2020年04月06日

「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)

 古典的な論点である「定期同額給与」もの。

 もちろん、近時あれこれ改正入っているところなので、改正点をネタにすることはあるでしょう。
 他方で、古典中の古典たる「3ヶ月以内改定」なんて、今さらブログ記事にする人もいないのかもしれません。

 が、世の中の需要をまるで考慮しないこのブログ、条文イジりという観点から整理してみます。
 
【いまさら条文シリーズ】
みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い
無償減資で均等割下げ(節税系の記事ではなく)


 以下、このタックスアンサーでいうと、1の(1)と(2)イに限定します。
 また、事例は「12月決算」の株式会社を前提とします。

No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)

 まずは条文。
 直接関係があるところのみ大胆に省略いれつつ抜粋。

法人税法 第三十四条(役員給与の損金不算入)
1 内国法人がその役員に対して支給する給与のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(「定期給与」)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(「定期同額給与」)

法人税法施行令 第六十九条(定期同額給与の範囲等)
1 法第三十四条第一項第一号に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とする。
一 法第三十四条第一項第一号に規定する定期給与(「定期給与」)で、次に掲げる改定(「給与改定」)がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの
イ 当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月を経過する日(「三月経過日等」)までにされた定期給与の額の改定



 法律上は大きく2つに分かれます。

法34条1項1号:
1 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(「定期給与」)で
  当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの
2 その他これに準ずるものとして政令で定める給与

 「その他」とあるので、法で定めるものに「プラス」して政令で定めるものがあるということ。
 で、政令に3ヶ月以内改定のことが書いてあります。

 条文の引用のない解説ものだと政令のほうしか書いていなかったりしますが、条文の構造上は法の1がベースにあって、政令のやつはあくまでも「これに準ずるもの」だということになっています。

 会社法の側から考えると、定時総会での改定が通常ルールのように思えますが、法人税法上はまずは「事業年度」単位で考えるんだと。


 1によれば、定時総会まで待たずに期首月からの改定も許されることになります。

《事例0》
 1年12月 50万円
 2年 1月 100万円 (改定)
  〜
 2年12月 100万円

⇒2年1月〜12月 同額

 「定時株主総会によらず期首から改定するのは定期同額給与の趣旨に反するから否認リスクあり」みたいな記述を見かけたことがありますが、それはこの条文構造をおよそ踏まえない独自の見解。


 で、政令のほうが本日のメイン。

 まずは要件を分解します。

ア 定期給与:
  その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与
イ 給与改定:
  事業年度開始の日から三月を経過する日までにされた改定
ウ 同額給与:
  当該事業年度開始の日から給与改定後の最初の支給時期の前日まで
  給与改定前の最後の支給時期の翌日から当該事業年度終了の日まで
 の間の各支給時期における支給額が同額

 アは書いてあるとおり。
 イもこれ自体は書いてあるとおりなんですが、3ヶ月以内に改定決議だけしておけばいいのか、その改定による支給も3ヶ月以内にする必要があるのか、という問題があります。
 結論的には、決議だけでよいとなるのですが、ア・ウとの関係でおのずから制限がでてきます(後述)。

 ということで、問題の総本山がウの要件。


 まず、ノーマルな事例であてはめてみます(通常事例思考)。

【通常事例思考】
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)

《事例1》
 1年12月 50万円
 2年 1月 50万円 (1/31支給)
 2年 2月 50万円 (2/28支給)
 2年 3月 100万円 (3/25改定決議、3/31支給)
   〜
 2年12月 100万円 (12/31支給)

3月改定
A 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(3/30)まで
 ⇒1/31、2/28 同額
B 給与改定前の最後の支給時期の翌日(3/1)から当該事業年度終了の日(12/31)まで
 ⇒3/31〜12/31 同額

 一般向けの解説書だと、単に3ヶ月以内に改定すればいいよ、とウの要件を書いていないものもあったりします。
 それは、このような一定期間を設定しその間に到来する支給時期で比較する、という回りくどい要件を書いてもどうせ理解してもらえない、という配慮からでしょうか。

 まあ、実際上記のような《通常事例》ならば、結論は変わらないから実害はないんでしょう。


 が、次のような事例がでてくると、条文に立ち返らざるをえない。

《事例2》
 1年12月 50万円
 2年 1月 50万円 (1/31支給)
 2年 2月 50万円 (2/28支給)
 2年 3月 50万円 (3/31支給)
 2年 4月 100万円 (4/30支給) 3/25改定決議による
   〜
 2年12月 100万円 (12/31支給)

 なぜ、3/25改定決議の反映が、直後の3/31支給ではなく4/30支給からになるのか。
 それは、この会社では3/25に決議された役員報酬は、同日からの職務期間に対応するものだとしているからです。
 3/25から1ヶ月分の報酬を4/30に支給すると(後払)。

 にもかかわらず、《事例1》と同じようにあてはめをすると、

3月改定
A 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(3/30)まで
 ⇒1/31、2/28 同額
B 給与改定前の最後の支給時期の翌日(3/1)から当該事業年度終了の日(12/31)まで
 ⇒3/31〜12/31 同額でない

となってしまいます。

 また、改定決議自体は3ヶ月以内に行っているものの、その改定に対応する支給は3ヶ月後になってしまっています。
 そうすると、イの要件を満たすのかどうかも問題になります。


 この点、国税庁の「Q&A」では「職務執行期間」という考えを導入して、このようなものを容認しています(決算期がズレててすまん。オフィシャル事例、そろそろ12月決算にそろえないか)。

役員給与に関するQ&A - 国税庁(P.8)

3月改定
A 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(4/29)まで
 ⇒1/31〜3/31 同額
B 給与改定前の最後の支給時期の翌日(4/1)から当該事業年度終了の日(12/31)まで
 ⇒4/30〜12/31 同額

 Q&Aではウの緩和しか明示されていませんが、イについても、決議を3ヶ月以内にすれば支給は3ヶ月後でもいい、ということを前提にしていると思います。


 納税者有利な結論ではあるものの、この考えが政令の解釈として出てくるものなのか、国税庁が勝手に緩和してくれているだけなのかがはっきりしません(通達ですらない)。
 Q&Aに書いてあるのは「ウチはそう考える」というだけで、条文解釈の体裁をとっていません。
 政令の文言をどう解釈すれば、この結論が出てくるというのかが不明。

 納税者有利だから別にいいじゃん、て思うかもしれません。
 が、これが正当な法解釈でないとすると、あとから裁判所でひっくり返されることもありえます(信義則やら禁反言などはそう当てにはできない)。

 そこで、頑張って政令の解釈をするならば、
イ 給与改定
 文字通り改定決議日が3ヶ月以内であればいいということ
ウ 同額給与
 「給与改定前」「給与改定後」とあるのは、改定決議日そのものではなく、職務執行期間を考慮するということ(決議日3/25ではなく、新しい職務執行期間1ヶ月目の終了日4/25の前後で判定)

とでも読むことになりますか。
 政令も支給が後ろの月にずれる場合を想定しているはずだと。

 ただ、イでは決議日が基準になるといっておきながら、ウでは決議日ではなく職務執行期間に紐付けるというところに、そこはかとなく不整合感を感じます。
 条文ではわざわざ「給与改定」を定義づけた上でイとウを繋いでいるにもかかわらず、それぞれ違う意味合いで解釈をすることになるわけで。


 この「職務執行期間」を考慮する解釈、翻って典型例である《事例1》にあてはめるとこうなります。

3月改定
A 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(4/29)まで
 ⇒1/31〜2/28、3/31 同額でない
B 給与改定前の最後の支給時期の翌日(4/1)から当該事業年度終了の日(12/31)まで
 ⇒4/30〜12/31 同額

