2021年02月22日

税務訴訟におけるゴリ押しVS誉めごろし 〜税務トロイの木馬(Tax Trojan horse)

 税法分野における裁決・判決を眺めていると、

  ・あえてギリギリを攻めて租税回避チャレンジ狙っているんだろうな

とか、

  ・うっかりミスを後付けの理由でどうにか正当化しようとしているんだろうな

と感じる事案を見かけることがあります。

 もちろん、判決文に正面からそんなことが書かれていることはありません。
 が、15%未満までOKなところを14.99%に調整していたりすると、「チャレンジングだなあ」と思ってしまいます。

 巷に流布している判例学習法によれば、「判例は事案との関係で理解すべし」という教義が唱えられています。
 もちろんそれ自体は大事なことではあります。が、それを額面通りに理解して、必死になって判決文記載の認定事実だけを読み込んでも、その判決を十分に理解できるとは限りません。

 というのも、判決文記載の事実は、当事者が主張した中で理由付けに必要だと裁判官が思った事実が並んでいるにとどまります。
 実際に裁判所の判断に影響を与えた要素が網羅されているわけではない。もしかしたら、結論を左右した決定的な要素が、認定外のどこかにあるかもしれない。

 とはいえ、外野にはこれら事情は分かり得ない。あたかも認定事実だけから結論を導き出したみたいな書き方するし。
としても、なぜそのような紛争が起こったのか、その背景事情を推測できるだけの知識・経験があれば、理解はしやすくなるでしょう。

 税法以外でも、たとえば会社法における決議無効・取消・不存在の訴えなんて、表向きの無効事由等と本来争いたい事項が盛大にズレていることがありうるわけです。
 ここでも、そのような争いが起こる背景事情を理解できるだけの知識・経験があれば、当該判決を理解するのに、役に立つはずです。
 
 「判例学習本」にもこういう裏読みの技法を書いておいてほしいんですが、まあさすがにゲスの勘ぐりみたいなことを、公刊物に記載するわけにはいきませんかね。


 紛争系の納税者の皆様が、日常系税理士からすると「そんな後付けさすがに通用しないしょや」と思ってしまうような訴訟を提起してくれるおかげで、税務判決が充実していきます。
 当事者的には、漁夫の利感を強く感じてしまうかもしれませんが。

 法学学習において、判決中心の勉強をしてしまうと、頭の中が異常事例ばかりとなって日常的な処理の理解がおろそかになりがちになります。
 そんな中、「そりゃそうだろ」レベルの地に足のついた判決があってくれると、日常系税務にも非常に参考にすることができます。

【通常事例思考】
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)

 ただし、変な争い方をされて変な判決がでてしまっても、それはそれで迷惑。
 そんな判決があるせいで、税務調査時に納税者不利に援用されても困りますし。


 さて、ここまでは、本ブログでもたびたび言及される『判決(学習)論』の一側面。
 ここからは、今回参照する判決について。

平成25年判決分(税務訴訟資料第263号「順号12125〜12365、12379〜12381」)
 12315 東京地方 所得税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
 12314 東京地方 贈与税決定処分取消等請求事件、贈与税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
平成26年判決分(税務訴訟資料第264号「順号12382〜12583」)
 12461 東京高等 各所得税更正処分取消等請求控訴事件 平成26年4月23日
 12434 東京高等 贈与税決定処分取消等請求控訴事件 平成26年3月18日
平成27年判決分(税務訴訟資料第265号「順号12584〜12778」)
 12661 最高二小 所得税更正処分等取消請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日
 12662 最高二小 贈与税決定処分取消等請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日

 納税者の主張を見ているとどうにも後付感が強い。
 ではありますが、うっかりミスということではなく、一方当事者の意向で低額譲渡せざるをえなかったことの尻拭い、といった印象を受けました。
 あくまでも認定事実からの邪推にすぎませんが。

 なんとなくですが、納税者的には「だから否認されるって言ったじゃん」て感じで、頑張って理屈をひねり出したように感じます。
 でまあ、裁判所には通用しなかったと。

 外野からすると、込み入った所得税法9条、59条、60条、相続税法7条あたりの関係を理解するのに、いい参考例になっています。

・所得税法

第九条(非課税所得)
1 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)

第三十八条(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
1 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

第五十九条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
1 次に掲げる事由により居住者の有する譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は
  相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは
  遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その譲渡所得の金額の金額の計算上、なかつたものとみなす。

第六十条(贈与等により取得した資産の取得費等)
1 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一 贈与、
  相続(限定承認に係るものを除く。)又は
  遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡
4 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

・相続税法

第七条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。



 論点を単純化していうと、みなし贈与課税された資産を売却した場合の取得費は、実際の取引価額かみなされた評価額か、というものです。
 事件としては贈与税(みなし贈与)と所得税(みなし譲渡)の2ルートあって論点も複数ありますが、今回は所得税ルートの取得費のところのみ扱います。

 なお、本事件では「通達による時価評価の合理性」も論点になっているところ、同族会社の判定時期については「譲渡前」とされています。
 まあ、そうですよね。

 ほんと、何だったんでしょうか、あの高裁判決。

【あの高裁判決】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決


 以下、本論。
 本事件の事案そのものではなく、モデル化したものを使います。

《前提事実》
・A→B→Cと転々譲渡。
・ABCはいずれも個人(みなし譲渡の出番は無しです)。
・取引対象は譲渡所得の課税対象となるものであれば何でも。
・相続税法上の時価と所得税法上の時価は同額と仮定します。
・時価はA→B譲渡時に50、B→C譲渡時に150。
・Aの取得費は10。
・B→Cの売買価格は150。
・消費税は考慮外。

 これら事実を固定し、これ以外のパラメータをいじることで、ABの課税関係がどう動くかを検討します。
 まずは基本事例から。

課税関係.png


《事例1》
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 時価通りに取引(この数字は取引価額)。
 この場合の課税標準は次のとおり。

 A 所得 40(50-10)
 B 所得 100(150-50)

 通算140の資産増加益に譲渡所得課税されると。
 まあ、普通ですよね。

 次に、A→Bを「贈与」に変えたらどうなるか。

《事例2》
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 140(150-10) 所得税法60条1項1号

 Aの取得費10がBに引き継がれます。
 課税繰延の典型例としてよく出てくるやつで、一般的に問題視されることはないはずです。

 では、《事例2》で現物そのものを贈与するかわりに現金50を贈与して時価売買したらどうなるか(お金をぐるっと回す)。

《事例3》
 A→B 贈与 現金50
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 50(現金50)
 B 所得 100(150-50)

 《事例2》とは、所得通算140で変わらないのですが、内訳がAB間で変動しています。

 譲渡所得が総合課税の場合とか、あるいは分離課税でも特例が使える/使えないによって、AB間の内訳をイジりたい、という誘因が働くことはあるでしょう。
 では納税者は、有利不利に応じて2と3を使い分けることが可能でしょうか。
 いわゆる『私法上の法律構成による否認』の一場面です。

 そもそも所得税法60条が課税繰延しているの、「贈与時に譲渡所得課税するのは贈与者に可哀相だから」という趣旨のはずです。
 であれば繰延を受けるかどうかは納税者の選択に委ねるのが筋です。

 ところが、同条では「みなす」などとして、選択ができない規定っぷりになっています。
 そうとすると、《事例3》は《事例2》の回避事例だとして、贈与に引き直されてしまうことになるでしょうか。

 この問題は完全に余談なので、この程度にしておきます。


 ここまでが露払いの前座で、次からが本題。

《事例4》
 A→B 売買 20 (低額譲渡)
 B→C 売買 150

 A 所得 10(20-10)
 B 贈与 30(50-20) みなし贈与 相続税法7条
 B 所得 130(150-20※) 

 時価50のものを20で売ったので、30は贈与とみなされます。
 問題が※のところで、実際の取引価額である20なのか、みなし贈与の評価額50なのか、ということです。

《評価額説だと》
  B 所得 100(150-50)

 資産増加益140(150-10)のうち、10はAに所得課税、30はみなし贈与課税されているんだから、Bが所得課税される残りは100じゃないのかと。

 《事例2》と《事例3》の関係同様、《事例4》のぐるっと現金バージョンも書いておきます。

《事例5》
 A→B 贈与 現金30
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 30(現金30)
 B 所得 100(150-50)

 AがBに現金30を贈与して残り20をBが自己負担した、ということです。
 こちらも、《事例2》《事例3》の関係と同じように、所得の内訳が変動しているので、やはり同じ問題が生じます。


 判決では、地裁から最高裁まで「実際の取引価額」でいくとされています。
(この論点につき実質的な判断をしているのは地裁判決(12315)なので、以下、同判決を念頭に置いて記述します。)

 みなし贈与課税された資産の取得の「経済的価値」と、譲渡所得課税される資産増加益という「経済的価値」は同一ではないというのが理由になっています。

 確かに、取得費引継ぎの典型例である《事例2》では、資産の取得50に(通常の)贈与課税ずみであるにもかかわらず、140に譲渡所得課税とされていることについて、特に異論が出されることはありません。
 このことからすれば、結論は「実際の取引価額」でよいのでしょう。
(このように、典型例を念頭に置けば無理がある主張をしているあたりが、納税者の主張に対する「後付感」を抱かせる所以です。)

 ただ、その理由付けが「経済的価値が同一でない」というの、どうにも腑に落ちない。

 事例2と4を図で書くとこうなります。
 「A'」は、Aの取得費をBが引き継ぐという意味合いです。

二重課税.png

 かぶってますよね。

 もちろん、二重課税それ自体が悪いわけではありません。

浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)

 たとえば、不動産売買という一つの取引に起因して、所得税・法人税・消費税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・印紙税・登録免許税などなど、いろんな税金が発生します。
 「あの手この手で税金とりやがってふざけんな」という人はいるでしょうが、これを「理論的にみて二重(以上)課税だから違法だ」と主張している人は見かけません。

 この結論をそれらしく正当化したいならば、「経済的価値は別」などと苦し紛れの説明をするよりも、「経済的価値は一部かぶっているかもしれないが、贈与税は資産そのものののストック面、譲渡所得税は資産増加益というフロー面に課税しているからセーフ」という物言いのほうがまだましな気がします。

