答え:給与です(ただし所得税非課税、消費税課税仕入)、おしまい。
ということが言いたいわけではなく。
消費税法における通勤手当の扱いで、いまいち引っかかるところがあったので、整理しておこうかと。
このあたりについては、すでに2つ記事を書いているので、そこでの整理を前提として、以下進めます。
なぜ給与は課税仕入れから除外されるのか? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編60)
なぜ通勤手当は非課税所得なのか? 〜さよなら包括的所得概念論
◯
何が引っかかるかというと。
まず、所得税法の側から。
所得税法 第二十八条(給与所得)
1 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
所得税法 第九条(非課税所得)
1 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
五 給与所得を有する者で通勤するもの(以下この号において「通勤者」という。)がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用(自動車その他の交通用具の駐車のための施設の利用のために支出する費用を含む。)に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの
所得税法施行令 第二十条の二(非課税とされる通勤手当)
法第九条第一項第五号(非課税所得)に規定する政令で定めるものは、次の各号に掲げる通勤手当(これに類するものを含む。)の区分に応じ当該各号に定める金額に相当する部分とする。
一 通勤のため交通機関又は有料の道路を利用し、かつ、その運賃又は料金(以下この条において「運賃等」という。)を負担することを常例とする者(第五号及び第六号に規定する者を除く。)が受ける通勤手当(これに類する手当を含む。以下この条において同じ。) その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額(一月当たりの金額が十五万円を超えるときは、一月当たり十五万円)
「通勤手当は実費弁償だから課税されない」と説明されがちですが。
現行法上はあくまでも「給与等」に含まれるとしたうえで、一定限度額の範囲で「非課税」として頂いている、という建付けになっています(以下、給与等の「等」は省略します)。
そして、「非課税限度額」を超えたら当然に給与課税されることになっています。
これは、「あくまでも通勤手当は給与に該当するが、非課税限度額までは課税しない」からであって。「一定額までは給与ではないが、超えた途端にいきなり給与になる」などということではないわけです。
法28条1項にいう「給与」は、あくまでもその「性質」によって判定することになっています。もし、「一定額を超えたら給与とみなす」というのであれば、現行法とは逆に《みなし給与規定》が必要となるはずです。
この、通勤手当が給与に含まれることの《理屈》。
雇用契約における労務提供義務は「持参債務」であり、会社に来るまでは「家事」の領域。会社に来てからが「業務」の領域、ということになっています。ので、通勤手当は会社の業務に対する費用そのものではなく、従業員の家事費を給与とあわせて支給してあげただけだろうと。
ただ、給与課税してしまうとシンプルに「可哀そう」なので、一定限度額までは非課税と扱ってくれているわけです。
「本来的に業務費用」だというならば、わざわざ「非課税規定」を設ける必要もなく。仕事で使う「ボールペン」を従業員が買ってきた場合の扱いについて、所得税法に非課税規定が用意されていないのは、仕事で使うボールペン代は当然に給与ではないから、わざわざ非課税規定を設ける必要がないからです。
また、「本来的に業務費用」だというならば、「非課税限度額」があるのもおかしいことになってしまいます。「静岡駅までは業務の領域だが、掛川駅以降は家事の領域」なんてことはありえないわけです(15万円ラインは大体です)。
自宅から会社までの通勤費としての「性質」は、通勤途中で変わりようがありません。
本来的に家事の領域に属するものを、親切で一定範囲課税しない扱いにして頂いている、というのが、現行所得税法の建付けに、適合的な理解かと思います。
◯
なお、課税されないという結論が同じなら、「給与じゃないから課税されない」なのか「給与だけど非課税」なのかで区別する必要ないのでは、と思われるかもしれません。
が、たとえば「賃上げ税制」では、(給与課税されるかどうかではなく)給与に該当するかどうかで集計の対象となるかどうかが決まることになっています。
措置法 第四十二条の十二の五(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
4 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
三 給与等 所得税法第二十八条第一項に規定する給与等をいう。
それゆえ、この違いは常に意識しておく必要があります(ただし措通42の12の5-1の4)。
◯
さて、所得税法における通勤手当の扱いを念頭に、消費税法での通勤手当の扱いをみてみましょう。
消費税法 第二条(定義)
1 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十二 課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
課税仕入れから「給与」は除外すると。
この「給与」については所得税法28条からお借りしており、上記の所得税法の建付けを前提とすると、通勤手当も課税仕入れからは除外されてしまうように読めます。
ところが、通勤手当は(インボイスなしに)仕入税額控除できることとされています。
この点に関する規定は次の通り。
消費税法 第三十条(仕入れに係る消費税額の控除)
7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。
消費税法施行令 第四十九条(課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等)
1 法第三十条第七項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 課税仕入れが次に掲げる課税仕入れに該当する場合(法第三十条第七項に規定する帳簿に次に掲げる課税仕入れのいずれかに該当する旨及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載している場合に限る。)
ニ イからハまでに掲げるもののほか、請求書等(法第三十条第七項に規定する請求書等をいう。)の交付又は提供を受けることが困難な課税仕入れとして財務省令で定めるもの
消費税法施行規則 第十五条の四(請求書等の交付又は提供を受けることが困難な課税仕入れ)
令第四十九条第一項第一号ニに規定する財務省令で定める課税仕入れは、次に掲げる課税仕入れとする。
三 事業者がその使用人等で通勤する者(以下この号において「通勤者」という。)に対して支給する所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第九条第一項第五号(非課税所得)に規定する通勤手当のうち、通勤者につき通常必要であると認められる部分に係る課税仕入れ
省令の書きぶりを見るかぎり、通勤手当は「課税仕入れ」に含まれていることを前提しているように読めます。決して課税仕入れでないものを課税仕入れと見なしているわけではなく。
これがたとえば「消費者」からの仕入れであれば、「課税仕入れの定義には含めたうえで、インボイスがもらえないから控除できない。インボイスいらない特例があれば控除できる。」という建付けになっています。が、給与(通勤手当含む)の場合はそもそも課税仕入れから除外されてしまっています。
それゆえ、何をどう頑張っても通勤手当は課税仕入れにはなりようがありません。
このままでは所得税法と消費税法が矛盾していることになってしまいます。
所得税法:通勤手当は給与に含まれる(が非課税規定により課税されない)
消費税法:通勤手当は給与に含まれない(から課税仕入れに該当する)
このパズル、解決することは可能かどうか。
◯
まず、消費税法2条1項12号の書きぶり。
所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。
ここでは「給与等を除く」ではなく、「給与等を対価とする役務の提供を除く」と、持って回った表現をしています。
他方で、所得税法28条1項の書きぶり。
給与等に係る所得
この書きぶりの違いから、通勤手当は「給与に係る所得」ではあるが「給与を対価とする役務の提供」には該当しない、と説明することができれば、両法を整合させることができます。
給与等に係る所得
・給与等を対価とする役務の提供 ⇒基本給など
・それ以外 ⇒通勤手当など
もちろん、かなりのトリッキーな遣り口であり。所得税法と消費税法を整合的に説明するためだけの、無理やり過ぎる手口にすぎません。
では、具体的にどう説明するか、というところで、どうにも説明の仕方が思いつきませんでした。
本来であれば『給与(通勤手当は除く)は除く』と二重除外(いわゆるジョジョ)で規定すべきところを、どうにかして書きぶりの違いだけから同じ帰結を導くの、無茶な気がします。
「消費税法の給与、所得税法からお借りしているけれども、所得税法とは違って通勤手当は含まない」などと、《反制定法的解釈》をカマさなければならないでしょうか。
「反制定法的解釈について」 〜問d(フリマアプリ等により商品を仕入れた場合の仕入税額控除)
◯
なお、上記フリマ記事からも分かることですが。
消費税法、事業の世界と消費(事業以外)の世界にレイヤーを分けて、事業から消費に移行したところで税負担を発生させる、というのが《基本コンセプト》となっています。それゆえ、消費から事業に移行した場合には税をお戻しすることとしていると(条文に忠実に表現するなら「事業以外」と記述するのが正確ですが、イメージしやすいように「消費」といいかえます)。
ところが、条文上は「適格請求書発行事業者以外の者」かどうかを古物商特例の適用要件としてしまっています。が、これでは事業の世界と消費の世界の切り分けとしては不適切です。
個人の場合には、たとえインボイス登録していたとしても「事業者」として取引する場合もあれば「消費者」として取引する場合もある、ということに、まるで思いが至っていないわけです。
また、本論点についても、所得税法にいう給与等の中には、純然たる労務提供の対価もあればフリンジ・ベネフィットもある、ということを無視して、給与等をまるごと課税仕入から除外してしまっているわけです。
上記の《基本コンセプト》からすれば、事業と消費の領域の切り分けのところは制度の根幹であって。相当に神経を使わなければならないはずなのですが。
消費税法、率直にいってあまりにもガサツ過ぎます。
◯
話を戻して。仮に、どうにか文言上の整合性は取れたとして。
そもそも、通勤手当が仕入税額控除できる実質的な根拠は何なのでしょうか。
下記質疑応答事例によると、あたかも通勤手当が(住居手当との対比で)「事業者の事業の遂行上直接必要」であるかのように読めます。
通勤手当、住居手当(質疑応答事例)
が、これは前述した民法や所得税法の建付けと矛盾しています。これはあくまでも、住居手当の仕入税額控除を否定するためだけの理由づけと理解すべきでしょうか。
また、よく誤解されがちですが、通勤手当にかかるインボイスは、「交通機関」からもらう必要があるのではなく、「従業員」からもらう必要があることになっています。が、従業員からはインボイスをもらうことはできないため、《インボイスいらない特例》によりインボイス不要とされているわけです(下記Q&Aはそのことを前提とした問い)。
問 108(通勤手当)
わざわざ「公共交通機関特例」とは別口で特例が用意されているのは、インボイスをもらうべき相手がズレている(ことと業務費用かどうかが違う)からです。
◯
で、なぜ(インボイス無しでも)仕入税額控除してよいか、ですが。
本来であれば、通勤費は従業員にとっての「消費」であって。従業員が通勤費にかかる消費税を最終負担するのが筋です。が、事業者が通勤手当として支給することで、消費の世界から事業の世界に再度引き戻した、ということができます。
とすると、一度従業員が負担した消費税を、お戻ししてあげる必要がでてきます。
この仕組み、「古物商特例」が消費者からの買取にインボイスなしで仕入税額控除できることと同じです。消費者から買取をしたことで消費の世界から事業の世界に戻ってきたので、消費税をお戻しすると。
《特定業種優遇税制》としてのインボイス特例(その1) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編33)
消費税法では、所得税法の「非課税限度額」を超える/超えないにかかわらず仕入税額控除の対象としているのも(消基通11-6-5)、所得税が課税されているかどうかにかかわらず、消費したとして課税した分は、当然にお戻ししなければならないからです。
(これを所得税法側から表現すると、消費税法で仕入税額控除を取れたとしても、非課税限度額を超えた部分は消費税込の金額で給与課税されたまま、ということになります。)
消費税法の仕組みが、《事業⇒消費》のところで税負担を発生させる(《消費⇒事業》のところで税還付する)となっていることから、通勤費についても消費税をお戻しする(仕入税額控除を認める)必要があることになります。
他方で、「給与を対価とする役務の提供」についてはこのような必要はなく。下記記事で述べた通り「ある種の」リバースチャージ方式(売上も仕入もなかったものとする)として、はじめから課税関係を生じさせないこととしていると。
なぜ給与は課税仕入れから除外されるのか? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編60)
このような実質の違いが、対象外仕入となる給与と課税仕入となる通勤手当との分水嶺となるはずなのですが。残念ながら、このことを《文理解釈》として導くことが難解なわけです。
◯
以上、所得税法と消費税法、それぞれの建付けを正確に理解するのは難解であり。かつ、真面目に考えたところでそれほど益があるとも思えません。
ということで、たとえ矛盾していようが、
・通勤手当は実費弁償だから課税されない
・通勤手当は給与じゃないから仕入税額控除できる
という程度の理解にとどめておいても、まあいいんじゃないですかね。
2026年06月22日
通勤手当は「給与」か。 〜所得税法と消費税法の交錯
posted by ウロ at 11:45| Comment(0)
| 消費税法
2026年05月05日
免除と免除 〜輸出取引と免税事業者と
同じシリーズと違うシリーズとで、記事を作ってもよいかもしれません。
【違うシリーズ】
使途不明金と使途秘匿金 〜だから違うっつんてんだろ!!
税理士が教えてくれない、免税と非課税が違う《理由》
何が違うの?休日と休暇。
輸出免税と免税事業者の「免除する」について、藤間大順先生のブログ記事きっかけで、下記のようなポストをしました。
【藤間大順先生のブログ記事】
消費税法における2つの「免税」について:輸出免税取引と免税事業者制度の違い - What Do We Pay for Civilized Society?