 駄目じゃんか。

 もちろん、この事例が
  新しい職務執行期間3/25〜 ⇒対応する1ヶ月目の支給日3/31(一部前払?)
だというならば、あてはめは最初に書いたとおりになるからセーフです。

 が、大半の中小企業は、職務執行期間なんか気にせずに改定・支給しているはずです。
 そうすると、今までは単純に、決議日の直後の支給日から反映させればいいと考えられていたものを、その支給日が新しい職務執行期間の1ヶ月目に対応するものかを確認しなければならなくなります。

 この結論がおかしいのだとすると、ウを二通りに解釈しなければなりません。

ウ 同額給与
 「給与改定前」「給与改定後」とあるのは、
 ・文字通り改定決議日の前後
 ・新しい職務執行期間1ヶ月目終了日の前後

 このどちらでもいいんだと。
 が、こんなご都合解釈、ますます条文解釈からは出てきそうにない。
 

 では、ウが緩和されたってことで、3/25決議で7/31支給からの変更が許されるかといったら、それは駄目っていうんでしょう。
 あくまでも1ヶ月サイクルのずれに収まるかぎりでの許容だと。

 確かに、不整合感は残るにしても、職務執行期間で縛っておかないとどこまでも後ろにずらせることになります。

 そうはいっても、このような限定が条文解釈から導けるかどうか。
 定期同額ルールの究極の趣旨である「利益調整許すまじ」という発想からすれば、3ヶ月以内に決めたものであるかぎり、いつから反映してもいいように思いますし。
 遡りさえしなければいいわけで。

 まあ中小企業の現実として、後付け議事録云々という問題はあるんでしょう。
 が、そういった現実が条文解釈に直結するわけでもない。

 ただし、制度趣旨を理由に条文上表現されていない解釈を創造することの問題点は、前に高裁判決をイジり倒したとおりです。
 1ヶ月サイクルに限る/限らない、いずれと解するにしても、あくまでも条文解釈として可能な範囲にとどまらなければなりません。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)


 では、1で期首から改定が許される+2で3ヶ月以内改定が許される、というのを合成して、2段階改定したらどうなるか。
 ややこしくなるので「職務執行期間」のことを気にしなくていいという前提で考えます。

《事例3》
 1年12月 50万円
 2年 1月 70万円 (1/1改定決議、1/31支給)
 2年 2月 70万円 (2/28支給)
 2年 3月 100万円 (3/1改定決議、3/31支給)
   〜
 2年12月 100万円

 1月に70万円に増額したものの、やっぱり今期はもっといけそうってことで3月に100万円に増額した、というストーリー。

 2年12月末の時点から振り返ってみると、2年1月〜12月が同額でないので1の要件は満たしていません。
 では2はどうか。

 2年1月・3月2回の改定は、いずれも3ヶ月以内改定なのでイは満たしています。
 問題はやはり、ウをどう考えるかです。

「@当該事業年度開始の日又はA給与改定前の最後の支給時期の翌日からB給与改定後の最初の支給時期の前日又はC当該事業年度終了の日まで」

 この条文をどう読むのかがあらためて問題になります。

 通常は、上記のとおり、
  @〜B A,C
  A〜C B,D
の間がそれぞれ同額かを見ればすみます。
 では、改定を2回した場合にはどうあてはめるのか、たすき掛けしてA〜B(E)もみる必要があるのかどうか。
 ちなみに、@〜Cは1と同じになっておよそ同額ではなくなってしまうので、検討からはずします(このことからすると、たすき掛け読みすべきでない、という方向になりそうですが)。

 無理くりやってみます。

1月改定
A 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(1/30)まで
 ⇒なし。
B 給与改定前の最後の支給時期の翌日(1/1)から当該事業年度終了の日(12/31)まで
 ⇒1/31〜12/31 同額でない

3月改定
C 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(3/30)まで
 ⇒1/31、2/28 同額
D 給与改定前の最後の支給時期の翌日(3/1)から当該事業年度終了(12/31)の日まで
 ⇒3/31〜12/31 同額

1月改定〜3月改定
E (1月)給与改定前の最後の支給時期の翌日(1/1)から(3月)給与改定後の最初の支給時期の前日(3/30)まで
 ⇒1/31、2/28 同額

 う〜ん、て感じですよね。
 2回改定がある場合には、A+E+Dで見ればいいのか、2回目のC+Dだけを見ればいいのか、それともA〜E全部みるのか。

 仮に、A〜E全部でみて損金不算入になるのだとしたら、一体どの部分が不算入額として扱われるのか。


 では、《事例3》に「職務執行期間ズラし」をプラスしたらどうなるか。

《事例4》
 1年12月 50万円
 2年 1月 70万円 (1/25改定決議、1/31支給)
 2年 2月 70万円 (2/28支給)
 2年 3月 70万円 (3/31支給)
 2年 4月 100万円 (3/25改定決議、4/30支給)

1月改定
A 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(1/30)まで
 ⇒なし。
B 給与改定前の最後の支給時期の翌日(1/1)から当該事業年度終了の日(12/31)まで
 ⇒1/31〜12/31 同額でない

3月改定
C 当該事業年度開始の日(1/1)から給与改定後の最初の支給時期の前日(4/29)まで
 ⇒1/31〜3/31 同額
D 給与改定前の最後の支給時期の翌日(4/1)から当該事業年度終了(12/31)の日まで
 ⇒4/30〜12/31 同額

1月改定〜3月改定
E (1月)給与改定前の最後の支給時期の翌日(1/1)から(3月)給与改定後の最初の支給時期の前日(4/29)まで
 ⇒1/31〜3/31 同額

 何気なくあてはめしてますけど、ここでは、
  1月改定 決議日で判定
  3月改定 職務執行期間を考慮して判定
と、同じ「給与改定」という言葉を違う意味で解釈しています。

 《事例2》と《事例3》のように、違う事例での使い分けが許されるとしても、同じ事例で同時に使い分けるのは、さすがに無理じゃないですかね。
 1月改定で職務執行期間サイクルを無視した改定をしているくせに、3月改定では職務執行期間を考慮するなんて、合理的な説明できないですよね。

 もし仮に違う意味解釈が許されたとしても、《事例3》同様、BCを除け者にして判定していいのかどうかが問題。


 ここまで、「決議」とだけ書いてきましたが、これが「定時総会」である必要があるのか、それとも「臨時総会」でもいいのか、ということも問題にはなります。

 「3ヶ月以内」とあるので、いかにも定時総会を想定しているように思えます。
 が、少なくとも条文上は限定されていない。

 限定したいのであれば、会社法の条数を引用してそのものずばりを書くなり、あるいは「職務執行期間」に紐付けて特定することができたはずです(事前確定みたいに)。
 ですが、そういう縛りはありません。

 ではあるのですが、Q&Aが「職務執行期間」を梃子にしてウを緩和しているわけで、その見返りに、支給が後ろにずれる場合は「定時総会」に限定される、みたいな交換条件がでてきてもおかしくない。

 例の「変な趣旨解釈」みたく、条文上書いてもいない限定要件を一般的否認規定経由で勝手に付加する、というのに似ていますが、ちょっと毛並みが違う。
 有利な緩和とのバーターになっているわけで。

【変な趣旨解釈】
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)


 そもそも定期同額給与について、法のレベルでは「事業年度」単位で判定になっていて会社法のことなんて気にしていないのに、それに準ずるはずの政令で「職務執行期間」なんて概念を持ち出すのが、変といえば変です。
 
