2020年06月22日

新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019) 〜付・民事訴訟法と税理士

 横書きで1072頁というなかなかのボリューム。
 同書にかぎらず、民事訴訟法の教科書は年々分厚くなっていってますが、ついに1000頁超え。



 新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019)

 税理士であっても「国税通則法114条⇒行政事件訴訟法7条⇒民事訴訟法」ルートがあるので、民事訴訟法についてもちゃんと勉強しておくべきところ。
 「訴訟」を視野に入れないにしても、事実認定や要件事実の「考え方」などは、調査対応レベルでも役立つわけで。

 下記記事を書いていて、あらためてちゃんと勉強しないとなあと。
 思ったので、読んでみることに。

二段の推定と契約の成立と印紙税法 〜印紙税法における実体法と手続法の交錯


 民事訴訟法におよそ興味がなかったわけではなく、たとえば次のような本は、面白いと思ってしばしば読んでいたり。
 他分野と比較して、相対的に疎かになっていただけです。



 井上治典・高橋宏志「エキサイティング民事訴訟法」 (有斐閣1993)
 新堂幸司「特別講義 民事訴訟法」(有斐閣1988)


 なお、そのうち「刑事訴訟法」の波もくると思います。
 が、今のところ懐古主義的に、団藤重光先生の体系書を読んだきりですが。

団藤重光『法学の基礎』(有斐閣2007)

 この、法分野の選り好み、私の場合は、その分野が好きとか得意とかそういうこちら側の特性ではなく、面白い書き手がいるかどうかにかかっています。

 「知的財産法」における田村善之先生の本や「独占禁止法」における白石忠志先生の本がそういう位置づけ。
 こういう書き手の方が一人いるだけで、その分野の明るさが全然違う。



田村善之「知財の理論」(有斐閣2019)
白石忠志「独禁法講義 第9版」(有斐閣2020)

白石忠志「技術と競争の法的構造」(有斐閣1994)

 例の税法入門書も、今となってはさんざんイジり倒しているところですが、私が税法の勉強を始める入口としてはとてもよかったはずなんです。

【しつこいイジり】
三木義一「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)
平井宜雄「債権各論I上 契約総論」(弘文堂2008)
田中二郎「租税法(第3版)」(有斐閣1990)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その1)
窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)


 分厚い民事訴訟法の教科書群を目の当たりにして思うこと。

 誰が書いても同じになる「純手続」的な記述については、それこそ「基本書」として1冊出しておけばいいんじゃないんですかね。
 しかも、学者による条文引き写しな記述では無味乾燥で理解しにくいので、実際の運用を知っている実務家が記述すると。

 これによって、学者のほうは論点に集中して教科書を書けばいいことになります。
 そうすれば、教科書間の重複した記述を省くこともできますし。

 ただし、あくまでも「純」手続であるし、手続について一切書いてはいけないということでもないです。
 共有化できる部分はそちらにおまかせしたほうが便利でしょ、というだけで。

 法改正のたびに逐一改訂するのも減らせますし。
 改訂の口実が減るのは困るということですか。

法学研究書考 〜部門別損益分析論


 実際、今回の新堂先生の本も、全頁読むのではなく、純手続的な記述はどんどん飛ばしながら読みました。

 ちなみにこの、純手続的な記述を省いて書いた、といえるのが高橋宏志先生の重点講義。



 高橋宏志「重点講義民事訴訟法(上) 第2版補訂版」(有斐閣2013)
 高橋宏志「重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版」(有斐閣2014)

 が、上860頁・下876頁となっており、これはこれで特殊例。


 肝心の本書の中身。

 本書のもっとも特徴的な点だと私が思うところ。

 論点の記述をする場合に、普通の本だといきなり判例・学説を並べるところから始まりがち。
 が、本書では、その論点で考慮すべき要素を広く拾い上げる、ということをしています。

 初学者にとっては特に、これを自力で拾い上げるのが難しいところです。
 それを頭出ししてくれているので、その後の判例・学説の比較する際も、どの見解が何をどれだけ重視しているのか、といった見取り図が作りやすくなります。

 「利益衡量」とかいいながら、自分の支持したい結論に不適合な利益を無視する、みたいなヤラセ感満載な論証が許されなくなります。
 明示されてしまっている以上、なぜそれを無視・軽視してよいのかの説明をしなければ、説得力がなくなります。

 あれこれ見解が出されているけども、結局は新堂先生が拾い上げた要素のどれを重視するかの違いにすぎない、ということが見えてきたり。 
 これもいわゆる「釈迦の手のひら」案件ですね。

【釈迦の手のひら論文】
井田良「犯罪論の現在と目的的行為論」(成文堂1996)


 なお、民事訴訟法の教科書で、個人的なオススメは以下の本でした。



谷口安平「口述 民事訴訟法」 (成文堂1987)
林屋礼二「新民事訴訟法概要 第2版」(有斐閣2004)

 「でした」なのは、谷口先生の本は平成8年改正前のままで絶版、林屋先生の本はオンデマンド入りで高額化。
 お気軽に入手できないものになってしまいました。

 今どきな教科書はさっぱりフォローしておりません(不勉強)。
 趣味の音楽鑑賞でも、昔の作曲者・指揮者しかフォローしないのと同じ傾向。
 
音楽と私

 一応、入門書でオススメは中野先生のもの。



中野貞一郎「民事裁判入門 第3版補訂版」(有斐閣2012)
中野貞一郎「民事執行・保全入門 補訂版」(有斐閣2013)

 こちらも中野先生がお亡くなりになってしまったので、今後の改訂がどうなるか。
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 民事訴訟法

2017年08月14日

新堂幸司『民事訴訟制度の役割』



民事訴訟法学者の新堂幸司先生の論文集の第一巻。

細かい判例分析や込み入った論点について論じるものというよりは、「民事訴訟制度の目的」といった比較的大きめの題材を扱っている論文が収録されています。

教科書でいうと、初めのほうに書いている感じの。

なので、民訴からしばらく遠ざかっていた私でも、割りと読みやすかったです。

で、これら論文のエッセンスが体系書に結実していっているということを思うと、体系書と論文集を行ったり来たりしながら読めば、体系書だけではよくわからなかったことも、より深い理解を得られるんじゃないかと思ったり。



  新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019)
 (まさかの第6版よ、皆さん!)

さすがにそこまでの余裕はないんですけども。

一応収録論文のタイトルだけあげておきます。有斐閣のページだと一部省略されちゃってて、売る気ねえなあと思ったので。

・民事訴訟法理論はだれのためにあるか
・民事訴訟制度の目的論の意義
・民事訴訟と紛争の解決
・民事訴訟の目的論からなにを学ぶか
・現代型訴訟とその役割
・「手続保障論」の生成と発展
・民事訴訟法序説

このうち、「民事訴訟の目的論からなにを学ぶか」は法学教室(有斐閣)の長期連載もので、これだけをまとめた本も(なぜか信山社から)でています。



これだけでも読む価値はあるんですが、やはり論文集の順番通りに読んでいったほうが、目的論に対する考えがまとまっていく過程が追えて面白いと思います。
posted by ウロ at 11:49| Comment(0) | 民事訴訟法