【私のポスト】
「輸出免税と免税事業者とで「免除」の意味が違うと説明されることが通常だが、売上課税ルールとしての「免除」は同じ意味で、法30条1項一つ目の括弧書きによって仕入控除ルールでの扱いがズレると整理した方が、文理に適うのではないか。」
https://x.com/YUU__KO/status/2051261166052430216
あとから思い出したのですが、この問題については、例の教科書を批判しまくる流れの中ですでに検討ずみでした。
免税事業者Requiem(第2曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編28)
今回は、この記事に対する補足となります(以下、条文にあわせて「免除する」と記述します)。
◯
7条と9条とで、まったく同じ「免除する」という文言が使われています。
法第七条(輸出免税等)
1 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
2 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。
法第九条(小規模事業者に係る納税義務の免除)
1 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 前項に規定する基準期間における課税売上高とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。
一 個人事業者及び基準期間が一年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。)の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額
他方で、非課税については6条で「課さない」という文言が使われています。
法第六条(非課税)
1 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
租税法律主義あるいは文言解釈の原則からすれば、同じ文言を使っている以上、同義に解するのが原則となるはずです。
他の法分野の概念ですら、原則としてそのまま使おうなんていうのが税法学上の標準的な見解であって。
【借用概念論】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その11)
同じ法律の中の、ひとつ挟んだ隣の文言なんて、当然に同じに解さなければ理不尽すぎるでしょう。
◯
では、実際に両条の「免除する」が、どのような《法的効果》をもたらすかというと(以下、すべて取引は「課税資産の譲渡等」に該当することを前提とします)。
7条(輸出取引)
ア 納税義務を負わない
イ 課税売上には含まれたまま
9条(免税事業者による取引)
ア 納税義務を負わない
イ 課税売上には含まれたまま
いずれも全く同じ法的効果が発生することになっています。効果の及ぶ範囲が「物的か人的か」という違いはあるものの、法的効果そのものは全く同じです。
6条の「課さない」と対比しておくと、
6条(非課税取引)
ア 消費税が課されない
イ 課税売上から除かれる
アについて、表現は変えていますが、そのかぎりでは免除のアと同じ法的効果をもたらします。
違いがでるのはイのところです。基準期間の課税売上や課税売上割合の分子に入るか、といった点で違いが現れます。
なお、非課税と免除の違いについて、「そもそも課されない」が非課税、「本当は課されるけど」が免除、などと言われることがあります。が、このような言いまわしの違い、どうとも表現できるのであって、それだけで区別するのはおよそ不可能です。
【休日と休暇の区別について】
何が違うの?休日と休暇。
以上、7条と9条の「免除する」は同じ意味です。
と言って終わらせてもよいのですが、なぜ、世間の皆様は「違う」と言いたがるのか、以下、そのあたりについて触れておきます。
◯
本ブログにおいて、「消費税法の理論構造」なるサブタイトルのもとで繰り返して論じていたことのひとつ。
例の教科書が『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などと宣わっているの、実際の日本の消費税法の規律をあまりにも無視しすぎの理想論だろうと。
実際の日本の消費税法では、売上課税ルールと仕入控除ルールとが別々に規定されているせいで、「損税」やら「益税」が生じてしまうのが現実です。
【両輪駆動テーゼ批判】
免税事業者Requiem(第3曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編29)
にもかかわらず、条文から入らない系の方々は、消費税法上の各制度を「売上課税&仕入控除」の融合した《パッケージ》として捉えがちです。
輸出取引、免税事業者についても、《パッケージ》として捉えると、
輸出取引:納税義務を負わないが、仕入税額控除はできる制度
免税事業者:納税義務を負わないかわりに、仕入税額控除もできない制度
となります。
それゆえ、全く違う制度であるという頭の中のイメージが先行してしまい、7条・9条で同じ「免除する」という同じ文言が使われていても、当然に違う意味だろうと、思考が流れていってしまうのでしょう。
もちろん、輸出免税と免税事業者とで導入理由が異なる以上、異なるイメージを持つこと自体は間違ったことではありません。
が、売上課税ルールと仕入控除ルールを分断している現行消費税法の条文に落とし込んだ場合、売上課税ルールのかぎりではどちらも同じ法的効果が発生するという点で共通しているのであって。同じ文言で括ることは、条文作成上、おかしなことではありません。
かつて、(新)会社法の条文が「因数分解的」だと評されていた覚えがあるのですが。
"条文作成のお作法"として『同じものは、できるかぎりひとつにまとめる』ということが要請されるのは当然です(これを突き詰めると"パンデクテン方式"となる)。
7条と9条についても、同条の《法的効果》としては全く同じものがもたらされる以上、同じ文言を使うことが要請されるのは当然です。分岐が生じるなら、分岐させる箇所で書き分ければいいだけの話。
実際に消費税法では、売上課税ルールである7条・9条では同じ文言を使い、仕入控除ルールである30条1項で分岐をさせています。
輸出取引と免税事業者とで「同じ文言を使うのは紛らわしい」などと批判するのは、《パッケージ》としての制度を記述する際の"通称"に向けていうことであって。7条か9条の文言を修正しろなどと批判するのはお門違いです。
《パッケージ》としての通称を、どなたかが開発すればよいだけのことです。
◯
法制度というものは、個々の条文の組み合わせによって形作られているのであって。
たとえば、「消費税は最終消費者に転嫁されることが予定されている」などといったスローガンから先入観をもってしまうのではなく。個々の条文が実際にどのように機能することで、そこでいう転嫁を実現しようとしているのか、正確に理解すべきなのだと思います。
【違うシリーズ】
使途不明金と使途秘匿金 〜だから違うっつんてんだろ!!
税理士が教えてくれない、免税と非課税が違う《理由》
何が違うの?休日と休暇。
輸出免税と免税事業者の「免除する」について、藤間大順先生のブログ記事きっかけで、下記のようなポストをしました。
【藤間大順先生のブログ記事】
消費税法における2つの「免税」について:輸出免税取引と免税事業者制度の違い - What Do We Pay for Civilized Society?
【私のポスト】
「輸出免税と免税事業者とで「免除」の意味が違うと説明されることが通常だが、売上課税ルールとしての「免除」は同じ意味で、法30条1項一つ目の括弧書きによって仕入控除ルールでの扱いがズレると整理した方が、文理に適うのではないか。」
https://x.com/YUU__KO/status/2051261166052430216
あとから思い出したのですが、この問題については、例の教科書を批判しまくる流れの中ですでに検討ずみでした。
免税事業者Requiem(第2曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編28)
今回は、この記事に対する補足となります(以下、条文にあわせて「免除する」と記述します)。
◯
7条と9条とで、まったく同じ「免除する」という文言が使われています。
法第七条(輸出免税等)
1 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
2 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。
法第九条(小規模事業者に係る納税義務の免除)
1 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 前項に規定する基準期間における課税売上高とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。
一 個人事業者及び基準期間が一年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。)の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額
他方で、非課税については6条で「課さない」という文言が使われています。
法第六条(非課税)
1 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
租税法律主義あるいは文言解釈の原則からすれば、同じ文言を使っている以上、同義に解するのが原則となるはずです。
他の法分野の概念ですら、原則としてそのまま使おうなんていうのが税法学上の標準的な見解であって。
【借用概念論】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その11)
同じ法律の中の、ひとつ挟んだ隣の文言なんて、当然に同じに解さなければ理不尽すぎるでしょう。
◯
では、実際に両条の「免除する」が、どのような《法的効果》をもたらすかというと(以下、すべて取引は「課税資産の譲渡等」に該当することを前提とします)。
7条(輸出取引)
ア 納税義務を負わない
イ 課税売上には含まれたまま
9条(免税事業者による取引)
ア 納税義務を負わない
イ 課税売上には含まれたまま
いずれも全く同じ法的効果が発生することになっています。効果の及ぶ範囲が「物的か人的か」という違いはあるものの、法的効果そのものは全く同じです。
6条の「課さない」と対比しておくと、
6条(非課税取引)
ア 消費税が課されない
イ 課税売上から除かれる
アについて、表現は変えていますが、そのかぎりでは免除のアと同じ法的効果をもたらします。
違いがでるのはイのところです。基準期間の課税売上や課税売上割合の分子に入るか、といった点で違いが現れます。
なお、非課税と免除の違いについて、「そもそも課されない」が非課税、「本当は課されるけど」が免除、などと言われることがあります。が、このような言いまわしの違い、どうとも表現できるのであって、それだけで区別するのはおよそ不可能です。
【休日と休暇の区別について】
何が違うの?休日と休暇。
以上、7条と9条の「免除する」は同じ意味です。
と言って終わらせてもよいのですが、なぜ、世間の皆様は「違う」と言いたがるのか、以下、そのあたりについて触れておきます。
◯
本ブログにおいて、「消費税法の理論構造」なるサブタイトルのもとで繰り返して論じていたことのひとつ。
例の教科書が『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などと宣わっているの、実際の日本の消費税法の規律をあまりにも無視しすぎの理想論だろうと。
実際の日本の消費税法では、売上課税ルールと仕入控除ルールとが別々に規定されているせいで、「損税」やら「益税」が生じてしまうのが現実です。
【両輪駆動テーゼ批判】
免税事業者Requiem(第3曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編29)
にもかかわらず、条文から入らない系の方々は、消費税法上の各制度を「売上課税&仕入控除」の融合した《パッケージ》として捉えがちです。
輸出取引、免税事業者についても、《パッケージ》として捉えると、
輸出取引:納税義務を負わないが、仕入税額控除はできる制度
免税事業者:納税義務を負わないかわりに、仕入税額控除もできない制度
となります。
それゆえ、全く違う制度であるという頭の中のイメージが先行してしまい、7条・9条で同じ「免除する」という同じ文言が使われていても、当然に違う意味だろうと、思考が流れていってしまうのでしょう。
もちろん、輸出免税と免税事業者とで導入理由が異なる以上、異なるイメージを持つこと自体は間違ったことではありません。
が、売上課税ルールと仕入控除ルールを分断している現行消費税法の条文に落とし込んだ場合、売上課税ルールのかぎりではどちらも同じ法的効果が発生するという点で共通しているのであって。同じ文言で括ることは、条文作成上、おかしなことではありません。
かつて、(新)会社法の条文が「因数分解的」だと評されていた覚えがあるのですが。
"条文作成のお作法"として『同じものは、できるかぎりひとつにまとめる』ということが要請されるのは当然です(これを突き詰めると"パンデクテン方式"となる)。
7条と9条についても、同条の《法的効果》としては全く同じものがもたらされる以上、同じ文言を使うことが要請されるのは当然です。分岐が生じるなら、分岐させる箇所で書き分ければいいだけの話。
実際に消費税法では、売上課税ルールである7条・9条では同じ文言を使い、仕入控除ルールである30条1項で分岐をさせています。
輸出取引と免税事業者とで「同じ文言を使うのは紛らわしい」などと批判するのは、《パッケージ》としての制度を記述する際の"通称"に向けていうことであって。7条か9条の文言を修正しろなどと批判するのはお門違いです。
《パッケージ》としての通称を、どなたかが開発すればよいだけのことです。
◯
法制度というものは、個々の条文の組み合わせによって形作られているのであって。
たとえば、「消費税は最終消費者に転嫁されることが予定されている」などといったスローガンから先入観をもってしまうのではなく。個々の条文が実際にどのように機能することで、そこでいう転嫁を実現しようとしているのか、正確に理解すべきなのだと思います。
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| 消費税法
2026年02月23日
やっぱり「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編73)
ブログ記事の執筆モチベーションが失われてしまったことは、先日の記事に記載したとおり。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その5)
なんですが、消費税法における「帳簿」の位置づけにつき、まとめ損ねたままだったので、どうにか整理しておきます。
「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編71)簡易課税なら「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編72)
◯
前2つの記事にて、消費税法における「帳簿」体系について整理をしました。
【消費税法における「帳簿」の位置づけ】
+ 売上 記帳 58
− 課税仕入 帳簿+適格請求書 30
− 特定課税仕入 帳簿 30 (+でもある)
− 特定課税仕入返還 帳簿 38-2 (+でもある)
− 輸入 帳簿+輸入許可証 30
− 売上返還 帳簿 38
− 貸倒れ 記帳+書類 39
+ 課税仕入返還 記帳 58
+ 輸入返還 記帳 58
(「記帳」は帳簿保存が要件となっていないこと、「帳簿」は帳簿保存が要件となっていることを指します)
税額プラス側には形式要件が課されていないのに、税額マイナス側にはやたらと厳格な形式要件が課されていることが、よく見て取れました。
『消費税法は、消費者の消費に課税している』
『消費税法は、事業者の付加価値に課税している』
『仕入税額控除の制度趣旨は、税負担累積の排除』
『消費税は、税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』
これらの戯言は、もっぱら消費税法の「実体要件」だけしか見ずに、「形式要件」をガン無視することでしか出てこないものです。現行の・日本の消費税法を正確に記述したものではありえない。
では、現行の・日本の消費税法をあるがままに捉えたとして、一体何に課税していると説明できるかといえば。一連の記事でも書いているとおり、もはや説明不可能だと、私は思っています。
「消費に課税」だとか「付加価値に課税」だとか、どれかひとつだけで一元的に説明しようとすると、それと矛盾する箇所をガン無視しなければならなくなります(あっちが立てばこっちが立たない)。
『消費税法は○○だ!』と言い切れてしまう方々を見るにつけ、《思考の省略》ができて羨ましいですねと思いつつ。「矛盾に満ちた存在を、あるがままにしか受け入れられない」という志向、これと私は、一生付き合っていかなければならないのでしょう。
○
ところで、例の平成16年の最高裁判決(第一、第二小法廷どちらでも)。
「消費税法施行令50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである」