 とすると、あくまでも法令上は支給が後ろにずれるのはアウトだけども、実情に鑑みてあえて否認はしませんよ、と捉えるのが無難でしょうか。
 こういう理解でいいのだとすると、通達に書かずにQ&Aでとどめていることの奥ゆかしさ、慎ましさみたいなところに趣を感じます。

 そういう視点で通達の「定期同額給与」のところをみると、あえて避けているようにも読めてくるから不思議。

法人税基本通達 定期同額給与
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_03.htm

 これに対して「短期前払費用の特例」のでしゃばり具合。
 みんなにチヤホヤされて、さぞ嬉しかろうが。
 しかしちょっとでも機嫌を損ねるとブチ切れる感がきついよ、この人。

法人税基本通達2−2−14 (短期の前払費用)
 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2−2−14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。



 と、何も結論でていないものの、私個人の見立ては以下のとおり。

《法令解釈》
・政令上は「改定決議⇒その直後の支給」と読まざるをえないのであって、職務執行期間を考慮して後ろにずらすのは許されない。これは「令の不備」。
・はみ出さないパターンならば、決議は3ヶ月以内でありさえすれば定時総会である必要はない。
・2回改定はA〜Bのたすき掛け読み(A+E+Dでみる)で許容可能か。

《実務運用》
・職務執行期間ズラしは政令上はアウトだが、実態に鑑みて、国税庁様があえて否認はしないよと言ってくれている。
 ので、後ろにズラせるのは、Q&A記載のとおりの「定時総会による改定+1ヶ月サイクル」におさまる場合に限られる。
 この優しさを裏切ってはみ出しチャレンジをした場合には、徹底的に否認されるはず。

  法律; 事業年度 ⇒セーフ
  政令; 改定+直後支給 ⇒セーフ
  Q&A; 定時改定+職務執行期間考慮  ⇒アウトだが容認
  勇者; Q&Aはみ出し ⇒完全アウト

《裁判》
・裁判になったとしても同様に、政令上は直後支給のみが許容されている、合理的な範囲のズラしは個別救済、と判断されそう。
 で、補足意見で政令の出来の悪さを論難されると。


 マニアックな特例ならともかく、定期同額給与なんてメインストリームの制度なのに、なんでこんなできの悪い条文のままなのか。
 誰かチャレンジングな人がギリギリを攻めて裁判にならないかぎり、このまま放置され続けるんでしょうかね。

 ちなみに、下記の判決では最高裁判事に通達の出来の悪さをボロクソに論難されたわけで、近いうちに通達改正がされるんでしょう。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決


 条文なぞって終わり、で済むかと思いきや、よくわからない論点が出てきてしまいました(藪蛇)。

 定期同額給与なんてみんな知ってるよ、という類のものなので、こういう疑問を会計事務所・税理士事務所の人に聞いても、結論だけは自信満々に言ってくれるけどもなぜそうなのかの理由付けを説明してくれない、タイプのやつです。

 2回改定が「許される」とか「許されない」とか結論をいうのはいいんですが、それがこの条文をどうあてはめたら出てくるのか、理由付けのほうを知りたいんですけども。

 私自身も、今のところこれで勝負をかけようとは全く思いませんが、最後に残るものが「希望」となるのかどうか、もう少し考えてみます。
posted by ウロ at 10:56| Comment(0) | 法人税法

2019年03月01日

みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い

 生保が損金算入制限されても倒産防は制限されない、でおなじみの。

経営セーフティ共済(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)

 さっそく条文をみてみましょう(以下、条文イジりの記事であって節税系の記事ではないです)。

租税特別措置法(e-GOV)

第六十六条の十一(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)
1 法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金
(一号と三〜五号は省略)

2 前項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。


租税特別措置法関係通達(法人税編)第66条の11《特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例》関係

66の11−2(負担金の損金算入時期)
 措置法第66条の11に規定する負担金の損金算入時期は、法人が当該負担金を現実に支払った日を含む事業年度となることに留意する。

66の11−3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
 中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号に掲げる掛金に該当しない。



 まず、法(66条の11は略します)の1項では、支払った事業年度の損金に「算入する」と書いてあって、「算入できる」ではないんですね。
 ので、本来は問答無用で損金算入しなければならないはず。
 が、法2項で、明細添付しないと適用しないよと書いてあるせいで、事実上「できる規定」のようなことになってしまっています。


 また、損金算入するための要件として「明細添付」は要求されていますが、「損金経理」は要求されていません。
 ので、「保険料」で費用計上せずに、「保険積立金」で資産計上した場合でも、申告書上で課税所得を減算することになります。

 そうするとここで、《資金調達に強い!》みたいな触れ込みのコンサルさんが登場してきて、次のような提案をしてくることが考えられます(あくまで仮想例。こういうとき、私はゲーテの『ファウスト』を頭の中に思い浮かべています)。



 『保険積立金として計上すれば、損益計算書をよく見せつつ税金も減らせるよ!御社の顧問税理士はそんなアドバイスしてくれないでしょ!』

という感じの。

 これ、どういうことか具体的に考えてみましょう。

 年間240万円掛金納付したとして(諸々細かい事情は捨象します)

A 保険料として計上した場合

  売上高   240
  保険料   240
  税引前損益  0
  法人税    0
  当期損益   0

  課税所得 0

B 保険積立金として計上した場合

  売上高   240
  税引前損益 240
  法人税    0
  当期損益  240

  課税所得 0(当期損益240−減算240)

 なんと!当期損益が掛金納付分プラスになっているではないですか!
 しかも税額0円のまま!と。

 これだけみせられると、ついつい「保険積立金で処理します!ついては当社の顧問となっていただけますか。」と、乗っかってしまいそうになりますが、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

 保険モノは常に《出口戦略》が重要なわけで。

 ということで、掛金累計800万円を「保険積立金」で計上したあと、解約した場合はどうなるかというと、

  売上高    0
  税引前損益  0
  法人税   200 (税率25%とします)
  当期損益 ▲200

  課税所得 800(当期利益0+加算800)

 税引前損益が0円なのに法人税が発生するという、「どうかしてる系の損益計算書」になります。もちろん、資本金等、従業者、事業所が多いなどで「均等割」が高額になることはありますが、それはそういう説明ができるわけで。

 まあ、税引前損益0円というのは極端な事例であって、利益が1億円くらい出ていてくれれば、紛れてくれます。
 が、倒産防を解約するなんていうのは、800万円でもすぐに現金が欲しい、というカツカツな状況のはず。

 これを、むりやり普通の損益計算書ぽくしようとするなら、解約事業年度以降「なんちゃって税効果会計」みたいなことをやって、誤魔化すしかないような気がします(いや私には無理です)。

 ので、「保険積立金」で処理するにしても、ちゃんと出口のことを考えておこうね、ということです。


 また、節税商品としておすすめする際に、当然のように「前納は1年先まで!」てことになっています。

 これ、条文上どう書いてあるかというと、

  法:支払ったらそのとき損金算入な。
  通:でも前納は1年以内だからね。


と、「1年」て書いてあるの通達だけなんですよね。

 だから、なに通達で勝手に制限しちゃってるの、という点は、問題になっておかしくない。
 今どきの、文言解釈重視の判例の流れからいえば、「勝手な制限は違法」と判断される可能性もあるわけで。