 確かに、「二重課税でも問題ない」と正面から言ってしまうと、あらゆる方面から批判されることは目に見えている。二重課税(らしきもの)に対する拒否反応には根強いものがあります。どれだけ数理によって不合理性が実証されようとも、そう簡単に納得してもらえるものではない。

 ですし、所得税法9条1項16号の解釈論を深堀りしなければならなくなります。
 ので、裁判所の表向きの理由としては、意地でも別のものに課税しているというしかないのでしょう。
 が、すんなり理解するのが難渋な、苦し紛れの物言いとなってしまっている。

 ちなみに、「みんな」に理解してもらうためには数学よりも自然言語、というのは森田果先生の法学入門書にも書かれているところです。

森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)


 ちなみに、「生命保険年金受給権」の相続税・所得税を二重課税とした最高裁判決も、この「ストック/フロー」の枠組みで説明することは可能です。
 すなわち、将来年金をもらえる権利というストック面に相続税を課税しておきながら、さらに実際にもらった年金というストックに一時所得課税するのは二重課税だ、という感じ。

 本事件の判決と年金の最高裁判決との結論の分かれ目がどこにあるのかといえば、譲渡所得と一時所得の所得の捉え方の違いにあるのだと思います。
 差額に課税するのか、得たものそれ自体に課税するのかという。
 何が所得であるかがそれぞれ異なるから、どのような場合に二重課税となるのかも自ずから違ってきます。
 ので、「所得税と相続税」という括りで年金判決をそのまま横流しするのは無理があります。

 さらなる余談ですが、このように譲渡所得と一時所得とで異なる内実を有しているにもかかわらず、これら違いを無視して統一的な所得概念をもって現行法の所得を定義づけようとする所作、私にはおよそ理解できません。
 そのような定義は、現行法上のすべての所得に当てはまる説明となっていないか、あるいはすべてに当てはめようとして漠然とした定義になるか、いずれにしても現行法に適合的な定義付けにはならないと思います。


 さて、どうやって正当化するかはともかく、本当に両方課税することに問題はないでしょうか。
 比較用に次の事例を追加します。

 《事例2》でAの取得費が40だったとしましょう。

《事例6》
 Aの取得費40
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 110(150-40) 所得税法60条1項1号

 《事例2》と比べてみて、Bにとっては、時価50のモノをもらっていることとそれを150で売ったという点で全く同じです。
 にもかかわらず、《事例6》ではBの所得が110に減っています。

 なぜそうなるかといえば、Bとは無関係の「Aがいくらで取得したか」という事情にBの譲渡益が左右されてしまうからです。

 これのどこが変なのかといえば、贈与税の時価評価がいずれも同じ50であるところにあるのでしょう。
 取得費引継ぎは60条に明記されているし、資産増加益がトータル110であることは間違いないし、ということで、残る贈与税の時価評価のところがおかしいんじゃないかと。

 では、贈与時において《事例2》と《事例6》とで何が違うか。
 資産の抱えている含み益が違うせいで将来譲渡したときに課税される額が違うという点です。

 《事例2》 将来譲渡したら譲渡益40上乗せされる資産の譲り受け
 《事例6》 将来譲渡したら譲渡益10上乗せされる資産の譲り受け

 将来の税負担が明らかに違うのに、このことが贈与税の時価評価に反映されていないのが問題です(今後はこれを『含み税問題』ということにしましょう)。

 ここで皆さんの頭をよぎったと思われるのが、純資産価額方式における「法人税等相当額」の控除。
 評価会社が保有資産を売ったとしたら生じる利益に課せられる法人税を引いて評価してよいと。

 「含み益に対する税金を考慮して評価すべき」という点ではここでの問題と同じですよね。
 この考えをこちらの場面に応用することができないかどうか。


 本事件の納税者は、「通達は不合理!」「二重課税だ!」と正面からのガチンコ勝負に徹しています。
 もちろん第一次的にはそのような争い方が正道でしょうが、ゴリ押し一辺倒では通用しないことがしばしば(実際、本事件では第一審から上告審まで一蹴され続けている)。

 上述のとおり、評価通達には「法人税等相当額控除」という素晴らしい制度が内在されているわけです。
 そこで、いかに評価通達が優れているかを褒めちぎった上で、「法人税等相当額控除」のお考えがまさに本件でも当てはまります、ぜひこちらにも援用してみましょう、といった主張もできたんじゃないかと(これは所得税ルートではなく贈与税ルートのほうで主張することです)。

 若干厄介なのが、取引目的物が「非上場株式」だったらどう評価するのか、という問題(本事件がまさにそう)。
 というのも、評価会社の保有資産の含み益に対する法人税等相当額を控除しておきながら、さらにその株式の譲渡益に対する譲渡所得税相当額を控除するのは「二重控除」ではないのかと。
 「法人税等相当額」自体、局面によっては控除できないことになっているのは、そのあたりの考慮が働いているからでしょう。

 が、本件では大丈夫。
 本判決の立場からすれば同一の経済的価値ではないことになるので。

 というのも、実際に評価会社が保有資産を売却した後、株主が当該株式を売却した場合を想定すると、
 ・保有資産の含み益(だったもの)に「法人税」が課税される。
 ・その実現した含み益から法人税を引いた残りに「所得税」が課税される。
ことになりますよね(あくまで理念としての記述です)。

 もしこれを二重課税でないといいたいなら、本判決の立場からは「別の経済的価値に課税しているからセーフ」と説明するしかありません。
 とすると、その裏返しである控除を重ねて行っても、同じくセーフと言わざるを得ないはずです(対偶チックな発想)。


 このように、通達を褒めちぎって通達内部の制度をご利用させていただく、経済的価値が別という理由を逆手に取って控除場面でご利用させていただく、といった「トロイの木馬」戦法が、本件では主張できたのではないかと思うのです。

 が、実際にはゴリ押し戦法一辺倒で終わってしまっています(もしかしたら争点整理で落とされたのかもしれませんが)。
 
 確かに、代理人弁護士一人の頭の中で、ゴリ押し志向と誉め殺し志向を両立させるのは難しいのかもしれません(ホコタテ)。であれば、複数弁護士に受任してもらって、それぞれ別側面から争ってもらうのも一考に値するでしょう(二頭体制)。

 トロイの木馬戦法が効くのは、正面突破してくれる本隊の働きのおかげですよね。
 こちらが通達が不合理だと強く言えば言うほど、課税庁側は通達の合理性を根拠付けなければならなくなります。そこで、課税庁にがっちり合理性を根拠付けていただいた後に、その合理性にフリーライドして自分の主張をのっけていくと。

 同じく、別の経済的価値なら課税OKという論拠をしっかり固めてもらってから、その延長線上に、控除も重ねてOKという主張をのっけると(もちろん、実際の訴訟では自由に後出し主張できるわけではありませんが)。

 訴訟戦略として、相手方の主張に正面からぶつかるだけでなく、相手方の主張の中に自分の主張を混入させる、という作戦が効いてくる場面もあると思うんです。


 と、理念上は上述の通り控除すべきだとは思います。

 が、実際には、贈与税評価と所得税評価とは必ずしも一致しないとか、贈与税評価は市場価格よりも低めにでがちといったノイズが入ります。
 ので、「含み税があっても個別に評価することはせず、ざっくり低めに出しているからセーフ」といった判断がでてもおかしくない。
 というか、今まで問題視されていなかったのは、暗にそういうふうに考えられていたからかもしれませんし。

 また、控除をやることになったとしても、すべての資産が対象になるのか、とか、実際にどうやって計算するのか、単純に譲渡所得税等相当額を控除すればいいのか、年金受給権的なややこい算出が必要なのか、といった検討も必要なはずです。
 そのあたりは頭のよろしい人たちにぜひお考えいただければ。
posted by ウロ at 10:59| Comment(0) | 判例イジり

2020年04月13日

解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決

※通達が改正されたので末尾に追記しました(2020/08/28)。

 「物言わぬは腹ふくるるわざなり」

 かつては一生駄洒落など言うまい、と思っておりました。
 が、今となってはどうしても言いたくなるときがあります。

 や、決してこれが面白いと思っているのではなく。
 とにかく頭に思い浮かんだことを吐き出しておきたい、ということです(お葬式で笑っちゃう的なエビスイズム)。


 さて、速報ベースで書いた先日の記事。
 
 判決文よく読んでみましたが、予測したとおり初見の感想と変わらず。
 
 ということで、タイトル変えただけ(あと余計な脚色を追加)で再掲。

解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】


 結論だけいうと、譲渡所得は売主の含み益に課税するものなんだから、同族会社となるかどうかは譲渡前の売主の支配力によって判定すると。
 「通達を文理解釈する」などというストレンジ判決は、破棄されました。

【最高裁のサイト】
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89339
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/339/089339_hanrei.pdf


 当ブログでも原判決である東京高裁判決をイジり倒したところですが、補足意見を含めた最高裁判決の判断、このブログとほぼ同旨といっていいんじゃないでしょうか。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決

 そうはいっても、残念ながらこれは「予測が的中したぜ、いえ〜い!」とドヤ顔できるほどのことではないです。
 最高裁が、「通達を文理解釈する」などというエキセントリックな手法をとらず、法律の趣旨に則った解釈をするという、品行方正・清廉潔白な王道の手法をとったからにすぎません(対して原判決が邪道の極み)。

 大昔のコンピュータリバーシゲーム的な。
 定石どおりにしか打たないので、手が読めてしまう感じの。
 もっというと、右足と左足を交互に前に出したら前に進むよ、くらいの。

 判決はドキドキハラハラなゲームじゃないんだから、「予測可能性」という観点からはそれでいいのです。
 今の御時世、ツイスターゲームなんて厳禁なんでしょうね(かなりの確率で「三蜜」という誤字を見かける)。

 理由付けがシンプルで説得力のある判決だと思います(急に謎の上から目線)。

 最高裁であっても、一般民事・刑事以外の領域だと特に、ときとして妙な判決を出すことはあります。
 結論はともかく、たとえば武富士事件判決には、そこはかとなくそういう感を、私は感じます(ということから、やたらと最高裁判決を神格化させる学習法には違和感バリバリ)。

【借用概念論】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)

 が、今回はちゃんとお作法通りの解釈となりました。
 やはり、宇賀克也判事、宮崎裕子判事が所属されている第三小法廷だった、というのが大きいんでしょうね。租税事件だという特殊性に惑わされることなく。