判決は平成16年に出ていますが、事案としては、第一小法廷のほうは平成2年(下記1)、第二小法廷のほうは平成7年から平成9年(下記1から2)当時のものとなっています。
【帳簿・請求書要件の改正の変遷】
1 H1.4 帳簿 又は 請求書
2 H9.4 帳簿 及び 請求書
3 R1.10 帳簿 及び 区分記載請求書
4 R5.10 帳簿 及び 適格請求書
帳簿要件はそのままで、請求書要件がどんどん厳格化していった歴史。
これ要は、仕入税額控除を適正化するには「請求書」のほうが重要であって。帳簿なんて《添え物》にすぎないということではないのでしょうか。
とすると、帳簿要件は税額控除の要件からはいなくなってもらって。法58条(令74→規27)の記帳義務だけ課しておけば十分なのではないでしょうか。
第二小法廷のほうは、事案が1から2にまたがっていて。「帳簿」の役割が相対的に弱化したというのに、そういった問題意識は一切なく。
条文の意味が、
1 帳簿の保存 又は 請求書の保存 (どちらかでよい)
から
2 帳簿の保存 及び 請求書の保存 (どちらも必要)
に変わったというのに。帳簿と請求書とで「保存」の意味を分岐させる必要はないか、という点には一切触れられず。
改正前後でも何の区別もせずに第一小法廷とおなじ結論を導いてしまっているのは、(民事・刑事以外の分野でしばしば観測される)いかにも大味な最高裁判決。
もちろん、本件が徹底抗戦系の事案であり。「課税仕入れの請求書だけは提示したが帳簿は提示しなかった」みたいな事案でもないかぎり、わざわざ《保存二分論》なんてトリッキーな議論を展開する必要がない、というのはそのとおりです。
○
「消費税、インボイスを採用するの当たり前。今までが異常なだけ。」みたいなご見解を開陳される方が、専門家の中にもいらっしゃいますが。
現行の・日本の消費税法における仕入税額控除ルール、次のようなものとなっています。
【いろんな仕入税額控除ルール】
ア インボイスがなければ税額控除できない
イ インボイスがあっても「帳簿」がなければ税額控除できない
ウ インボイスがあっても「課税資産の譲渡」でなければ税額控除できない
エ インボイスがあっても「非課税売上対応分」は税額控除できない
オ インボイスがなくても「特定業種」なら税額控除できる
(以下略)
仕入税額控除ルールが、あたかもアだけしか存在していないようなフリをして、「インボイス当たり前!」とか言ってしまっているわけです。
インボイスが「控除証明書」だなどというのであれば、
・インボイスがあれば税額控除できる
単騎でいいはずで。
ところが実際には、上記のとおりあれやこれやのルールが付加されてしまっています。
もし売手(適格事業者)が、「非課税売上」なのに間違えてインボイスを発行してしまったとしても、買手の税額控除は認めた上であとは売手とお国とで後始末をする、というように、仕入税額控除の要件はインボイスのみにしてしまってもよいのではないでしょうか。
売上課税: 問答無用の譲渡課税(実質要件のみ)
仕入控除: インボイスさえあれば税額控除(形式要件のみ)
○
ということで、ようやく今回でタイトル回収。
税額控除の要件としての「帳簿」はいらないのでは、という《立法論》としての主張であり。また、「保存」の解釈を展開するにあたっても、「請求書」要件の強化に伴う相対的弱化を反映すべきではないのか、というお話しでした。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その5)
なんですが、消費税法における「帳簿」の位置づけにつき、まとめ損ねたままだったので、どうにか整理しておきます。
「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編71)簡易課税なら「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編72)
◯
前2つの記事にて、消費税法における「帳簿」体系について整理をしました。
【消費税法における「帳簿」の位置づけ】
+ 売上 記帳 58
− 課税仕入 帳簿+適格請求書 30
− 特定課税仕入 帳簿 30 (+でもある)
− 特定課税仕入返還 帳簿 38-2 (+でもある)
− 輸入 帳簿+輸入許可証 30
− 売上返還 帳簿 38
− 貸倒れ 記帳+書類 39
+ 課税仕入返還 記帳 58
+ 輸入返還 記帳 58
(「記帳」は帳簿保存が要件となっていないこと、「帳簿」は帳簿保存が要件となっていることを指します)
税額プラス側には形式要件が課されていないのに、税額マイナス側にはやたらと厳格な形式要件が課されていることが、よく見て取れました。
『消費税法は、消費者の消費に課税している』
『消費税法は、事業者の付加価値に課税している』
『仕入税額控除の制度趣旨は、税負担累積の排除』
『消費税は、税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』
これらの戯言は、もっぱら消費税法の「実体要件」だけしか見ずに、「形式要件」をガン無視することでしか出てこないものです。現行の・日本の消費税法を正確に記述したものではありえない。
では、現行の・日本の消費税法をあるがままに捉えたとして、一体何に課税していると説明できるかといえば。一連の記事でも書いているとおり、もはや説明不可能だと、私は思っています。
「消費に課税」だとか「付加価値に課税」だとか、どれかひとつだけで一元的に説明しようとすると、それと矛盾する箇所をガン無視しなければならなくなります(あっちが立てばこっちが立たない)。
『消費税法は○○だ!』と言い切れてしまう方々を見るにつけ、《思考の省略》ができて羨ましいですねと思いつつ。「矛盾に満ちた存在を、あるがままにしか受け入れられない」という志向、これと私は、一生付き合っていかなければならないのでしょう。
○
ところで、例の平成16年の最高裁判決(第一、第二小法廷どちらでも)。
「消費税法施行令50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである」
判決は平成16年に出ていますが、事案としては、第一小法廷のほうは平成2年(下記1)、第二小法廷のほうは平成7年から平成9年(下記1から2)当時のものとなっています。
【帳簿・請求書要件の改正の変遷】
1 H1.4 帳簿 又は 請求書
2 H9.4 帳簿 及び 請求書
3 R1.10 帳簿 及び 区分記載請求書
4 R5.10 帳簿 及び 適格請求書
帳簿要件はそのままで、請求書要件がどんどん厳格化していった歴史。
これ要は、仕入税額控除を適正化するには「請求書」のほうが重要であって。帳簿なんて《添え物》にすぎないということではないのでしょうか。
とすると、帳簿要件は税額控除の要件からはいなくなってもらって。法58条(令74→規27)の記帳義務だけ課しておけば十分なのではないでしょうか。
第二小法廷のほうは、事案が1から2にまたがっていて。「帳簿」の役割が相対的に弱化したというのに、そういった問題意識は一切なく。
条文の意味が、
1 帳簿の保存 又は 請求書の保存 (どちらかでよい)
から
2 帳簿の保存 及び 請求書の保存 (どちらも必要)
に変わったというのに。帳簿と請求書とで「保存」の意味を分岐させる必要はないか、という点には一切触れられず。
改正前後でも何の区別もせずに第一小法廷とおなじ結論を導いてしまっているのは、(民事・刑事以外の分野でしばしば観測される)いかにも大味な最高裁判決。
もちろん、本件が徹底抗戦系の事案であり。「課税仕入れの請求書だけは提示したが帳簿は提示しなかった」みたいな事案でもないかぎり、わざわざ《保存二分論》なんてトリッキーな議論を展開する必要がない、というのはそのとおりです。
○
「消費税、インボイスを採用するの当たり前。今までが異常なだけ。」みたいなご見解を開陳される方が、専門家の中にもいらっしゃいますが。
現行の・日本の消費税法における仕入税額控除ルール、次のようなものとなっています。
【いろんな仕入税額控除ルール】
ア インボイスがなければ税額控除できない
イ インボイスがあっても「帳簿」がなければ税額控除できない
ウ インボイスがあっても「課税資産の譲渡」でなければ税額控除できない
エ インボイスがあっても「非課税売上対応分」は税額控除できない
オ インボイスがなくても「特定業種」なら税額控除できる
(以下略)
仕入税額控除ルールが、あたかもアだけしか存在していないようなフリをして、「インボイス当たり前!」とか言ってしまっているわけです。
インボイスが「控除証明書」だなどというのであれば、
・インボイスがあれば税額控除できる
単騎でいいはずで。
ところが実際には、上記のとおりあれやこれやのルールが付加されてしまっています。
もし売手(適格事業者)が、「非課税売上」なのに間違えてインボイスを発行してしまったとしても、買手の税額控除は認めた上であとは売手とお国とで後始末をする、というように、仕入税額控除の要件はインボイスのみにしてしまってもよいのではないでしょうか。
売上課税: 問答無用の譲渡課税(実質要件のみ)
仕入控除: インボイスさえあれば税額控除(形式要件のみ)
○
ということで、ようやく今回でタイトル回収。
税額控除の要件としての「帳簿」はいらないのでは、という《立法論》としての主張であり。また、「保存」の解釈を展開するにあたっても、「請求書」要件の強化に伴う相対的弱化を反映すべきではないのか、というお話しでした。
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| 消費税法
2026年01月27日
税理士が教えてくれない、免税と非課税が違う《理由》
「免税と非課税は違う!」というところまでは、皆さん、語気強くおっしゃっていて。違いがわかっていない非専門家にマウントとっていたりして。
が、ではなぜ、非課税だとそれに対応する課税仕入が仕入税額控除を否定されるのか、その《実質的根拠》をきちんと説明してくれる人は皆無です。
「累積していないから」は、ただのレトリックであって。
《税負担の累積防止》なる税務ミームについて 〜最高裁令和5年3月6日判決(ADW事件)
「消費者の消費」に課税しているというならば、消費を非課税にした以上、およそ税負担が生じるのはおかしい、と思うのが自然なはずです。
「消費者の消費」を軸にして税負担を根拠づけるのならば、輸出免税が「国内で消費していない」ことを理由に税負担を発生させないのと同様、非課税も「消費を非課税にしている」ことを理由に税負担を発生させない、という制度にするのが当然の帰結に思えます。
が、現行法はそうなっていないのであり。
以下、例によって《機能面》から、このあたりの整理をしておきます。
◯
単純な事例を使って説明します。
【事例1】
A(事業者)
↓ 食品44+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品110
C(消費者)
・金額は税込です。
・面倒なので、食品もそれ以外も税率10%とします。
消費税
A 7(=4+3)
B 3(=10-7)
利益
A 70(=77-7)
B 30(110-77-3)
最終的に、消費者のところで生じた10(A7+B3)の消費税が、お国に納付されてくることになります。
では、食品が「非課税」となったらどうなるか。
【事例2】
A(事業者)
↓ 食品40+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品100
C(消費者)
消費税
A 3(=0+3)
B 0
利益
A 70(=73-3)
B 27(=100-73)
非課税になったということで、ABとも素直に税額分値下げをした場合を想定しています。
この場合、BがAに支払う消費税のうち3が控除できなくなるため(用途区分)、Bの利益が【事例1】と比べて△3となってしまいます。
では、Bが【事例1】の課税のときと同じ利益を維持するためにはどうすればよいか。
【事例3】
A(事業者)
↓ 食品40+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品103
C(消費者)
消費税
A 3(=0+3)
B 0
利益
A 70(=73-3)
B 30(=103-73)
控除できない消費税分3は、値下げをしないこととします。これにより、Bは【事例1】と同じ利益30が確保できることになります。
では、これが「免税」の場合はどうなるか。
【事例4】
A(事業者)
↓ 食品40+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品100
C(消費者)
消費税
A 3(=0+3)
B △3(=0-3)
利益
A 70(=73-3)
B 30(=100-73+3)
【事例1】から素直に免税額分を値下げしたとします。
Bは、【事例2・3】と違い、食品にかかる消費税3も控除できるため、値上げをしないでも利益30を確保できることになります。
他方で、お国の側からすると、消費税が1円も入ってこないことになります。
◯
さて、これら事例群から読み取れること。
「免税」の場合は、免税対象に関わる消費税をなかったことにする効果があります。
ここまでの強い効果を正当化できるの、輸出免税であれば、輸出により「国内消費」がされないことになるため、消費税を課税する根拠が失われるから、という説明が可能です。
そして、これだけの強い効果を付与するには、厳格な形式要件(輸出証明書類)が要求されることになると。
他方で「非課税」の場合、仕入税額控除が否定されることから、消費税は一部残ることになります。
では、【事例3】で生じている消費税3は、何に対する課税といえるでしょうか。
これについては、その他取引により生じている《付加価値》に対応する税だと表現することができます。
食品取引の付加価値 70(A40+B30) 非課税
その他取引の付加価値 30(A30) 課税のまま
つまり、「非課税」というのは、あくまでも非課税対象にかかる付加価値のみを非課税とする制度であり。それ以外の付加価値まで非課税とするものではないと。
翻って。
「輸出免税」の場合に、国内で生じているはずの、その他取引にかかる付加価値まで免税効果を及ぼしてしまう理由。単に「国内で最終消費をしていないから」というだけでなく。
「輸出先国での競争に負けないようにする」という、国家の政策からの強い要望によるもの、という(外在的な)説明を加える必要があるのではないでしょうか。国家政策として輸出を抑制したいのであれば、輸出免税しない(せいぜい非課税にとどめる)という選択肢も当然ありうるわけです。
制度設計としては、どこまでの減税効果を及ぼしたいかによって、免税/非課税を選択することになるかと思います。
◯
このように、非課税売上対応課税仕入が仕入税額控除を否定される理由については、《事業者/付加価値課税モデル》に従えば説明が可能です。
他方で、通俗的な説明の仕方である《消費者/消費課税モデル》からは、「消費者から消費税をお預かりしていないのに、お支払いした消費税を還付してもらえないのはおかしい」という帰結にならざるをえません。
モデル間での説明を仕方を比較すると、以下の通り。

それぞれ、一応の説明は可能ですが、《消費者/消費課税モデル》からは、非課税の場合に仕入税額控除が否定されることを説明するのが難しい。
要は、《事業者/付加価値課税モデル》であれば、
・Aの食品の付加価値
・Aのその他の付加価値
・Bの食品の付加価値
と分解できるのに対し、《消費者/消費課税モデル》では、最終的には
・Cの食品の消費
というひとつのものに収斂されてしまうため、それを非課税にした以上、他のものに税負担を発生させることの説明が厳しいということです。
そして、「食料品に消費税を課さないのであれば免税とすべき!」というご主張。
非課税とした場合に生ずる不都合諸々はおっしゃるとおりなんですが、輸出取引と同じだけの「その他取引にかかる付加価値分も含めてまるごと免税」を正当化できるような理由があるのかどうか。
非課税を超えて免税にまでするにはそれ相応の理由が必要なのであり。お気軽に免税扱いしてよいものではないわけです(が、法律に書きさえすれば実現可能なのが現実)。
・
上記で《消費者・消費課税モデル》では説明が難しいといいましたが。
これを主体を外した《消費課税モデル》に変形すれば、説明は可能となります。
というのも、《消費》自体は消費者だけでなく事業者もおこなっています。事業者が買ってきた鉛筆で字を書くのも消費です(卑近な例)。
それゆえ、上記事例における消費は、次のように分解できます。
・Cの食品の消費
・Bのその他の消費
ここで、Cの食品の消費を課税しないこととしたからといって。Bのその他の消費まで課税しないとする必然性はありません。
必然性もないのに課税しないこととしているのが「免税」制度であり。そうするだけの相応の理由が必要となるのは、上述したとおりです。
通俗的に、消費税は最終消費者が負担すべき「人税」風に説明されがちですが。消費に課税する「物税」として捉えたほうが、現行消費税法に適合的な理解ではないかと思います。
◯
なお、私個人としては、外食/内食間でド派手な《裁定》が働くような政策、およそ採用すべきではないと思っております。
「課税と脱税の経済史」(みすず書房2025)
本記事はあくまでも、「非課税と免税は違う!」ところまでは盛んに言われるのに、ではなぜそうなっているのかの《実質的根拠》を誰も説明してくれないことから、整理しておいたものにとどまります。
そして、通説的には「累積していないから」とだけ言っておけば済むところであり。わざわざ「付加価値」などを持ち出すのは、そういう表面的なタームでは納得できない人だけに向けた説明となります。