 法自体の解釈から「損金算入される前納は1年まで」を読み取れないといけないはず。

【ちょっと違いますが参照】
解釈を解釈する解釈(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

 あえて課税側に寄り添って解釈してあげるならば、次のような解釈ですかね。

・法1項2号には「中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための」と書いてあるんだから、実際に対象期間がきて充当されるまではこれに該当しないはずだ。
・でも、通達で、1年以内だったら充当されてない期間分も認めてあげるね。
・ので、この通達は、法の制限ではなく拡張だからセーフ。

て感じ。

 確かに、中小企業倒産防止共済法の15条みると、対象月の初日の到来で納付扱いになるんですよね。
 だから、こういう読み方も可能っちゃ可能かと。

中小企業倒産防止共済法 第十五条(前納)
1 機構は、共済契約者が、その納付すべき月の前月末日以前にする掛金の納付(以下「掛金前納」という。)をしたときは、経済産業省令で定めるところにより、その掛金の額を減額することができる。
2 掛金前納がされた掛金については、その納付すべき各月の初日が到来した時に、それぞれその月の掛金が納付されたものとみなす。


 が、そうすると今度は、何勝手に広げちゃっているの、という逆の問題が生じてしまいます。
 納税者有利だからいいだろ、と単純にいえないのが税法上の「合法性」の問題。

 けども、そこを突っ込みだすと、『みんなもっと大好き!短期前払費用の特例』の立場も怪しくなってしまうわけで。
 あまりイジらないほうがいいですか。

法人税基本通達2−2−14 (短期の前払費用)
 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2−2−14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。



 そのへんの節税本でも当たり前にのっている倒産防ですが、税法解釈の観点から眺めると、実はイジりがいのある論点があるわけです。
posted by ウロ at 16:21| Comment(0) | 法人税法

2018年08月27日

さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ

 や、今回でひととおり出し尽くしたので、これ以上の続編はないはずです(当時のスタッフもそう思ってたのかも)。

 平成30年改正の所得拡大促進税制について、要件のうち『継続雇用者』の判定をメインに絞ってイジってきましたが、まだ積み残した論点があります。

【措置法イジり(所得拡大促進税制編)】
 税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)
 武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
 ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ

1 賞与は何月分?

 継続雇用者の判定では『賞与』はいつの月分として集計するんでしょうか。

 というのも、『給与』については、「○月分」というのは「○月勤務分」と理解できるので、集計のズレは気持ち悪いとして、まあやればいいと。

 では『賞与』でいう「○月分」はどう理解したらいいのか。賞与の場合、必ずしも特定の月に紐付いているわけではないので。

 賞与の計算対象期間で判定するのか、支給日で判定するのか。
 あるいは、各月分に紐付いてないから継続雇用者の判定の際には賞与は使わない、ということなのか。

 もしこの「使わない説」だとすると、CとDEで集計すべき項目が、さらにズレるってことになりますよね。

  C  発生した給与(賞与は集計しない)
  DE 損金算入した給与+賞与

 現実的には、「一般被保険者でありつつ、○月分の給与はないのに賞与はある」という事例が起こりえない、から、給与と別に賞与単独で判定する場面がない、ということかもしれませんが。

2 退職後に支給したら

 また、継続雇用者の判定を「発生」ベースでやるとして、支給を受けた時点で一般被保険者である必要があるのかどうか。

  ・前年度: x1.01.01〜X1.12.31
  ・適用年度:x2.01.01〜X2.12.31
  ・給与は当月末〆翌月末払
  ・X2.12.31退職

 この例では、X2.12月分まで給与が発生しているものの、最後の給与を受けるX3.1.31の時点ではその会社の一般被保険者ではないわけです。この場合でも継続雇用者に該当するかどうか。

 政令では

  ・国内雇用者(一般被保険者)として
  ・給与等の支給を受けた者

とあるので、支給を受けた時点でも一般被保険者である必要がある、とも読めるわけです。

 が、これに関しては、発生した給与が一般被保険者としてのものならよくて、あげる/もらう時点で一般被保険者である必要はない、と理解すればいいはず。おそらく。

 誤解を招く書き方ではありますが。

3 1日分でも該当するか?

 では、上の例で、もし「X2.12.01」に退職した場合は、「12月分」の給与の支給を受けたといえるのかどうか。 
 つまり、1日分でもその月分の給与を受けたといえるのかどうか、ということです。

 「各月分」という言葉だけみると、1日分だけでもその月分の給与の支給を受けたといえそうです(1日説)。

 ただ、法律・政令では、適用年度と前事業年度の「期間内の」という言葉もでてくるので、前事業年度の初日から適用年度の最終日の全期間分(365日間×2)の給与を受ける必要がある、とも読めなくもないです(全期間説)。
 
 が、「各月分」と「期間内」をあわせて読めば、その期間のうちの月分ということで、1日分でもいいとも読むこともできそうですし(1日説に戻る)。

 この点、中小企業庁作成の『中小企業向け所得拡大促進税制 よくあるご質問Q&A集』の「29」をみると、支給については「全ての月分の」とありながら、他方で、一般被保険者であることについては「全ての期間において」という言葉を使っているので、どうも「全期間説」を前提にしてるように読めるのですが、このへんのことをしっかり詰めた上での記述かどうかは不明。

 積極的な賃上げに取り組む企業を応援します(中小企業向け所得拡大促進税制)
 中小企業向け所得拡大促進税制 よくあるご質問Q&A集(PDF)


 継続雇用者の要件の厄介なのが、

  該当するのが納税者有利
  該当しないと納税者不利

とは限らないということ。

 0人だとそもそも適用受けられないので、誰もいないよりはいたほうがいいのは確かです。

 が、前年比で給与増やした人が該当するならいいんですけど、減らした人が該当しちゃうと困るわけです。
 前年比増要件が満たせなくなってしまうので。

 あるいは、上の論点3で、1日分支給でも継続雇用者に該当するとした場合、前年度は12ヶ月分、適用年度は11ヶ月と1日分となって、前年比減となる要因が増えてしまいます。

 こんな要件、珍しい。


 ここまで書いてきて、継続雇用者の判定要件、結局のところ分からないことだらけです。

 単純に、一般被保険者としての「勤務期間」だけで判定すればよかったと思うんですが、わざわざ「期間内の各月分の給与もらってる」といった厄介な要件を付け加えることで、どんな事例を排除しようとしたのか、よく分かりません。

 小規模宅地等の特例を検討したときと共通してますが、『制度趣旨』からそれぞれの適用要件の位置づけや意味を導くことができないのがネックになっています。

【措置法イジり(小規模宅地の特例編)】
 パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
 イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正

 今回の論点にしても、前回の支給か発生かという論点にしても、とにかくどっちかに決めといてくれ、というレベルの話であって、どちらかが正しい、という類のものではないです。
 当期と前期で同じ基準に揃えるべき、まではいえるとして、じゃあ「社員の所得増やそうぜ」という制度趣旨から、支給で判定すべきとか発生で判定すべき、なんて導けないですよね。

 措置法の要件て、この制度の他の要件でもあるように、前年比で「百分の一・五以上」増えたら、とか、はっきり基準が決まっているのが本来なはず。「所得増やそうぜ」の趣旨だけから、1.5が相応しいのか、あるいは2.0が相応しいのか、なんて解釈しようがないわけで。
 これが「前年比で相当割合増えたら」なんて書かれてたら、どうしようもないですよね。
 
 といったことで、ここまでの私の記述も「こう解すべき」という書き方はほとんどできていません。「実務的には、たぶんこっちの扱いのほうになるんじゃない?」くらいのふんわりニュアンス。