 やや脱線しますが、プロパー裁判官でないからといって、必ずしも自己の学問的良心にしたがった判断をするとは限りません。
 特に学者出身の最高裁判事の場合、過去の判例とマッチしない学説を主張していた場合は悩みどころ。

 そのことを主題としているものとして、たとえば伊藤正己先生のご著書。



伊藤正己 裁判官と学者の間(有斐閣1993)

 伊藤正己先生・判事ご自身は、積極果敢に少数意見を書かれていて、それが一冊の本として仕上がっているのですが、皆が皆そうできるわけではない。


 話を戻して、結論は「破棄差戻し」。
 ということは、納税者側にもワンチャン(ワン・チャンス)なくはない。

 というのも、宇賀判事、宮崎判事お二人の補足意見をみると、通達に対するダメ出しをされています(特に宮崎判事はキツめ)。
 ここに突破口を見出すと。

 以前の記事でも最後にちらっとふれたところですが、「通達が分かりにくいのが悪い」ということで「信義則」などで救済してもらう道も考えられなくはない。

 が、そんな最高裁に歯向かうような判決を、東京高裁に期待するのは望み薄でしょう。

 確かに、最高裁自身が信義則云々について、反するとも反しないとも明言しているわけではありません。
 けども、信義則云々を明言しないまま納税者有利の原判決を破棄して差戻ししているってことは、信義則云々は本件で問題としない、ということが暗に示されているからだと考えられます(信義則と弁論主義の関係はさておき)。
 とすると、差戻審たる東京高裁が、そこをほじくり返すなんてことはしないだろうなと。

 そもそも、東京高裁の判事をやっているほどの優秀な裁判官が、「通達を文理解釈する」なんてビザールな法解釈をしたこと自体が不可解なわけです。
 法解釈のお作法なんて、当然心得ているはずで(ずっと事務方だった、とかでない限り)。

 その行動原理をどうにか説明するならば、近時の最高裁の文理重視の税法解釈におもねったからだと考えざるをえません。最高裁が税法の文理解釈を重視しているのならば、通達も文理解釈するのが最高裁のお眼鏡にかなうはずだろうと。
 「納税者を救済したい」などという熱い気持ちでは、法解釈の常道を踏み外させることはできなかったでしょう。

 で、それが完全に的外れだったと。

 これは決して高裁判事を揶揄しているのではなく。
 優秀なはずの裁判官を、ひどく奇妙な解釈へ向かわせたことの合理的な説明をするとしたら、こういう方向で考えるしかないのではないかという観点からの推測です。

 このあたりは、楊修が曹操に処刑された理由を想起してもらえれば大丈夫です。

 われわれ外野の立場からすれば、東京高裁には、最高裁に嫌がられようとも「信義則アタック」をかましてもらいたいところ。
 で、再度最高裁に上告受理されてその点を明示的に判断してもらえれば、税務信義則判例がまた一つ増えることになりますし(ので、揶揄のつもりはないが煽ってはいる)。


 最初にこのブログとほぼ同旨と言いましたが、私が全然考慮していなかったところが一つ。

 お二人の補足意見では、やけに、所得税基本通達59-6の「例により」に着目されていました。

所得税基本通達59−6(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)
 法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式である場合の同項に規定する「その時における価額」とは、23〜35共−9に準じて算定した価額による。この場合、23〜35共−9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは、原則として、次によることを条件に、「財産評価基本通達」の178から189-7まで((取引相場のない株式の評価))の例により算定した価額とする。


 補足意見のこの箇所、私には、

 『「例により」ってのは、評価通達をそのまま横流しするんじゃなく、所得税法の趣旨にあわせるってことを言っているんだよな、な、そうだよな、そうだったってことにしておこうな。』

と言っているように読めました。

 通達の出来の悪さを論難しておきながらあとからフォローしてあげる、いわゆる「ツンデレ補足意見」です。
 しかも、通達の文言の中でも脇役っぽい子をいきなり表舞台に立たせて活躍させる的な。シンデレラですか。

 さすがに私には、このようなツンデレ要素やシンデレ要素というのが備わっていないので、ここまでの予測はできませんでした。
 精進いたします(宮崎判事のほうは「ツン」が強すぎる気がしますが)。


 ところで、同じくこのブログでイジった東京高裁判決(TPR事件)も上告中です。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)


 こちらの高裁判決は趣旨解釈らしきことをしているので、譲渡所得課税の趣旨から解釈をしている今回の最高裁判決と軌を一にするかのように思えるかもしれません。
 が、散々イジったとおり、こちらの高裁判決、趣旨解釈とはいっても「横流し系」「ロンダリング系」の邪道な趣旨解釈だというのが私の見立て。

 しかもその趣旨というのを立法担当者の解説から流用している、というところがいかにもまずい。
 最高裁が趣旨解釈を重視している、という傾向におもねったつもりなんでしょうが、違うそうじゃない。

 もしまた第三小法廷に係属してしまったら、宮崎判事に「いち立法担当者の解説を鵜呑みにしてんじゃねえ、ちゃんと裁判所として整合性のとれた解釈を示せよ」と言われてしまう気がする。

 なんか感情移入して泣きそう。
 誰か、ツンデレ解釈またはシンデレ解釈をしていただけませんか(介錯ではなく)。

【追記1】
 補足意見でボロクソ言われてしまったので、ということで通達改正案がパブリックコメントに出されてますね。

「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(所得税基本通達59−6《株式等を贈与等した場合の「その時における価額」》)に対する意見公募手続の実施について

【追記2】
 通達改正されました。
 
「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)

 この読替方式というの、結局こちら側で書き換えしなければならなくて、一読性は皆無。
 が、この方式高裁判決がよくやっているやつなので、最高裁的には文句が言えないと思う。
 
posted by ウロ at 10:57| Comment(0) | 判例イジり

2020年03月26日

解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】

 出ましたね、最高裁判決。

 結論だけいうと、譲渡所得は売主の含み益に課税するものなんだから、同族会社となるかどうかは譲渡前の売主の支配力によって判定すると。
 「通達を文理解釈する」などというストレンジ判決は、破棄されました。

【最高裁のサイト】
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89339
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/339/089339_hanrei.pdf

 取り急ぎ速報ベースで記事にしておきます。
 判決文よく読んでから、そのうち再掲する予定(が、たぶん初見の感想とほぼ変わらないはず)。


 当ブログでも原判決である東京高裁判決をイジり倒したところですが、補足意見を含めた最高裁判決の判断、このブログとほぼ同旨といっていいんじゃないでしょうか。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決

 そうはいっても、残念ながらこれは「予測が的中したぜ、いえ〜い!」とドヤ顔できるほどのことではないです。
 最高裁が、「通達を文理解釈する」などというエキセントリックな手法をとらず、法律の趣旨に則った解釈をするという、品行方正・清廉潔白な王道の手法をとったからにすぎません(対して原判決が邪道の極み)。

 大昔のコンピュータリバーシゲーム的な。
 定石どおりにしか打たないので、手が読めてしまう感じの。

 判決はドキドキハラハラなゲームじゃないんだから、「予測可能性」という観点からはそれでいいのです。
 理由付けがシンプルで説得力のある判決だと思います(急に謎の上から目線)。

 最高裁であっても、一般民事・刑事以外の領域だと、ときとして妙な判決を出すことはあります。
 結論はともかく、たとえば武富士事件判決には、そこはかとなくそういう感を、私は感じます(ということから、やたらと最高裁判決を神格化させる学習法には違和感バリバリ)。

【借用概念論】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)

 が、今回はちゃんとお作法通りの解釈となりました。
 やはり、宇賀克也判事、宮崎裕子判事が所属されている第三小法廷だった、というのが大きいんでしょうね。租税事件だという特殊性に惑わされることなく。


 やや脱線しますが、プロパー裁判官でないからといって、必ずしも自己の学問的良心にしたがった判断をするとは限りません。
 特に学者出身の最高裁判事の場合、過去の判例とマッチしない学説を主張していた場合は悩みどころ。

 そのことを主題としているものとして、たとえば伊藤正己先生のご著書。



伊藤正己 裁判官と学者の間(有斐閣1993)

 伊藤正己先生・判事ご自身は、積極果敢に少数意見を書かれていて、それが一冊の本として仕上がっているのですが、皆が皆そうできるわけではない。


 話を戻して、結論は「破棄差戻し」。
 ということは、納税者側にもワンチャン(ワン・チャンス)なくはない。

 というのも、宇賀判事、宮崎判事お二人の補足意見をみると、通達に対するダメ出しをされています(特に宮崎判事はキツめ)。
 ここに突破口を見出すと。

 以前の記事でも最後にちらっとふれたところですが、「通達が分かりにくいのが悪い」ということで「信義則」などで救済してもらう道も考えられなくはない。

 が、そんな最高裁に歯向かうような判決を、東京高裁に期待するのは望み薄でしょうね。

 確かに、最高裁自身が信義則云々について明言しているわけではありません。
 けども、信義則云々を明言しないまま納税者有利の原判決を破棄して差戻ししているってことは、信義則云々は本件で問題としない、ということが暗に示されているからだと考えられます(信義則と弁論主義の関係はさておき)。
 とすると、差戻審たる東京高裁が、そこをほじくり返すなんてことはしないだろうなと。

 そもそも、東京高裁の判事をやっているほどの優秀な裁判官が、「通達を文理解釈する」なんてビザールな法解釈をしたこと自体が不可解なわけです。
 法解釈のお作法なんて、当然心得ているはずで(ずっと事務方だった、とかでない限り)。

 その行動原理をどうにか説明するならば、近時の最高裁の文理解釈重視の税法解釈におもねったからだと考えざるをえません。最高裁が税法の文理解釈を重視しているのならば、通達も文理解釈するのが最高裁のお眼鏡にかなうはずだろうと。
 「納税者を救済したい」などという熱い気持ちでは、法解釈の常道を踏み外させることはできなかったでしょう。

 で、それが完全に的外れだったと。

 これは決して高裁判事を揶揄しているのではなく。
 優秀なはずの裁判官を、ひどく奇妙な解釈へ向かわせたことの合理的な説明をするとしたら、こういう方向で考えるしかないのではないかという観点からの推測です。

