これまで当ブログにおいては、あたかも税理士が「税の法律家」であるかのような振る舞いで、税法イジリや判例イジリをしてきました。単なる情報陳列系の記事を《税務お役立ち記事》などと揶揄しながら。
が、先日までの記事に鑑みるに、どうやら税理士は「税の計算家」どまりである可能性のほうが濃厚ではないかと、思うようになりました。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その3)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その4)
ということで以下、これに抗うべく、何かしら税理士が「税の法律家」であるに有利な事情をどうにかひねり出せないか、税理士業務の「現実面」から探ってみることとします。
1
税理士事務所の中には、税理士が「監督」さえしていればよいということで、無資格職員に顧客を(担当という名目で)丸投げをしているところがあります。税理士は長らく訪問していなかったりして。
税理士法 第四十一条の二(使用人等に対する監督義務)
税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督しなければならない。
弁護士からしたら、税理士が直接顧客対応をしないことに異常性を感じるかもしれません。では、なぜこのようなことが許されるのか。
やはり、税理士業務は「計算事務」どまりであり、誰がやっても差が出るものでもない、事後的にチェックすればそれで済む程度の業務だと、税理士自身が思っているからではないでしょうか。
弁護士事務所でも、「定型業務」(過払金請求など)を無資格職員に丸投げしてしまっているところもあったと聞いていますが。これはまさしく、誰がやっても同じ定型のものだからこそなのでしょう。
税理士業務というのは、過払金の計算と同じ程度の事務にすぎないということなのか。
2
相続税申告につき、一人の税理士が相続人全員から委任を受けて申告してしまっているのが通常かと思います。で、このことに対し、税理士の側に特に何らかの問題意識はないものと思われます。
他方で、弁護士が複数の相続人から相続案件につき依頼を受けるかといえば、原則として拒否するものと思われます。よっぽど「一蓮托生」「ふたりでひとり」みたいな関係性でもないかぎりは。
なぜかといえば、依頼時点では大丈夫だとしても、この先少しでも利益相反の可能性があるならば、事前に回避しておくべきだからでしょう。
利益相反が顕在化してしまったら、どちらか一方との関係だけは続ける、なんてことはできないので。
では、なぜ税理士が、特に何も問題意識もなく相続人全員から受任できてしまうのかといえば。やはり、相続税法等に従って計算するだけだから、と思っているがゆえなのでしょう。
法にしたがって計算するだけなのだから、およそ相続人間に利益相反は生じることはないと。
が、たとえばですけど。
「小規模宅地の特例」を適用するにあたって、
・長男Aが被相続人と同居していると認定できれば、長男Aが同居特例の適用を受けられる。
・長男Aが被相続人と同居していないと認定できれば、次男Bが家なき子特例を受けられる。
と、Aと被相続人との同居が微妙な案件において、税理士はどのように立ち振る舞えばよいのでしょうか。
建前上は、あくまでも法に従うわけですが。同居の有無のような「事実認定」の領域においては、判断者の価値判断が混入してきます。最終的には裁判所の判断によるとはいえ、申告業務の中でいずれかの事実に決め打ちをせざるをえません。
ここで余談ですが。
資産税専門の税理士事務所のサイト上に、相続人が紙の相続税申告ファイルを抱えて、ニコニコで税理士と写真に写っているものを見かけました。
相続人とはいっても、おそらく相続人全員ではない。邪推するに、当該税理士事務所に直接依頼をした相続人その人だけなのでしょう。
相続人が複数名いる場合において、現実には、手続きを主導する相続人とそれに従わざるをえない相続人に分かれることなるのが実情かと思われます。写真撮影に応じている相続人も、ここでいう「主たる相続人」に該当することが、強く推認されます。
もしこのような邪推どおりの状況だとして。
主たる相続人から依頼を受けた税理士は、主たる相続人の意向に偏することなく対応することができるでしょうか。上記例でいえば、Aが主たる相続人だとして、Aの同居を認める側に意識が偏らないか、という点です。
もちろん、個々の税理士の強い精神力において、全員に公平に対応する努力はしているのでしょう。が、それを制度的に担保できるものは、何もないわけです。
ちなみに、小規模宅地の特例を適用するにあたって必要な「同意」は、適用を受けられる人が複数いる場合に機能するものです。
上記例では《二律背反》の関係にあり。Aが適用できる場合はBは適用受けられない(逆も同じ)ので、同意が必要な場面にはなりえません。
ので、遺産分割の段階で勝負を決める必要があるわけですが。その分割先を決めるにあたって、Aの同居が認められるかどうかが重大な判断要素となるということです。
話を元に戻して。
このように、相続税法レベルにおいても、相続人間で利益相反が生じうるのであって。にもかかわらず、税理士が特に問題意識なく相続人全員から受任しているのが実情であり。
やはり、税理士業務には「法解釈・事実認定」が含まれておらず。税理士の仕事は、すべての規範や事実が確定した段階で、それをそのまま当てはめるだけだから、相続人全員から受任することに何の問題もない、ということになってしまうのではないでしょうか。
なお、「生前対策」として、(結果的に)特定の相続人に有利になるよう立ち回った税理士が、他の相続人の相続税申告を代理することの適否も問題となります。これも、相続税申告自体は計算にすぎない、ということで正当化されるでしょうか。
3
本当かどうかは別として。
ときおり、士業の人が、身寄りのない依頼者から遺産について相談を受けたということで、(冗談めかして)「私に遺言を書いて」と言ってみたなどという逸話・寓話が流れてきます。
このあたり、代理法理・信託・信認関係・忠実義務といった概念、あるいは税理士法1条にいう「独立した公正な立場」といったフレーズが念頭にあると、《たとえ冗談としてであれ》言っていいことと悪いことがあるのでは、という意識が働くはずです。
税理士法 第一条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
もし税理士が、このような冗談をいえるとしたら、やはり税理士業務というのは単に計算をするだけだから、依頼者から(計算報酬とは別に)遺産をもらったとしても、何らの影響も受けない、という前提があるからではないでしょうか。
そうでなければ、冗談としてであれ、このようなことを言うことに抵抗感があるはずです。
たとえばですけど。
税理士が法人の依頼者から決算対策を相談されたとして。「自分への顧問料を先取りして支払って。」などと(冗談としてであれ)言うかといえば、言うはずがありません。こんなものは脱税幇助どころか脱税教唆(共同正犯か?)になってしまうので。
