2018年10月01日

ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正

 以前、家なき子の特例についての記事を書きましたが、例によって、ややこしくなるってことで避けてたパターンがあります。

 イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
 パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○

 よくよく考えてみて、やっぱりパラドり具合パねえ、と思ったので整理しておきます。

 なお、以下は本法の説明で「経過措置」については考慮外としています。
 また、事例のAは被相続人(配偶者なし)、Bは法定相続人(子)とします。


 前回の記事では家なき子の要件を以下のように書きました(一般要件除く)。
 
1   被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
2−1 相続前の3年間に
   ・自分と自分の配偶者
   ・三親等内の親族
   ・特別の関係がある法人
   の持ち家に住んでいない
2−2 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
3   相続から申告期限まで継続保有

 2の要件に絞りが入ったと。

 実は2−1には例外が括弧書きで書かれてて、「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除くことになっています。
(以下、2−1の本文のほうを「原則要件」、括弧書きの例外のほうを「除外要件」と呼びます。)

 これ、どういう事例を想定しているかというと、たとえば、

 《事例1》
  ・土地 A所有
  ・建物 B所有
  ・ABが同居していたがBは1年前に転勤で社宅住まい

といった場合。

 この場合、Bは3年以内に自分の持ち家に住んでいたので原則要件に引っかかると思いきや、Aが住んでいたってことで除外要件みたすことになります。


 で、思ったのが次のような事例。

 《事例2》
  ・土地 A所有
  ・建物 B所有(2世帯住宅・区分所有なし)
  ・1階にA居住、2階にB居住
  ・Bは1年前に転勤で社宅住まいで、2階は空家になった。

 まず、Bは3年以内に自己所有の持ち家(2階部分)に住んでいたので原則要件に抵触すると。
 では、これが「Aの居住の用に供されていた家屋」といえるのかどうか。
 1階部分にAが住んでいれば家屋全体がA居住となるのか、それとも、1階と2階は「独立部分」として、2階にはAは居住していないとなるのか。


 この検討は後回しにして、同様の事例で区分所有ありの場合はどうかというと、

 《事例3》
  ・土地 A所有
  ・建物 B所有(2世帯住宅・区分所有あり)
  ・1階にA居住、2階にB居住
  ・Bは1年前に転勤で社宅住まいで、2階は空家になった。

 まず、Bは3年以内に自己所有の持ち家(2階部分)に住んでいたので原則要件に抵触すると。
 そして、区分所有ありの場合は区分ごと別々に居住判定するので、Aは2階部分に住んでいなかったことになり、除外要件にあたらない。
 よって適用なし。

という結論になるんでしょう(ただし後述)。


 で、《事例2》に戻りますが、以前の記事でも書いたとおり、同居判定の二枚舌っぷりがここでどう発揮されるか、という話です。

【いろんな同居】
a どの範囲で特例の適用を受けられるかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (令40条の2第4項)

b 同居親族が適用を受けるために、同居しているかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (法69条の4第3項2号イ)

c 家なき子が適用を受けるために、他の相続人が同居していないかを判定するときの同居
 ⇒独立部分で判定 (通達69の4-21)

d 家なき子が適用を受けるために、被相続人が居住していたかを判定するときの居住
 ⇒???