 このあたりは、楊修が曹操に処刑された理由を想起してもらえれば大丈夫です。

 われわれ外野の立場からすれば、東京高裁には、最高裁に嫌がられようとも「信義則アタック」をかましてもらいたいところ。
 で、再度最高裁に上告受理されてその点を明示的に判断してもらえれば、税務信義則判例がまた一つ増えることになりますし(ので、揶揄のつもりはないが煽ってはいる)。


 最初にこのブログとほぼ同旨と言いましたが、私が全然考慮していなかったところが一つ。

 お二人の補足意見では、やけに、所得税基本通達59-6の「例により」に着目されていました。

所得税基本通達59−6(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)
 法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式である場合の同項に規定する「その時における価額」とは、23〜35共−9に準じて算定した価額による。この場合、23〜35共−9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは、原則として、次によることを条件に、「財産評価基本通達」の178から189-7まで((取引相場のない株式の評価))の例により算定した価額とする。


 補足意見のこの箇所、私には、

 『「例により」ってのは、評価通達をそのまま横流しするんじゃなく、所得税法の趣旨にあわせるってことを言っているんだよな、な、そうだよな、そうだったってことにしておこうな。』

と言っているように読めました。

 通達の出来の悪さを論難しておきながらあとからフォローしてあげる、いわゆる「ツンデレ補足意見」です。
 しかも、通達の文言の中でも脇役っぽい子をいきなり表舞台に立たせて活躍させる的な。シンデレラですか。

 さすがに私には、このようなツンデレ要素やシンデレ要素というのが備わっていないので、ここまでの予測はできませんでした。
 精進いたします(宮崎判事のほうは「ツン」が強すぎる気がしますが)。


 ところで、同じくこのブログでイジった東京高裁判決(TPR事件)も上告中です。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)


 こちらの高裁判決は趣旨解釈らしきことをしているので、譲渡所得課税の趣旨から解釈をしている今回の最高裁判決と軌を一にするかのように思えるかもしれません。
 が、散々イジったとおり、こちらの高裁判決、趣旨解釈とはいっても「横流し系」「ロンダリング系」の邪道な趣旨解釈だというのが私の見立て。

 しかもその趣旨というのを立法担当者の解説から流用している、というところがいかにもまずい。
 最高裁が趣旨解釈を重視している、という傾向におもねったつもりなんでしょうが、違うそうじゃない。

 もしまた第三小法廷に係属してしまったら、宮崎判事に「いち立法担当者の解説を鵜呑みにしてんじゃねえ、ちゃんと裁判所として整合性のとれた解釈を示せよ」と言われてしまう気がする。

 なんか感情移入して泣きそう。
 誰か、ツンデレ解釈またはシンデレ解釈をしていただけませんか(介錯ではなく)。
posted by ウロ at 10:50| Comment(0) | 判例イジり

2020年03月16日

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 いわゆるTPR事件の高裁判決。

 ・適格合併(完全支配関係あり)
 ・支配関係5年超(欠損金額引継制限なし)

と形式的に要件満たす場合でも、事業実態が完全子会社(被合併法人)⇒親会社(合併法人)に移転していない場合には、法人税法132条の2で欠損金の引継ぎが否認されるか、という論点を扱ったもの(以下、条数は法人税法のもの)。

法人税法 第百三十二条の二(組織再編成に係る行為又は計算の否認)
 税務署長は、合併、分割、現物出資若しくは現物分配(第二条第十二号の五の二(定義)に規定する現物分配をいう。)又は株式交換等若しくは株式移転(以下この条において「合併等」という。)に係る次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には、合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、法人税の額から控除する金額の増加、第一号又は第二号に掲げる法人の株式の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、みなし配当金額の減少その他の事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 合併等をした法人又は合併等により資産及び負債の移転を受けた法人



 以前も東京高裁の判決を検討しましたが、きっかけは「違和感」なんですよね。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決

 それが何に対する違和感かといえば「解釈方法」のところ。
 判決の結論は、以前の記事のは「納税者有利」、今回のは「納税者不利」と、必ずしも納税者不利な結論だから文句をいうわけではないです。
 その結論に至るプロセス(解釈方法)がなんかおかしい、ということ。

 プロセスにこだわるのは、それが過去の判決を検討する主目的だから。

 結論それ自体は当該事案かぎりのもので、他の事案に役立つわけではない。じゃあ、なにが他の事案に資するかといえば、その結論に至ったプロセス部分にあります。
 それが説得力のある解釈であればあるほど、他の事案でも使い回しがされるだろうと、予測をたてることができます。

《判決の強さの縦軸と横軸》
 ・地裁 ⇔ 高裁 ⇔ 最高裁
 ・説得力弱い ⇔ 説得力強い

【判例の拘束力について】
判例の機能的考察(タイトル倒れ)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)

 他方で、奇妙な解釈は、よくよく検討すれば説得力がないことが分かるにしても、「東京高裁の判決があるぞー!」とかいって、中身も検討せずに権威付けに使われることもあるわけです。

 ということで、奇妙な判決は奇妙な判決であることを、しっかり主張しておこうと。
(などという理由が最初からあったわけではなく、「なんかこいつ気持ち悪い」を言語化しようと思ったのが最初のきっかけです。)


 本件の事案については、事実の評価として、本当に事業実態が移っていないといえるか、という点も問題になります。
 が、ここでは単純化のために、全く移っていないものとして論じます(子会社の事業を別会社にまるっと譲渡して親会社には欠片も引き継がれていない)。

 また前提として、そもそも57条3項に形式的に引っかからないのに法132条の2を発動していいのか、という点も争われています。
 こちらは、一応争ってみたレベルの論点でしょうから、省略します。


 まずは、税務上の合併要件を簡単におさらい。

A 適格要件(簿価移転となるかどうか)

ア 完全支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件

イ 完全支配関係あり(同一の者)
 1 金銭等不交付要件
 2 株式継続保有要件

ウ 支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件

エ 支配関係あり(同一の者)
 1 金銭等不交付要件
 2 株式継続保有要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件

オ 共同事業
 2 株式継続保有要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件
 5 事業関連要件
 6 事業規模要件or経営参画要件

(ここでいう「2 株式継続保有要件」の「見込み」に対して、「法的安定性を重視した」とかいう評価をしている記述をイジったことがあります。なお、3も4も「見込み」。)

中里実ほか「租税法概説 第4版」(有斐閣2021)

B 欠損金の引継制限

 で、適格要件を満たすと判定できたあとに、欠損金の引継制限がかかるかを検討します。

 なお、はじめから欠損金の引継が主目的、ということもあるでしょうが、この判決によればそれを主目的にするのはまずい、ということになりました。
 ので、適格要件から順番に検討するという形でどうぞ。

ア 支配関係あり (制限受けるのは)
 7 支配関係5年以内
 8 みなし共同事業要件満たさない

イ 支配関係なし
 制限なし


 そうすると、親会社が完全子会社を吸収合併する場合は、

 1 金銭等不交付要件
 7 支配関係5年超

という要件を満たしさえすれば、適格合併かつ欠損金の引継制限なし、となるはずです。


 が、原判決(東京地裁)及び本判決では、事業実態が親会社に移っていない場合は欠損金の引継制限を受ける、という結論に。

 関係する本判決の判示を引用すると次のとおり。

「控訴人は、法人税法57条2項は、組織再編成に係る未処理欠損金額の引継ぎについて、適格合併が行われた場合には、同条3項の適用がない限りは、引継ぎを認めており、適格合併では、完全支配関係がある場合は、金銭等不交付要件のみを充たせば足りるものとして、従業者引継要件及び事業継続要件を必要としていないから、これらを実質的に充足することを求めることは予測可能性を著しく害するなどと主張する。

 確かに、完全支配関係にある法人間の適格合併については(法人税法2条12号の8イ)、支配関係にある法人間の適格合併におけるような従業者引継要件及び事業継続要件(同条12号の8ロ)の定めは設けられていない。

しかしながら、原判決第5・3(2)が説示するように、組織再編税制は、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がなく、移転資産等に対する支配が継続する場合には、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させるということを基本的な考え方としており、また、先に組織再編税制の立案担当者の説明を引用して判示したとおり、組織再編税制は、組織再編成により資産が事業単位で移転し、組織再編成後も移転した事業が継続することを想定しているものと解される。

加えて、これも原判決が第5・3(2)で説示するとおり、支配関係にある法人間の適格合併については、当該基本的な考え方に基づき、前記の従業者引継要件及び事業継続要件が必要とされているものと解され、殊更に、完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当しないものと解することはできないから、当該適格合併においても、被合併法人から移転した事業が継続することを要するものと解するのが相当である。

そして、これらの基本的な考え方等を踏まえれば、完全支配関係にある法人間の適格合併について、法人税法132条の2の適用の有無に関し、その不当性要件に係る租税回避の意図があるか否か、同法57条2項の趣旨目的から逸脱しているか否かについては、関係者において、当該行為自体から認識し検討することが可能というべきである。

よって、完全支配関係にある法人間の適格合併について、事業の移転及び継続を含め検討すべきものとしても、納税者の予測可能性を害するものとはいえず、控訴人の主張を採用することはできない。」



 いわゆる「趣旨からの解釈」をしているみたいなんですが、どうにもすんなり理解しがたい。

 個々の要件の意味を明確にするために立法趣旨から解釈する、というのが通常の趣旨解釈のあり方だと思います。
 ところが、この判決では、組織再編税制という制度全体の趣旨から、完全支配関係の場合に要求されていない従業者引継要件・事業継続要件を付加する、という、かなりアクロバティックな解釈をやっているようにみえます。

完全支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件  ←New!
 4 事業継続要件   ←New!

