2018年04月13日

特定新規設立法人のインフィニティ感

消費税、免税とるって大変よ、という話(2018.1.11現在のルール)

 この消費税課否判定の記事、よく整理されてるので私も結構利用しています。

 や、自分で書いた記事ではあるんですけど、そのときは一生懸命調べたけどすっかり忘れている、ということってよくありますよね。こうやってまとめ書いとくと、あとで便利です。

 で、今回この記事をみた理由が、「特定新規設立法人」の当てはめやりたかったからなんですが、あらためて、この特例の適用範囲の広さにビビりました。

 以下、具体例で。


  A(自分)、B(配偶者)、C(Bの兄弟)

・Aは脱サラしてこれから甲社を設立しようとしている。
・一応いうとBとは生計一、Cとは生計別。
・BCの父親Dが乙社(課税売上高はずっと5億円超)の株を100%保有していた。
・Dが亡くなり、乙社株をCが99%、Bが1%相続している。

 甲社(新設法人) ←100% A(他の者) 
              B(生計一)  1%→ 乙社(5億円超)
              C(生計別) 99%→ 

 甲社は「特定新規設立法人」に該当することになるか?


 元記事の「条件」にそって検討すると、

ア 基準期間
 ⇒なし
イ 特定要件
 ⇒A(他の者)が50%超保有しているので満たす
ウ 他の者Aの課税売上高
 ⇒なし
  特殊関係法人の課税売上高
 ⇒?

 問題は最後の、乙社が「特殊関係法人」に該当するか、です。

※特殊関係法人とは
 他の者(直接株主)と関係のある一定の者のうち、非支配特殊関係法人以外の法人


 分解して当てはめていくと、

1 他の者(直接株主に限る)
 ⇒Aは直接甲社の株を保有
2 他の者と関係のある一定の者
 ⇒Aの親族B、C と、BCに完全支配されている乙社
3 非支配特殊関係法人
 ⇒生計一のBが乙社株もってるので該当しない

 ので、乙社は「特殊関係法人」に該当しちゃって、甲はいきなり課税事業者からスタート、という結果に。


 これ、Bが乙社株を相続してなければ、

 甲社(新設法人) ←100% A(他の者) 
              B(生計一)   
              C(生計別) 100%→ 乙社(5億円超)

3 非支配特殊関係法人
 ⇒生計別のCが乙社株全部保有してるので該当する

となって、乙社は「特殊関係法人」にならない、となっていたわけです。

 だから、自分なり生計一親族なりが、どこかの課税売上高5億円超な会社の株をうっかり保有していないか、事前に確認する必要があります。

 こういうこと、ちゃんと遺産分割やってないと起こりえます。もちろん「名義株だ!」といって反論することもできるかもしれませんが、まあ揉めますよね、当局と。


 一応「特殊関係法人」に該当する、とあてはめしてみましたが、条文の読み、本当にこういう理解でいいんですかね。
 以下、条文を引用しつつ疑問を提示します。

消費税法施行令25条の3第1項《特殊関係法人》(省略入れてます)
一 当該他の者(新規設立法人の発行済株式を有する者に限り、当該他の者が個人である場合には、当該他の者の親族等を含む。)が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人


・「他の者」は直接保有を要求されているが、「他の者」が直接保有してさえいれば「親族」のほうは直接保有してなくても含まれるのか?

 甲社(新設法人) ←50%超 A(他の者) 100%→ 丙社
          ←0%   B(親族等) 100%→ 丁社

⇒丙社が「特殊関係法人」にあたる典型例なわけですけど、丁社はどうなるのか?

・完全支配の判定は、「他の者だけ」は当然として、「親族だけ」「他の者+親族」「親族+親族」でも判定するのか?
 「含む。」っていうのが「及び」の意味合いを持つのか、あくまでも単数形のままなのか?

1 他の者100%
2 親族100%
3 他の者50%+親族50%
4 親族50%+親族50%

 1が該当するのは当然です。
 で、1項と2項の書き分け方をみるに、生計別親族100%支配の法人を、一旦1項の「特殊関係法人」に含めた上で2項で除外しているわけです。とすると、2も1項に入っているのを前提にしているはずです。
 問題は3と4。

二 当該他の者及びこれと前号に規定する関係のある法人が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人
三 当該他の者及びこれと前二号に規定する関係のある法人が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人


 +法人の場合はこうやって「及び」で足してるんですが、+個人の場合はどうなのか。

同条第2項《非支配特殊関係法人》(省略入れてます)
一 当該他の者(新規設立法人の発行済株式を有する者に限る。)と生計を一にしない当該他の者の親族等が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人