 a〜cまでをわかりやすく「同居」で言葉揃えてますが、厳密にはそれぞれ言い回しが違いますので、二枚舌というのは言いすぎです。すみませんでした。

 が、紛らわしい表現で混乱させる気満々。書いてあるところも法・令・通とバラバラだし。

 結論的にはabの「一棟ルール」ではなくcの「独立ルール」で判定せざるをえない気がしますが、直接は書かれていないんですよね。

 ポジション的には、cの通達69の4-21が同じ条項のことについて書いていて、一番近いわけです。
 が、ここでは

  ア 「他の法定相続人」が被相続人居住の家屋に居住していたかどうか

の判定のことが書かれているのであって、今回問題としている、

  イ 「被相続人」が家なき子の持ち家に居住していたかどうか

の判定のことは書かれていないわけです。
 しかも、今回の改正前後でこの通達の文言変わってないので、イはそもそも想定していないはず。

 同じ居住なんだから同じ基準でいいだろ、といえないところが、措置法が二枚舌とかパラドキシカルとか揶揄される所以。

 こんな通達、解釈を解釈するでお馴染み、例の裁判体に見られたら、どう判断されるものか。

 解釈を解釈する解釈(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

 実は、区分所有ありの《事例3》も結論ありきで書いているものの、こちらも直接の規定はなかったりします。
 さすがに区分所有あったら別々だろうな、というだけの理由です。

 で、《事例2》のあてはめですが、「独立ルール」で判定するのであれば、2階部分にAは住んでいないことになるので、除外要件は満たさないと。
 他方で、「一棟ルール」なら、Aが1階部分に住んでいれば2階部分含めてAが居住していたことになり、除外要件を満たすと。


 《事例2》《事例3》では、2−1を検討しやすくするため建物をB本人所有ってことにしましたけど、実際にはA所有のほうがありうるかと。

 《事例4》
  ・土地 A所有
  ・建物 A所有(2世帯住宅・区分所有なし)
  ・1階にA居住、2階にB居住
  ・Bは1年前に転勤で社宅住まいで、2階は空家になった。
 
 この場合、A所有でもBの「三親等内の親族」の持ち家となるので原則要件に抵触すると。
 で、除外要件は《事例2》と同じく「独立ルール」なら満たさない、「一棟ルール」なら満たすと。

 ちなみに、改正前だとA所有ならOKだったので、特例適用できてたんですよね。
 それが今回の改正で適用できなくなってしまったと。

 原則要件広げ過ぎちゃったもんだから、除外要件で救済しようとしたんじゃないかと思うんですが、これを「独立ルール」で判定してしまうと、こういう場合(つまり、なんちゃって同居)が救われない。


 居住cと居住dを同じ独立ルールで揃えようとすると、

  a 一棟 ⇒適用範囲広がる
  b 一棟 ⇒適用範囲広がる
  c 独立 ⇒適用範囲広がる
  d 独立 ⇒適用範囲狭まる

と、一人だけ逆方向なわけで、どうやらおかしい。

 abcまでは、二世帯住宅を保護しようぜ、てことで適用範囲を広げたせいでアパート・マンションまで優遇するところまでいっちゃってたわけですけど、dを独立ルールにしてしまうと、その方向性が一気に反転することになってしまうわけです。

 また、区分所有なしの《事例2》《事例4》は、転勤さえなければa+bルールで敷地全体に適用受けられたわけで、この結論の大きな違いはどうやって説明すればいいんでしょうか。


 とりあえず、被相続人Aにはどうにか3年頑張ってもらいますか。
 と、思ったんですが、「経過措置」のことまで考慮に入れると微妙な事態になりそう。

 具体例をあげるとなんか悲しくなるのでやめておきますが、経過措置の適用を受けるには「平成32年3月31日」までに相続が発生する必要があるわけです。
 他方で、新法の適用を受けるには転勤から「3年」経過する必要があるわけです。
 そうすると、経過措置の適用を受けたいのでお早めに、と強く願ってた相続人が、「平成32年3月31日」を境に、転勤から3年経過するまで頑張れ、と手のひら返す事例が想定できそう。

【恐るべき相続世界】
転勤
 ↓ ←旧法で○
平成30年3月31日
 ↓ ←経過措置で○ 「お早めに!」
平成32年3月31日
 ↓ ←3年以内なので× 「やっぱり頑張って!」
転勤から3年
 ↓ ←3年以上なので○ 「もういいよ!」

 措置法本人のみならず、経過措置によって相続人まで二枚舌化ってことですか?

