2020年03月02日

無償減資で均等割下げ(節税系の記事ではなく)

 無償減資で均等割が下げられる、というのは、すでに人口に膾炙したところかと思います。
 今さらブロク記事にするような人も、ほとんどいないのかもしれません。

 が、ここでいう「無償減資」というのを正確に理解しておかないと、それらしい手続をとったのに要件満たしていませんでした、となって、取り返しがつかないことになりかねない。

 ということで、条文にそって整理しておきます。
 珍しく節税系の記事かと思いきや、お馴染みの条文読み込み系の記事です。

【これと同じノリ】
みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い


 地方税法、地方税法施行規則、会社法、会社計算規則に跨っていますので、順をおって記述していきます(例によって条文は適宜省略いれています)。

 まずスタートは、何を基準に均等割が決まるかです。

地方税法 第五十二条(法人の均等割の税率)
1 法人の均等割の標準税率は、次の表の上欄に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める額とする。
二 資本金等の額を有する法人で資本金等の額が千万円を超え一億円以下であるもの 年額五万円


 均等割は「資本金等の額」を基準に算定されるとあります。

 「資本金等の額」とは何かというと、

地方税法 第二十三条(道府県民税に関する用語の意義)
1 道府県民税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
四の五 資本金等の額 次に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ次に定める額をいう。
イ 第五十三条第一項の規定により申告納付する法人 同項に規定する法人税額の課税標準の算定期間の末日現在における法人税法第二条第十六号に規定する資本金等の額と、当該算定期間の初日前に終了した各事業年度(イ及びロにおいて「過去事業年度等」という。)の(1)に掲げる金額の合計額から過去事業年度等の(2)及び(3)に掲げる金額の合計額を控除した金額に、当該算定期間中の(1)に掲げる金額を加算し、これから当該算定期間中の(3)に掲げる金額を減算した金額との合計額


 法人税法上の「資本金等の額」に何やら調整を加えるのだと。
 法人税法上の「資本金等の額」については、法人税法施行令に鬼のような加減算がありますが、話が長くなるので中身については省略します。

法人税法 第二条(定義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十六 資本金等の額 法人が株主等から出資を受けた金額として政令で定める金額をいう。


 ということで、地方税法上の「資本金等の金額」を式で書くと次のとおり。

 =地方税法上の資本金等の金額
   法人税法上の資本金等の金額
    +過去事業年度の(1)
    −過去事業年度の(2)(3) 《控除》


 「控除」とあるので、ここまででマイナスなら零とします。そして、

    +当該算定期間の(1) 加算
    −当該算定期間の(3) 減算


と、ここは加算・減算なので、もしマイナスになるならマイナスとする、ということです。


 この、控除・加算・減算する(1)(2)(3)が、複数法令を引用しているので、分解して整理します。

(1)
 平成二十二年四月一日以後に、会社法第四百四十六条に規定する剰余金(同法第四百四十七条又は第四百四十八条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したものを除き、総務省令で定めるものに限る。)を同法第四百五十条の規定により資本金とし、又は同法第四百四十八条第一項第二号の規定により利益準備金の額の全部若しくは一部を資本金とした金額


会社法 第四百四十六条(剰余金の額)
 株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。(各号は省略)

会社法 第四百四十七条(資本金の額の減少)
1 株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

会社法 第四百四十八条(準備金の額の減少)
1 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
二 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額

地方税法施行規則 第一条の九の四(法第二十三条第一項第四号の五イ(1)に規定する剰余金として計上したもの等)
1 法第二十三条第一項第四号の五イ(1)に規定する総務省令で定めるものは、会社計算規則第二十九条第二項第一号に規定する額とする。

会社計算規則 第二十九条 (その他利益剰余金の額)
2 株式会社のその他利益剰余金の額は、次項、前三款及び第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。
一 法第四百五十条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額

会社法 第四百五十条(資本金の額の増加)
 株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 減少する剰余金の額
二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日


 以上から、(1)に含まれるのは平成22.4.1以降の、
  利益剰余金⇒資本金
  利益準備金⇒資本金

に限られ、
  資本剰余金⇒資本金
  資本準備金⇒資本金 

は括弧書きによって除かれていることがわかります。

(2)
 平成十三年四月一日から平成十八年四月三十日までの間に、資本の減少(金銭その他の資産を交付したものを除く。)による資本の欠損の填補に充てた金額並びに会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律((2)において「会社法整備法」という。)第六十四条の規定による改正前の商法((2)において「旧商法」という。)第二百八十九条第一項及び第二項に規定する資本準備金による旧商法第二百八十九条第一項及び第二項第二号に規定する資本の欠損の填補に充てた金額