税理士法 第三十六条(脱税相談等の禁止)
税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。
に対して、「自分への遺言を書いて。」などということを(冗談としてであれ)抵抗感なく言えてしまうのは、それ自体、何らかの問題があることだとは思っていないからなのでしょう。
全くの余談ですが。
賄賂罪は「その職務に関し」賄賂を収受することで成立します。
刑法 第百九十七条(収賄、受託収賄及び事前収賄)
1 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の拘禁刑に処する。
この「職務関連性」は、判例上広く解されているとはいえ、全く無関係の職務について金品を授受した場合にまで成立するものでもないでしょう。他方で、職務と一定の関連があるかぎり「俺は強い精神力があるから、賄賂をもらっても職務に影響させることは絶対にない!」などという言い訳は通用しません。
このような賄賂罪におけるタームを借用するならば、税理士業務は単に計算をするだけだから、計算報酬とは別口で遺産をもらったとしても職務とは全くの無関係だ、と表現することができるでしょうか。
4
確定申告の時期になると、税理士が「応援」「お手伝い」などと称して、他の税理士事務所の確定申告業務に従事するというお話しを、しばしば見聞きします。
が、このようなことが実際に行われているとしたら、税理士法違反となってしまいます。
税理士制度のQ&A(国税庁)
問3−4
開業税理士が、他の税理士又は税理士法人の補助者として税理士業務を行うことはできるのですか。
(答)開業税理士は、他の税理士又は税理士法人の補助者として税理士業務を行うことはできません。
問3−5
所属税理士が、従事する開業税理士又は税理士法人とは別の開業税理士等の補助者として税理士業務を行うことはできるのですか。
(答)所属税理士は、従事する開業税理士又は税理士法人とは別の開業税理士等の補助者として税理士業務を行うことはできません。
許容されているのは、そのお手伝いする側の開業税理士が、顧客から「直接の委嘱」「個別的な委任」を受けた場合に限られます。
果たして実際に、そのような手順を取っているのかは、疑わしい。
もしも、何の問題意識もなくこのようなことが行われているのだとしたら、やはり税理士業務は単に計算をするだけで、誰がやっても同じ、ということを前提としているのではないでしょうか。
ルール通りに計算するだけなのだから、税理士間で見解が分かれるなどということもないだろうと。
◯
以上、現実面・実態面から「税の法律家」説の根拠となりそうな事情をあれこれ考えてみたものの。肝心の税理士自身が「税の計算家」としての自己規定でもって、税理士業務にあたっているのではないか、と思わされます。
もうひとつ、このような税理士の意識からではなく。税賠(税理士賠償責任)の場面において、税理士がいかなる範囲で責任を負わされているかを検討してみようかと思ったのですが、
・税理士業務は計算事務に限られるので、法律事務については責任を負わない。
と、やっぱり税の計算家にすぎないと思わされるか、
・税理士業務は法律事務にも及ぶので、責任を負う。
と、責任負担の場面では業務範囲が広くなるのかと悲しくなるか、
いずれにしても、残念な結論が待っていそうなので、手を付けないことにします。
◯
というのが、私の観測するかぎりでの実情であり。規範論としても実態論としても、どうやら《税の法律家》説を採用するのは厳しそうです。
『税理士よ、法律家たれ』なるフレーズを見聞きしたことがありますが。これは《運動論》としての主張にすぎず、税理士法の《解釈論》としての主張ではないということなのでしょうか。
ということで、《税の法律家》説を前提に記事を積み上げてきた当ブログの方向性も、あらためて見直さなければならないようです。
そこで、今回の記事をもって定期的な更新は一旦ストップすることとします。なにかまとめておきたい内容があったときにのみ、思いつきのように不定期更新していきます。
もっぱら「内発的動機づけ」のみによって続けてきた当ブログですが。まさか自分で書いた記事によってモチベーションを毀損されることになるとは、思いもよりませんでした。
2026年01月12日
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その5)
posted by ウロ at 09:21| Comment(0)
| 税理士法
2026年01月05日
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その4)
今回は、(その3)までの話の流れの中で、取りこぼした論点について触れます。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その3)
◯
本業である「税理士業務」に付随する業務として、どのようなものがあるかを考えてみるに、以下の類型が想定しえます(類型的思考)。
【税理士業務の付随業務】
ア 他士業法に抵触しないので、誰でもできる。
イ 他士業法に抵触するので、税理士にはできない。
ウ 他士業法に抵触するけど、税理士ならできる。
一般に、アの典型例が「記帳代行」、イの典型例が「会計監査」(なんちゃってではなく、法定のやつ)と、それぞれ挙げられています。
では、ウは何があるかというと。
社会保険労務士法 第二十七条(業務の制限)
社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
社会保険労務士法施行令 第二条(業務の制限の解除)
法第二十七条ただし書の政令で定める業務は、次に掲げる業務とする。
一 公認会計士又は外国公認会計士が行う公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第二条第二項に規定する業務
二 税理士又は税理士法人が行う税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第二条第一項に規定する業務
制定当時にどういう力が働いたのか、寡聞にして存じませんが。明文にて、社労士業務の一部を公認会計士と税理士に解放してくれています。
過激派の社労士先生のなかには、「税理士が社労士業務に手を出すことは一切許されない!」とご主張される方がいらっしゃって。運動論としては理解できるのですが、現行法上は、税理士業務に付随するかぎりで社労士業務ができることになっているわけです。
・
このように、付随業務の中には、法的に効力のあるもの(ウ)とないもの(アイ)が含まれていて。
「税理士法に付随業務を定める意味はない」というご主張も想定しえますが。
これは、上記アとイしか見えていないからであって。ウのように、付随業務に《他士業法上書き効》が付与されているものもあるのであり。