が、ではなぜ、非課税だとそれに対応する課税仕入が仕入税額控除を否定されるのか、その《実質的根拠》をきちんと説明してくれる人は皆無です。
「累積していないから」は、ただのレトリックであって。
《税負担の累積防止》なる税務ミームについて 〜最高裁令和5年3月6日判決(ADW事件)
「消費者の消費」に課税しているというならば、消費を非課税にした以上、およそ税負担が生じるのはおかしい、と思うのが自然なはずです。
「消費者の消費」を軸にして税負担を根拠づけるのならば、輸出免税が「国内で消費していない」ことを理由に税負担を発生させないのと同様、非課税も「消費を非課税にしている」ことを理由に税負担を発生させない、という制度にするのが当然の帰結に思えます。
が、現行法はそうなっていないのであり。
以下、例によって《機能面》から、このあたりの整理をしておきます。
◯
単純な事例を使って説明します。
【事例1】
A(事業者)
↓ 食品44+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品110
C(消費者)
・金額は税込です。
・面倒なので、食品もそれ以外も税率10%とします。
消費税
A 7(=4+3)
B 3(=10-7)
利益
A 70(=77-7)
B 30(110-77-3)
最終的に、消費者のところで生じた10(A7+B3)の消費税が、お国に納付されてくることになります。
では、食品が「非課税」となったらどうなるか。
【事例2】
A(事業者)
↓ 食品40+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品100
C(消費者)
消費税
A 3(=0+3)
B 0
利益
A 70(=73-3)
B 27(=100-73)
非課税になったということで、ABとも素直に税額分値下げをした場合を想定しています。
この場合、BがAに支払う消費税のうち3が控除できなくなるため(用途区分)、Bの利益が【事例1】と比べて△3となってしまいます。
では、Bが【事例1】の課税のときと同じ利益を維持するためにはどうすればよいか。
【事例3】
A(事業者)
↓ 食品40+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品103
C(消費者)
消費税
A 3(=0+3)
B 0
利益
A 70(=73-3)
B 30(=103-73)
控除できない消費税分3は、値下げをしないこととします。これにより、Bは【事例1】と同じ利益30が確保できることになります。
では、これが「免税」の場合はどうなるか。
【事例4】
A(事業者)
↓ 食品40+それ以外33
B(事業者)
↓ 食品100
C(消費者)
消費税
A 3(=0+3)
B △3(=0-3)
利益
A 70(=73-3)
B 30(=100-73+3)
【事例1】から素直に免税額分を値下げしたとします。
Bは、【事例2・3】と違い、食品にかかる消費税3も控除できるため、値上げをしないでも利益30を確保できることになります。
他方で、お国の側からすると、消費税が1円も入ってこないことになります。
◯
さて、これら事例群から読み取れること。
「免税」の場合は、免税対象に関わる消費税をなかったことにする効果があります。
ここまでの強い効果を正当化できるの、輸出免税であれば、輸出により「国内消費」がされないことになるため、消費税を課税する根拠が失われるから、という説明が可能です。
そして、これだけの強い効果を付与するには、厳格な形式要件(輸出証明書類)が要求されることになると。
他方で「非課税」の場合、仕入税額控除が否定されることから、消費税は一部残ることになります。
では、【事例3】で生じている消費税3は、何に対する課税といえるでしょうか。
これについては、その他取引により生じている《付加価値》に対応する税だと表現することができます。
食品取引の付加価値 70(A40+B30) 非課税
その他取引の付加価値 30(A30) 課税のまま
つまり、「非課税」というのは、あくまでも非課税対象にかかる付加価値のみを非課税とする制度であり。それ以外の付加価値まで非課税とするものではないと。
翻って。
「輸出免税」の場合に、国内で生じているはずの、その他取引にかかる付加価値まで免税効果を及ぼしてしまう理由。単に「国内で最終消費をしていないから」というだけでなく。
「輸出先国での競争に負けないようにする」という、国家の政策からの強い要望によるもの、という(外在的な)説明を加える必要があるのではないでしょうか。国家政策として輸出を抑制したいのであれば、輸出免税しない(せいぜい非課税にとどめる)という選択肢も当然ありうるわけです。
制度設計としては、どこまでの減税効果を及ぼしたいかによって、免税/非課税を選択することになるかと思います。
◯
このように、非課税売上対応課税仕入が仕入税額控除を否定される理由については、《事業者/付加価値課税モデル》に従えば説明が可能です。
他方で、通俗的な説明の仕方である《消費者/消費課税モデル》からは、「消費者から消費税をお預かりしていないのに、お支払いした消費税を還付してもらえないのはおかしい」という帰結にならざるをえません。
モデル間での説明を仕方を比較すると、以下の通り。
それぞれ、一応の説明は可能ですが、《消費者/消費課税モデル》からは、非課税の場合に仕入税額控除が否定されることを説明するのが難しい。
要は、《事業者/付加価値課税モデル》であれば、
・Aの食品の付加価値
・Aのその他の付加価値
・Bの食品の付加価値
と分解できるのに対し、《消費者/消費課税モデル》では、最終的には
・Cの食品の消費
というひとつのものに収斂されてしまうため、それを非課税にした以上、他のものに税負担を発生させることの説明が厳しいということです。
そして、「食料品に消費税を課さないのであれば免税とすべき!」というご主張。
非課税とした場合に生ずる不都合諸々はおっしゃるとおりなんですが、輸出取引と同じだけの「その他取引にかかる付加価値分も含めてまるごと免税」を正当化できるような理由があるのかどうか。
非課税を超えて免税にまでするにはそれ相応の理由が必要なのであり。お気軽に免税扱いしてよいものではないわけです(が、法律に書きさえすれば実現可能なのが現実)。
・
上記で《消費者・消費課税モデル》では説明が難しいといいましたが。
これを主体を外した《消費課税モデル》に変形すれば、説明は可能となります。
というのも、《消費》自体は消費者だけでなく事業者もおこなっています。事業者が買ってきた鉛筆で字を書くのも消費です(卑近な例)。
それゆえ、上記事例における消費は、次のように分解できます。
・Cの食品の消費
・Bのその他の消費
ここで、Cの食品の消費を課税しないこととしたからといって。Bのその他の消費まで課税しないとする必然性はありません。
必然性もないのに課税しないこととしているのが「免税」制度であり。そうするだけの相応の理由が必要となるのは、上述したとおりです。
通俗的に、消費税は最終消費者が負担すべき「人税」風に説明されがちですが。消費に課税する「物税」として捉えたほうが、現行消費税法に適合的な理解ではないかと思います。
◯
なお、私個人としては、外食/内食間でド派手な《裁定》が働くような政策、およそ採用すべきではないと思っております。
「課税と脱税の経済史」(みすず書房2025)
本記事はあくまでも、「非課税と免税は違う!」ところまでは盛んに言われるのに、ではなぜそうなっているのかの《実質的根拠》を誰も説明してくれないことから、整理しておいたものにとどまります。
そして、通説的には「累積していないから」とだけ言っておけば済むところであり。わざわざ「付加価値」などを持ち出すのは、そういう表面的なタームでは納得できない人だけに向けた説明となります。
posted by ウロ at 15:20| Comment(0)
| 消費税法
2025年12月08日
簡易課税なら「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編72)
前回あれこれ条文を引用してみて。どうにも、とっ散らかっている印象があったのですが。
「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編71)
それではということで、試みに簡易課税の場合には帳簿はどこまで用意したらよいのかを考えてみたら、若干見えてくるものがあったので、整理をしてみます(前回引用した条文は直接引用せず、条数のみ摘示します)。
○
まず、法58条では、
・資産の譲渡等
・課税仕入れ
・課税貨物の保税地域からの引取り
について、記帳義務が課されていました。
が、この義務については、直接的なペナルティは課されていません。
他方で、法30条、法38条、法38条の2では、税額控除の要件として「帳簿」保存が要求されていました。
これら帳簿につき、その「記載事項」がどこに規定されているかという観点から整理すると、以下のとおりとなっています(以下「課税仕入」は特定課税仕入を除いたものをいいます)。
1 法58→令74→規27 売上、売上返還、課税仕入返還、輸入返還、貸倒れ
2 法30 課税仕入、特定課税仕入、輸入
3 法38→令58の2 売上返還
4 法38の2→令58の3 特定課税仕入返還
このように、帳簿の記載事項については、1は省令、2は法律、3・4は政令と、バラバラな箇所に規定されていました。
なお、「売上返還」だけ1と3のニ箇所に規定されているのが、謎です。税額控除を受けない場合でも記帳義務だけはあるものが存在することになります。
あまりしっかり読み込んでいませんが、なにか適用範囲が違うのでしょうか。
○
では、これら規定が「簡易課税」だとどのように適用されるでしょうか。
まず、1については当然に適用されることになります。ただし、規27条4項には「省略できる」規定があります。
規 第二十七条(帳簿の記載事項等)
4 法第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者は、同項の規定の適用を受ける課税期間においては、第一項第三号及び第四号に掲げる事項については、同項第三号及び第四号の規定にかかわらず、これらの事項の記録を省略することができる。
これにより、「課税仕入返還」と「輸入返還」については記載を省略できます。
2については、法37条の規定が「第三十条から前条までの規定・・にかかわらず」と、法30条を上書きしていることから、記載しなくてよいことになります。
法 第三十七条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
1 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者及びその課税期間の初日において所得税法第二条第一項第八号の四(定義)又は法人税法第二条第十二号の十九(定義)に規定する恒久的施設を有しない国外事業者を除く。)が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高(第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高をいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)が五千万円以下である課税期間(第十二条第一項に規定する分割等に係る同項の新設分割親法人又は新設分割子法人の政令で定める課税期間(以下この項及び次条第一項において「分割等に係る課税期間」という。)を除く。)についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
3については、法37条によっても上書きされておらず、簡易課税でも適用される規定ですので、税額控除を受けたい場合は、帳簿に記載する必要があります。
4については、特定課税仕入は簡易課税に適用されないため、その返還も適用されません。
結果、簡易課税の場合は、
・売上
・売上返還
・貸倒れ
に係るもののみ、帳簿が要求されているということになります。
ただし、売上返還と貸倒れは「控除要件」としての帳簿ですので、売上に係る帳簿とは重みが異なります。
そのへんの《税務お役立ち記事》とは結論において同じでしょうが、条文上はこういう構成になっているということです。
○
このような、簡易課税における「帳簿」規定の適用のされ方から、おぼろげながら見えてくるもの。
+ 売上 記帳 58
− 課税仕入 帳簿+適格請求書 30
− 特定課税仕入 帳簿 30 (+でもある)
− 特定課税仕入返還 帳簿 38-2 (+でもある)
− 輸入 帳簿+輸入許可証 30
− 売上返還 帳簿 38
− 貸倒れ 記帳+書類 39
+ 課税仕入返還 記帳 58
+ 輸入返還 記帳 58
(ここで「記帳」というのは、帳簿保存が要件となっていないことを指します。他方で「帳簿」は、帳簿保存が要件となっていることを指します。)
要するに、税額プラス側には形式要件は課さない、税額マイナス側には形式要件を課す、と明確に区別されているのがよく分かります。
簡易課税の場合には、同じマイナスでも売上系のマイナスは適用されるが、仕入系のマイナスは適用されないということです。
なお、「特定課税仕入&返還」については、同時にプラスでもありマイナスでもあることから、どちらも帳簿要件が必要となっています(インボイスがいらないのはリバースチャージゆえ)。
○
消費税法、「課税」と「控除」とであらゆる面で扱いが異なっているのであり。
『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などという《両輪駆動テーゼ》が、いかに現実の消費税法とは異なる、完全なる気のせいであるかがお分かりになるかと思います。
佐藤英明,西山由美「スタンダード消費税法」(弘文堂2022)
「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編71)
それではということで、試みに簡易課税の場合には帳簿はどこまで用意したらよいのかを考えてみたら、若干見えてくるものがあったので、整理をしてみます(前回引用した条文は直接引用せず、条数のみ摘示します)。
○
まず、法58条では、
・資産の譲渡等
・課税仕入れ
・課税貨物の保税地域からの引取り
について、記帳義務が課されていました。
が、この義務については、直接的なペナルティは課されていません。
他方で、法30条、法38条、法38条の2では、税額控除の要件として「帳簿」保存が要求されていました。
これら帳簿につき、その「記載事項」がどこに規定されているかという観点から整理すると、以下のとおりとなっています(以下「課税仕入」は特定課税仕入を除いたものをいいます)。
1 法58→令74→規27 売上、売上返還、課税仕入返還、輸入返還、貸倒れ
2 法30 課税仕入、特定課税仕入、輸入
3 法38→令58の2 売上返還
4 法38の2→令58の3 特定課税仕入返還
このように、帳簿の記載事項については、1は省令、2は法律、3・4は政令と、バラバラな箇所に規定されていました。
なお、「売上返還」だけ1と3のニ箇所に規定されているのが、謎です。税額控除を受けない場合でも記帳義務だけはあるものが存在することになります。
あまりしっかり読み込んでいませんが、なにか適用範囲が違うのでしょうか。
○
では、これら規定が「簡易課税」だとどのように適用されるでしょうか。
まず、1については当然に適用されることになります。ただし、規27条4項には「省略できる」規定があります。
規 第二十七条(帳簿の記載事項等)
4 法第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者は、同項の規定の適用を受ける課税期間においては、第一項第三号及び第四号に掲げる事項については、同項第三号及び第四号の規定にかかわらず、これらの事項の記録を省略することができる。
これにより、「課税仕入返還」と「輸入返還」については記載を省略できます。
2については、法37条の規定が「第三十条から前条までの規定・・にかかわらず」と、法30条を上書きしていることから、記載しなくてよいことになります。
法 第三十七条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
1 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者及びその課税期間の初日において所得税法第二条第一項第八号の四(定義)又は法人税法第二条第十二号の十九(定義)に規定する恒久的施設を有しない国外事業者を除く。)が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高(第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高をいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)が五千万円以下である課税期間(第十二条第一項に規定する分割等に係る同項の新設分割親法人又は新設分割子法人の政令で定める課税期間(以下この項及び次条第一項において「分割等に係る課税期間」という。)を除く。)についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
3については、法37条によっても上書きされておらず、簡易課税でも適用される規定ですので、税額控除を受けたい場合は、帳簿に記載する必要があります。