 旧法の引用は省略しますが、(2)には平成13.4.4から18.4.30までの
  資本金⇒欠損填補
  資本準備金⇒欠損填補

が含まれ、(3)との対比でいうと、資本剰余金を経由する必要がないことになります。

(3)
 平成十八年五月一日以後に、会社法第四百四十六条に規定する剰余金(同法第四百四十七条又は第四百四十八条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したもので総務省令で定めるものに限る。)を同法第四百五十二条の規定により総務省令で定める損失の填補に充てた金額


会社法四百四十六条、第四百四十七条、第四百四十八条は(1)と同じ。

地方税法施行規則 第一条の九の四(法第二十三条第一項第四号の五イ(1)に規定する剰余金として計上したもの等)
2 法第二十三条第一項第四号の五イ(3)に規定する剰余金として計上したもので総務省令で定めるものは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 会社法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少した場合 会社計算規則第二十七条第一項第一号に規定する額
二 会社法第四百四十八条の規定により準備金の額を減少した場合 会社計算規則第二十七条第一項第二号に規定する額
3 前項各号に定める額は、会社法第四百五十二条の規定により損失の填補に充てた日以前一年間において剰余金として計上した額に限るものとする。
4 法第二十三条第一項第四号の五イ(3)に規定する総務省令で定める損失は、会社法第四百五十二条の規定により損失の填補に充てた日における会社計算規則第二十九条に規定するその他利益剰余金の額が零を下回る場合における当該零を下回る額とする。

会社計算規則 第二十七条(その他資本剰余金の額)
1 株式会社のその他資本剰余金の額は、第一款及び第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。
一 法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額に相当する額
二 法第四百四十八条の規定により準備金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額に相当する額

会社法 第四百五十二条(剰余金についてのその他の処分)
 株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。


 以上から、(3)には平成18.5.1以降の、
  資本金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)
  資本準備金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)

 が含まれていることがわかります。

 ・資本剰余金を経由する必要があること、
 ・資本金、資本準備金を減少して生じた資本剰余金であること
 ・資本剰余金に振り替えてから1年以内に欠損填補すること

というのがポイントですかね。


 均等割の算定基準、もう一つ重要なルールがあります。

第五十二条(法人の均等割の税率)
2 法人の均等割の税率は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、当該各号に定める日現在における税率による。
一 次条第一項の規定により申告納付する法人 当該法人の同項に規定する法人税額の課税標準の算定期間の末日
4 第二項第一号に掲げる法人の資本金等の額が、同号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額に満たない場合における第一項の規定の適用については、同項の表の第一号ホ中「資本金等の額が」とあるのは「次項第一号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額が」と、同表の第二号から第五号までの規定中「資本金等の額が」とあるのは「次項第一号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額が」とする。


 地方税法上の資本金等の金額 < 会計上の資本金+資本準備金の合計額


の場合は、右辺が基準となります。
 これは「自己株式の取得」などで、資本金等の金額が会計上の資本金・資本準備金を下回った場合などにきいてくるルールです。

 張り切って左辺を減少させても、あわせて右辺も減少しておかないと意味がない、ということです。


 以上を整理すると次のとおり。

【均等割の算定基準】
 地方税法上の資本金等の金額
  =法人税法上の資本金等の金額
   +過去事業年度の(1)
   −過去事業年度の(2)(3) 《控除》

   +当該算定期間の(1) 加算
   −当該算定期間の(3) 減算

(1)22.4.1〜 無償増資
  利益剰余金⇒資本金
  利益準備金⇒資本金

(2)13.4.1〜18.4.30 無償減資
  資本金⇒欠損填補
  資本準備金⇒欠損填補

(3)18.5.1〜 無償減資
  資本金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)
  資本準備金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)

 地方税法上の資本金等の金額 < 会計上の資本金+資本準備金の合計額
の場合は、右辺を基準とする。



 並べてみて思ったのが、(1)と(3)が表裏になっていないこと。

 たとえばですけど、
  資本金    1000万円
  資本剰余金   500万円
  利益剰余金 ▲1000万円

という会社があったとして、
 資本剰余金をいきなり欠損填補にあててしまうと、(3)の流れに該当しないし、また1年以内という期間制限も超過してしまっているはずです。

  × 資本剰余金⇒欠損填補 

 そこで、資本剰余金を一旦資本金なり資本準備金に振り替えてから、再度資本剰余金に戻して欠損填補したら(3)に該当することになるんでしょうか。

 1資本剰余金⇒2資本金or資本準備金⇒3資本剰余金⇒4欠損填補


 1⇒2は(1)に該当しないので加算されないし、2⇒3⇒4は形式的には(3)に該当しています。

 実際にこういう状態が生じるのか、すぐに思いつかないのですが、たぶんありえますよね。
タグ:均等割
posted by ウロ at 11:23| Comment(0) | 地方税法