付随業務を定めることは、決して意味がないわけではありません。
◯
さて、問題は、ウのような《他士業法上書き効》は、明文の規定がないかぎり認められないものだろうか、という点です。
(その3)までで論じてきたことでいうと、「印紙税事務(法律)」は、税理士業務の付随業務としてできるのかどうか、という話になります。
【印紙税事務(法律)】
A説(税の計算家)、C説(折衷説) ⇒できない
B説(税の法律家) ⇒できる
見解が分かれうるわけですが。
少なくとも、現行の税理士試験の出題内容をみるかぎり、税理士という資格には「法解釈能力」がビルドインされていない、ゆえに「できない」説のほうが説得力があるといわざるをえない、となってしまうのではないかと(当事者である税理士以外から見れば、の話)。
◯
そして、さらなる問題として、税理士資格に「法解釈能力」がビルドインされていない以上、「所得税業務(法律)」も許容されていないのでは、という疑問がでてきてしまいます。
【所得税事務(法律)】
A説(税の計算家) ⇒できない
B説(税の法律家)、C説(折衷説) ⇒できる
このような疑問をかわす見解のひとつとして、《法律》を、「税法」と「それ以外」に分解し、税法に限って解釈できるとする見解が考えられます(税法解釈限定説)。
もちろん、税法であろうが、「法解釈能力」が身についていないことに変わりはないわけですが。「税法」に関する一定の知識はあるということで、あとは頑張ってそこに「法解釈能力」を載せていくと。
他方で、「それ以外」については、そもそも知識すら身についていないのだから、それらを対象とする解釈まではできないこととすると。
【所得税事務(法律)】
税法の解釈 ⇒できる
それ以外の解釈 ⇒できない
◯
もしこのような見解(税法解釈限定説)が成り立つのだとすると、発生する問題。
税法学においては、《法的帰属説/経済的帰属説》《私法準拠説/税法独自説》《借用概念/独自概念》のように、税法解釈において、私法に従うか税法独自に解釈するか、といった点を軸にした論争があります。
たとえば、所得税法や相続税法にいう「住所」が完全に民法に準拠するものだとすると、「税法解釈限定説」からは、税理士は住所の有無を判断できないことになります。
他方で、「生計を一にする」が、民法にいう「扶養」とは異なる独自概念なのだとしたら、こちらは税理士が解釈してもよいことになります。
【所得税の解釈】
借用概念 ⇒解釈できない
独自概念 ⇒解釈できる
税理士はなかなかに不自由を強いられるわけですが。税法すら解釈できないよりは、まだましだということになります(税理士は、職域の維持・拡大のために実体法レベルで「税法独自説」を唱え続けなければならない、という呪いがかかり続ける事態になる)。
◯
なお、ここでいう「解釈」には「狭義の法解釈」と「事実認定」の両方が含まれる前提で記述をしました。
が、「裁判員制度」などというものがあることからも分かるとおり、(殺人のようなハードケースにおいてすら)「事実認定は誰でもできる」というのが、現行法制のおける制度設計となっています。
とすると、税法にしても税法以外にしても、「事実認定」にかぎっては「誰でもできる」こととしてもよいのかもしれません。
狭義の解釈: 弁護士の独占業務
事実認定 : 誰でもできる
ただ、教義の解釈/事実認定をどこまできれいに区分できるのか、という問題はあります。
上記の「住所」でいうと、
・住所は民法の借用概念と解される。
・住所は生活の本拠である。
・生活の本拠は客観的事実により判定すべきである。
・生活の本拠は、記述的要件か規範的要件か、何が主要事実にあたるか。
・住所を認定するための事実には◯◯など、阻害する事実には××などがある。
・証拠からは、××といった事実が認められるが、他方で◯◯といった事実も認められる。
・これら事実を総合すると、住所は日本にあるといえる。
といった一連の営みのうち、どこまでが狭義の解釈で、どこからが事実認定の問題なのでしょうか。そして、どこかに線引きをしたとして、そのラインが「専門家にしかできない/誰でもできる」と区別できるほど、難易度に違いのあるといえるものといえるでしょうか。
おそらく「裁判員制度」に関する研究において、このような議論は済んでいるのでしょうが、不勉強なためそこまでは追えていません。
◯
以上、真面目に考えれば考えるほど、「税理士は税の法律家だ!」説の方々のおっしゃる理想像とは異なる帰結がでてきてしまって。
C説(折衷説)や「税法解釈限定説」などをひねり出して、どうにか抜け道がないか試みてみたものの、どうにも苦しい。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その3)
◯
本業である「税理士業務」に付随する業務として、どのようなものがあるかを考えてみるに、以下の類型が想定しえます(類型的思考)。
【税理士業務の付随業務】
ア 他士業法に抵触しないので、誰でもできる。
イ 他士業法に抵触するので、税理士にはできない。
ウ 他士業法に抵触するけど、税理士ならできる。
一般に、アの典型例が「記帳代行」、イの典型例が「会計監査」(なんちゃってではなく、法定のやつ)と、それぞれ挙げられています。
では、ウは何があるかというと。
社会保険労務士法 第二十七条(業務の制限)
社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
社会保険労務士法施行令 第二条(業務の制限の解除)
法第二十七条ただし書の政令で定める業務は、次に掲げる業務とする。
一 公認会計士又は外国公認会計士が行う公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第二条第二項に規定する業務
二 税理士又は税理士法人が行う税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第二条第一項に規定する業務
制定当時にどういう力が働いたのか、寡聞にして存じませんが。明文にて、社労士業務の一部を公認会計士と税理士に解放してくれています。
過激派の社労士先生のなかには、「税理士が社労士業務に手を出すことは一切許されない!」とご主張される方がいらっしゃって。運動論としては理解できるのですが、現行法上は、税理士業務に付随するかぎりで社労士業務ができることになっているわけです。
・
このように、付随業務の中には、法的に効力のあるもの(ウ)とないもの(アイ)が含まれていて。
「税理士法に付随業務を定める意味はない」というご主張も想定しえますが。
これは、上記アとイしか見えていないからであって。ウのように、付随業務に《他士業法上書き効》が付与されているものもあるのであり。
付随業務を定めることは、決して意味がないわけではありません。
◯
さて、問題は、ウのような《他士業法上書き効》は、明文の規定がないかぎり認められないものだろうか、という点です。