【参照条文(関係ない文言は省略しています)】

○租税特別措置法

(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
第六十九条の四 
3 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

二 特定居住用宅地等
 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、当該被相続人の配偶者又は次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族(当該被相続人の配偶者を除く。以下この号において同じ。)が相続又は遺贈により取得したもの(政令で定める部分に限る。)をいう。

イ 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(当該被相続人、当該被相続人の配偶者又は当該親族の居住の用に供されていた部分として政令で定める部分に限る。)に居住していた者であつて、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。

ロ 当該親族(当該被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者であつて財務省令で定めるものに限る。)が次に掲げる要件の全てを満たすこと(当該被相続人の配偶者又は相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族で政令で定める者がいない場合に限る。)。

(1) 相続開始前三年以内に相続税法の施行地内にある当該親族、当該親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人として政令で定める法人が所有する家屋(相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがないこと。

(2) 当該被相続人の相続開始時に当該親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。

(3) 相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有していること。

ハ 当該親族が当該被相続人と生計を一にしていた者であつて、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の居住の用に供していること。

○租税特別措置法施行令

(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
第四十条の二 
4 法第六十九条の四第一項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち政令で定めるものは、相続の開始の直前において、当該被相続人等の同項に規定する居住の用(同項に規定する居住の用をいう。以下この条において同じ。)に供されていた宅地等のうち所得税法第二条第一項第十六号に規定する棚卸資産に該当しない宅地等とし、これらの宅地等のうちに当該被相続人等の法第六十九条の四第一項に規定する居住の用以外の用に供されていた部分があるときは、当該被相続人等の同項に規定する居住の用に供されていた部分(当該居住の用に供されていた部分が被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(建物の区分所有等に関する法律第一条の規定に該当する建物を除く。)に係るものである場合には、当該一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む。)に限るものとする。

10 法第六十九条の四第三項第二号イに規定する政令で定める部分は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める部分とする。

一 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が建物の区分所有等に関する法律第一条の規定に該当する建物である場合
 当該被相続人の居住の用に供されていた部分

二 前号に掲げる場合以外の場合
 被相続人又は当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分

○租税特別措置法 通達

(被相続人の居住用家屋に居住していた親族の範囲)
69の4-21 措置法第69条の4第3項第2号ロに規定する当該被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族とは、当該被相続人に係る相続の開始の直前において当該家屋で被相続人と共に起居していたものをいうのであるから留意する。
 この場合において、当該被相続人の居住の用に供されていた家屋については、当該被相続人が1棟の建物でその構造上区分された数個の部分の各部分(以下69の4-21において「独立部分」という。)を独立して住居その他の用途に供することができるものの独立部分の一に居住していたときは、当該独立部分をいうものとする。
posted by ウロ at 11:07| Comment(0) | 相続税法

2018年06月06日

イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正

 イタチ派陣営から怒られそう。

 前回の記事でスルーした「家なき子特例」の平成30年改正、さすがに気になるところがあったので、軽く触れておきます。
 一応条文読みながら事例の当てはめしてみたんですが、とても一貫性があるように読み取れませんでした。ので、以下は法令の文言の形式的な当てはめレベルのものとしてご理解いただいて、実際の当てはめは個別にご相談ください。


 「家なき子」の特例に特有の要件というのが、改正前は、

1 被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
2 相続人は相続前の3年間に自分と自分の配偶者の持ち家に住んでいない
3 相続から申告期限まで継続保有

でした(一般要件は省略)。

 このうち2の要件が厳しくなりました。具体的には、

2−1
 相続前の3年間に
  ・自分と自分の配偶者
  ・三親等内の親族
  ・特別の関係がある法人
 の持ち家に住んでいない

というのと、

2−2
 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない

というのが仲間に加わりました。

 このブログでも『ひ〜ろ〜す〜ぎ〜!』と散々いじってきた「親族」概念ですが、2−1ではさすがに「三親等内」に絞っています。

○当ブログにおける『親族』イジりの歴史
親族概念の、いてもいなくてもどっちでもいい奴感
特定新規設立法人のインフィニティ感
ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜

 また、2−1のほうは「3年」絞りがあるんですが、2−2のほうは、条文上期間制限ないので、理論上は0歳まで遡るってことに。


 この、いかにも租税回避行為防ぎました感満々の改正なわけですが、次のような事例を防ぐための改正でした(以下、各事例は2以外の小規模宅地等の要件満たす前提で)。

《基本条件》
 A 被相続人(配偶者なし)
 B 相続人(子)
 C Bの子(孫)

 甲土地建物(甲家) A所有でAが一人で居住
 乙土地建物(乙家) B所有でBCが居住

 AとBCは生計別

  甲家 所有 A
     居住 A
  乙家 所有 B
     居住 BC

 以下、甲家につきBなりCが家なき子特例を受けられるかを検討します。

《事例1》
  乙家 所有 B
     居住 B・C

  B相続:改正前×⇒改正後×
  C受贈:改正前○⇒改正後×

 Bは乙家を所有・居住しているため、特例の適用を受けられない。
 そこで、甲家をAからCに「遺贈」する。
 Cは持ち家ないので適用を受けられる(改正前)。

 これが改正後は、CはB(三親等内の親族)の持ち家に住んでいるからダメ、ということになるわけです(2−1)。
 が、Cが適用受けたければ、近所にアパート(丙家)でも借りて一人暮らしすればいい(でも生計はBと一緒)、てことでいいんですかね。

  乙家 所有 B
     居住 B ⇒Cは丙家へ引越
  丙家 所有 他人
     居住 C(3年超)

  C受贈:改正前○⇒改正後○

《事例2》
  乙家 所有 B⇒Cへ譲渡
     居住 BC 

  B相続:改正前○⇒改正後×
  C受贈:改正前×⇒改正後×

 Bは乙家を所有・居住しているため、特例の適用を受けられない。
 そこで、BはCに乙家を売るなりあげるなりしつつ、居住はそのままとする。
 Bは持ち家ないので適用を受けられる(改正前)。

 これが改正後は、BはC(三親等内の親族)の持ち家に住んでいるからダメ、ということになるわけです(2−1)。

《事例3》
  乙家 所有 B⇒他人へ譲渡
     居住 BC(3年超)

  B相続:改正前○⇒改正後×
  C受贈:改正前○⇒改正後○

 じゃあ、ってことで、Bは他人に乙家を売って、相場通りの家賃を払いつつ引き続き住んでいたらどうかですが、この場合のBは、2−2に引っかかってダメになりました。
 ちゃんと家賃払っていたらよさそうな気もしますが、少なくとも、措置法・施行令レベルでは有償/無償での区別はされていないです。
 しかも、相続発生よりも何十年も前で租税回避のつもりは全くなくって、当時まとまったお金が必要になったから売っただけ、という場合であっても、引っかかります。期間制限ないし、意図も要件じゃないし。

 が、Cにとっては自己所有ではなかったわけなので2−2には引っかからず、Bが売ってから3年超なら2−1もOKということになります。


 こういうイタチごっこ系の改正、だいたい巻き込み食らう事例がでてくるんですが、次のような事例は、適用受けるのが不適切な事例といえるんでしょうか。

《事例4》
  丙家 所有 A
     居住 BC 

  B相続:改正前○⇒改正後×
  C受贈:改正前○⇒改正後×

 BCはA所有の賃貸マンションの1室(丙家)を相場賃料払って借りていた。
 Aから、自分が亡くなっても実家(甲家)は残してほしい、と言われたので、A死亡後甲家に引っ越した。

⇒BCはA(三親等内の親族)所有の持ち家に住んでいたからダメ。
 被相続人であるAも、BCからしたら三親等内の親族なので、ダメってことになるんですよね。「三親等内の親族」から被相続人だけは除外する規定でもあるかと思ったんですけど、ちょっと見当たらない。