4については、特定課税仕入は簡易課税に適用されないため、その返還も適用されません。
結果、簡易課税の場合は、
・売上
・売上返還
・貸倒れ
に係るもののみ、帳簿が要求されているということになります。
ただし、売上返還と貸倒れは「控除要件」としての帳簿ですので、売上に係る帳簿とは重みが異なります。
そのへんの《税務お役立ち記事》とは結論において同じでしょうが、条文上はこういう構成になっているということです。
○
このような、簡易課税における「帳簿」規定の適用のされ方から、おぼろげながら見えてくるもの。
+ 売上 記帳 58
− 課税仕入 帳簿+適格請求書 30
− 特定課税仕入 帳簿 30 (+でもある)
− 特定課税仕入返還 帳簿 38-2 (+でもある)
− 輸入 帳簿+輸入許可証 30
− 売上返還 帳簿 38
− 貸倒れ 記帳+書類 39
+ 課税仕入返還 記帳 58
+ 輸入返還 記帳 58
(ここで「記帳」というのは、帳簿保存が要件となっていないことを指します。他方で「帳簿」は、帳簿保存が要件となっていることを指します。)
要するに、税額プラス側には形式要件は課さない、税額マイナス側には形式要件を課す、と明確に区別されているのがよく分かります。
簡易課税の場合には、同じマイナスでも売上系のマイナスは適用されるが、仕入系のマイナスは適用されないということです。
なお、「特定課税仕入&返還」については、同時にプラスでもありマイナスでもあることから、どちらも帳簿要件が必要となっています(インボイスがいらないのはリバースチャージゆえ)。
○
消費税法、「課税」と「控除」とであらゆる面で扱いが異なっているのであり。
『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などという《両輪駆動テーゼ》が、いかに現実の消費税法とは異なる、完全なる気のせいであるかがお分かりになるかと思います。
佐藤英明,西山由美「スタンダード消費税法」(弘文堂2022)
posted by ウロ at 16:32| Comment(0)
| 消費税法
2025年11月17日
「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編71)
本記事、あくまでも「消費税法」に限ったお話しとなります。
法人税法・所得税法については、また別のお話し。
○
下記のような、なんとも不正確な記述が、しばしば見られるのですが。

消費税法にいう「帳簿」としてどういうものがあるのか、正確に理解されていないように思うので、あらためて整理しておきます。
○
消費税法で「帳簿」というと、仕入税額控除の要件として要求されているそれに飛びつきがちなのですが、そうではなく。
まずは以下の条文からスタートとなります(以下、例によって省略入れています)。
法 第五十八条(帳簿の備付け等)
事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその行つた資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない。
帳簿の記録・保存が必要なのは、仕入税額控除の場面に限りません。
・資産の譲渡等
・課税仕入れ
・課税貨物の保税地域からの引取り
売上については、課税資産の譲渡等とされていないことから、「非課税売上」も帳簿に記載しなければならないことになっています。他方で、仕入れについては、「課税仕入れ」に関してのみ記載すればよいとされています(輸入絡みは触れません)。
で、政令。
令 第七十一条(帳簿の備付け等)
1 事業者(法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、帳簿を備え付けてこれにその行つた資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する財務省令で定める事項を整然と、かつ、明瞭に記録しなければならない。
記録の仕方として、「整然・明瞭」が要求されています。
そして、記載事項については省令に規定されています。長くなるのですが、ひととおり引用します。
規 第二十七条(帳簿の記載事項等)
1 令第七十一条第一項に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 国内において行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 資産の譲渡等の相手方の氏名又は名称
ロ 資産の譲渡等を行つた年月日
ハ 資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)(法第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者にあつては、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等(法第七条第一項、法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)である場合は、令第五十七条第五項第一号から第六号までに掲げる事業の種類を含む。)
ニ 税率の異なるごとに区分した資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等に該当する場合には、当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する額を含むものとする。)
二 国内において行つた資産の譲渡等に係る対価の返還等(資産の譲渡等につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該資産の譲渡等の対価の額の全部若しくは一部の返還又は当該資産の譲渡等の対価の額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額をすることをいい、法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等を除く。以下この号において同じ。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 資産の譲渡等に係る対価の返還等を受けた者の氏名又は名称
ロ 資産の譲渡等に係る対価の返還等をした年月日
ハ 資産の譲渡等に係る対価の返還等の内容
ニ 資産の譲渡等に係る対価の返還等をした金額
三 仕入れに係る対価の返還等(法第三十二条第一項に規定する仕入れに係る対価の返還等をいい、法第三十八条の二第一項に規定する特定課税仕入れに係る対価の返還等を除く。以下この号において同じ。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 仕入れに係る対価の返還等をした者の氏名又は名称
ロ 仕入れに係る対価の返還等を受けた年月日
ハ 仕入れに係る対価の返還等の内容(当該仕入れに係る対価の返還等が他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、仕入れに係る対価の返還等の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
ニ 仕入れに係る対価の返還等を受けた金額
四 保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。)の全部又は一部につき、法律の規定により還付を受ける場合における当該課税貨物に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 保税地域の所在地を所轄する税関の名称
ロ 当該還付を受けた年月日
ハ 課税貨物の内容
ニ 当該還付を受けた消費税額
五 法第三十九条第一項に規定する事実(以下この号において「貸倒れ」という。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 貸倒れの相手方の氏名又は名称
ロ 貸倒れがあつた年月日
ハ 貸倒れに係る課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該貸倒れに係る課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
ニ 税率の異なるごとに区分した貸倒れにより領収をすることができなくなつた金額
1号から5号までに列挙されているもの。
1 売上
2 売上返還
3 課税仕入返還
4 輸入返還
5 貸倒れ
帳簿の記載事項、なんだかフルカバーされていないわけです。
○
カバーされていないものがどこにあるかというと。
ここから、皆さんご存知の「仕入税額控除」の要件として要求される「帳簿」が出てきます。
法 第三十条(仕入れに係る消費税額の控除)
7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
ニ 課税仕入れに係る支払対価の額(当該課税仕入れの対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。第三十二条第一項において同じ。)
二 課税仕入れ等の税額が特定課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 特定課税仕入れを行つた年月日
ハ 特定課税仕入れの内容
ニ 第一項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額
ホ 特定課税仕入れに係るものである旨
三 課税仕入れ等の税額が第一項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物に係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税貨物を保税地域から引き取つた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取つた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ロ 課税貨物の内容
ハ 課税貨物の引取りに係る消費税額及び地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。次項第五号において同じ。)又はその合計額
仕入税額控除の対象となる
・課税仕入れ
・特定課税仕入れ
・保税地域からの引取りに係る課税貨物
に係る帳簿の記載事項については、きっちり法律レベルで規定されているということです(以下、「課税仕入れ」は特定課税仕入れを除いたものをいいます)。
また、条文引用は省略しますが、法38条では売上返還、法38条の2では特定課税仕入れの返還につき、帳簿要件が規定されています。
そして、帳簿の記載事項については、
・売上返還 :法38条→令38条の2
・特定課税仕入れの返還 :法38条の2→令38条の3
にそれぞれ、規定されています。
上述した売上等も含めて、「帳簿の記載事項」という同じものなのに、法律・政令・省令と置き場所がバラバラなのは、法的な効果に鑑みて、と説明することができるでしょうか。
○
ということで、《仕入》税額控除の要件として要求されている「帳簿」は、あくまでも、課税仕入れ・特定課税仕入れ・輸入に係るものだけだということになります。最初にあげた画像の記述のごとく、何の気なしに「売上帳」やらなんやらを並べ立てているのは、極めて不正確だということです。
「帳簿」というと、なんとなくで総勘定元帳などをイメージしがちですが。消費税法上は、まず税区分により対象が絞られていて。そしてそれぞれの税区分ごとに記載事項が定められているわけです。
これら帳簿の違いは、法58条に違反しても直接的なペナルティがないのに対し、30条に違反すれば税額控除が否定されるというところにあります(法38条、法38条の2も同様)。
・58条の帳簿 :課税要件ではない
・30条,38条,38条の2 :控除要件である
このような違いは、消費税法が
・課税は問答無用の譲渡課税
・控除は実態+形式が揃わないと控除しない
という、《二枚舌構成》になっていることを反映しているのでしょう。
税額プラス側には、調査しやすいように記帳義務を課しておくが、特にペナルティは設けない。税額マイナス側には、記帳が不十分であることそれ自体で控除を否定すると。
で、税額控除を否定するという、強い効果をもたらす帳簿要件については、さすがに省令レベルで規定するわけにはいかない、ということで、法律・政令で規定しているのではないかと思われます。
○
ところで、例の平成16年の最高裁判決(第一、第二小法廷どちらでも)。
「消費税法施行令50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである」
これはあくまでも、税額控除否定という強い効果をもたらす法30条7項の解釈であって。法58条の解釈を示したものではないということになります。
なお、本判決は「検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要する」といっているのだから、「提示しなければ保存とはいえない」のではなく、あくまでも「提示できるように準備しておけば足りる」と理解するのが素直な読み方になります。
とすれば、実際に提示をしなかったとしても、提示できるような準備状態を整えていたのであれば、保存に該当することになるはずです。
ところが、本判決のあてはめのところでは、「提示を求めたけど拒み続けた」という事実から、「適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず」と結論づけてしまっています。要するに、最高裁自身が自分で定立した規範を正確にあてはめできていない。
表向きは「保存」の解釈論としてぎりぎりの拡張をしつつ、(それでは最高裁が望ましいと考える結論を導けないからか)あてはめ段階でさらなる拡張(サイレント拡張解釈)をかましているということです。
文言:保存
解釈:提示できるように準備すること
あてはめ:拒絶したから保存してない
こんなこと、最高裁(神)だからこそできる御業であって。決して真似してはいけない。
どうにか擁護するならば、「拒絶した」という事実から経験則をつかって「それは準備してなかったからだ」と認定をした、しかし「法律審」という建前上、新しい事実を認定するのは憚られる、ということができるでしょうか。
が、これはこれで《サイレント事実認定》であり、決して褒められたものではない。
「最高裁は文言解釈を重視している」みたいなことを言われることもありますが。文言を逆手に取った態度に対しては、反則的な「法解釈&事実認定&あてはめ」を繰り出してでも、徹底的に叩き潰すという一例。
簡易課税なら「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編72)
法人税法・所得税法については、また別のお話し。
○
下記のような、なんとも不正確な記述が、しばしば見られるのですが。

消費税法にいう「帳簿」としてどういうものがあるのか、正確に理解されていないように思うので、あらためて整理しておきます。
○
消費税法で「帳簿」というと、仕入税額控除の要件として要求されているそれに飛びつきがちなのですが、そうではなく。
まずは以下の条文からスタートとなります(以下、例によって省略入れています)。
法 第五十八条(帳簿の備付け等)
事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその行つた資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない。
帳簿の記録・保存が必要なのは、仕入税額控除の場面に限りません。
・資産の譲渡等
・課税仕入れ
・課税貨物の保税地域からの引取り
売上については、課税資産の譲渡等とされていないことから、「非課税売上」も帳簿に記載しなければならないことになっています。他方で、仕入れについては、「課税仕入れ」に関してのみ記載すればよいとされています(輸入絡みは触れません)。
で、政令。
令 第七十一条(帳簿の備付け等)
1 事業者(法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、帳簿を備え付けてこれにその行つた資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する財務省令で定める事項を整然と、かつ、明瞭に記録しなければならない。
記録の仕方として、「整然・明瞭」が要求されています。
そして、記載事項については省令に規定されています。長くなるのですが、ひととおり引用します。
規 第二十七条(帳簿の記載事項等)
1 令第七十一条第一項に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 国内において行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 資産の譲渡等の相手方の氏名又は名称
ロ 資産の譲渡等を行つた年月日
ハ 資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)(法第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者にあつては、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等(法第七条第一項、法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)である場合は、令第五十七条第五項第一号から第六号までに掲げる事業の種類を含む。)