(その3)までで論じてきたことでいうと、「印紙税事務(法律)」は、税理士業務の付随業務としてできるのかどうか、という話になります。
【印紙税事務(法律)】
A説(税の計算家)、C説(折衷説) ⇒できない
B説(税の法律家) ⇒できる
見解が分かれうるわけですが。
少なくとも、現行の税理士試験の出題内容をみるかぎり、税理士という資格には「法解釈能力」がビルドインされていない、ゆえに「できない」説のほうが説得力があるといわざるをえない、となってしまうのではないかと(当事者である税理士以外から見れば、の話)。
◯
そして、さらなる問題として、税理士資格に「法解釈能力」がビルドインされていない以上、「所得税業務(法律)」も許容されていないのでは、という疑問がでてきてしまいます。
【所得税事務(法律)】
A説(税の計算家) ⇒できない
B説(税の法律家)、C説(折衷説) ⇒できる
このような疑問をかわす見解のひとつとして、《法律》を、「税法」と「それ以外」に分解し、税法に限って解釈できるとする見解が考えられます(税法解釈限定説)。
もちろん、税法であろうが、「法解釈能力」が身についていないことに変わりはないわけですが。「税法」に関する一定の知識はあるということで、あとは頑張ってそこに「法解釈能力」を載せていくと。
他方で、「それ以外」については、そもそも知識すら身についていないのだから、それらを対象とする解釈まではできないこととすると。
【所得税事務(法律)】
税法の解釈 ⇒できる
それ以外の解釈 ⇒できない
◯
もしこのような見解(税法解釈限定説)が成り立つのだとすると、発生する問題。
税法学においては、《法的帰属説/経済的帰属説》《私法準拠説/税法独自説》《借用概念/独自概念》のように、税法解釈において、私法に従うか税法独自に解釈するか、といった点を軸にした論争があります。
たとえば、所得税法や相続税法にいう「住所」が完全に民法に準拠するものだとすると、「税法解釈限定説」からは、税理士は住所の有無を判断できないことになります。
他方で、「生計を一にする」が、民法にいう「扶養」とは異なる独自概念なのだとしたら、こちらは税理士が解釈してもよいことになります。
【所得税の解釈】
借用概念 ⇒解釈できない
独自概念 ⇒解釈できる
税理士はなかなかに不自由を強いられるわけですが。税法すら解釈できないよりは、まだましだということになります(税理士は、職域の維持・拡大のために実体法レベルで「税法独自説」を唱え続けなければならない、という呪いがかかり続ける事態になる)。
◯
なお、ここでいう「解釈」には「狭義の法解釈」と「事実認定」の両方が含まれる前提で記述をしました。
が、「裁判員制度」などというものがあることからも分かるとおり、(殺人のようなハードケースにおいてすら)「事実認定は誰でもできる」というのが、現行法制のおける制度設計となっています。
とすると、税法にしても税法以外にしても、「事実認定」にかぎっては「誰でもできる」こととしてもよいのかもしれません。
狭義の解釈: 弁護士の独占業務
事実認定 : 誰でもできる
ただ、教義の解釈/事実認定をどこまできれいに区分できるのか、という問題はあります。
上記の「住所」でいうと、
・住所は民法の借用概念と解される。
・住所は生活の本拠である。
・生活の本拠は客観的事実により判定すべきである。
・生活の本拠は、記述的要件か規範的要件か、何が主要事実にあたるか。
・住所を認定するための事実には◯◯など、阻害する事実には××などがある。
・証拠からは、××といった事実が認められるが、他方で◯◯といった事実も認められる。
・これら事実を総合すると、住所は日本にあるといえる。
といった一連の営みのうち、どこまでが狭義の解釈で、どこからが事実認定の問題なのでしょうか。そして、どこかに線引きをしたとして、そのラインが「専門家にしかできない/誰でもできる」と区別できるほど、難易度に違いのあるといえるものといえるでしょうか。
おそらく「裁判員制度」に関する研究において、このような議論は済んでいるのでしょうが、不勉強なためそこまでは追えていません。
◯
以上、真面目に考えれば考えるほど、「税理士は税の法律家だ!」説の方々のおっしゃる理想像とは異なる帰結がでてきてしまって。
C説(折衷説)や「税法解釈限定説」などをひねり出して、どうにか抜け道がないか試みてみたものの、どうにも苦しい。
posted by ウロ at 09:26| Comment(0)
| 税理士法
2025年12月29日
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その3)
その1・その2までは、わりと地に足のついた議論におさまっていたかと思います(自称)。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
が、今回は《妄想》強めの内容となります。私がこれまで、「税理士法」に関する文献をまともに読んでこなかったことのツケを、ここで払わされることに。
◯
「印紙税等に関する事務」(以下「印紙税事務」といいます。)について、税理士法の規律は次のとおりとなっていました。
印紙税事務
ア 税理士業務 除く
イ 付随業務 含む(通達による)
これは、「印紙の要否なんて誰でも判定できるんだから、税理士業務として独占させる必要はない。」という判断の結果であると思われます(さしあたり、昔は決済手段が「現金」だけだったので、領収書の印紙の要否なんて誰でも容易に判定できた、という状況を想定していただければ。)
キャッシュレス決済と印紙税法 〜第17号文書(領収書)該当性について
問題は、現代において、私法の規律が複雑化したことに伴い印紙の要否も難しくなってしまったことにつき、税理士法の規律がどのような影響を受けるか、という点です。
昔:事実関係は単純、規範もそのまま当てはめれば結論がでる。ゆえに誰でもできる。
↓
今:事実関係は複雑、規範も解釈が必要。ゆえに素人が判定するのは困難。
この点、「原意主義」からすると、税理士が付随業務としてできるとされている「印紙税事務」は、現代においても、誰でもできる「昔」レベルのものに限定されたままだということになります。
とすると、「印紙税事務」の中でも《法的判断》が必要となるものは、付随業務にも税理士業務にも含まれていないことになるため、原則どおり弁護士にしかできない「法律事務」にあたるのだと、解釈することになります。
印紙税事務
簡単なやつ →付随業務(誰でもできる)
法的判断が必要 →法律事務(弁護士しかできない)
・
他方で、「税理士は税の法律家だ!」「税理士もリーガルマインドを身につけるべきだ!」と主張される方々からすれば、「原意主義」の立場を否定しなければなりません。
そこで、時代とともに付随業務としての「印紙税事務」も(なし崩し的に?)広がってきたのだ、などと解釈する必要があるはずです。
印紙税事務
簡単なやつ →付随業務(誰でもできる)
法的判断が必要 →付随業務(?)
