影響があるので、はやく改訂版をだしてもらって、改正法に対する著者の見解を読んでみたいとも思いつつ、まだ全部読めていないうちに改訂版がでたら悲しいという思いもあったりします。

 まあ、今どきの、「クラウドファンディング、◯◯万円集まったら◯◯頁書きます」というのに比べれば、良心的な気もしますので、この著者の本は、出版される度にお布施感覚で購入するつもりです。

posted by ウロ at 20:07| Comment(0) | 法律書マニアクス