 7 支配関係5年超

 これがたとえば、7の支配関係について、名義だけあればいいのではなく実質的に支配してないとだめ、とかならまだ分からないではない。あくまでも既存の要件を精緻化しているだけなので。
 が、あたらしく3、4の要件を付加するなんてことを解釈レベルでやってしまってもいいのか。

 もしこの判決を擁護するとしたら、正面から要件として付加しているわけではない、否認規定を使ってその趣旨を反映しているだけだ、といえるのかもしれません。

 それが、あくまでも否認するための一要素としての考慮にとどまるなら、そういえなくもない(もちろん、余計な考慮要素を増やすと「明確性」の問題がでてきますが、それは否認規定自体の問題でもあります。)。
 ところが、上記判示では「被合併法人から移転した事業が継続することを要する」とはっきり書いてしまっています。

 ので、事業継続していない場合は「必ず」否認されることになります。
 事業継続してないのに欠損金使うのは、常に「不当に」に該当するわけで。

 実際に課税庁が否認規定を発動するかどうかは別として、実体法レベルではそういうことになります。

 もう勇み足感満々。


完全支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件(←否認発動条件として)
 4 事業継続要件 (←否認発動条件として)
 7 支配関係5年超

支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件
 7 支配関係5年超

 並べると、完全と非完全で要件全く同じだぜ。
 これがたとえば、3の「おおむね80%」が完全ならおおむね50%でいいよ、とかいうなら違いがでるんでしょうが、そういうことを判示しているわけでもない。
 完全だから100%必要とか言い出さないだけましですか。

 そもそもこの判決、完全の場合にも3・4と同じものを要求しているのか、それともそれらしい何かを要求しているのか、判示からは読み取れない(のに、予測可能性を害しないとか言っちゃってる)。


 「否認の場合は課税庁に立証責任があるから違うんだ!お前は違いの分からない奴だな!」という反論があるかもしれません。

 が、(この記事では単純化のために省略してしまいましたが)本件事案では「事実認定」ではなくその事実の「評価」のところ(とその前提の法解釈)が主戦場になっています。

 1 法解釈 《完全でも事業継続を要するか》
 2 事実認定 《どういう事実があったか》 ←立証責任が働くところ
 3 事実の評価 《その事実は事業継続と評価できるか》

 ある事実が認定できたとして、それが事業継続と評価できるかというところ。
 ので、立証責任を転換されたところで、おそらく結論に影響がない。

 そもそも、立証責任を転換できるのは、そうできるだけの「事実的基礎」があるからです。

 たとえば、A時点とB時点での占有が認定できるなら、A〜B間の占有も推定する、とか。

  前提事実: A時点占有 B時点占有
  推定事実: A〜Bの占有

 AとBで占有しているってことは、普通はその間もずっと占有してたってことだろ、みたいな。
 で、A〜B占有を否定したい側が、その間の断絶を立証すべきことになると。

 が、完全支配関係と従業者引継・事業継続の間にはそんな連関は存在しない。
 支配とヒト・モノは、全く別物。

【そんな連関ない】
  完全支配関係あり合併: ヒト・モノも継続するのが普通
  完全支配関係なし合併: ヒト・モノは継続しないのが普通

 ということで、完全支配関係があることをもって従業者引継・事業継続の立証責任を転換するなどというのは、およそ合理性を欠いています。


 ところで、これは平成22年税制改正「前」の事案です。

 ここに、平成22年税制改正で導入された「グループ法人税制」を視野にいれると、違った様相になってきます。

ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜

 同制度に、この論点が直接規定されているわけではないです。
 が、「完全」支配関係があるかどうかで同制度の適用を受けるかどうかが決まる、というのは、100%グループとそれ以外とでは、法人税法上も別物だという評価がされているということがいえます。

 そうすると、趣旨解釈をするというならば、この判決のように、ただの支配関係間の合併の趣旨を無遠慮に完全支配関係間の合併にも持ち込むことは、もはやできない。
 完全支配関係間の合併の場合でも、支配関係にとどまる場合と同じ趣旨があてはまる根拠を説明しなければならない。

 本判決では「殊更に、完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当しないものと解することはできない」とか、積極的な論拠もない雑な判示をしているんですが、こんな無粋に、非完全の趣旨をノールックで完全のほうに「横流し」できないってこと。

 というか、同制度が施行される前の行為であっても同じであることの説明が必要だったと思いますが、その必要性がさらに高まったということです。

 そもそも本判決がやってる解釈、趣旨解釈というよりもはや「類推解釈」へ逝っちゃってると思う(あえての誤字)。
 非完全と完全との違いを捨象して、完全のほうに存在しない要件を持ち込んじゃっているわけで。

 これが、完全に要求される要件なら非完全にも要求されるはずだ、という「完全⇒非完全」方向の横流しだったら「勿論解釈」といえるんでしょう(大は小を兼ねる)。
 ところが本判決はその逆、小は大を兼ねる(!?)などという倒錯した解釈に手を出している。
 
【横流し2ルート】
 完全⇒非完全: 大は小を兼ねる (分かる)
 非完全⇒完全: 小は大を兼ねる (!?)

 いやいや、本判決は非完全から直接完全に横流ししているんじゃない、組織再編成の趣旨に遡って検討しているんだ、とかいう反論があるかもしれません。

 が、それ横流しよりさらに悪質な「趣旨ロンダリング」(趣旨ロン)ですからね。

【趣旨ロンダリング】
Screenshot_1.png

 趣旨ロン、ちょっと試してみましょう。

 《メリーゴーラウンド ⇒ 遊園地の遊具 ⇒ ジェットコースター》
  メリーゴーラウンドは幼児でも楽しめる遊園地の遊具だ
  ジェットコースターは遊園地の遊具だ
  ゆえにジェットコースターは幼児でも楽しめる

 《O氏 ⇒ 日本の女性歌手 ⇒ A氏》
  O氏はA氏に過激発言をする日本の女性歌手だ
  A氏は日本の女性歌手だ
  ゆえにA氏はA氏に過激発言をする



 鬼束ちひろ 「REQUIEM AND SILENCE」(Victor Entertainment2020)
 
 「またベスト盤か」とか言わないように。
 新曲『書きかけの手紙』、心がえぐられますよ。

 要するに、後の矢印それ自体の論拠を示すこともなく前の矢印だけを強調したところで、何の根拠にもならない、ということ。

 これがたとえば、

@非完全の適格要件として金銭等不交付要件が要求されている。
A完全の適格要件として金銭等不交付要件が要求されている。
Bゆえに、グループ内合併の適格要件は合併時に支配関係が変動しないことが基本的な考え方。

なら理屈はつながります
 共通要件を括りだしているだけなので。

Screenshot_2.png

 これを
  @非完全の適格要件では事業継続が必要
  Aグループ内組織再編成は事業継続が基本的な考え方となっている
  B完全で欠損金を引き継ぐには事業継続が必要
とかやるから、理屈がガッタガタになるわけです。

Screenshot_3.png

 よりつめて考えてみると、本判決、洗浄2つカマしてませんか。

Screenshot_4.png

 条文にない事業継続を正面から要件として要求するとゲートにひっかかるから、否認規定の「不当に」の中に詰め込んで持ち込むと。
 手口が巧妙すぎやしませんか。


 ちなみに、本判決の趣旨ロン、どうも以下の記述を彷彿させるんですよね。

「この本を読んだ方が、税法の中に数式ではなく、人々の生活の息吹や社会の動きを感じ取って、税法の面白さを少しでも理解してくれたら」

三木義一ほか「よくわかる税法入門 第17版」(有斐閣2023)

 条文上の要件に反映されていない「息吹」(組織再編税制は事業継続がキモだ!)を制度の背後に感じ取って、その「息吹」から一定の解釈を導くみたいなノリ(今だと『ミタマセキュ霊ティ』でイメージしてもらえばいいですか?)。


 さらにいうと、同じく平成22年税制改正で導入されたもので、完全子会社を「清算」した場合に欠損金を引継ぐ、ことになりました。

 なんと、事業を引き継がなくても欠損金を引き継げるという制度ができてるじゃないですか(新しい制度というか57条2項に事由が追加されただけ)。
 要は、100%グループならなるべく一体として扱おうぜ、の一環(ので、これもグループ法人税制のひとつですが、別立てで取り上げます)。

 まさか清算の場合にまで、事業継続が隠しコマンドとして存在するなんておバカなこと言いませんよね。

【事業継続横流し新ルート開拓】
  非完全合併 ⇒ 組織再編成 ⇒ 完全合併 ⇒ 完全清算??

 では、もし本件が改正後で「清算」ルートでいった場合はどう評価されるのか。
 本件事案と同じようなことは、別会社に事業譲渡をしてから子会社「清算」でも実現できるわけです(あるいは、改正前の「子会社株式清算損」ルートでもよさそう)。

 親会社:不動産屋、完全子会社:ナタデココ屋でイメージしてみましょう。

 合併ルート1:不動産屋が、ナタデココ屋の事業を他社に事業譲渡してから吸収合併
 合併ルート2:不動産屋が、ナタデココ屋を吸収合併してから同事業を他社に事業譲渡
 清算ルート: 不動産屋が、ナタデココ屋の事業を他社に事業譲渡してから清算
 (合併ルート2があるのは、事業継続要件が「見込み」なせいです)

 もちろん「組織再編成」の132条の2は使えませんが、「同族会社」の132条の適用があるのかどうか。

 合併ルートでいくと否認されるから清算ルートでいったんだろ、とか、別会社にまるっと事業譲渡していてそっちが事業やっているから実質的に清算したとはいえない、とかいう理由で否認されてしまうのか。

 さすがにそこまでの拡張はされないはずですが、この判決のノリからすると、そういうことを言い出しても驚かない。


 グループ法人税制も清算も、本件組織再編成「後」に施行された制度なわけです。

 なので、これら制度が直接本件組織再編成に適用されることがないのは、(遡及規定がないかぎり)当然です。
 そうだとして、これら規定の「趣旨」は、否認規定にいう「不当に」には反映されないのか。
 「不当に」の評価は、あくまでも行為時の法人税法を前提に判断するのか、それとも判決時までの事情も考慮に入れることができるのか。

 通常は行為時点で確定、なんでしょうけども、現時点で不当とはいえないものを否認するの(を裁判所が是認するの)は、どうも筋が悪い気がする。

 たとえばですけど、
  更正時に否認するのは適切だった
  でも判決時には不適切になった
という場合に、本税は返すけど還付加算金は付加しない、みたいな中間的な解決はできないものかどうか。

 こういう発想、以前書いた《解釈の幅》と似たような話です。

【解釈の幅】
税法・民法における行為規範と裁判規範(その7)

 あちらは、
  判決時には課税すべきという解釈になった
  でも行為時に課税されないと解釈することも無理はない
という場合に、判決前の行為には課税すべきではない、というものでした。