税理士が印紙税事務をできるとするためには、(税理士業務には入れられないので)付随業務に入れるしかありません。が、付随業務には「他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。」という制約があります。
この制約を、乗り越えることができるのかどうか。
弁護士法 第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
税理士法 第二条(税理士の業務)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
こう並べると、但書同士でループしているように感じてしまうのですが。
文理解釈としては、
・税理士法2条2項本文が、弁護士法72条にいう「他の法律に別段の定めがある場合」にあたる。
・結果、付随業務としてであれば「法律事務」もできることになり、税理士法2条2項但書の「他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項」には該当しないことになる。
と読めばよいでしょうか。
文理解釈はこれでよいとして、この帰結を「実質論」としても正当化できるのかどうかです。
◯
ここで余談めいた話をしますが。
税理士試験(の税法科目)における「理論」と「計算」。
これらは、条文に書かれていること(を予備校が暗記用に整えたもの)を正確に理解し、ルールに従って正しく税額を算出するというもの、と表現することができるでしょうか。
(他士業の方からすると、条文(を加工しただけのもの)を「理論」と呼ぶことに違和感があるかと思いますが、そういう慣用句・ジャーゴンだとご理解ください。)
ここには、事実関係が不明な状態で、証拠から事実を認定するという「事実認定」、そして、条文に解釈を加えて規範を導く「法解釈」といった営みは一切でてきません。これらの問題が生じていない、キレイな状態からスタートしているわけです(にもかかわらず「税理士試験、簡単」とはならないのが、税ゆえ)。
税理士試験は「税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」としているわけですが(税理士法6条)。税理士という資格をもって業務を始めるにおいて、さしあたり「事実認定能力」や「法解釈能力」はなくても大丈夫、というメッセージだと受け取ってもよいのでしょうか。
登録するには、試験合格にプラスして2年の「実務経験」が要求されているものの(税理士法3条1項)。「租税に関する事務」と書いてあるだけで、それら能力が要求されているわけでもなく。そもそも「会計に関する事務」だけでも足りてしまいます。
時代とともに税制が複雑化し、それにあわせて試験問題も難易度があがっているのはそのとおりですが。
試験で問われていることとして、「事実認定能力」「法解釈能力」が要求されていないという点にはかわりはないわけです。
・
その是非はさておき。
大学院における「税法論文」をもって、税法科目合格の代わりとするという制度。「法解釈能力」を示すことをもって「理論・計算能力」の代わりとしていることになります。
なお、「制度論」としては、
・税理士試験に「事実認定・法解釈能力」を問う問題をいれる
・「事実認定・法解釈能力」を要求する《特定税理士》という2階建の資格を導入する
といったあたりが、検討に値するでしょうか。
◯
ここまでは「印紙税事務」についてのお話しをしていたのですが。
より根本的な問題として、当然に税理士業務に含まれている「法人税事務」や「所得税事務」についても、具体的にどこまでの業務が含まれるのかが問題となりえます(以下「所得税事務」で代表させます)。
「税理士試験」のところであげた言葉をそのまま使うならば、「理論・計算」事務は当然含むとして、「事実認定・法解釈」事務まで含まれるのだろうか、という話しです(「事務」という表現に違和感がありますが、税理士法・弁護士法の表現になるべく従うようにしています)。
所得税事務
理論・計算(事実関係が明確な状態で、条文に書かれたとおり正確に税額計算をする)
事実認定・法解釈(証拠から事実を認定する、条文に解釈を施して規範を導く)
税理士法を軽く眺めていても、
第1条 「税務に関する専門家」
第2条 「租税に関し」
第2条の2 「租税に関する事項」
などと、「税法」「租税法」と言ってもおかしくないはずのところでも、あえて「税務」「租税」などと《法》を切り落として記述しているようにも読めます。
とすると、税理士業務に含まれるのは、あくまでも「理論・計算」までで。「事実認定・法解釈」は、原則に戻って弁護士にお任せしなければならない、という解釈もありえることになります。
【計算限定説】
昔:事実関係は単純、規範もそのまま当てはめれば結論がでる。しかし計算は難しい
そこで、税理士に所得税事務を独占させよう。
↓
今:事実関係は複雑、規範も解釈が必要。が、税理士が事実認定・法解釈をするのは困難
そこで、弁護士が事実認定・法解釈を施し、税理士はそれに従って計算するだけ
税理士業務
租税に関する計算事務 ←含む
租税法に関する法律事務 ←含まない
もし、このような見解が正しいのだとすると、税理士法2条の2ルートで「補佐人」となった場合でも、裁判所の許可なしに陳述できるのは「計算事務」に関するものに限られることになります。
◯
もちろん、こんな見解、「税理士は税に関する法律家だ!」と主張する方々からは、とても受け入れられない解釈でしょう。
が、税理士法の書きぶり、税理士試験の出題範囲や現実に問われている能力などからすると、どうも税理士(という資格の保有者)には、「事実認定能力」や「法解釈能力」までは要求されていないと理解せざるをえないように思えてしまいます。
にもかかわらず、《独占業務》として租税に関する「法律事務」ができるとする実質的な根拠はあるのだろうかと。
◯
ここまでの、とっ散らかった記述を、一旦整理します。
【以下、用語のお約束】
計算 ⇒理論&計算
法律 ⇒事実認定&法解釈
《A説(税の計算家説)》
所得税事務
計算 税理士業務 →補佐人(税理士法)
法律 法律業務×
印紙税事務
計算 付随業務
法律 法律業務×
A説では、所得税でも印紙税でも、「計算」はできるが「法律」はできないと解することになります。
補佐人(税理士法)についても、印紙税事務ができないのは当然、所得税事務も「計算」にかかる陳述しかできないことになります。
《B説(税の法律家説)》
所得税事務
計算 税理士業務 →補佐人(税理士法)
法律 税理士業務 →補佐人(税理士法)
印紙税事務
計算 付随業務
法律 付随業務
B説では、「法律」までできると解するわけですが、税理士という資格だけではその能力が担保されていないのが難点です。
◯
こうみると、どうもA説のほうが筋が通っているようにも見えます。が、A説にとって位置づけの微妙なものが、「審査請求」までは税理士が税務代理できるとされている点です。
ア 税務調査、再調査の請求、審査請求 ⇒単独で税務代理できる
イ 税務訴訟 ⇒弁護士がいたうえで、補佐人としてのみ
税理士が審査請求において代理人となったとして、「計算」だけしか陳述できないなどいうのは変であり。実際にもそのような運用はなされていないわけです。
・