 「税務リーガルマインド」とかいってますけど、本来、この領域ではそんなもの発揮する場面ないですからね。決まった制度を粛々と当てはめていけば済んでたはずなんです。
 それがどういうわけか、ブログで長々とイジり倒す羽目になっている。

【参照条文】(はげしく省略要約してます)

○租税特別措置法42条の15の5第3項

四 雇用者給与等支給額
 法人の各事業年度(「適用年度」)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

五 比較雇用者給与等支給額
 法人の適用年度開始の日の前日を含む事業年度(「前事業年度」)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

六 継続雇用者給与等支給額
 継続雇用者(法人の適用年度及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度(「前事業年度等」)の期間内の各月において当該法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるものをいう。)に対する当該適用年度の給与等の支給額として政令で定める金額をいう。

七 継続雇用者比較給与等支給額
 前号の法人の継続雇用者に対する前事業年度等の給与等の支給額として政令で定める金額をいう。

○租税特別措置法施行令27条の12の5

第13項
 法6号に規定する政令で定める『もの』は、法人の国内雇用者のうち、
 当該法人の国内雇用者として当該適用年度及び当該前事業年度等の期間内の各月分の当該法人の給与等の支給を受けた者

第14項
 法6号に規定する政令で定める『金額』は、法4号に規定する雇用者給与等支給額のうち法6号に規定する継続雇用者に係る金額とする。
posted by ウロ at 09:04| Comment(0) | 法人税法

2018年08月20日

ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ

 平成30年度改正の所得拡大促進税制について、2本ほど記事を書きましたが、実は正面から記事に書くのを避けた部分があります(で、この記事のあとにもう1本書きました)。

【措置法イジり(所得拡大促進税制編)】
 税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)
 武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
 ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
 さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ

 でも、なんかそのままだと気持ち悪いので、そういうレベルのものとご理解頂いた上で、書いてみます。

 それらの記事であげた具体例の前提条件として「当月末〆当月末払」と事例を単純化しておいたのが、そのことに関わります。


 以下、次の略称を使います。

 法 ⇒租税特別措置法42条の15の5第3項のこと
 令 ⇒租税特別措置法施行令27条の15の5のこと

 また、条文の引用については、適宜省略要約入れてますので、正確には原文をご確認ください。

 今回の記事では『継続雇用者』要件のうち、雇用保険の「一般被保険者」であることや「継続雇用制度」の対象になっていないことなどは満たしているものとして記述を進めます。

 なお、私の疑問点をそのままはき出しただけの記事ですので、実際にこの制度をご利用される際には、各自でよくよくご検討いただければと思います。


 法6号では、『継続雇用者』のことを

 「適用年度と前年度の期間内の各月において給与の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるもの」

と定義し、詳細を政令に委ねています。

 で、委任を受けた令13項では、法人の国内雇用者のうち、

 「適用年度と前年度の期間内の各月分の当該法人の給与等の支給を受けた者」

を『継続雇用者』だと規定しています(両年度が同じ月数の場合)。

 これ、法律と政令で違うこと書いているように思うんですが、どうでしょう。

 ポイントを抜きだすと、

  法:各月において支給を受けた
  令:各月分の支給を受けた

と、法は「支給」ベースで記述しているのに、政令では「発生」ベースで記述しているように読めませんか。
 つまり、法は、その月に支給を受けたかを問題としているのに対して、政令は、その月分の支給を受けたかを問題にしていてそれをいつ受けたかは問題としていない、というふうに読めるのではないかと。

【(参考)発生ベースと支給ベース】
支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について

 法律と政令でたまにこういうズレがあるんですが、これは委任の範囲を逸脱してるってことにならないのかどうか。


 政令は逸脱してない、って読もうとするならば、法律と政令の『もの』を介した入れ子構図を忠実に再現し、

  法:各月において支給を受けた者で、
 しかも、
  令:各月分の支給を受けた者

が継続雇用者なんだと、法によって「支給」ベースで絞った上で、さらに政令によって「発生」ベースで絞る、と読み込まざるをえないのでは。

 図式的にいうと、

  法:継続雇用者はA(支給24月判定)で、政令で定める『もの』
  令:法でいう『もの』は、B(発生24月判定)

とあってAとBがオーバーラップしているように読めるときに、

 ・上書説:継続雇用者はB(政令で法を上書き)
 
と解すると、委任の範囲を逸脱しているように読めてしまうので、

 ・追加説:継続雇用者はA+B

と解釈するということ(説の名前は私が勝手につけました)。
 が、法と似たような要件追加するというのも、委任の趣旨にそぐわない気もしますが。

 法律と政令の優劣に関する一般論からすれば「追加説」のほうが望ましい解釈に思えますが、この規定については、実務的には「上書説」のほうの結論で理解されるものと思います。

 もちろん、逸脱ってことを正面から認めるわけにはいかないので、法は必ずしも支給ベースに限定しているわけではない、みたいな読み方をすると。
 で、決して「上書き」ではなく、法が支給とも発生とも読めるところを、政令で発生と明確にしたんですよ、という言い方になるんじゃないですか。


 この「各月分」絡みの説明として、『平成30年度改正税法のすべて』(大蔵財務協会2018)408頁では、

 「支給日が月末の場合において、曜日の関係でその支払が翌月となるようなときであっても、各月に給与の支給があるものと考えます。」

とあり、政令もあくまで「支給」ベースであって、休日の関係でたまたま翌月にずれた場合だけ例外的に当月分支給としてカウントしてあげる、と解釈しているように読めます。



【参照】
平成30年度税制改正の解説(財務省)
「租税特別措置法等(法人税関係)の改正」のところ

 他方で、中小企業庁作成の『中小企業向け所得拡大促進税制 よくあるご質問 Q&A集』の「28」には、

  支給月が支給対象月の翌月となっている場合には、支給対象月のほうで判定する

と、たまたま翌月にずれ込んだ場合とか関係なく「発生」ベースで判定すると書かれているように読めます。

積極的な賃上げに取り組む企業を応援します(中小企業向け所得拡大促進税制)
中小企業向け所得拡大促進税制 よくあるご質問Q&A集(PDF)

 いやどっちだよ、と。

 そもそも、前者の「たまたま説」のほう、その前提が労働基準法24条2項の「毎月一回以上払の原則」におもいっきり違反しちゃってるんですけども、そんなの「著者の個人的見解」とはいえ財務省のサイトに載っけておいて大丈夫なんですかね。

 あれですか、「違法所得にも課税するぜ」と同じノリでしょうか。課税と税額控除で向きは逆ですが、要するに相対性というか独立性というか、税法世界の独立宣言。

労働基準法(e-Gov)
労働基準法24条2項
 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

 まあ、なんのこっちゃよく分かりませんが、実務的には「発生」ベースで考えておけばいいんでしょう、身も蓋もないけれど。


 この法律(支給とします)と政令(発生とします)の関係、次の事例で検討してみましょう。

(例)
 ・前年度: x1.01.01〜X1.12.31
 ・適用年度:x2.01.01〜X2.12.31
 ・給与は当月末〆翌月末払
 ・入社はずっと昔。x2.11月分に退職

  x1.01月〜x2.12月 給与支給   ⇒24ヶ月支給 支給ベースでは○
  x1.01月分〜x2.11月分 給与発生 ⇒23ヶ月発生 発生ベースでは×

 この場合、法だけなら継続雇用者にあたるように読めるところ、政令によって継続雇用者にあたらなくなるわけです(この事例では上書説、追加説いずれでも結論は同じ)。


 『継続雇用者』という『もの』にあたるかどうかを判定する場合のルールが、令13項(だけ)のとおり「発生」ベースだとして、では『金額』のほうはどうかというと、こちらは法6号から令14項に委ねられています。