 特殊関係法人から除外される「非支配特殊関係法人」はこういう書き方になっています。

 たとえば、上記事例を少し変形して、BCE(CEはAと生計別)の三人兄弟で乙社株をC50%、E50%相続したとします(直接保有の疑問は置いておきます)。

 甲社(新設法人) ←50%超 A(他の者) 
               B(生計一)  0%→ 乙社
              C(生計別) 50%→ 乙社
               E(生計別) 50%→ 乙社

 この場合は「特殊関係法人」から除外されないとおかしいわけで、そうすると、こちらの完全支配の判定は「親族+親族」ですべき、となるはずです。
 CまたはEが一人で100%持ってないから「非支配特殊関係法人」には該当しない、というのは変ですよね。

 ので、第1項第1号のほうも「及び」として読むべきなんだろうな、と。
 と、思うんですけど「含む。」の含みが引っかかる。「及び」でいくなら、『当該他の者が個人の場合は、当該他の者及びその親族等』という書き方になるのが普通だろうし。

 あるいは、そもそも1項1号は「単数形」しか定めていない、てことで、この変形事例は2項1号の判定に進まないということになるのかどうか。

 実はこういう疑問が残っているのですが、さしあたり保留にしておきます。


 しかしまあ、ここででてくる「親族」概念てのが相当広範囲です。
 消費税の課否判定に、民法の「親族」概念をそのままもってきてるもので。

民法725条
 次に掲げる者は、親族とする。
  一 六親等内の血族
  二 配偶者
  三 三親等内の姻族

 どれくらい広いかは「親族の範囲」とかでネット検索してでてくる図をご確認ください。
 皆さん、自分の親戚どこまで把握してますか。

 民法のお勉強をしてたときも相当広いなあとは思ってましたが、実際には、民法上の制度で「親族」概念がそのまま問題になるようなものってほとんどないので、現実的な問題はあまり生じてなかったかと思います。

 ところが、消費税の課否判定では、広いままの親族概念をそのままもってきてしまってるわけです。お得意の「特定親族」とかで、もっと狭めに絞ればいいと思うんですけど。

 「生計一」要件が一つの絞りなんでしょうけど、上記事例のように絞りきれてない事例もあると。

 まあ、税法の議論のなかには、むやみに税法特有の概念を使わずに、なるべく他法の概念をそのまま使うべき、という議論もあったりしますので(借用概念/固有概念)、「特定○○」なんてのを徒に産み出すべきではない、という主張もありうるところでしょうが。


 ここまで「親族」前提で話を書きましたが、正確には親族「等」です。
 税法における「等」一文字の『INFINITY感』がここでも遺憾なく発揮されてます。

親族等とは
 ・他の者の「親族」
 ・他の者と「内縁関係」にある者
 ・他の者(個人)の「使用人」
 ・他の者(個人)からの資金援助で生計維持してる者
 ・上記の者と生計一の親族


 ただでさえ広い「親族」を、「」でさらに広げるという鬼感。
 特に、最後の「の親族」の拡張っぷり。INFINITY×INFINITYですね(HUNTER×HUNTERぽくてかっこいい)。
posted by ウロ at 10:43| Comment(0) | 消費税法

2018年01月11日

消費税、免税とるって大変よ、という話(2018.1.11現在のルール)。

 一昔前までは単純だった消費税の課税事業者/免税事業者の判定、節税スキーム封じのためにややこしくなってます。

 もちろん売上少ないとか還付狙わないっていうなら悩むことはないんですけど、ギリギリを攻めようとすると、色々引っかかってきます。

 巷の解説書でもちゃんと書かれてないものがあったりするので、以下、注意点だけ整理しておきます。具体的なあてはめは個別にご相談ください。

【レベル1】

 ここまでは誰でも知っていると思います。

1 基準期間による判定

・条件
 基準期間における課税売上高が、
  1000万円以下 ⇒免税
  1000万円超 ⇒課税

・基準期間
 その事業年度の前々事業年度

※超と以下に注意
※基準期間が1年未満の年換算ルールに注意
※免税期間中は税込金額で判定

2 新設法人の特例

・条件
 基準期間がない事業者で、期首の資本金の額が
  1000万円未満 ⇒免税
  1000万円以上 ⇒課税

※資本金等ではなく資本金
※超と以下に注意
※各事業年度の期首時点で判定

【レベル2】

 特定期間の特例は、基準期間のヴァリエーションという理解からか割りと知られていますが、ぎりぎりを狙う場合は注意が必要です。

3 特定期間による判定

・条件
 特定期間の課税売上高・給与等支払額が、
  1000万円以下 ⇒免税
  1000万円超 ⇒課税

・特定期間
 前事業年度開始の日から6ヶ月の期間

※基準期間で課税なら特定期間を判定するまでもなく課税
※短期事業年度
 前事業年度が7ヶ月以下の期間の場合はカウントしない
 7ヶ月以上8ヶ月未満の場合でもカウントしない場合があるが、判定がややこしいので注意
※特定期間は年換算しない
※給与等支給額
 所得税が非課税となる通勤手当や旅費等は含めない
 未払額は含めない
※課税売上高・給与等支払額がいずれも1000万円超の場合に課税事業者が強制される。いずれかが1000万円以下の場合は課税/免税を選択可能(課税事業者選択届出書による選択ではないので2年拘束ルールなし)