よくよく考えると、上記のA説・B説とも、税理士業務と付随業務とを整合的に位置づけるという意味では、共通の発想に基づいています。「付随」業務とある以上、1項の税理士業務とパラレルに構成すべきだろうと。
これらに対し、整合性をとることを放棄すると、次のような見解が可能となります。
《C説(あるときは税の法律家、またあるときは税の計算家説)》
所得税事務
計算 税理士業務 →補佐人(税理士法)
法律 税理士業務 →補佐人(税理士法) (税理士法2条1項+弁護士法72条但書による)
印紙税事務
計算 付随業務
法律 法律事務× (弁護士法72条本文+税理士法2条2項但書による)
税理士業務は「法律」もできるが付随業務は「計算」までしかできないと、それぞれ扱いを違えることにすると。
この見解は、税理士法2条1項には弁護士法72条本文を上書きする効力があるが、税理士法2条2項にはそのような効力はない、と理解するものです。
弁護士法72条但書「他の法律に別段の定めがある場合」
税理士法2条1項「税理士業務」 ⇒あたる
税理士法2条2項「付随業務」 ⇒あたらない
もちろん、所得税事務は「法律」までできるが印紙税事務は「計算」しかできない、などという帰結が変なのはそのとおりです。が、この点は、租税を税目ごとに分断し、
・税理士業務(税理士独占・激強)/付随業務(税理士非独占・激弱)
の二択で振り分けている現行法に起因することです。
そして、「印紙税については税務代理できない」という俗説を信奉されている方々からすれば、税理士業務と付随業務とで、業務範囲が異なるという帰結も容易に受け入れることができるはずです(個人的にはなぜそのような解釈ができるのか、疑問に思っているところですが)。
・
税理士ができる業務範囲、あるいは独占できる業務範囲について、広げるにしても狭めるにしても、現行の《税理士業務/付随業務》二元論では、うまく規律できる見込みが薄いように、私には感じます。
◯
以上、不勉強な野良税理士が、こんな辺境のブログでイチャモンつけていることなど、税理士法のプロの方々からすれば、とっくにクリアずみのことなのでしょう。
ということで、年末の3回にわたって、税理士法や訴訟実務につき私がたいして理解ができていない、という恥を晒しただけの記事ということで終わりとなります(今年が)。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その3)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
が、今回は《妄想》強めの内容となります。私がこれまで、「税理士法」に関する文献をまともに読んでこなかったことのツケを、ここで払わされることに。
◯
「印紙税等に関する事務」(以下「印紙税事務」といいます。)について、税理士法の規律は次のとおりとなっていました。
印紙税事務
ア 税理士業務 除く
イ 付随業務 含む(通達による)
これは、「印紙の要否なんて誰でも判定できるんだから、税理士業務として独占させる必要はない。」という判断の結果であると思われます(さしあたり、昔は決済手段が「現金」だけだったので、領収書の印紙の要否なんて誰でも容易に判定できた、という状況を想定していただければ。)
キャッシュレス決済と印紙税法 〜第17号文書(領収書)該当性について
問題は、現代において、私法の規律が複雑化したことに伴い印紙の要否も難しくなってしまったことにつき、税理士法の規律がどのような影響を受けるか、という点です。
昔:事実関係は単純、規範もそのまま当てはめれば結論がでる。ゆえに誰でもできる。
↓
今:事実関係は複雑、規範も解釈が必要。ゆえに素人が判定するのは困難。
この点、「原意主義」からすると、税理士が付随業務としてできるとされている「印紙税事務」は、現代においても、誰でもできる「昔」レベルのものに限定されたままだということになります。
とすると、「印紙税事務」の中でも《法的判断》が必要となるものは、付随業務にも税理士業務にも含まれていないことになるため、原則どおり弁護士にしかできない「法律事務」にあたるのだと、解釈することになります。
印紙税事務
簡単なやつ →付随業務(誰でもできる)
法的判断が必要 →法律事務(弁護士しかできない)
・
他方で、「税理士は税の法律家だ!」「税理士もリーガルマインドを身につけるべきだ!」と主張される方々からすれば、「原意主義」の立場を否定しなければなりません。
そこで、時代とともに付随業務としての「印紙税事務」も(なし崩し的に?)広がってきたのだ、などと解釈する必要があるはずです。
印紙税事務
簡単なやつ →付随業務(誰でもできる)
法的判断が必要 →付随業務(?)
税理士が印紙税事務をできるとするためには、(税理士業務には入れられないので)付随業務に入れるしかありません。が、付随業務には「他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。」という制約があります。
この制約を、乗り越えることができるのかどうか。
弁護士法 第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
税理士法 第二条(税理士の業務)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
こう並べると、但書同士でループしているように感じてしまうのですが。
文理解釈としては、
・税理士法2条2項本文が、弁護士法72条にいう「他の法律に別段の定めがある場合」にあたる。
・結果、付随業務としてであれば「法律事務」もできることになり、税理士法2条2項但書の「他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項」には該当しないことになる。
と読めばよいでしょうか。
文理解釈はこれでよいとして、この帰結を「実質論」としても正当化できるのかどうかです。
◯
ここで余談めいた話をしますが。
税理士試験(の税法科目)における「理論」と「計算」。
これらは、条文に書かれていること(を予備校が暗記用に整えたもの)を正確に理解し、ルールに従って正しく税額を算出するというもの、と表現することができるでしょうか。
(他士業の方からすると、条文(を加工しただけのもの)を「理論」と呼ぶことに違和感があるかと思いますが、そういう慣用句・ジャーゴンだとご理解ください。)
ここには、事実関係が不明な状態で、証拠から事実を認定するという「事実認定」、そして、条文に解釈を加えて規範を導く「法解釈」といった営みは一切でてきません。これらの問題が生じていない、キレイな状態からスタートしているわけです(にもかかわらず「税理士試験、簡単」とはならないのが、税ゆえ)。
税理士試験は「税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」としているわけですが(税理士法6条)。税理士という資格をもって業務を始めるにおいて、さしあたり「事実認定能力」や「法解釈能力」はなくても大丈夫、というメッセージだと受け取ってもよいのでしょうか。
登録するには、試験合格にプラスして2年の「実務経験」が要求されているものの(税理士法3条1項)。「租税に関する事務」と書いてあるだけで、それら能力が要求されているわけでもなく。そもそも「会計に関する事務」だけでも足りてしまいます。