ニ 税率の異なるごとに区分した資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等に該当する場合には、当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する額を含むものとする。)
二 国内において行つた資産の譲渡等に係る対価の返還等(資産の譲渡等につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該資産の譲渡等の対価の額の全部若しくは一部の返還又は当該資産の譲渡等の対価の額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額をすることをいい、法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等を除く。以下この号において同じ。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 資産の譲渡等に係る対価の返還等を受けた者の氏名又は名称
ロ 資産の譲渡等に係る対価の返還等をした年月日
ハ 資産の譲渡等に係る対価の返還等の内容
ニ 資産の譲渡等に係る対価の返還等をした金額
三 仕入れに係る対価の返還等(法第三十二条第一項に規定する仕入れに係る対価の返還等をいい、法第三十八条の二第一項に規定する特定課税仕入れに係る対価の返還等を除く。以下この号において同じ。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 仕入れに係る対価の返還等をした者の氏名又は名称
ロ 仕入れに係る対価の返還等を受けた年月日
ハ 仕入れに係る対価の返還等の内容(当該仕入れに係る対価の返還等が他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、仕入れに係る対価の返還等の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
ニ 仕入れに係る対価の返還等を受けた金額
四 保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。)の全部又は一部につき、法律の規定により還付を受ける場合における当該課税貨物に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 保税地域の所在地を所轄する税関の名称
ロ 当該還付を受けた年月日
ハ 課税貨物の内容
ニ 当該還付を受けた消費税額
五 法第三十九条第一項に規定する事実(以下この号において「貸倒れ」という。)に係る事項のうち次に掲げるもの
イ 貸倒れの相手方の氏名又は名称
ロ 貸倒れがあつた年月日
ハ 貸倒れに係る課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該貸倒れに係る課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
ニ 税率の異なるごとに区分した貸倒れにより領収をすることができなくなつた金額
1号から5号までに列挙されているもの。
1 売上
2 売上返還
3 課税仕入返還
4 輸入返還
5 貸倒れ
帳簿の記載事項、なんだかフルカバーされていないわけです。
○
カバーされていないものがどこにあるかというと。
ここから、皆さんご存知の「仕入税額控除」の要件として要求される「帳簿」が出てきます。
法 第三十条(仕入れに係る消費税額の控除)
7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
ニ 課税仕入れに係る支払対価の額(当該課税仕入れの対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。第三十二条第一項において同じ。)
二 課税仕入れ等の税額が特定課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 特定課税仕入れを行つた年月日
ハ 特定課税仕入れの内容
ニ 第一項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額
ホ 特定課税仕入れに係るものである旨
三 課税仕入れ等の税額が第一項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物に係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税貨物を保税地域から引き取つた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取つた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ロ 課税貨物の内容
ハ 課税貨物の引取りに係る消費税額及び地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。次項第五号において同じ。)又はその合計額
仕入税額控除の対象となる
・課税仕入れ
・特定課税仕入れ
・保税地域からの引取りに係る課税貨物
に係る帳簿の記載事項については、きっちり法律レベルで規定されているということです(以下、「課税仕入れ」は特定課税仕入れを除いたものをいいます)。
また、条文引用は省略しますが、法38条では売上返還、法38条の2では特定課税仕入れの返還につき、帳簿要件が規定されています。
そして、帳簿の記載事項については、
・売上返還 :法38条→令38条の2
・特定課税仕入れの返還 :法38条の2→令38条の3
にそれぞれ、規定されています。
上述した売上等も含めて、「帳簿の記載事項」という同じものなのに、法律・政令・省令と置き場所がバラバラなのは、法的な効果に鑑みて、と説明することができるでしょうか。
○
ということで、《仕入》税額控除の要件として要求されている「帳簿」は、あくまでも、課税仕入れ・特定課税仕入れ・輸入に係るものだけだということになります。最初にあげた画像の記述のごとく、何の気なしに「売上帳」やらなんやらを並べ立てているのは、極めて不正確だということです。
「帳簿」というと、なんとなくで総勘定元帳などをイメージしがちですが。消費税法上は、まず税区分により対象が絞られていて。そしてそれぞれの税区分ごとに記載事項が定められているわけです。
これら帳簿の違いは、法58条に違反しても直接的なペナルティがないのに対し、30条に違反すれば税額控除が否定されるというところにあります(法38条、法38条の2も同様)。
・58条の帳簿 :課税要件ではない
・30条,38条,38条の2 :控除要件である
このような違いは、消費税法が
・課税は問答無用の譲渡課税
・控除は実態+形式が揃わないと控除しない
という、《二枚舌構成》になっていることを反映しているのでしょう。
税額プラス側には、調査しやすいように記帳義務を課しておくが、特にペナルティは設けない。税額マイナス側には、記帳が不十分であることそれ自体で控除を否定すると。
で、税額控除を否定するという、強い効果をもたらす帳簿要件については、さすがに省令レベルで規定するわけにはいかない、ということで、法律・政令で規定しているのではないかと思われます。
○
ところで、例の平成16年の最高裁判決(第一、第二小法廷どちらでも)。
「消費税法施行令50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである」
これはあくまでも、税額控除否定という強い効果をもたらす法30条7項の解釈であって。法58条の解釈を示したものではないということになります。
なお、本判決は「検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要する」といっているのだから、「提示しなければ保存とはいえない」のではなく、あくまでも「提示できるように準備しておけば足りる」と理解するのが素直な読み方になります。
とすれば、実際に提示をしなかったとしても、提示できるような準備状態を整えていたのであれば、保存に該当することになるはずです。
ところが、本判決のあてはめのところでは、「提示を求めたけど拒み続けた」という事実から、「適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず」と結論づけてしまっています。要するに、最高裁自身が自分で定立した規範を正確にあてはめできていない。
表向きは「保存」の解釈論としてぎりぎりの拡張をしつつ、(それでは最高裁が望ましいと考える結論を導けないからか)あてはめ段階でさらなる拡張(サイレント拡張解釈)をかましているということです。
文言:保存
解釈:提示できるように準備すること
あてはめ:拒絶したから保存してない
こんなこと、最高裁(神)だからこそできる御業であって。決して真似してはいけない。
どうにか擁護するならば、「拒絶した」という事実から経験則をつかって「それは準備してなかったからだ」と認定をした、しかし「法律審」という建前上、新しい事実を認定するのは憚られる、ということができるでしょうか。
が、これはこれで《サイレント事実認定》であり、決して褒められたものではない。
「最高裁は文言解釈を重視している」みたいなことを言われることもありますが。文言を逆手に取った態度に対しては、反則的な「法解釈&事実認定&あてはめ」を繰り出してでも、徹底的に叩き潰すという一例。
簡易課税なら「帳簿」なんていらない!? 〜消費税法の理論構造(種蒔き編72)
posted by ウロ at 10:32| Comment(0)
| 消費税法
2025年11月03日
消費税法における分断と結合 〜消費税法の理論構造(種蒔き編70)
引き続きの消化試合。
ゼロ税率の世界へようこそ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編69)
前回、課税/輸出免税/免税事業者/非課税の事例をあげて、納税額を比較しました。
【事例1】(国内販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者・国内)
Bから110000で買った。
A 8000(8000-0)
B 2000(10000-8000)
計 10000
【事例2】(輸出販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに100000で売った(輸出)。
C(消費者・海外)
Bから100000で買った。
A 8000(8000-0)
B △8000(0-8000)
計 0
【事例3】(免税事業者)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(免税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者)
Bから110000で買った。
A 8000(8000-0)
B 0(免税)
計 8000
【事例4】(非課税)
A(課税事業者・管理受託業者):
住居の管理業務を受託し、Bから委託費88000をもらった。
B(課税事業者・建物所有者):
Cから家賃100000をもらった。Aに委託費88000支払った。
C(消費者・居住者):
Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
A 8000(8000-0)
B 0(0-0) 非のみ
計 8000
納税額だけでみると、免税事業者と非課税とが同じ8000となっています。
そうすると、免税事業者と非課税とが消費税法上同じものかというと、決してそうではなく。
Bの支払った8000が納税額から控除できない根拠は、
免税事業者 30条1項で免税事業者が控除できる事業者から除外されている。
非課税 30条2項で非のみ仕入は控除できないこととされている。
と、それぞれ異なる理由によるものです。
適用条文が違うものの、ここの結論は同じです。
より大きな違いは、
免税事業者 110000は課税売上なので、基準期間の課税売上高の判定に使われる
非課税 100000は非課税売上なので、基準期間の課税売上高の判定に含まれない
という点です。
以前の記事で、例のアレが「小規模事業者(免税事業者)の本質は非課税事業者」などと言っていることを紹介しました。
免税事業者Requiem(第1曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編27)
免税事業者Requiem(第2曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編28)
免税事業者Requiem(第3曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編29)
確かに、Bに納税額が発生しないこととAが8000を納税するという帰結のかぎりでは、免税事業者と非課税とで扱いが同じになっています。
が、課税売上高判定に含まれるかどうかに違いがあるのであって、免税事業者を非課税と一緒の扱いにするのは、明らかに間違いです。
もしも免税事業者の本質が非課税事業者なのだとしたら、免税事業者がいくら売上をあげても、基準期間の課税売上高は0円のままで、いつまでたっても課税事業者にならないですむ、なんて間抜けな制度だということになってしまいます。
本連作で再三述べているとおり、消費税法を理解するには、部分部分ではなく関連する制度を一緒に学習する必要があります。一部分だけを眺めて「免税事業者は非課税事業者だ!」なんていうのは、初学者が陥りやすい誤解あるある、みたいなものです。
例のアレには、『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などというフレーズがあちこちにでてきます。だというのに、実際には、売上課税ルールと仕入控除ルールを「分断」したままの理解で記述してしまっているという残念仕草。
ということで以上、課税/輸出免税/免税事業者/非課税の取扱いの違いについて、変な思い込みを排して、虚心坦懐に条文を読み込んで正確な理解をすべき、という自戒を含めた戒めとして。
売上課税 仕入控除
課税 課税10000 税額控除8000
輸出免税 免税0 税額控除8000
免税事業者 免税0 適用除外0
非課税 非課税0 用途区分0
ゼロ税率の世界へようこそ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編69)
前回、課税/輸出免税/免税事業者/非課税の事例をあげて、納税額を比較しました。
【事例1】(国内販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者・国内)
Bから110000で買った。
A 8000(8000-0)
B 2000(10000-8000)
計 10000
【事例2】(輸出販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに100000で売った(輸出)。
C(消費者・海外)
Bから100000で買った。
A 8000(8000-0)
B △8000(0-8000)
計 0
【事例3】(免税事業者)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(免税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者)
Bから110000で買った。
A 8000(8000-0)
B 0(免税)
計 8000
【事例4】(非課税)
A(課税事業者・管理受託業者):
住居の管理業務を受託し、Bから委託費88000をもらった。
B(課税事業者・建物所有者):
Cから家賃100000をもらった。Aに委託費88000支払った。
C(消費者・居住者):
Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
A 8000(8000-0)
B 0(0-0) 非のみ
計 8000
納税額だけでみると、免税事業者と非課税とが同じ8000となっています。
そうすると、免税事業者と非課税とが消費税法上同じものかというと、決してそうではなく。
Bの支払った8000が納税額から控除できない根拠は、
免税事業者 30条1項で免税事業者が控除できる事業者から除外されている。
非課税 30条2項で非のみ仕入は控除できないこととされている。
と、それぞれ異なる理由によるものです。
適用条文が違うものの、ここの結論は同じです。
より大きな違いは、
免税事業者 110000は課税売上なので、基準期間の課税売上高の判定に使われる
非課税 100000は非課税売上なので、基準期間の課税売上高の判定に含まれない
という点です。
以前の記事で、例のアレが「小規模事業者(免税事業者)の本質は非課税事業者」などと言っていることを紹介しました。
免税事業者Requiem(第1曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編27)
免税事業者Requiem(第2曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編28)