【レベル3】

ここから先がちゃんとフォローされていない文献がありがち。
各種用語を条文にそって正確に理解してないと、ちゃんとあてはめできないです。

4 特定新規設立法人の特例

・条件
 ア 基準期間なし
 イ 特定要件満たす
 ウ 他の者(直接株主)または特殊関係法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超
⇒すべてを満たすと課税

・基準期間
 その事業年度の前々事業年度
・特定要件
 他の者及び他の者と関係ある一定の者が株式50%超保有している
・他の者と関係のある一定の者
 他の者の親族等
 他の者及び他の者の親族等が完全支配している法人
・特殊関係法人
 他の者(直接株主)と関係のある一定の者のうち、非支配特殊関係法人以外の法人
・非支配特殊関係法人
 他の者とは別生計親族等が完全に支配している法人
・基準期間相当期間
 新設設立法人の新規開始日の2年前の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した他の者及び特殊関係法人のうちいずれかの者の事業年度

※特定要件(イ)を判定するときに含める人と課税売上高(ウ)を判定するときに含める人が違うとか、支配・被支配の矢印がどっち向いているかで結論が違うとか、とにかくややこしい。いくら解説書を読んでも正確に理解するのは難しいので、(特に)消費税施行令の条文を直接読み込む必要あり。
※生計別要件があるとはいえ、5億円超の会社を経営している親族がいる場合には注意。グループ法人税制の場合は、取引関係がなければ事実上問題にはならないが、こっちでは取引関係なくても問題になる。

5 調整対象固定資産を取得した場合の特例

・条件
 ア 課税事業者を選択した事業者が
 イ 選択拘束期間中に調整対象固定資産を取得
⇒取得した課税期間から第三年度の課税期間の初日(の前日)まで、課税事業者選択不適用届出書・簡易課税制度選択届出書を提出できない。

 ア 資本金1000万円以上の新設法人または特定新規設立法人が
 イ 基準期間がない事業年度に調整対象固定資産を取得
⇒取得した課税期間から第三年度の課税期間まで、納税義務免除規定の適用なし。
⇒取得した課税期間から第三年度の課税期間の初日(の前日)まで簡易課税制度選択届出書の提出ができない。

・調整対象固定資産
 100万円以上の固定資産(棚卸資産除く)

※条件に該当する場合に何が制約されるか(届出提出制限or免税不適用)を正確に理解する
※上記アに該当する事業者以外は適用されない(基準期間判定で課税事業者になる場合など)
※取得した課税期間の初日から起算。選択適用した課税期間からではない
※取得した課税期間に簡易課税を適用している場合は拘束されない
※仕入控除税額の調整規定の適用にも注意
※廃棄・売却しても適用継続。ただし仕入控除税額の調整規定のほうは第三年度の課税期間の末日までに廃棄・売却すれば適用されない

6 高額特定資産を取得した場合の特例

・条件
 ア 本則課税の課税事業者が
 イ 高額特定資産の仕入等を行った場合
⇒仕入等した課税期間から第三年度の課税期間まで、納税義務免除規定の適用なし。
⇒仕入等した課税期間から第三年度の課税期間の初日(の前日)まで、簡易課税制度選択届出書の提出ができない。

・高額特定資産
 1000万円以上の棚卸資産及び調整対象固定資産

 ア 本則課税の課税事業者が
 イ 自己建設高額特定資産の自己建設等を行った場合
⇒累計額が1000万円以上になった課税期間から建設完了した課税期間の第三年度の課税期間まで、納税義務免除規定の適用なし。
⇒累計額が1000万円以上になった課税期間から建設完了した課税期間の第三年度の課税期間の初日(の前日)まで、簡易課税制度選択届出書の提出ができない。

※5と違い、適用される場面が限定されていない
※条件に該当する場合に何が制約されるか(届出提出制限or免税不適用)を正確に理解する
※自己建設の場合、規制期間が累計額1000万円到達〜建設完成〜3年と長い。
※廃棄・売却しても適用継続
※簡易課税制度選択届出書の提出制限のため、過去簡易選択届出をしていたが課税売上高5000万円超で原則課税になった場合には制限がかからない
※5と6の両方の条件を満たす場合は5が適用される

7 追記(令和2年度改正)

 5と6につき、「棚卸資産の調整措置」経由で仕入税額控除をとった場合も、3年縛りが適用されることになりました。
 従前は、取得時に本則とってた場合に限られていたわけですが、今後は取得時免税でも適用がありうると。
posted by ウロ at 10:27| Comment(0) | 消費税法