時代とともに税制が複雑化し、それにあわせて試験問題も難易度があがっているのはそのとおりですが。
試験で問われていることとして、「事実認定能力」「法解釈能力」が要求されていないという点にはかわりはないわけです。
・
その是非はさておき。
大学院における「税法論文」をもって、税法科目合格の代わりとするという制度。「法解釈能力」を示すことをもって「理論・計算能力」の代わりとしていることになります。
なお、「制度論」としては、
・税理士試験に「事実認定・法解釈能力」を問う問題をいれる
・「事実認定・法解釈能力」を要求する《特定税理士》という2階建の資格を導入する
といったあたりが、検討に値するでしょうか。
◯
ここまでは「印紙税事務」についてのお話しをしていたのですが。
より根本的な問題として、当然に税理士業務に含まれている「法人税事務」や「所得税事務」についても、具体的にどこまでの業務が含まれるのかが問題となりえます(以下「所得税事務」で代表させます)。
「税理士試験」のところであげた言葉をそのまま使うならば、「理論・計算」事務は当然含むとして、「事実認定・法解釈」事務まで含まれるのだろうか、という話しです(「事務」という表現に違和感がありますが、税理士法・弁護士法の表現になるべく従うようにしています)。
所得税事務
理論・計算(事実関係が明確な状態で、条文に書かれたとおり正確に税額計算をする)
事実認定・法解釈(証拠から事実を認定する、条文に解釈を施して規範を導く)
税理士法を軽く眺めていても、
第1条 「税務に関する専門家」
第2条 「租税に関し」
第2条の2 「租税に関する事項」
などと、「税法」「租税法」と言ってもおかしくないはずのところでも、あえて「税務」「租税」などと《法》を切り落として記述しているようにも読めます。
とすると、税理士業務に含まれるのは、あくまでも「理論・計算」までで。「事実認定・法解釈」は、原則に戻って弁護士にお任せしなければならない、という解釈もありえることになります。
【計算限定説】
昔:事実関係は単純、規範もそのまま当てはめれば結論がでる。しかし計算は難しい
そこで、税理士に所得税事務を独占させよう。
↓
今:事実関係は複雑、規範も解釈が必要。が、税理士が事実認定・法解釈をするのは困難
そこで、弁護士が事実認定・法解釈を施し、税理士はそれに従って計算するだけ
税理士業務
租税に関する計算事務 ←含む
租税法に関する法律事務 ←含まない
もし、このような見解が正しいのだとすると、税理士法2条の2ルートで「補佐人」となった場合でも、裁判所の許可なしに陳述できるのは「計算事務」に関するものに限られることになります。
◯
もちろん、こんな見解、「税理士は税に関する法律家だ!」と主張する方々からは、とても受け入れられない解釈でしょう。
が、税理士法の書きぶり、税理士試験の出題範囲や現実に問われている能力などからすると、どうも税理士(という資格の保有者)には、「事実認定能力」や「法解釈能力」までは要求されていないと理解せざるをえないように思えてしまいます。
にもかかわらず、《独占業務》として租税に関する「法律事務」ができるとする実質的な根拠はあるのだろうかと。
◯
ここまでの、とっ散らかった記述を、一旦整理します。
【以下、用語のお約束】
計算 ⇒理論&計算
法律 ⇒事実認定&法解釈
《A説(税の計算家説)》
所得税事務
計算 税理士業務 →補佐人(税理士法)
法律 法律業務×
印紙税事務
計算 付随業務
法律 法律業務×
A説では、所得税でも印紙税でも、「計算」はできるが「法律」はできないと解することになります。
補佐人(税理士法)についても、印紙税事務ができないのは当然、所得税事務も「計算」にかかる陳述しかできないことになります。
《B説(税の法律家説)》
所得税事務
計算 税理士業務 →補佐人(税理士法)
法律 税理士業務 →補佐人(税理士法)
印紙税事務
計算 付随業務
法律 付随業務
B説では、「法律」までできると解するわけですが、税理士という資格だけではその能力が担保されていないのが難点です。
◯
こうみると、どうもA説のほうが筋が通っているようにも見えます。が、A説にとって位置づけの微妙なものが、「審査請求」までは税理士が税務代理できるとされている点です。
ア 税務調査、再調査の請求、審査請求 ⇒単独で税務代理できる
イ 税務訴訟 ⇒弁護士がいたうえで、補佐人としてのみ
税理士が審査請求において代理人となったとして、「計算」だけしか陳述できないなどいうのは変であり。実際にもそのような運用はなされていないわけです。
・
よくよく考えると、上記のA説・B説とも、税理士業務と付随業務とを整合的に位置づけるという意味では、共通の発想に基づいています。「付随」業務とある以上、1項の税理士業務とパラレルに構成すべきだろうと。
これらに対し、整合性をとることを放棄すると、次のような見解が可能となります。
《C説(あるときは税の法律家、またあるときは税の計算家説)》
所得税事務
計算 税理士業務 →補佐人(税理士法)
法律 税理士業務 →補佐人(税理士法) (税理士法2条1項+弁護士法72条但書による)
印紙税事務
計算 付随業務
法律 法律事務× (弁護士法72条本文+税理士法2条2項但書による)
税理士業務は「法律」もできるが付随業務は「計算」までしかできないと、それぞれ扱いを違えることにすると。
この見解は、税理士法2条1項には弁護士法72条本文を上書きする効力があるが、税理士法2条2項にはそのような効力はない、と理解するものです。
弁護士法72条但書「他の法律に別段の定めがある場合」
税理士法2条1項「税理士業務」 ⇒あたる
税理士法2条2項「付随業務」 ⇒あたらない
もちろん、所得税事務は「法律」までできるが印紙税事務は「計算」しかできない、などという帰結が変なのはそのとおりです。が、この点は、租税を税目ごとに分断し、
・税理士業務(税理士独占・激強)/付随業務(税理士非独占・激弱)
の二択で振り分けている現行法に起因することです。
そして、「印紙税については税務代理できない」という俗説を信奉されている方々からすれば、税理士業務と付随業務とで、業務範囲が異なるという帰結も容易に受け入れることができるはずです(個人的にはなぜそのような解釈ができるのか、疑問に思っているところですが)。
・
税理士ができる業務範囲、あるいは独占できる業務範囲について、広げるにしても狭めるにしても、現行の《税理士業務/付随業務》二元論では、うまく規律できる見込みが薄いように、私には感じます。
◯
以上、不勉強な野良税理士が、こんな辺境のブログでイチャモンつけていることなど、税理士法のプロの方々からすれば、とっくにクリアずみのことなのでしょう。
ということで、年末の3回にわたって、税理士法や訴訟実務につき私がたいして理解ができていない、という恥を晒しただけの記事ということで終わりとなります(今年が)。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その3)
posted by ウロ at 09:20| Comment(0)
| 税理士法
2025年12月22日
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