 で、令14項では、

  法4号の『雇用者給与等支給額』のうち『継続雇用者』にかかる金額

だと規定しています。
 そして、法4号をみると『雇用者給与等支給額』は「損金算入」された額だと。

 つまり、継続雇用者に該当するかどうかは「発生」ベースで判定しつつ、金額が前年比1.5%(or2.5%)増してるかどうかは「損金算入」された金額で判定すると(それぞれ比較すべき前年度の金額も同じルールに従います。)。

 これ、場合によっては集計期間がずれますよね。


 このことを具体例であてはめしてみます。

  A 雇用者給与等支給額    (損金算入)
  B 比較雇用者給与等支給額  (損金算入)
  C 継続雇用者の判定     (発生)
  D 継続雇用者給与等支給額  (損金算入)
  E 継続雇用者比較給与等支給額(損金算入)

  ・前年度: x1.01.01〜X1.12.31
  ・適用年度:x2.01.01〜X2.12.31
  ・給与は当月末〆翌月末払

 ・前々年度 00 x0.12月分 (⇒x1.01月末に支給。以下同じ)
 ・前年度  01 x1.01月分 
         (〜略)
       11 x1.11月分
       12 x1.12月分
 ・適用年度 13 x2.01月分
         (〜略)
       23 x2.11月分
       24 x2.12月分

○会社が「発生」ベースで損金算入している場合(損金算入=発生)

 A 雇用者給与等支給額     ⇒13〜24の給与集計
 B 比較雇用者給与等支給額   ⇒01〜12の給与集計
 C 継続雇用者の判定      ⇒01〜24の全月分の給与支給受けてるか
 D 継続雇用者給与等支給額   ⇒A(13〜24)のうち継続雇用者の給与集計
 E 継続雇用者比較給与等支給額 ⇒B(01〜12)のうち継続雇用者の給与集計

 この場合は、Cの判定で使った金額をそのままD適用年度とE前年度に分ければ済みます。
 なので、01〜24発生の給与を月ごとに出力して、全月に金額が入ってればそれが継続雇用者だってことでそのままその金額を使えばいいわけです。

○会社が「支給」ベースで損金算入している場合(損金算入≠発生)

 A 雇用者給与等支給額     ⇒12〜23の給与集計
 B 比較雇用者給与等支給額   ⇒00〜11の給与集計
 C 継続雇用者の判定      ⇒01〜24の全月分の給与支給受けてるか
 D 継続雇用者給与等支給額   ⇒A(12〜23)のうち継続雇用者の給与集計
 E 継続雇用者比較給与等支給額 ⇒B(00〜11)のうち継続雇用者の給与集計

 ところが、会社が支給ベースで損金算入している場合には、Cの判定期間(01〜24)と、DEの集計期間(00〜23)がずれることになります。

 この場合は、

1 継続雇用者の判定
 01〜24発生の給与を月ごとに出力して、全月に金額が入ってれば継続雇用者にあたる(または、便宜的に入社日と退職日で判定)。

2 前年比増の判定
 1で継続雇用者と判定された人の00〜23発生の金額を集計して、00〜11と12〜23を比較する。

 と二段階の集計・判定が必要となります。


 法律・政令に書かれていることをそのままあてはめてみましたが、そこはかとなく感じる、CとDE間の『ゆらぎ』『ひずみ』みたいなの、とても気持ち悪いんです。

 前回の記事で、「我々税理士は法律・政令・省令をしっかり読み込むべし」なんて建前書きましたけど、こういうすんなり理解できないズレが出てくると、心が消耗する。
 税法条文が徒に読みづらいのは仕方ないとして、変なバグ仕込むのやめてほしい。


 以上、平成30年度改正の所得拡大促進税制、3つ記事書きましたけど、やっぱなんか変ですよね。
 措置法だものドンマイ、てことで呑み込むしかないですか。

 ということで、所得拡大促進税制に関する記事、私の中では法人税(+所得税)関連の記事ではなく、いわゆる「措置法イジり」のジャンルに属してます。ので、以前書いた「小規模宅地の特例」がらみの記事と同じノリで書いています。

【小規模宅地の特例がらみの記事】
 パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
 イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正

 とはいえ、本法で規定されてるか措置法で規定されてるかなんて、税法マニアにしか関わりのないことなので、ブログ上では、あっちは「相続税法」、こっちは「法人税法」にカテゴリってます。

【参照条文】(はげしく省略要約してます)

○租税特別措置法42条の15の5第3項

四 雇用者給与等支給額
 法人の各事業年度(「適用年度」)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

五 比較雇用者給与等支給額
 法人の適用年度開始の日の前日を含む事業年度(「前事業年度」)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

六 継続雇用者給与等支給額
 継続雇用者(法人の適用年度及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度(「前事業年度等」)の期間内の各月において当該法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるものをいう。)に対する当該適用年度の給与等の支給額として政令で定める金額をいう。

七 継続雇用者比較給与等支給額
 前号の法人の継続雇用者に対する前事業年度等の給与等の支給額として政令で定める金額をいう。

○租税特別措置法施行令27条の12の5

第13項
 法6号に規定する政令で定める『もの』は、法人の国内雇用者のうち、
 当該法人の国内雇用者として当該適用年度及び当該前事業年度等の期間内の各月分の当該法人の給与等の支給を受けた者

第14項
 法6号に規定する政令で定める『金額』は、法4号に規定する雇用者給与等支給額のうち法6号に規定する継続雇用者に係る金額とする。
posted by ウロ at 00:01| Comment(3) | 法人税法

2018年08月14日

武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。

 タイトルに「労働者」って書いてるの、間違いではないです。

 税額控除なんだから会社側(+個人事業主)の武器なんじゃないの、というのが普通の反応なんでしょうが、ある特定の状況で特定のコマンドを入力することで、労働者側の武器になるかもよ、というお話(BUG、と書いたら怒られそう)。


 積極的な賃上げに取り組む企業を応援します(中小企業向け所得拡大促進税制)

 平成30年度税制改正の「所得拡大促進税制」について、中小企業庁作成のガイドブックが出たんです。

 ちなみに、2018/4/1以降開始事業年度に適用されるっていうのに、2018/8/8になってやっとでてくるの、どうなんでしょう。
 もちろん、我々税理士は、税制改正大綱が公表された時点から概要を把握しつつ、法律・政令・省令が公布された時点でしっかり条文を読み込むべし、という建前なんでしょうけども、プロ以外の人にとっては、こういう分かりやすい解説がないと、理解しづらいですよね。

 1の記事でも書いたとおり、継続雇用者の要件なんかは場合によっては事前に調整が必要なわけで、期首から数ヶ月ものんびり待ってられないはず。

【措置法イジり(所得拡大促進税制編)】
1 税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)
2 武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
3 ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
4 さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ


 で、このガイドブック読んでみて、1の記事で懸念したとおり、やっぱり「継続雇用者」の判定が、適用年度の決算月まで確定しない、ということになるみたいです。

 その記事では、適用可否の判定時期が遅くなって困る、という「会社側」の立場からの指摘をしました。
 他方でこれ、「労働者側」からみると、適用の可否を自分が「辞める/辞めない」でコントロールできる場合がありそうだなと、思ったわけです。