《事例5》
  丙家 所有 E社(D100%支配)
     居住 BC 

  B相続:改正前○⇒改正後×
  C受贈:改正前○⇒改正後○

 BCは、Bの叔父Dが100%支配している不動産会社Eから、同社所有マンションの1室(丙家)を相場賃料払って借りていた。

⇒Bは関係法人(三親等内の親族Dが50%超支配する法人)所有のマンションに住んでいるからダメ。
 でもCにとってはDは4親等なので、Eは関係法人にあたらずOK。

 「グループ法人税制」のときみたいに、『ピュア親族』ではなく「三親等内」絞りがあるから、実は知らない親戚がやっていた、みたいなことはないにしても、Bは叔父さんの不動産会社からは借りないほうがいい、てことになってしまうわけです。

 が、Cなら大丈夫だと。
 3親等の起点が、被相続人ではなく取得者側なもので、誰がもらうかで関係者の枠が動いてしまう。

 何この違い。

《事例6》
  丙家 所有 学校法人E
     居住 C

  C受贈:改正前○⇒改正後○

 Cは遠方の中高一貫校に通うため、Bから離れて学校寮(丙家)に住んだ(3年超)。

⇒Cは第三者E所有の寮に住んでいるからOK。
 
 これ、普通の家庭の事例を想定して「第三者」としましたけど、三親等内の親族が理事やっている学校法人とか、あるいは、学校ではなく同親族がやっている進学塾の寮だったりしたら、関係法人に該当してダメってことになるんですか?

 『コネ入寮防止法』ですか。

《事例7》
  丙家 所有 B⇒不動産業者E
     居住 他人      ⇒B 

  B相続:改正前○⇒改正後×

 Bは自己所有のワンルームマンション(丙家)を第三者に賃貸し、自分は別の賃貸マンションに住んでいた。
 その後、Bは海外勤務になったので、丙家を不動産業者に売却。
 海外勤務から戻ってきたら不動産業者が丙家を賃貸に出していたので、相場賃料払って住むことにした。

⇒Bは居住している丙家を所有したことがあるのでダメ。
 わざとBの所有時期と居住時期がかぶってない事例にしてみたんですが、この場合でも条文読む限り

  相続時居住+過去所有
であって、
  相続時居住+過去居住・所有

とは読めないので、ダメっぽい。


 あれこれ事例あげて、要件どおりに○×判定しましたけど、これどういうポリシーに沿って結論が導かれてるのか、一貫した説明ってできますかね。

 法学分野で各種答案を書く際には、法の『立法趣旨』が重要で、関連判例の規範とか忘れちゃっても、とりあえず『立証趣旨』からの解釈をしておけばどうにか形にはなる、と言われたことがあります。
 が、これら事例の○×から、家なき子特例の『立法趣旨』を読み取って、趣旨からの規範定立をすることは可能でしょうか。
 所詮措置法上の優遇措置なんだから、とにかく要件を暗記するものであって、立法趣旨なんて大事じゃない、ということですか。

 でも、小規模宅地の特例、結構裁判になってて、個々の要件の法解釈をする際に『この制度の立法趣旨は〜であるから、』て感じで規範導いたりしています。
 叔父さん(三親等)の持ち家はダメだけど従兄弟(四親等)の持ち家なら住んでてもいい、という結論を導くのに相応しい立法趣旨って何でしょうね。

 そもそも《事例1》とか《事例2》とか《事例3》というのは、制度趣旨に反する事例といえるものだったのかどうか。制度趣旨自体がよく分からなくなっているんだから、それに反するとか、あるいは制度の濫用だ、なんてことも言えない気がするんですけど。