免税事業者Requiem(第3曲) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編29)
確かに、Bに納税額が発生しないこととAが8000を納税するという帰結のかぎりでは、免税事業者と非課税とで扱いが同じになっています。
が、課税売上高判定に含まれるかどうかに違いがあるのであって、免税事業者を非課税と一緒の扱いにするのは、明らかに間違いです。
もしも免税事業者の本質が非課税事業者なのだとしたら、免税事業者がいくら売上をあげても、基準期間の課税売上高は0円のままで、いつまでたっても課税事業者にならないですむ、なんて間抜けな制度だということになってしまいます。
本連作で再三述べているとおり、消費税法を理解するには、部分部分ではなく関連する制度を一緒に学習する必要があります。一部分だけを眺めて「免税事業者は非課税事業者だ!」なんていうのは、初学者が陥りやすい誤解あるある、みたいなものです。
例のアレには、『消費税は税額転嫁と仕入税額控除の両輪により駆動する仕組みの税』などというフレーズがあちこちにでてきます。だというのに、実際には、売上課税ルールと仕入控除ルールを「分断」したままの理解で記述してしまっているという残念仕草。
ということで以上、課税/輸出免税/免税事業者/非課税の取扱いの違いについて、変な思い込みを排して、虚心坦懐に条文を読み込んで正確な理解をすべき、という自戒を含めた戒めとして。
売上課税 仕入控除
課税 課税10000 税額控除8000
輸出免税 免税0 税額控除8000
免税事業者 免税0 適用除外0
非課税 非課税0 用途区分0
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| 消費税法
2025年10月27日
ゼロ税率の世界へようこそ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編69)
あと数回、消化試合・落穂拾い的な記事が続きます。
非課税売上押し付け課税 〜消費税法の理論構造(種蒔き編68)
消費税に関して、「ゼロ税率」という言葉が使われることがあります。
これ、何ものかというと。
以下、事例をあげて検討します(記述が散らかるので、インボイス前で想定します)。
【事例1】(国内販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者・国内)
Bから110000で買った。
【事例2】(輸出販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに100000で売った(輸出)。
C(消費者・海外)
Bから100000で買った。
【事例3】(免税事業者)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(免税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者)
Bから110000で買った。
【事例4】(非課税)
A(課税事業者・管理受託業者):
住居の管理業務を受託し、Bから委託費88000をもらった。
B(課税事業者・建物所有者):
Cから家賃100000をもらった。Aに委託費88000支払った。
C(消費者・居住者):
Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
【事例4】だけノリが違うのですが、まあ仕方ない。
各事例の「納税額」は次の通り。
【事例1】(国内販売)
A 8000(8000-0)
B 2000(10000-8000)
計 10000
【事例2】(輸出販売)
A 8000(8000-0)
B △8000(0-8000)
計 0
【事例3】(免税事業者)
A 8000(8000-0)
B 0(免税)
計 8000
【事例4】(非課税)
A 8000(8000-0)
B 0(0-0) 非のみ
計 8000
【事例1】は、消費者が負担した消費税がそのまま国に流れてきます。
【事例2】は、国内で消費が発生しないため、消費税は発生しません(仕向地主義)。
【事例3】は、免税事業者が挟まっているものの、消費者が負担した10000の80%は国が回収できています。
【事例4】は、居住用賃貸自体は非課税であるものの、その前の段階で消費税が発生しています。
○
「ゼロ税率」というのは、【事例4】において、居住用賃貸を非課税としておきながら、消費税が発生してしまっていることを問題視するところからきています。
せっかく家賃に消費税をかけないことにしたくせに、Bのところで消費税が発生してしまうならば、そのしわ寄せがCにも来てしまうのではないか、という問題意識です。
【事例4】にゼロ税率を適用するとどうなるかというと。
【事例4】(非課税)※ゼロ税率
A 8000(8000-0)
B △8000(0-8000)控除できる
計 0
BがAに支払った消費税を控除できることになり、【事例2】の輸出免税と同じ結果となります。これにより、居住用賃貸に消費税を課さないこととした趣旨を十分に発揮することができることになります。
が、これを導入すると、文字通り国の回収額は0円となってしまいます。ので、国がこのような制度を導入する見込みは極めて薄いでしょう。消費者に対しては「消費税を課さないであげる」と言っておきながら別のところから徴収する、なんて、都合のいい《二枚舌》制度、国が手放すとは思えません。
仮に非課税を免税扱いに変更するとして。
輸出の場合は「国内で消費されていないから消費税を課せない」ということで、消費税が発生しないことを正当化することができます。他方で、現行法上非課税とされているものにつき、それと同等の正当化理由が見いだせるでしょうか。他の国内消費にかかる取引とのバランスの問題です。
「仕向地主義」などというように、『主義』といえるだけの何ものかがあるかどうか。
それはそうだとして、「消費税」を名乗っておきながら、消費者でない事業者の取引段階で突然消費税が湧き出すことの根拠も不明ではあります。もちろん、現行法が「多段階課税方式」だから、という形式的な理由は分かります。そうではなく、実質的な理由のほうです。
消費者が負担しないことの代償として、とでもいうしかないでしょうか。
○
各事例の帰結が異なる理由、もちろん、売上のカテゴリが違うから、という点にあります。が、より突っ込んで考えると、売上のカテゴリに応じて適用される「仕入控除ルール」が異なる点のほうが《本体》であることが分かります。
《仕入控除ルール》
課税 適用あり
輸出免税 適用あり
免税事業者 適用されない
非課税 用途区分で控除不可
「法人税法」を理解するにあたっては、益金ルールと損金ルールを別々に学習してもそれほど支障はありません。他方で「消費税法」の場合は、売上課税ルールと仕入控除ルールを別々に勉強してしまうと、きちんと理解することはできないでしょう。
輸出免税・免税事業者・非課税いずれも、売上をあげる段階では消費税が発生しないことに変わりはありません(ただしこの表現は不正確)。ので、それ以外の局面でどのような違いがあるかも同時に説明しなければ、なぜそれらのカテゴリが別々に存在しているのかを理解することはできないでしょう。
だというのに、一般的な解説書の類では、課税対象の話、仕入税額控除の話、課税事業者/免税事業者の話と、それぞれ別々の箇所で説明されるだけで、終わってしまいがち。
○
なお、「非課税取引」について、消費者にしわ寄せがいってしまうという問題意識があるのならば、「免税事業者」についても、同じ問題意識をもってほしいところ。
すなわち、免税事業者が消費税の納税を免除されたからといって、消費税をまるまるネコババしているのではない、免税事業者のところにもしわ寄せがいくことがありうる、ということに思い至ってほしいところです。
消費税法における分断と結合 〜消費税法の理論構造(種蒔き編70)
非課税売上押し付け課税 〜消費税法の理論構造(種蒔き編68)
消費税に関して、「ゼロ税率」という言葉が使われることがあります。
これ、何ものかというと。
以下、事例をあげて検討します(記述が散らかるので、インボイス前で想定します)。
【事例1】(国内販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者・国内)
Bから110000で買った。
【事例2】(輸出販売)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(課税事業者)
Aから88000で仕入れてCに100000で売った(輸出)。
C(消費者・海外)
Bから100000で買った。
【事例3】(免税事業者)
A(課税事業者)
Bに88000で売った。
B(免税事業者)
Aから88000で仕入れてCに110000で売った。
C(消費者)
Bから110000で買った。
【事例4】(非課税)
A(課税事業者・管理受託業者):
住居の管理業務を受託し、Bから委託費88000をもらった。
B(課税事業者・建物所有者):
Cから家賃100000をもらった。Aに委託費88000支払った。
C(消費者・居住者):
Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
【事例4】だけノリが違うのですが、まあ仕方ない。
各事例の「納税額」は次の通り。
【事例1】(国内販売)
A 8000(8000-0)
B 2000(10000-8000)
計 10000
【事例2】(輸出販売)
A 8000(8000-0)
B △8000(0-8000)
計 0
【事例3】(免税事業者)
A 8000(8000-0)
B 0(免税)
計 8000
【事例4】(非課税)
A 8000(8000-0)
B 0(0-0) 非のみ
計 8000
【事例1】は、消費者が負担した消費税がそのまま国に流れてきます。
【事例2】は、国内で消費が発生しないため、消費税は発生しません(仕向地主義)。
【事例3】は、免税事業者が挟まっているものの、消費者が負担した10000の80%は国が回収できています。
【事例4】は、居住用賃貸自体は非課税であるものの、その前の段階で消費税が発生しています。
○
「ゼロ税率」というのは、【事例4】において、居住用賃貸を非課税としておきながら、消費税が発生してしまっていることを問題視するところからきています。
せっかく家賃に消費税をかけないことにしたくせに、Bのところで消費税が発生してしまうならば、そのしわ寄せがCにも来てしまうのではないか、という問題意識です。
【事例4】にゼロ税率を適用するとどうなるかというと。
【事例4】(非課税)※ゼロ税率
A 8000(8000-0)
B △8000(0-8000)控除できる
計 0
BがAに支払った消費税を控除できることになり、【事例2】の輸出免税と同じ結果となります。これにより、居住用賃貸に消費税を課さないこととした趣旨を十分に発揮することができることになります。
が、これを導入すると、文字通り国の回収額は0円となってしまいます。ので、国がこのような制度を導入する見込みは極めて薄いでしょう。消費者に対しては「消費税を課さないであげる」と言っておきながら別のところから徴収する、なんて、都合のいい《二枚舌》制度、国が手放すとは思えません。
仮に非課税を免税扱いに変更するとして。
輸出の場合は「国内で消費されていないから消費税を課せない」ということで、消費税が発生しないことを正当化することができます。他方で、現行法上非課税とされているものにつき、それと同等の正当化理由が見いだせるでしょうか。他の国内消費にかかる取引とのバランスの問題です。
「仕向地主義」などというように、『主義』といえるだけの何ものかがあるかどうか。
それはそうだとして、「消費税」を名乗っておきながら、消費者でない事業者の取引段階で突然消費税が湧き出すことの根拠も不明ではあります。もちろん、現行法が「多段階課税方式」だから、という形式的な理由は分かります。そうではなく、実質的な理由のほうです。
消費者が負担しないことの代償として、とでもいうしかないでしょうか。
○
各事例の帰結が異なる理由、もちろん、売上のカテゴリが違うから、という点にあります。が、より突っ込んで考えると、売上のカテゴリに応じて適用される「仕入控除ルール」が異なる点のほうが《本体》であることが分かります。
《仕入控除ルール》
課税 適用あり
輸出免税 適用あり
免税事業者 適用されない
非課税 用途区分で控除不可
「法人税法」を理解するにあたっては、益金ルールと損金ルールを別々に学習してもそれほど支障はありません。他方で「消費税法」の場合は、売上課税ルールと仕入控除ルールを別々に勉強してしまうと、きちんと理解することはできないでしょう。
輸出免税・免税事業者・非課税いずれも、売上をあげる段階では消費税が発生しないことに変わりはありません(ただしこの表現は不正確)。ので、それ以外の局面でどのような違いがあるかも同時に説明しなければ、なぜそれらのカテゴリが別々に存在しているのかを理解することはできないでしょう。
だというのに、一般的な解説書の類では、課税対象の話、仕入税額控除の話、課税事業者/免税事業者の話と、それぞれ別々の箇所で説明されるだけで、終わってしまいがち。
○
なお、「非課税取引」について、消費者にしわ寄せがいってしまうという問題意識があるのならば、「免税事業者」についても、同じ問題意識をもってほしいところ。
すなわち、免税事業者が消費税の納税を免除されたからといって、消費税をまるまるネコババしているのではない、免税事業者のところにもしわ寄せがいくことがありうる、ということに思い至ってほしいところです。
消費税法における分断と結合 〜消費税法の理論構造(種蒔き編70)
posted by ウロ at 16:31| Comment(0)
| 消費税法
2025年10月06日
これからの宇宙税法
租税法学には「国際租税法」という分野がありますが、もはや「国際」すら超えていくことになるようです。
「スペースデブリ除去事業と消費税および法人税」が公表されました。
(藤間大順先生のブログ)
私みたいな野良税理士があれこれ論評できるようなものではありません。ので、このご論稿を読みながら、バックグラウンドで頭の中に浮んできたものを、言語化しておきます(ので、同論稿とは直接の関係はありません)。
以下、消費税法というのは「日本の消費税法」を念頭においています。
・
消費税法では「国内」だけが定義されている(法2条1項1号)。「国外」のほうは同法内で直接定義されることはなく、「国内以外」などといった扱いがされている(法4条3項など)。
消費税法の施行地以外の地域は、そこに主権国家(租税国家)があろうがなかろうが一律「国内以外」となる。そのため「宇宙空間」についても、(その適否は等閑視されて)現行法上は「国内以外」に振り分けられてしまう。
もちろん、法が想定しているのはあくまで「地球内」であるとして、宇宙空間は「国内/国内以外」のいずれでもない(ので、現行法では解決不能)、と規範的解釈(限定解釈)を施す道はありうる。
・
消費税法は、日本国内におけるあらゆる流通取引に問答無用で課税する。生産が国内だろうが国外だろうが、日本国内で流通したら課税が始まる。他方で、国内から出ていった途端に不干渉となる。
このことにつき「仕向地主義」などといわれることがあるが、このネーミングについては若干の注釈が必要。
というのも、日本が仕向地となれば課税が始まるのであるが、国外が仕向地となる場合はどう課税されようが無関心となる。要するに、《双方向性》がない。
(なお、現実に輸出をしていても、輸出許可証の保存がなければ輸出免税を受けられないなど、(モノに対する)極度の形式主義が気にくわないとは思っているものの、不正の温床ゆえ仕方がないところか。)
「外国税額控除」(法人税法、所得税法)のように、国外の法域で捕捉されたことを国内免除の条件に組み込む制度設計もありうるが、現行法は保税地域から出ていった先のことは無視している(税法版⦅暗闇への跳躍⦆)。
・
宇宙に関わる役務の提供に、現行法の内外判定ルール(法4条3項2号)をそのままあてはめてよいのかは、要注意。
役務の提供地と便益を受ける地が一致する場合(宇宙内で完結)と、「電気通信利用役務の提供」のごとく、これらがかけ離れる場合(地上の民が受益する)がありうる。
なお、同号に「国際」という文言が出てくることからすると、ここでは国境から国境へ跨ぐ場合を想定していると読める。他方で「国内及び国内以外の地域にわたって」「国内以外の地域間で行われる」などのように、「地域」といっている場合は、必ずしも「外国」である必要はないと読める。
意図的に、そのような使い分けをしているのかどうか。
・
消費税法が、国外に無関心でも問題なく運用できるのは、当該領域にも流通取引につき何かしらの課税制度があり(課税しないという選択も含まれる)、同領域内での流通については(産地に関わらず)当該法域内のルールが等しく適用されるはずだ(と信頼している)からである(Trump…)。
ところが「宇宙空間」となると、気にせず丸投げできるようなルールが確立しているわけではない。そのため、各国が好き勝手に課税ルールを設定してしまい、課税の重複や空白が生じるおそれがある。
そこで、消費税法についても、租税条約・共通指令・統一法などによって、足並みを揃える必要がでてくる。
・
宇宙税法を語る前提として、国際私法(準拠法選択ルール)の宇宙版の開発が待たれる。
「国際租税法」という分野においては、移転価格税制や海外子会社合算税制などといったハイカラな制度については一生懸命議論されるものの。税法のあてはめをする際に依拠する準拠法がどのように決定されるのかについての議論が、あまり詰められていないように思われる。