 以下の事例で検証してみます。

  ・前年度: x1.1.1〜X1.12.31
  ・適用年度:x2.1.1〜X2.12.31
  ・給与は当月〆当月払ということにしておきます。

 前年度は、事務職員のAさんしか従業員がいませんでした。

  ・前年度: Aさんの給与 20万円×12ヶ月=240万円

 適用年度になって、ガンガン採用かけて営業社員がめちゃくちゃ増えました。
 でも、Aさんの給与は上がりませんでした。

 当期の年間給与は次のようになる予定。

  ・適用年度:営業社員の給与総額 5000万円(予定)
  ・適用年度:Aさんの給与 20万円×12ヶ月=240万円(予定)

 で、所得拡大促進税制の適用を受けるには、Aさんの給与を1.5%なり2.5%増やせばいいんだろ、ということで、決算月にAさんに賞与を6万円出すつもりでした。

 そのままAさんがx2.12月までいてくれれば、

  ・前年度: 継続雇用者給与 240万円
  ・適用年度:継続雇用者給与 246万円

と前年比2.5%増となるので、

  ・前年度: 給与総額  240万円
  ・適用年度:給与総額 5246万円
  ・増加額:     +5006万円
  ・税額控除15%(通常の場合)  750.9万円
  ・税額控除25%(上乗せの場合) 1251.5万円

の控除が受けられるはずでした(ただし法人税額の20%まで)。

 ここで仮に、Aさんが12月分給与・賞与を受ける前に辞めてしまった場合には、前年度と適用年度の全月分の給与支給受けた人がいなくなるので、

  ・前年度: 継続雇用者給与 0円
  ・適用年度:継続雇用者給与 0円

となり、税額控除は一切受けられなくなってしまいます。

 あるいは、12月給与はもらったが決算賞与はもらう前にやめた場合には(支給日に在籍が賞与の条件になっていた、とか)、

  ・前年度: 継続雇用者給与 240万円
  ・適用年度:継続雇用者給与 240万円

となり、やはり税額控除は一切受けられなくなってしまいます。
(上記いずれも、厳密には「もらえる地位を取得する前にやめた場合」という言い方になりますかね。)

 とすると、Aさんにとっては、自分が12月分の支給受ける前に辞めるかどうかで、会社が税額控除を受けられるかどうかをコントロールできるってことですよね。
 しかも、もし適用年度の1月分給与を受けた人が他にいなかった場合には、もう1年この地位引っ張れることになります。


 これ、会社にとってはなかなかの脅威だと思うんです。

 もちろん、ある程度人の出入りが安定した会社であれば、1人辞めただけでいきなり適用受けられなくなる、なんてことはないでしょうが、急成長中で人の出入りが激しい会社では、こういうことが起こりかねない。

 この制度、個人事業主にも適用されるので、人の出入りの激しい会計事務所なんて、特にあてはまりそう。
 「国内雇用者」からは、しっかり役員・個人事業主の「親族」が除かれてるし。

(ついでに参考)当ブログにおける「親族」イジりの歴史
 イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
 パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
 ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜
 親族概念の、いてもいなくてもどっちでもいい奴感
 特定新規設立法人のインフィニティ感
 消費税、免税とるって大変よ、という話(2018.1.11現在のルール)

 あらためて思いますが、今回の改正で継続雇用者の集計しやすくなったよかったね、とか、呑気に言ってる場合ではないと思うんです。

 でもやっぱり、ここまで変な要件だと、本当にこういう理解でいいのか全く自信がもてません。
posted by ウロ at 11:57| Comment(0) | 法人税法

2018年05月17日

ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜

 グループ法人税制、平成22年税制改正で創設された制度です。
 できた時点でひととおりお勉強したんですが、その後、正面切って使う事案にでくわしませんでした。

 ということで、改めておさらいしてみたので、備忘ついでに気になったポイントだけ。

1 適用範囲

 この制度、「完全支配関係」がある場合に適用されます。

 完全支配関係:
 一の者(法人または個人)が法人の発行済株式等の全部を直接または間接的に保有する場合における法人間の関係

 持株会がある場合とかの例外はあるんですけど、基本的に、100%支配の場合に適用されます。1%でも他人が持っていたら適用されないという(名義株とか持株会の話は別として)。

 で、定義の中にある「一の者」なんですけど、この者が「個人」の場合には、文字通りの同一人物だけではなく「特殊の関係にある個人」も含まれます。
 
 特殊の関係にある個人:
  ・その個人の「親族」
  ・その個人と「内縁関係」にある者
  ・その個人の「使用人」
  ・その個人からの資金援助で生計維持してる者
  ・上記の者と生計一の親族

なので、

  甲(自分)→A社(100%)
  乙(知らない親戚)→B社(100%)

という場合でもAB間には「完全支配関係」がある、てことになりえます(法人税法施行令の力で、知らない親戚のおじさんと一体化するイメージ)。

 で、グループ法人税制、知っていようが知っていまいが強制適用なので、たまたま取引したお相手の会社が遠い親戚がやってる会社だった場合、

「そうなんですか!奇遇ですね!」

という喜びの声ではなく、

「ふざけんな!お前のせいで面倒なことになってるじゃねえか!」

となることがあるかもしれません。

以前の記事、

特定新規設立法人のインフィニティ感

の中でも、親族の範囲の広さにドン引きしたところですが、あっちではまだ「生計一」でほんのり絞りをかけてました。ところがこっちではそういう限定がないので、もらい事故の確率が上がりますよね。

 とはいえ、税務署側にしたって、遠い親戚なんてそう簡単に把握できないわけで、事実上スルーされてるのもあるんでしょう。
 今後マイナンバーが戸籍のほうに入り込んできて、それを法人の調査でも使える、なんてことになったら、把握しやすくなるのかもしれませんが。

2 グループ内の資産譲渡

 グループ内で含み損益のある資産を移動させても、その含み損益実現させませんよ(譲渡損益を繰り延べる)、という制度です。

 これ、最初に制度趣旨をきいたときには、グループ内でどんだけグルグルさせても、グループ外にでるまでは実現させない、という制度かと思いました。

 ところが、よく読んでみると(ABCはグループ会社)、

  A→B Aの譲渡損益繰り延べる
  B→C Aの譲渡損益実現させる、Bの譲渡損益繰り延べる

となるとのことで、まだグループ内にあってもBが譲渡した時点で、Aの譲渡損益実現させちゃうんですよね。

 これが、

  A→B Aの譲渡損益繰り延べる
  B→A Aの譲渡損益実現させる、Bの譲渡損益繰り延べる

の場合でも、Aの譲渡損益実現させるということで。

 もちろん、そういう取引自体がおかしいということで、否認されるのかもしれませんが。

3 グループ内の寄付

 グループ内で寄付した場合、

  あげた側:寄付金の全額損金不算入
  もらった側:受贈益の全額益金不算入

となります。
 これは、グループ内でお金は自由に動かしてもいいけど、損益の付替えはできませんよ、ということですね。

 A 寄付金/現金 ⇒全額損金不算入
 B 現金/受贈益 ⇒全額益金不算入

 ABとも、損益はプラスマイナス0で、お金だけが動きます。

 お金を動かさないパターンもあって、たとえば、AがBにお金を貸した場合、利息をもらう/払うのであれば、

 A 現金/受取利息
 B 支払利息/現金

という仕訳がたつわけです。

 他方で、無利息の場合には、

 A 寄付金/受取利息
 B 支払利息/受贈益

となると。
 この場合、寄付金が全額損金算入、受贈益が全額益金算入なら、ABとも損益はプラスマイナス0ですんでしまいます。

 ところがこの制度が適用されると、Aは受取利息、Bは支払利息だけが損益として残るので、損益だけみると、利息をもらう/払う場合と同じになります。有利息か無利息かで、損益を調整することができないと。
 違うのは、現金がBからAに移動してないってところだけです。