 さて、現時点で同じように事業継続なし合併をした場合、やはり否認されるんでしょうか。
 横流しするならするで、ちゃんと射程範囲を明示せえよ、と思う。

 この事件は上告・上告受理申立てをされているので、最高裁の判示に注目です。

 仮に結論が同じだとしても、高裁の理由付けが粗すぎるってことで、何がしかの判断はすると思うんですよね(個人的には結論ひっくり返すと予測していますが、「最高裁の良心を信じる」程度の見立て)。

 いずれにしても、現時点での実務的なアドバイスとしては、合併する「事業目的」をしっかり整えておきましょう、となります。

 これは別に組織再編だけの話ではなく、各種節税が絡むものに共通することです。

 保険のごとく細かく通達が整備されているものについては、それに従っているかぎりは基本的に否認されにくいわけです(あくまで「されにくい」)。
 他方で、組織再編だったり株価評価だったり、要件が整っているようで隙があるタイプの制度に関しては、単に形式だけを整えておけばいいのではなく、しっかり実質も整えておきましょう、ということになります。

 が、本件判決のような制度趣旨「横流し」系の判断をされるのでは、どんな実質を整えておけばいいのか予測がつけにくくて困る。
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2020年02月17日

解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決

 軽い気持ちで記事にした高裁判決。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

 その後もアレな判決としてちょくちょくイジってきました。

非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その2)
加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その5)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その6)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その7)


 その事件、最高裁で弁論が開かれることに(2020/3/3 PM1:30)。

【最高裁のサイト】
最高裁判所開廷期日情報
所得税更正処分取消等請求事件について

 「最高裁で弁論が開かれる」というの、定石通りなら「原判決破棄」のネタバレになります。

 ただ、納税者有利な判決の破棄とはいっても、必ずしも納税者不利になるとは限りません。

 高裁の理屈があまりに奇妙、ということで規範を差し替えて、その規範にしたがった事実認定・あてはめを高裁にやり直させる、ということもあるっちゃある。

 あまり期待できる気がしませんが、どうでしょうね。

 ちなみに、配点が「第三小法廷」。
 宮崎裕子判事や宇賀克也判事が所属されているので、ハイレベルな租税判決がなされることを期待。



増井良啓 宮崎裕子 「国際租税法 第4版」(東京大学出版会2019)
宇賀克也 「行政法概説I 行政法総論 第7版」(有斐閣2020)

【追記】 2020.3.26

 最高裁判決でました。

解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決
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2019年11月18日

加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)

 どうにも理解しにくい裁決があったので、頭の整理のために記事にしておきます。
 (※以下、生煮え状態なのでもう少し考察すすめます。)

内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定は国税通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されるとした事例(平成29年9月1日裁決)

公表裁決事例集No.108

 事例をめちゃくちゃ単純化すると、所得税で確定申告⇒修正申告⇒国外財産調書の順番で提出した場合、修正申告が調査通知前予知前であっても、国送法6条の過少申告加算税が課されるか、という問題。

 以下、用語は次の前提で使います。
  提出義務: 調書提出義務があるものとします。
  国外所得: 国送法の加算税の対象となる所得をいいます。
  確定申告: 国外所得なし、調書なしで申告
  修正申告: 漏れていた国外所得を追加して申告


 まずは関連条文。例によって極端に省略しています。
 正確にはリンク先へどうぞ。

国税通則法65条
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)6条


国税通則法 第65条(過少申告加算税)

1 
期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出があつたときは、

当該納税者に対し、その修正申告に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

5 
第一項の規定は、

修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、

その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。


 国送法 第6条(国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例)

1 
国外財産に関して生ずる所得で政令で定めるものに対する所得税(以下この条において「国外財産に係る所得税」という。)に関し修正申告書の提出(以下この条及び第六条の三において「修正申告等」という。)があり、国税通則法第六十五条の規定の適用がある場合において、

提出期限(前条第一項の提出期限をいう。以下この条において同じ。)内に税務署長に提出された国外財産調書に当該修正申告等の基因となる国外財産についての同項の規定による記載があるときは、

同法第六十五条の規定による過少申告加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額から当該過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額を控除した金額とする。

2 
国外財産に係る所得税に関し修正申告等があり、国税通則法第六十五条の規定の適用がある場合において、

前条第一項の規定により税務署長に提出すべき国外財産調書について提出期限内に提出がないときは、

同法第六十五条の規定による過少申告加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、当該過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

4 
前条第一項の規定により提出すべき国外財産調書が提出期限後に提出され、かつ、修正申告等があった場合において、

当該国外財産調書の提出が、当該国外財産調書に係る国外財産に係る所得税についての調査があったことにより当該国外財産に係る所得税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、

当該国外財産調書は提出期限内に提出されたものとみなして、第一項又は第二項の規定を適用する。



 これら規定を単純に図式化すると、

  A 通則法65条1項:修正申告
           ⇒過少申告加算税を課すよ
  B 通則法65条5項:修正申告+調査通知前・予知前
           ⇒過少申告加算税を課さないよ

  C 国送法6条1項:修正申告+通則法65条適用あり+期限内調書
           ⇒過少申告加算税を減らすよ
  D 国送法6条2項:修正申告+通則法65条適用あり+期限後調書or調書なし
           ⇒過少申告加算税を増やすよ

  E 国送法6条4項:修正申告+期限後調書+予知前
           ⇒ 期限内調書とみなすよ

という感じ。


 で、この事例では、Bで加算税なしかと思いきやDで加算税ありになるのか、という論点。

 裁決では争点を2つ設定した上で、次の結論。

争点1
 Dは、Bの適用がある修正申告書に適用されるか

 ⇒適用される
争点2
 修正申告書提出後の国外財産調書は、Eにより提出期限内に提出したものとみなされるか

 ⇒みなされない

 その理由は次の通り。

争点1
・文理:
 国送法6条では「国税通則法第六十五条の規定」とあり特定の項に限定していないし「これらの規定にかかわらず」とあるから、Bも排斥される。
・実質:
 Bが排斥されないとすると、通知前・予知前の修正申告を出しさえすれば、その後調書を出さなくても加算税が課せなくなってしまう。

争点2
・文理:
 国送法6条4項の「かつ」は一体不可分または加重的要件を意味するから、調書提出前提で修正申告書を提出した場合に限られる。
・実質:
 修正申告⇒調書でもEの適用ありとしてしまうと、先に通知前・予知前の修正申告書を出しさえすれば、調書をどれだけ遅れて出そうが期限内調書扱いになってしまう。

 意訳しすぎで意味わからん、て感じかもしれません。
 原文短いのでリンク先の裁決文読んでみてください。

公表裁決事例集No.108

 その上で、なるほどよくわからん、てなってどうぞ。


 私のモヤるところは次のとおり。

争点1:文理
 通則法65条をまるっと持ってきているというなら、加算するもとの税額がなければ国送法の加算税も発生しない、と読むこともできるのでは。

争点1:実質
 通則法65条全体が排斥されるとすると、同条4項の「正当な理由」がある場合も加算税が発生することになるが、そういう結論でよいのか。
 調書不提出でも加算税が課されないことの不都合をいうが、「期限内に国外所得含めた確定申告をしたが調書不提出の場合」には加算税が発生しないこととのバランスはどのように考えているのか。
 加算税が課されないとしても、調書不提出・期限後提出には「罰則」があるんだから(国送法10条)、調書不提出等にかかるペナルティはこれで十分では。

 さしあたり国送法65条4項を無視して事例を並べると以下の感じになります(50万円超云々はおいといて)。
 3の、通則法が0%でも国送法は5%になるというのが、今回のポイント。

 1  確定申告(国外含む)+期限内調書     ⇒加算税なし

 2a 確定申告(国外含む)+期限後調書     ⇒加算税なし +罰則
  b 確定申告(国外含む)+調書×       ⇒加算税なし +罰則

 3a 確定申告+修正申告(通知前)+期限後調書 ⇒0%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(通知前)+調書×   ⇒0%+5% +罰則

 4a 確定申告+修正申告(予知前)+期限後調書 ⇒5%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(予知前)+調書×   ⇒5%+5% +罰則

 5a 確定申告+修正申告(予知後)+期限後調書 ⇒10%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(予知後)+調書×   ⇒10%+5% +罰則

 6a 確定申告+修正申告(正当の理由あり)+期限後調書 ⇒0%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(正当の理由あり)+調書×   ⇒0%+5% +罰則

 僕たち私たちの「加重」イメージからすると意外もしれませんが、裁決によるとこうなります。
 普通に考えると、加減するもとの加算税があった上で国送法で増やすなり減らす、という制度だと思ってしまうところ。
 が、確かに国送法の条文上は、「加算/控除」としっかり書き分けられていて、裏表の制度にはなっていないんですよね。

争点2:文理
 「かつ」って言葉ひとつにそこまでの意味を盛り込めるのかどうか。
 3つの意味があるまでは分かるとして、先後関係を表すってのは飛びすぎじゃね?

争点2:実質
 修正申告書本体が通知前に出てきている以上は、加算税を課さなくてもよいのではないか。
 「予知」の対象を修正申告と同じ事由に設定したということは、修正申告に連動することを認めているから、ともいえるのではないか。
 上記の通り、調書不提出等にかかるペナルティは罰則で十分なのでは。


 裁決全体のノリとして、とにかく加算税を課せないと困るという方向での検討に偏っているのでは、という印象を受ける。

 解釈論やる場合って、明らかに加算税を課すべき典型例と明らかに加算税を課すべきでない典型例を想定しつつ、その間のどこに線を引くか、ということを両方の側から詰めていく必要があると思うんです。
 が、どうも片側からしか見ていないような感じ。

 調書全然出さないとかものすごい遅く出すとか、そういう極端な例をあげて加算税課せないと困る、といっているわけです。
 けども、そういう事例を出すのであれば、他方で「修正申告も調書も通知前に出したけど調書は申告より1日だけ遅れて出した」という場合に、加算税を課すのが問題な事例もあげて、それでもこの理屈で走っていいかどうか検討すべきだと思うんですけど。

 「正当の理由」(通則法65条4項)がある場合ですら、提出順を間違えると国送法によって加算税が課されてしまうというのも、やりすぎ感がある気がしますし。
 裁決の理屈からすると、5項は排斥されるが4項は排斥されないなんて結論、ひねり出せないですよね。


 もし裁決のような「提出順」で加算税のありなしが変わる、なんて立場をとるのだとすれば、

  提出義務: あり or なし
  提出順:  調書⇒修正申告 or 修正申告⇒調書
  修正申告: 通知前 or 予知前 or 予知後
  調書:   通知前 or 予知前 or 予知後 or 不提出