【税法×著作権法×法適用通則法】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その6)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その9)
税制の整備は当然に必要だとして。その基盤となる準拠法選択ルールについても、明確に決めておくべきなのでしょう。
◯
当然のことですが、私みたいな野良税理士が、宇宙税法につき、何某かの構想を立てるなんてことはできるわけもなく。
各種の⦅スペースオペラ⦆ものを読みながら、各陣営の税制がどうなっているのか、妄想するくらいが関の山でしょうか。
なお念のため。タイトルはこちらから想起したものとなります。
井上治典・伊藤眞・佐上善和「これからの民事訴訟法」(日本評論社1984)
「スペースデブリ除去事業と消費税および法人税」が公表されました。
(藤間大順先生のブログ)
私みたいな野良税理士があれこれ論評できるようなものではありません。ので、このご論稿を読みながら、バックグラウンドで頭の中に浮んできたものを、言語化しておきます(ので、同論稿とは直接の関係はありません)。
以下、消費税法というのは「日本の消費税法」を念頭においています。
・
消費税法では「国内」だけが定義されている(法2条1項1号)。「国外」のほうは同法内で直接定義されることはなく、「国内以外」などといった扱いがされている(法4条3項など)。
消費税法の施行地以外の地域は、そこに主権国家(租税国家)があろうがなかろうが一律「国内以外」となる。そのため「宇宙空間」についても、(その適否は等閑視されて)現行法上は「国内以外」に振り分けられてしまう。
もちろん、法が想定しているのはあくまで「地球内」であるとして、宇宙空間は「国内/国内以外」のいずれでもない(ので、現行法では解決不能)、と規範的解釈(限定解釈)を施す道はありうる。
・
消費税法は、日本国内におけるあらゆる流通取引に問答無用で課税する。生産が国内だろうが国外だろうが、日本国内で流通したら課税が始まる。他方で、国内から出ていった途端に不干渉となる。
このことにつき「仕向地主義」などといわれることがあるが、このネーミングについては若干の注釈が必要。
というのも、日本が仕向地となれば課税が始まるのであるが、国外が仕向地となる場合はどう課税されようが無関心となる。要するに、《双方向性》がない。
(なお、現実に輸出をしていても、輸出許可証の保存がなければ輸出免税を受けられないなど、(モノに対する)極度の形式主義が気にくわないとは思っているものの、不正の温床ゆえ仕方がないところか。)
「外国税額控除」(法人税法、所得税法)のように、国外の法域で捕捉されたことを国内免除の条件に組み込む制度設計もありうるが、現行法は保税地域から出ていった先のことは無視している(税法版⦅暗闇への跳躍⦆)。
・
宇宙に関わる役務の提供に、現行法の内外判定ルール(法4条3項2号)をそのままあてはめてよいのかは、要注意。
役務の提供地と便益を受ける地が一致する場合(宇宙内で完結)と、「電気通信利用役務の提供」のごとく、これらがかけ離れる場合(地上の民が受益する)がありうる。
なお、同号に「国際」という文言が出てくることからすると、ここでは国境から国境へ跨ぐ場合を想定していると読める。他方で「国内及び国内以外の地域にわたって」「国内以外の地域間で行われる」などのように、「地域」といっている場合は、必ずしも「外国」である必要はないと読める。
意図的に、そのような使い分けをしているのかどうか。
・
消費税法が、国外に無関心でも問題なく運用できるのは、当該領域にも流通取引につき何かしらの課税制度があり(課税しないという選択も含まれる)、同領域内での流通については(産地に関わらず)当該法域内のルールが等しく適用されるはずだ(と信頼している)からである(Trump…)。
ところが「宇宙空間」となると、気にせず丸投げできるようなルールが確立しているわけではない。そのため、各国が好き勝手に課税ルールを設定してしまい、課税の重複や空白が生じるおそれがある。
そこで、消費税法についても、租税条約・共通指令・統一法などによって、足並みを揃える必要がでてくる。
・
宇宙税法を語る前提として、国際私法(準拠法選択ルール)の宇宙版の開発が待たれる。
「国際租税法」という分野においては、移転価格税制や海外子会社合算税制などといったハイカラな制度については一生懸命議論されるものの。税法のあてはめをする際に依拠する準拠法がどのように決定されるのかについての議論が、あまり詰められていないように思われる。
【税法×著作権法×法適用通則法】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その6)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その9)
税制の整備は当然に必要だとして。その基盤となる準拠法選択ルールについても、明確に決めておくべきなのでしょう。
◯
当然のことですが、私みたいな野良税理士が、宇宙税法につき、何某かの構想を立てるなんてことはできるわけもなく。
各種の⦅スペースオペラ⦆ものを読みながら、各陣営の税制がどうなっているのか、妄想するくらいが関の山でしょうか。
なお念のため。タイトルはこちらから想起したものとなります。
井上治典・伊藤眞・佐上善和「これからの民事訴訟法」(日本評論社1984)
posted by ウロ at 11:36| Comment(0)
| 消費税法
2025年09月29日
非課税売上押し付け課税 〜消費税法の理論構造(種蒔き編68)
長らく続いたこのシリーズ、あと数回で終われるはずです。
インボイス百景(その6) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編67)
◯
本来、消費税の課税対象となる取引につき、「消費税を課さない」とされているものがあります。
法 第六条(非課税)
1 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
2 保税地域から引き取られる外国貨物のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。
別表にはあれやこれやの取引が節操なく列挙されていますが、代表的なものとして、土地の譲渡・貸付け、医療、居住用賃貸の条文のみ抜粋しておきます。
別表第一(第六条、第十二条の二、第十二条の三、第三十条、第三十五条の二関係)
一 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
六 次に掲げる療養若しくは医療又はこれらに類するものとしての資産の譲渡等(これらのうち特別の病室の提供その他の財務大臣の定めるものにあつては、財務大臣の定める金額に相当する部分に限る。)
十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。)に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
「消費税が課税されない!ラッキー!」などということではないことは、これまでもちらほら触れたとおりです。
あらためて整理しておきます。
◯
【事例】
C(居住者・消費者):
Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
B(建物所有者・課税事業者):
居住者から家賃100000をもらった。Aに委託費77000支払った。
A(管理受託業者・課税事業者):
住居の管理業務を受託し、Bから委託費77000をもらった。
これまでの事例だと物がAからCに流れていくというものでした。が、この事例ではCから記述しています。
また、お金の流れは(Aが回収代行も受託するため)一般的にはC→A→Bかもしれませんが、便宜上、C→B→Aとしました。
【帰結】
・CB間取引は居住用賃貸のため「非課税売上」となり、消費税は発生しません。
・Bは、Aに消費税7000を払っていますが、「非のみ仕入」となるため控除はできません。
・Aは、Bからもらった消費税7000を納付します。
非課税取引だからといって、およそ消費税負担が発生しないのではなく。
賃貸の段階で発生しないというだけで、それ以外の取引段階においては消費税負担が発生することになっています。
表向きの非課税売上で綺麗事を謳っておきながら、「用途区分」によって裏口から消費税負担を持ち込んでいるわけです。
○
では、誰が消費税を負担していることになるでしょうか。
上記事例では、Bが7000負担しているように思われるかもしれません。
が、Bは消費税が発生しなければ家賃をもっと安くできたところ、消費税が発生することを考慮して家賃を値上げしたのかもしれません。そうすると、経済的な意味では、Cが消費税を負担していることになります。
他方で、家賃の値上げができないとすれば、Aへの委託費を値下げしてもらったかもしれません。
要は、ABC間の力関係に応じて、税の押し付け合いがなされているということです。
これまでに検討したとおり、
1 何が課税対象となるか
2 誰が納付するか
までは法によって規律できるとして、
3 誰が負担するか
は法で直接規律することはできません。
《直接税/間接税》というカテゴリは、立案者の「そうなってくれたら、いいな。」という願望を表したものにすぎず。現実にどのように機能するかは、もっぱら《経済原理》に従うことになります。
税制というものは、国が私人の(広義の)経済活動からいくら巻き上げるかを設定できるにとどまり。私人間において、誰がいくら負担するかまでは強制しようがない。
○
仮に、消費税法が、消費者の消費活動に担税力を見出して税負担を発生させているという《設定》を受け入れるとして(消費そのものは捕捉しきれないので、代替として購入時点で課税)。
では、この事例で国に流れていく「消費税7000」というのは、一体何に対して課税されたものなのでしょうか。
「非課税取引」というカテゴリを設けて、消費者に消費税を負担させないようにするところまでは、まあわかります。
その先、そのしわ寄せを別の誰かに負担させることに対しては、どのように正当化でできるのでしょうか。未だに、まともな説明を受けたことがない。
○
この問題、流通過程に「免税事業者」や「非適格事業者」が闖入してきた場合と、同じ構造ではあります。
確かに、免税事業者や非適格事業者に対しては「皆様に迷惑をかけたくなければ、とっとと登録しろ」といえたかもしれません。が、非課税取引に関しては「税負担したくなければ、居住用で貸すのはやめろ」というわけにはいかないでしょう。
ではあるのですが、現行の「用途区分」ルールのままでは、どうにもなりません。
「非課税取引&用途区分」という極悪カップルの存在を容認している以上、消費税法は決して《消費課税》などではなく。むしろ個々の《流通》ごとに課税しているといってしまったほうが、実態にあうのではないでしょうか。
◯
「消費税」と名乗ることによって、消費者に転嫁してもよい《空気感》を醸し出していますが。そのことに対する税法上の担保は何もありません。
ですし、流通過程に非課税取引や免税・非適格事業者が紛れ込んだ途端、消費者まできれいに流れるはずの転嫁の流れがせき止められ(てお国に掠め取られ)ることになります。
消費税法の解説書、建前や綺麗事ではなく、こういった消費税法の現実の機能に即した記述をしてくれないか、と願う(絶望的)。
ゼロ税率の世界へようこそ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編69)
インボイス百景(その6) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編67)
◯
本来、消費税の課税対象となる取引につき、「消費税を課さない」とされているものがあります。
法 第六条(非課税)
1 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
2 保税地域から引き取られる外国貨物のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。
別表にはあれやこれやの取引が節操なく列挙されていますが、代表的なものとして、土地の譲渡・貸付け、医療、居住用賃貸の条文のみ抜粋しておきます。
別表第一(第六条、第十二条の二、第十二条の三、第三十条、第三十五条の二関係)
一 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
六 次に掲げる療養若しくは医療又はこれらに類するものとしての資産の譲渡等(これらのうち特別の病室の提供その他の財務大臣の定めるものにあつては、財務大臣の定める金額に相当する部分に限る。)
十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。)に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
「消費税が課税されない!ラッキー!」などということではないことは、これまでもちらほら触れたとおりです。
あらためて整理しておきます。
◯
【事例】
C(居住者・消費者):
Bから住居を借りて家賃100000を支払った。
B(建物所有者・課税事業者):
居住者から家賃100000をもらった。Aに委託費77000支払った。
A(管理受託業者・課税事業者):
住居の管理業務を受託し、Bから委託費77000をもらった。
これまでの事例だと物がAからCに流れていくというものでした。が、この事例ではCから記述しています。
また、お金の流れは(Aが回収代行も受託するため)一般的にはC→A→Bかもしれませんが、便宜上、C→B→Aとしました。
【帰結】
・CB間取引は居住用賃貸のため「非課税売上」となり、消費税は発生しません。
・Bは、Aに消費税7000を払っていますが、「非のみ仕入」となるため控除はできません。
・Aは、Bからもらった消費税7000を納付します。
非課税取引だからといって、およそ消費税負担が発生しないのではなく。
賃貸の段階で発生しないというだけで、それ以外の取引段階においては消費税負担が発生することになっています。
表向きの非課税売上で綺麗事を謳っておきながら、「用途区分」によって裏口から消費税負担を持ち込んでいるわけです。
○
では、誰が消費税を負担していることになるでしょうか。
上記事例では、Bが7000負担しているように思われるかもしれません。
が、Bは消費税が発生しなければ家賃をもっと安くできたところ、消費税が発生することを考慮して家賃を値上げしたのかもしれません。そうすると、経済的な意味では、Cが消費税を負担していることになります。
他方で、家賃の値上げができないとすれば、Aへの委託費を値下げしてもらったかもしれません。
要は、ABC間の力関係に応じて、税の押し付け合いがなされているということです。
これまでに検討したとおり、
1 何が課税対象となるか
2 誰が納付するか
までは法によって規律できるとして、
3 誰が負担するか
は法で直接規律することはできません。
《直接税/間接税》というカテゴリは、立案者の「そうなってくれたら、いいな。」という願望を表したものにすぎず。現実にどのように機能するかは、もっぱら《経済原理》に従うことになります。
税制というものは、国が私人の(広義の)経済活動からいくら巻き上げるかを設定できるにとどまり。私人間において、誰がいくら負担するかまでは強制しようがない。
○
仮に、消費税法が、消費者の消費活動に担税力を見出して税負担を発生させているという《設定》を受け入れるとして(消費そのものは捕捉しきれないので、代替として購入時点で課税)。
では、この事例で国に流れていく「消費税7000」というのは、一体何に対して課税されたものなのでしょうか。
「非課税取引」というカテゴリを設けて、消費者に消費税を負担させないようにするところまでは、まあわかります。
その先、そのしわ寄せを別の誰かに負担させることに対しては、どのように正当化でできるのでしょうか。未だに、まともな説明を受けたことがない。
○
この問題、流通過程に「免税事業者」や「非適格事業者」が闖入してきた場合と、同じ構造ではあります。
確かに、免税事業者や非適格事業者に対しては「皆様に迷惑をかけたくなければ、とっとと登録しろ」といえたかもしれません。が、非課税取引に関しては「税負担したくなければ、居住用で貸すのはやめろ」というわけにはいかないでしょう。
ではあるのですが、現行の「用途区分」ルールのままでは、どうにもなりません。
「非課税取引&用途区分」という極悪カップルの存在を容認している以上、消費税法は決して《消費課税》などではなく。むしろ個々の《流通》ごとに課税しているといってしまったほうが、実態にあうのではないでしょうか。
◯
「消費税」と名乗ることによって、消費者に転嫁してもよい《空気感》を醸し出していますが。そのことに対する税法上の担保は何もありません。
ですし、流通過程に非課税取引や免税・非適格事業者が紛れ込んだ途端、消費者まできれいに流れるはずの転嫁の流れがせき止められ(てお国に掠め取られ)ることになります。
消費税法の解説書、建前や綺麗事ではなく、こういった消費税法の現実の機能に即した記述をしてくれないか、と願う(絶望的)。
ゼロ税率の世界へようこそ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編69)
posted by ウロ at 15:03| Comment(2)
| 消費税法