 ちなみに、まだ改正後通達が確認できてないので、緩和通達みたいのがでてくれるかどうか、要確認です。

 家なき子ルートがここまで狭くなってくると、やはり『なんちゃって同居』ルートを最大限活用するのが望ましい、ということになりますか。「推し同居はなんちゃって同居です!」とか言うつもりは無いんですけど。

パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○


 いわゆる相続「税」対策、色々あるとは思うんですが、もうすぐ亡くなるとかじゃない限り、結構先のことになるはずです。で、措置法頼みの対策(特にギリギリを攻めるやつ)って、こういったモグラ叩き改正が入るので、あまり当てにならないです。少なくとも、後戻りができるような対策にしておかないと、後々取り返しがつかない、ということもあるわけで。

 この改正、平成30年4月1日以後の相続に適用されるんですが、平成32年3月31日までの相続なら、平成30年3月31日時点で改正前要件を満たすかどうかで判定してもいいよ、という「経過措置」があります。
 有り体に言えば、平成32年3月31日までに亡くなってくれればそのままでいいけど、それより長生きしそうだったら対策組み直さないといけない、ということになるわけです。
 なかなか残酷な経過措置だと思うんです。が、相続税法関係の改正、悲しいけどこれ、基本そういう話になります。

 今回はこういう経過措置あるからまだいいんですけど、3月ぎりぎりに成立して4月1日から施行する、ていうのやめてほしいです。
 なんせ、このブログ書いてる現時点(平成30年6月6日)で、e-Govの法令検索でも国税庁のタックスアンサーでも、平成30年改正まだ反映されてませんからね。法令はまあ探せばいいですけど、通達はまだ公表されてないですし。緩和通達みたいのが不意打ち的に出てこられると困る。

租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
posted by ウロ at 09:23| Comment(0) | 相続税法

2018年05月30日

パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○

 いくら思考実験とはいえ、お猫様で例えるのはどうかと思うので伏字。
 なお、私の党派的な立場の表明として、犬派か猫派かについては完全中立、きのこ派かたけのこ派かについては完全たけのこ派とさせていただいております。

 パラレルワールドと言っても多重世界線と言ってもいいんですが、同居であると同時に同居でない、という状態を作り出す、さすが租税特別措置法の世界、クリエイティビティですねえという話。

租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

(それぞれ一条づつしかないのに本文貼り付けない理由は、リンク先を閲覧していただければわかります)


 特定居住用宅地の特例、節税に使われまくってるせいで、頻繁に改正が入ってます。平成30年改正でも、しっかり租税回避対策で要件が絞られました。
 一方で緩める側の改正も過去されてきてます(二世帯住宅、老人ホーム、限度面積、併用など)。

 なもので、かつてと比べると要件が相当複雑になってしまいました。もちろん、どストレートな典型例であれば迷うことはないんですが、そう単純なご家庭ばかりじゃないわけで。

 今回は、平成30年改正とかややこしい事案には触れずに、紛らわしい箇所をピンポイントでイジる感じです。

《事例1》
 A 被相続人(配偶者なし)
 B 相続人(子)

 A所有の土地建物(アパートで区分所有なし)
 101にA居住、401にB居住、その余は他人に賃貸

 Bが土地建物を相続し401で居住継続


 この場合、101だけでなく、401も「特定居住用宅地」にあたります。
 一棟の建物で、区分所有してなければ、親族B居住部分も該当すると。典型的な2世帯住宅だけでなく、マンションの別室でも、分譲じゃなきゃOK。しかもBは、生計が別でも大丈夫です。

 そのうち絞りが入りそうですけど、現時点ではそうなってます。

《事例2》
 A 被相続人(配偶者なし)
 B 相続人(子)、C 相続人(子)