で場合分けをして、それぞれの事例での加算税ありなしが適切に制御できているか、を検討しなければならないはず。
 で、国送法の上書きっぷりが、通則法で税率に0%⇒5%⇒10%とグラデーションつけた趣旨を没却していないか、ということをみていかないといけないのではないかと。
 特別法(国送法)は一般法(通則法)を好きなように上書きできる、なんて単純な話ではない。

 が、少なくとも表に出てきている裁決文を見る限りでは、極端事例で加算税を取りこぼさない理屈をたてることに集中していて、当該事案で課税されることの妥当性を考慮に入れていない気がします(あるいは、あえて見ないようにしているか)。

 事案限りの解決をするのが審判所(あるいは裁判所)の一次的な役割だ、というおなじみの言い訳がありますが、そういわれる場合って、少なくとも当該事案の解決それ自体は妥当な場合です。
 他の事案にその規範当てはめるとまずそう、というだけで。

 が、本件では、調書出さないとかすごい遅れるといった他の事案の妥当な解決のために、2週間遅れただけの本件事案を巻沿いにしたってことですからね。


 さすがに全事例をチェックすることはできないので、怪しいところを考えてみます。
 (提出義務あり前提とします)

 1 期限後調書(通知前)⇒修正申告(通知前) 0%-5% +罰則
 2 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則

 提出順を間違えるとこうなります。
 1は、同項の適用があるけども本体が0%なので「控除」するものなしと。
 2は国送法6条4項の適用なしと。

 ここでは提出義務あり前提といっていますが、現実には国外財産が5000万円あるかどうか微妙な事案というのもあるわけです。評価方法なり外貨換算なり、国内財産以上に大変。
 もし私が、調書作成に必要な資料が揃わない段階で相談受けていたら、「通知受ける前に先に修正申告だけしておきましょうか」と、この裁決知らなかったらそういうアドバイスしていた可能性あるよなあと、震える。

 2 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則
 3 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知後) 0%+5% +罰則
 4 修正申告(通知前)⇒調書不提出      0%+5% +罰則

 で、先に修正申告してしまうと、調書をいつ出そうがあるいは不提出でも、5%加重は変わりません。

 裁決では、「修正申告」をいつ出すかで国送法の加減がかわるのはおかしい、といっているわけですが、逆に、裁決の立場だと「調書」をいつ出しても国送法の加減がかわらない、という現象が生じることに。
 そのへんの悪質性は罰則のところで調整するつもりでしょうか。

 形式論抜きの実質論だけで考えると、提出順にかかわらず、
  2は加算税なし
  3・4は加算税あり
とするのがいいように思えます。2はどちらも通知前に出ているわけで。

 のに、国送法6条4項の通則法によせた風な規律のせいで、提出順を付けざるをえなくなり、うまく制御できない結果になっています。

 以下は「予知前調書⇒修正申告」順なので、いずれも国送法6条4項が適用されるパターンです。

 1 期限後調書(通知前)⇒修正申告(通知前) 0%+0% +罰則
 5 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知前) 5%-5% +罰則
 6 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知後) 10%-5% +罰則

 5は通則法の5%から5%控除されて0%、6は通則法の10%から5%控除されて5%、こういう結論になるってことでいいですか。


 これらを税率でグループ分けするとこうなります。

・0%パターン
 1 期限後調書(通知前)⇒修正申告(通知前) 0%+0% +罰則 (1+1)
 5 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知前) 5%-5% +罰則 (2+2)

・5%パターン
 2 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則 (1+1)
 3 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知後) 0%+5% +罰則 (1+2〜)
 4 修正申告(通知前)⇒調書不提出      0%+5% +罰則 (1+10〜)
 6 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知後) 10%-5% +罰則 (3〜+2)

 後ろの数字は、修正申告+調書の提出時点について、
  通知前 1
  通知後 2〜
  予知前 2
  予知後 3〜
  未提出 10〜
と、それぞれの遅れっぷりの悪質性を数値化してみたものです。
 調書の遅れと申告書本体の遅れが同じ数値でいいのか、という問題はありますが、単純化のため。

【数値化して衡量する営み例】
井田良「講義刑法学・各論 第2版」(有斐閣2020)

 今ならドミネーターをご利用ください(高い!)。

 

 で、比べてみると、
  5が結果として軽くなっている
  2が重くね
  346はバラバラなのに結果同じなんだな
とかが分かります。

「正当の理由」あり(数値0とします)パターンもトッピングしておきましょうか。

・0%パターン
 10 期限後調書(通知前)⇒修正申告(正当の理由) 0%-5% +罰則 (0+1)
 11 期限後調書(予知前)⇒修正申告(正当の理由) 0%-5% +罰則 (0+2)

・5%パターン
 7 修正申告(正当の理由)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則 (0+1)
 8 修正申告(正当の理由)⇒期限後調書(通知後) 0%+5% +罰則 (0+2〜)
 9 修正申告(正当の理由)⇒調書不提出      0%+5% +罰則 (0+10〜)
 12 期限後調書(予知後)⇒修正申告(正当の理由) 0%+5% +罰則 (0+3〜)

 ここでも7の可哀想さが際立つ。

 裁決の立場に対しては、当初から得も言われぬ違和感があったのですが、おそらくこのあたりの「パースの狂ったデッサン感」が潜在していたからではないか、というのが数値化してみての推測。


 ここまでボロクソに批判してみたものの、現行の規定を前提に課税範囲を適切に制御するの、解釈論では限界があると思う。

 諸悪の根源と思われるのが国送法65条4項。
 先に修正申告してしまうと予知しようがなくなる、という変な連動を起こすので。

 そのせいで、加算税を相当取りこぼすか、歪なかたちでも課税するか、どちらかでいくしかない。

 課税庁側からすると、今後の取りこぼしはともかく、これまでの加算税をごっそり還付しなきゃいけないとなったら、まあ大変。
 ので、審判所も、どこぞの野良ブログにあれこれ言われようとも、還付しないですむ理屈でいくと(邪推)。

 お気持ちはまあ分かりますが、趣旨解釈で規定のバグをカバーする解釈態度、今どきの裁判例の傾向からするとあまりウケがよくない。

【趣旨に合わなくても強引に文理で行く所作例】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決


 最終的には「立法論」で解決するしかないんでしょう。

 たぶんですけど、この手の期間制限を、いつするかも決まっていない調査通知とか主観的な予知とか、そういうふんわり事由をもって区切るの、うまくない。
 こうやって複数制度が絡んだときに、バグを起こすみたいだし。
 (しかし「予知」って。なんかオカルティックですね。)

 ので、「○○から○○日以内」のような確定期限が望ましい。
 これなら、順番間違えたらアウト、みたいな変な結論にはならないし。

 もしかして通則法さんは他人事のように聞いているのかもしれませんが、むしろお前の問題だぞ。

 ちなみに、同様の批判は、適格組織再編における支配関係継続の「見込み」という要件についてもしました。
 不確定概念追放運動の一環。

中里実ほか「租税法概説 第4版」(有斐閣2021)


 以上、最初に書いたとおり全然考えが煮詰まっていないので、もう少し考察すすめます。
posted by ウロ at 10:11| Comment(0) | 判例イジり

2018年09月03日

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

「株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額を配当還元方式によって算定した金額(譲渡対価も同額)は低額譲渡に当たるとした課税庁の主張を認めた地裁判決を取り消した事例」(東京高裁平成30年7月19日判決)

 税理士事務所が定期購読しがちな税務絡みの週刊誌として『週刊税務通信』(税務研究会)というのがあるんですが、私はなぜか『国税速報』(大蔵財務協会)のほうをとっています。


 大蔵財務協会発行の書籍を20%引きで買えたり、『改正税法のすべて』をもらえたりといった特典もいいんですが、解説が条文ベースで正確だったり、改正通達が付録でついてきたりするので、「税法イジり芸」を展開中の当ブログには、芸の肥やしになるんじゃないかと思いまして。

 とはいえ、今までは直接ブログネタになりそうな記事というのは無かったんですが、6522号(平成30年8月20日)にのってた判例速報を読んで、初めて「判例イジり」の食指が動きました。

 まだ、判決文そのものを確認できてないので、あくまで『国税速報』の記事ベースでのイジりになります。

 以下、

  所得税基本通達59-6を「59-6」
  財産評価基本通達188を「188」

と省略します。

 また、59-6は(1)、188は(1)と(3)に絞って検討します(「中心的な」の188(2)(4)は省略)。

 この事案で問題となったのは、個人が法人に譲渡した非上場株式の売買価額が「低額譲渡」にあたるか、という点。

 所得税法のルールでは、個人が法人に時価(「その時における価額に相当する金額」)の「1/2未満」の価額で譲渡した場合は、時価で譲渡したものとみなすことになっています(みなし譲渡)。

 【例】
  個人Aは、C社株を10万円で買った。
  個人AはBに、C社株を30万円で売った。その時点のC社株の時価は100万円

 ⇒Bが「個人」の場合、Aには20万円(30-10)の譲渡所得が生じます。
 ⇒Bが「法人」の場合、Aには90万円(100-10)の譲渡所得が生じます。

 つまり、個人間で流通してる間はいいけど、法人に移った時点でなるべく含み益を実現させよう、ということ。
 1/2未満というのが控えめではありますけど。

 で、この「時価」をどうやって出すのかについて、「株式」の場合には条件付きで「財産評価基本通達」を使っていいよとなっています(59-6)。

 この財産評価基本通達というのは、かつてのタイトルが「相続税財産評価に関する基本通達」だったとおり、本来は「相続税」(+贈与税)における財産の評価方法を定めるものです。

 そして「非上場株式」については、ざっくりいうと、支配力が強い株主なら高く、弱い株主なら安く評価しますということになっています。

強い株主原則評価(純資産価額方式+類似業種比準方式)←普通高い
弱い株主特例評価(配当還元方式)          ←普通安い
         
 この「強い/弱い」の判定の仕方については、188に定められています。
 弱い株主扱いしてもらえるラインを、単純化して0.1%きざみでいうと、

(1) 50%超の株主グループいる49.9%までもってていい
(1)30%超の株主グループいる29.9%までもってていい
(3)30%超の株主グループいない14.9%までもってていい