 で、さらに、これ適用されると、Aが現金もらえてない/Bが現金払わないで済んだ、をそれぞれの株価に反映させようぜ、てことで、「税務上の帳簿価額」を調整しないといけなくなります(A株−/B株+)。

 そうすると、将来その株売るときの譲渡損益が、会計と税務でずれることになります。
 あと、純資産価額方式で株価算定するときにも「税務上の帳簿価額」を使うんで、そっちにも影響するわけですね。
 みなし配当ででてくるプロラタ計算も税務上の純資産でしたね。

 なお、この制度、法人支配の場合にかぎるので、親戚のおじさん事例の場合は適用なしです。
 個人間で、税負担なしで資産の移転されたら困る、ということですね。

4 グループ内の配当

 グループ内での受取配当は全額益金不算入になります。
 これも、グループ内での資金移動は自由ってことですかね。

5 グループ内での自己株式の取得、適格現物分配、解散

 このあたりは最初にお勉強したときにはよく意味が理解できていなかったのですが、組織再編税制とか資本等取引あたりにかかわるようになってから、ようやくまともに意味がわかるようになりました。

 234あたりは、普通の法人税法の理解の延長で理解できると思うんです。
 が、ここからは「ようこそ組織再編税制の森へ」という感じで、グループ法人税制やってたつもりが、いつの間にか組織再編税制のほうに足を踏み入れてしまっていると。
 あの要件がごちゃついた「繰越欠損金・含み損の引継・使用制限」様も、ちらっと出たり引っ込んだりしてますし。

 ではあるんですが、実務的にみると、グループ法人税制のようなどちらかというと「個別取引」の調整みたいな制度でどうにかしようとするよりも、正面から組織再編税制にのっかって処理をすすめたほうが、グループ内の整理はやりやすい気はします。
posted by ウロ at 12:46| Comment(0) | 法人税法

2018年03月28日

税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)

※改正ふまえて、記述を追加・修正しました
 と、このあと、所得拡大促進税制について、連載もの風にいくつか記事書いてます。

【措置法イジり(所得拡大促進税制編)】
 武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
 ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
 さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ


 「所得拡大促進税制」、今までもあれこれ改正されてましたが、平成30年4月1日開始事業年度以降からのやつ、だいぶ変わるようで。

経済産業省関係 平成30年度税制改正について(29頁)

 まだ成立してないんですが(年度末までにしますよね?)、税制改正大綱ベースで試算用のエクセルシート作ってて気になったことだけ。成立したら見直します。
(ちゃんとギリギリで成立したので、以下、追加修正加えてます。)


 1「基準年度」との比較がなくなる。

 今までは、いつ適用する場合であっても基準年度は特定の年度に固定されてました。
 ので、基準年度の次年度にごっそり人件費削減すると、その後頑張って人増やしてもなかなか要件を満たせない、ということがありました。

  ・基準年度 10000 (ここで固定)
  ・次年度   2000 ←激しくリストラ
  ・前年度   4000 ←頑張る
  ・適用年度 10000 ←すごい頑張る。
            でも、基準年度+3%になってないので駄目

 改正後は前年度⇔適用年度の比較で判定するので、そういう制約はなくなりますね。

  ・前年度   4000 ←頑張る
  ・適用年度 10000 ←すごい頑張る。

 2「継続雇用者」の定義がかわる。

 今までは、前年度のどこかと適用年度のどこかで給与支給された人が継続雇用者となってました(一般被保険者とか継続雇用制度はおいといて)。

 改正後は適用年度と前年度の全期間の月分の給与支給された人が継続雇用者となります。通常であれば、24ヶ月間分支給された人、てことになります。

 継続雇用者要件の趣旨は、新しく人を増やしてトータルの人件費を増やしても、前からいる人に対する人件費を下げたら駄目だよ、ということなんですが、前より集計自体は単純。
 が、問題は、継続雇用者が誰かということが、今までは適用年度の初月の段階で特定できてたのが、改正後だと適用年度の決算月まで待たないと確定しないということです。

 もちろん今までも、前年度で辞めた人が適用年度で復帰した場合に継続雇用者に入れ直す必要はありましたけど、この場合はその人だけ加算すればいいわけで。
 ところが、改正後は、適用年度の決算月まで待たないと全員確定しないことになるんじゃないかと。


 具体例で考えてみます。

  ・決算月  12月
  ・適用年度 Hx2.12
  ・給与   当月末〆当月末払(単純化のため)

1 改正前
  ・前年度  1ヶ月でも支給あり
  ・適用年度 Hx2.1月1日以降勤務してればHx2.1月に支給あり
 ⇒
  継続雇用者に該当する、てことがHx2.1月1日時点でわかります。

2 改正後
  ・前年度  Hx1.1月〜12月まで全て支給あり
  ・適用年度 Hx2.1月〜11月まで支給あり
        Hx2.12月1日以降勤務してればHx2.12月に支給あり
 ⇒
  継続雇用者に該当するかどうかは、Hx2.12月1日まで待たないと分かりません。


 もし、前年12ヶ月間支給受けた人の中に給与上げた人と下げた人がいて、上げた人ばかり集中的に辞めたりすると、

  前年度:継続雇用者給与等支給額(下げる前)×101.5%
 >適用年度:継続雇用者給与等支給額(下げた後)

となって、要件満たさない、なんてことになるかもしれず、それはまあ仕方ないにしても、そのことが辞めるまで予測しにくいという。
 適用受ける気満々でいたら、突然受けられなくなることも。

 以下、このことを単純例で検証してみます。

  ・前年度  Aさん 50×12ヶ月 +Bさん 50×12ヶ月 =1200
  ・適用年度 Aさん 80×11ヶ月 +Bさん 30×12ヶ月 =1240

《Aさん昇給、Bさん減給、AさんHX2.11月末で辞めた場合(当月末〆当月末払とする)》

1 改正前

  ・比較平均給与等支給額 1200÷24人=50
  ・平均給与等支給額 1240÷23人=53.9

   ⇒比較平均給与等支給額<平均給与等支給額

 なので要件満たす。

2 改正後

  ・前年度  継続雇用者給与等支給額 600
  ・適用年度 継続雇用者給与等支給額 360

   ⇒前年度:継続雇用者給与等支給額×101.5%>適用年度:継続雇用者給与等支給額

  となって要件満たさない。

 もしAさんが12月末までいてくれたら、

  ・前年度  継続雇用者給与等支給額 1200
  ・適用年度 継続雇用者給与等支給額 1240

   ⇒前年度:継続雇用者給与等支給額×101.5%<適用年度:継続雇用者給与等支給額

 となって要件満たしてたわけで、Hx2.12月分支給が確定するまでそれが分からないってことになるのではないかと。


 この「継続雇用者」の内容変更について、「集計楽になったぜ、いえーい!」とか言っている人がいるの、ちょっと信じられない。

 確かに、決算締まってからおもむろに集計しだす系の人なら、そういえるのかもしれません。
 が、毎月の支給実績みながらあといくら出せば適用受けられるか、て逐一試算している人間からすると、継続の人がやめる都度さかのぼって計算しなおすの、「賽の河原の石積み感」があってきついはず。

 おもむろ系の人にしたって、エクセルで集計してるなら、拾い出しの条件式を変えるだけの話なので、別に大して楽になるわけでもない気もしますし。
posted by ウロ at 19:46| Comment(0) | 法人税法