 A所有の土地建物(アパートで区分所有なし)
 101にA居住、401にB居住、その余は他人に賃貸

 Cは別の賃貸住宅に住んでいた(過去家屋の所有なし)。
 Cが土地建物を相続し、101に居住。


 いわゆる「家なき子」の事例です。
 適用範囲の判定は《事例1》と同じです。この場合も、101だけでなく401も「特定居住用宅地」に該当します。

 で、「家なき子」の特例使うには、Aの居住部分に、一緒に住んでる法定相続人がいないことが条件になっています。この場合は、BとAは同じアパートだけど別の部屋に住んでるから、要件満たすと。


 事例1、2とも、相続発生前は同じ状態です。

 なんですが、特例の適用範囲を決めるときにはB居住部分もA居住部分と一緒に扱う、他方で、「家なき子」特例の同居人判定のときにはBはAと別居してると扱う、ということが起こっています。

 これ、別に矛盾してるわけじゃなくって、租税特別措置法69条の4&同施行令40条の2で、そのとおり書き分けがされています。


 そのあたり、正確に理解しているのかしていないのかわからないのですが、概要、次のような記述をしてる税理士先生のサイトが結構あったりします。

《事例1のあてはめ》(駄目な説明例)


 BはAと同じ建物に住んでいるので、Aと「同居」しているとみなされます。
 したがって、AB居住部分が適用範囲になります。
   101 A居住
   401 B居住 ←Aと同居とみなす

これだけだと、まあそうなんだいいね、くらいの感じですよね。

《事例2のあてはめ》(駄目な説明例)


 BはAと同じ建物に住んでいるので、Aと「同居」しているとみなされます。
 したがって、AB居住部分が適用範囲になります。
   101 A居住
   401 B居住 ←Aと同居とみなす

 また、Aと「同居」している人はいないので、Cは「家なき子」の要件満たします。
   101 A居住
   401 B居住 ←Aと同居していない

 こうつなげて書かれると、???てなりますよね。

 結論は間違っていません。
 でも、同じ「同居」という言葉を使っているせいで、AとBが「同居している」世界と「同居していない」世界が重なり合った状態が誕生してしまっています。

 そもそも、措置法・施行令では「同居」という用語は使われていないわけで、この用語使うにしても、適用範囲の判定と同居人いない判定のどっちかでしか使わないほうがいいと思うんです。
 たぶん後者で使うのが日常用語に近い。前者でも同居といいたくて仕方ないのであれば、「なんちゃって同居」とでも表現したらどうでしょう。このほうが実情をよく表してる気がします。

101 AB居住 ⇒Bは「同居」してる

101 A居住
401 B居住 ⇒Bは「なんちゃって同居」はしているが「同居」はしていない

 あの別に、全国の「特定居住用宅地の要件を満たすために親と同居せざるをえない皆様」に「なんちゃって同居」を推奨しているわけではなく、税法上そうなっていますよ、という説明ですので、念の為。


 ということで、冒頭で措置法ディスったものの、措置法自体はちゃんと書き分けてるわけで、それを説明しないほうが悪い、冤罪だからきちんと謝罪しろ、と言いくるめられそうです。
 が、そもそも、入り繰り入り繰りで細々と書き込まれても、そんなの説明しきれねえよ、という反論もできるわけで。

 ちなみに、国税庁のタックスアンサーでも、そのへんの違いはわかりにくいです(3(2)の表)。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

 取得者のところに「同居」とあるけど、これだけだとアパート・マンションの別部屋でもいい、とは読めないですよね。一応、注3Aに「二世帯住宅」のことが書いてあるけども、これが表の中のどこの要件にかかるものなのかが不明だし。

 タックスアンサー含め、国税庁側の出す情報の傾向として、

・うっかり優遇受けられると勘違いしがちな記述には厳密
・うっかり優遇受けられないと勘違いしがちな記述には寛容

というのがある気がします。まあ、そういうお立場ですし。

 ので、そのへんの読み解きをする、というのが税理士の出番になるんでしょう(のに、誤解の上塗りみたいなサイトがあるのはどうかと)。
 
posted by ウロ at 10:03| Comment(0) | 相続税法