となっています。

 要するに、他に強いグループがいればいるほど、それ以外の株主は多く持ってても安く評価してもらえる、ということです。

 また、株式の場合、譲渡することで株主の構成割合が変わってしまうので、「強い/弱い」をどの時点で判定するのか、ということが問題になります。

 この点、相続税・贈与税というのは、もらった人に課税するものなので、もらった人にとっての価値に課税されます。
 なので、強いグループがいるか(会社区分)、自分がどれだけ持ってるか(株主区分)は、もらった「後」の株数で判定することになっています。

個人A→個人B 相続贈与 Bの評価額
 ア会社区分イ株主区分
(1)
(3)

 【例】
  個人Aは個人Bに、C社株を贈与した。

   A 99% →98%  (1%贈与)
     B   1% → 2%
  ⇒贈与後もAが強いグループのままなので、Bは特例評価

   A  1% →  0% (1%贈与)
   B 99% →100%
  ⇒贈与後もBが強いグループのままなので、Bは原則評価

   A 99% →  0%(99%贈与)
   B   1% →100%
  ⇒贈与後はBが強いグループになるので、Bは原則評価

 このように、贈与後にBが強いかどうかで評価方法が変わるわけです。

 で、この188のルールが「法人」への「売買」の場合にどう適用されるか、というのが本題です。
 売主である個人Aにとっての「時価」をどう評価するか。

 以下、実際の事案の割合とは変えて単純化した割合にします(実際の事案もなかなかチャレンジングだと思いますが)。

【事例】 (A'はAの株主グループという意味です。)
 1 譲渡前
    A   15% (8%をBに売却)
    A'      5%
    その他  80% (1グループで30%超いない)

 2 譲渡後
    A     7%
    A'      5%
    B     8%
    その他 80% (1グループで30%超いない)

 この点、59-6(1)は、188(1)の「同族株主」の判定は譲渡「前」で判定するとしています。
 下記表でいう、(1)アが「前」になると。

個人A→法人B 売買 Aの評価額
 ア会社区分イ株主区分
(1) 
(3)  


 譲渡「前」では30%超グループがいないので、(1)の「同族株主のいる会社」にはあたりません。

 そして、判決によれば、(3)の「同族株主のいない会社」は(1)の「同族株主のいる会社」の『対概念』だから、同じく譲渡「前」で判定し、「同族株主のいない会社」にあたるとしています。

個人A→法人B 売買 Aの評価額
 ア会社区分イ株主区分
(1) 
(3) 

 では、15%未満にあたるかどうかの判定についてはどうかというと、判決によれば、59-6(1)は188(1)の「同族株主」の読み替えしか書いてないから、188(3)の株主区分については「取得した株式」と書いてあるとおり、譲渡「後」の取得者側で判定すると。
 これが通達の『文理解釈』なんだと言ってます。

個人A→法人B 売買 Aの評価額
 ア会社区分イ株主区分
(1) 
(3)

 これによると、譲渡「後」のBは15%未満なので、Aは特例評価でいけることになります。

 判決がこのような結論をとる理由付けとしては、

・通達も、法令と同じく文理解釈によるのが原則で、みだりに拡張解釈・類推解釈するのは許されない。

・会社区分と株主区分で判定時点がズレるけど、両者は関連するものではなく同じ時点にする必然性はない。

・株主区分のほうも譲渡前で判定したいなら、通達にそう書いておくべき。

といった感じ。

 これ、納税者有利な判決(この事例では、ですが)だから、税理士的には喜ばしいはずなんですけど、なんか違和感あるんですよね。

 通達を「文理解釈」するとあるんですが、通達はあくまで国税庁による税法解釈なので、その解釈を文理解釈するという言い方がいまいち理解しにくいです。

 本来であれば、法59条1項の「その時における価額に相当する金額」について、裁判所としての解釈を示すべきなのに、国税庁の法解釈である通達に丸々乗っかった上で、その文理のみで結論を出してしまっているところが何とも。

・本来のルート
 法令 → 国税庁 → 通達
 法令 → 裁判所 → 判決

・本判決のルート
 法令 → 国税庁 → 通達 → 判決
(裁判所の主体的な判断がでてこない) 

 また、文理解釈によれば譲渡後と書いてあると読める、と言ってるんですが、そうすんなり読めるとも思えません。

 188(3)の記述は次のとおり。

 「同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式」

 本判決では、「同族株主のいない会社」は、(1)の「同族会社のいる会社」の『対概念』だからってことで、譲渡前で判定と言ってるんですが、本判決のやってる『文理解釈』からすれば、『対概念』といった論理から解釈を導くのは文理を超えてしまっている気がします(ただし、本件では譲渡前後で結論変わらず)。

 「同族株主のいない会社」を譲渡前で判定するとして、そこから後ろの記述を売買の場合として読むの、難しくないですか。

 Aにとっての時価が問題なんだから、ここでいう「株主」は売主Aである必要があるんですけど、最後の「株主の取得した株式」のくだりを書いてあるとおりに理解しようとすると、買主Bのこととして読まないといけなくなります。
 また、所得税では「課税時期」という言い方しないんですが、本判決の結論を導くには、これを「売買後」と読み替える必要があります。

 ちなみに、本事例を少し変えて、Bがもともと7%持っていたとしたら、譲渡後のBは15%となってAは原則評価になってしまいます。

    A     7%
    A'      5%
    B    15%
    その他 73% (1グループで30%超いない)

 Aの含み益の精算を目的としているはずなのに、買主側の割合によってその金額がかわってしまうという不思議。
 もしこの結論を避けたいのであれば、株主(B)の「有する議決権」が15%、ではなく、「取得した議決権」が15%と読み替えなければなりません。

 このように、188(3)を売買の場合にあてはめるには、何らかの「読み替え」が必要になるのであって、判決がいうように、文理解釈すれば当然に譲渡後と読める、とは単純にいえないと思うんです。

 所通ちゃん(所得税基本通達の愛称)的には、(1)アを譲渡前に読み替えたんだから、自動的に(1)イも、(3)アイも譲渡前にひっくり返るはず、というつもりだったと思うんです。

個人A→法人B 売買 Aの評価額
 ア会社区分イ株主区分
(1)
(3)

 この解釈でいくと、本事例ではAが譲渡前で15%もっているので、(3)イに引っかかって、原則評価でいくことになります。

 実際、判決でも(1)ア⇒(3)アは『対概念』ということで「前」にひっくり返しています。
 また、(1)ア⇒イは、「同族株主以外」と書いていることからすれば、文言上も「前」になるはずです。

 問題は(3)ア⇒イですが、上に書いたとおり、他の株主グループがどれだけ強いか(会社区分)によって、自分が少数株主でいられるライン(株主区分)が変わるわけなので、同じ時点で判定しないと意味がないはずなんです。

 判決では、会社区分と株主区分は「関連するものではない」と言ってしまってるんですが、さすがにこれは結論ありきの強弁ではないかと。

 ちなみに、財産評価基本通達6には、通達による評価が「著しく不適当」な場合には国税庁長官の指示によって評価するとあります。
 なので、相続税法における評価の場面では、形式的に通達に従ってさえいれば必ず適正、ってことにはなりません。

 ところが、本事例の判決では、通達の文理に従って評価してるから問題なし、で済ませてしまっています。

 おそらくですけど、判決の理屈でいえば、所得税基本通達が財産評価基本通達6を適用するとは書いてないから、この規定は適用されない、ということになるんでしょうね。

 このように、判決に書かれている理由付け、あまり筋の良いものと思えません。
 税法は文理解釈が大原則、という近時の一連の判例の流れにのっかったつもりかもしれませんが、言うほど文理どおりでもないですし。そもそも「法」じゃないですし。

 文理解釈だからといって、立法趣旨や論理を『ガン無視』して、部分的な言葉尻だけから結論導くって、無理があります。

 通達がバグっているというなら、半端な通達の文理解釈なんかやらないで、裁判所自身が所得税法における「その時における価額」の解釈を示すべきだと思います。

 もし、この判決の結論を正当化するのであれば、「信頼の原則」とか「禁反言の原則」を持ってこざるをえないと思います。
 つまり、すんなり理解できない通達を書いた以上は、その記述に明らかに反するわけではない納税者の行動を不利に扱うなということ。


※この事件、最高裁で弁論が開かれることに(2020/3/3 PM1:30)。

【最高裁のサイト】

※最高裁判決でました。

○所得税法

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

○所得税法施行令

(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
第百六十九条 法第五十九条第一項第二号に規定する政令で定める額は、同項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。

○所得税基本通達

(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)
59−6 法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式である場合の同項に規定する「その時における価額」とは、23〜35共−9に準じて算定した価額による。

この場合、23〜35共−9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは、原則として、次によることを条件に、「財産評価基本通達」の178から189-7まで((取引相場のない株式の評価))の例により算定した価額とする。

(1) 財産評価基本通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかどうかは、株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること。

(2) 当該株式の価額につき財産評価基本通達 179の例により算定する場合(同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、株式を譲渡又は贈与した個人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

(3) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については、当該譲渡又は贈与の時における価額によること。

(4) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

○財産評価基本通達

(同族株主以外の株主等が取得した株式)
188 178≪取引相場のない株式の評価上の区分≫の「同族株主以外の株主等が取得した株式」は、次のいずれかに該当する株式をいい、その株式の価額は、次項の定めによる。

(1) 同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式
 この場合における「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令第4条((同族関係者の範囲))に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以下同じ。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。

(2) 中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、中心的な同族株主以外の同族株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの(課税時期において評価会社の役員(社長、理事長並びに法人税法施行令第71条第1項第1号、第2号及び第4号に掲げる者をいう。以下この項において同じ。)である者及び課税時期の翌日から法定申告期限までの間に役員となる者を除く。)の取得した株式

 この場合における「中心的な同族株主」とは、課税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち、これらの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である会社を含む。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主をいう。

(3) 同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式

(4) 中心的な株主がおり、かつ、同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である場合におけるその株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの((2)の役員である者及び役員となる者を除く。)の取得した株式

 この場合における「中心的な株主」とは、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループに単独でその会社の議決権総数の10%以上の議決権を有している株主がいる場合におけるその株主をいう。

(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。


posted by ウロ at 09:32| Comment(0) | 判例イジり