さて、前回整理した条文をベースに、畢竟独自の見解を開陳してみようと思います。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
◯
私が最初に思った疑問。
税理士が補佐人となった訴訟において、なぜ、判決文の当事者の表示が「補佐人税理士」と、肩書(資格)が記載されているのか、という点でした。
民事訴訟法上「訴訟上の任意代理人」の記載は、判決書において必要的とはされていないものの、慣例的に記載されているところです。
民事訴訟法 第二百五十三条(判決書)
1 判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
五 当事者及び法定代理人
そして、肩書を記載するかどうかについて、『10訂 民事判決起案の手引(補訂版)』(法曹会2020)には次のとおり記載されています。
「訴訟代理人は、法律上は必要的記載事項とされていないが、訴訟の追行者を明らかにすることと送達の便宜のため、これを表示している。訴訟代理人が弁護士であるときは、弁護士は、民訴法上特別の地位を与えられているから、それを示すために「同訴訟代理人弁護土A」と記載する。なお、支配人等の法令による訴訟代理人についても、その資格を記載するのが通例である。」
司法研修所「10訂 民事判決起案の手引(補訂版)」(法曹会2020) Amazon
たとえばですけど。
《印紙税法学》の権威・泰斗(◯◯大学法学部教授)に、裁判所の許可を得て補佐人になってもらったとして。「補佐人教授」と表示されるかといえば、されないでしょう。
なぜなら、「大学教授」であることは、訴訟手続において特別な地位を有さないからです。
では、なぜ「補佐人税理士」と表示されるのでしょうか。
これは税理士法という「特別法」において裁判所の許可を得ないで補佐人になった者、という意味で、「一般法」である民事訴訟法上の補佐人とは異なる地位を有しているからでしょう(以下、前者を「補佐人(税理士法)」、後者を「補佐人(民訴法)」といいます。)。
もしこれが正しいとすると、「補佐人税理士」と表示されるのは補佐人(税理士法)に限られることになります。
◯
では、印紙税法に関する訴訟(以下、「印紙税訴訟」といいます。)において、税理士は、補佐人(税理士法)となることができるのでしょうか。
前回記述したとおり、税理士が補佐人(税理士法)となれるのは、「租税に関する事項」に限られており、ここでいう「租税」には印紙税が含まれていません。
そうすると、印紙税訴訟において、補佐人(税理士法)となることはできないことになるはずです。
とすると、印紙税訴訟で補佐人になるためには、民事訴訟法60条に基づき裁判所の許可を得る必要があります。そして、この場合は、税理士という資格に訴訟上特別な意味はなく、「印紙税法に詳しい一般人」と同じ位置づけになります(その程度で許可してもらえるか、というのは置いておいて)。
◯
実際の印紙税訴訟において、当事者の表示がどうなっているかにつき、雑に検索してみたところ、「補佐人税理士」の表示があるものを2事件みつけました。
1 消費生活協同組合・領収書
東京地裁 令和5年3月8日判決
東京高裁 令和5年10月18日判決
最高裁 令和6年5月15日決定(上告棄却・不受理)
2 判取帳・お客様返金伝票
東京地裁 平成27年12月18日判決
東京高裁 平成28年6月29日判決
最高裁 平成29年2月23日決定(上告棄却・不受理)
いずれも、地裁・高裁の判決において、「補佐人税理士」と表示されていました。他方で、最高裁では補佐人の記載がなされていなかったのですが、これは「上告棄却・不受理」で終わったからなのでしょうか。
◯
印紙税訴訟では補佐人(税理士法)になれないはずなのに、当事者欄に「補佐人税理士」と表示されているのはなぜでしょうか。
いくつかの可能性をあげてみます。
・邪推その1
印紙税訴訟において税理士が補佐人(税理士法)になれないことを、裁判所が看過している。
・邪推その2
裁判所の許可なく補佐人(税理士法)になれるということで、とりあえずで選任しておく。そして、印紙税に関する陳述をする段階ではじめて裁判所の許可をもらう。
・邪推その3
国税通則法上の論点など、何かしら「租税に関する事項」を争点に紛れ込ませておく。そして、印紙税に関する陳述をする段階ではじめて裁判所の許可をもらう。
これらのような場合であれば、印紙税訴訟においても補佐人(税理士法)になることができることになります(なお、「陳述」といっても、現実には「主張書面」に名前を載せられる、というくらいになるでしょうか)。
◯
さらなる問題が、補佐人を「有償」(以下「業とする」も含めた意味で使います。)で引き受けることが、弁護士法違反(以下「非弁行為」といいます)にならないのかどうかという点です。
弁護士法 第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
まず、「租税に関する事項」につき補佐人(税理士法)となる場合は、「税理士業務」として実施するものであるため、弁護士法72条但書にいう「他の法律に別段の定めがある場合」に該当し、有償で行うことに問題はありません。
問題は、補佐人(民訴法)のほうです。
そもそもの話し。
「税理士」が印紙税訴訟において補佐人(民訴法)となる場面にかぎったことではなく。弁護士でない者が補佐人(民訴法)となり出頭・陳述をすることに対して報酬をもらうことは、非弁行為となるのでしょうか。
(なお、証拠方法としての「証人」に対して一方当事者が報酬を支払ってしまうとその証拠価値を損ねる、ということはあると思います。が、「補佐人」は一方当事者のための協力する立場であって、そういう問題はありません。)
たとえば、折り紙の著作権に関する訴訟において、「折り紙の専門家」が原告の補佐人(民訴法)となって、折り紙に関する知見に基づき陳述したことに対し報酬をもらった場合はどうか。
この場合は「法律事務」に関する知見ではないということで非弁行為とはならなそうです(が、著作権違反にあたる/あたらないのような法的判断を示した場合は怪しい)。
では、士業法に補佐人規定のない「司法書士」が、登記事件につき原告の補佐人(民訴法)になったとして。この補佐人業務に対する報酬をもらったら、これは「法律事務」にあたるということで、非弁行為になるのでしょうか。
折り紙に関する陳述 ⇒法律事務でない?
登記に関する陳述 ⇒法律事務にあたる?
これについては、「裁判所の許可」というものがいったいどこまでの効果をもっているか、という観点からアプローチができそうです。
「裁判所の許可」は、単に当該訴訟手続きにおいて補佐人として活動することを許容するだけの効果しか持たないのか、それとも弁護士法上の違法性までもを阻却する効果があるのか。
裁判所の許可の効果
ア 当該訴訟手続きで補佐人やっていいというだけ。
イ 弁護士法72条但書に該当し、有償で補佐人やってもいいことになる。
では、税理士が、印紙税訴訟において補佐人(民訴法)となる場合はどうか。
印紙税に関する業務が「付随義務」になるのだとして。では、この「付随義務」の中に「印紙税訴訟における補佐人活動」が含まれるのか。
そして、付随業務に該当することで有償で行ってもよいことになるのか、それとも裁判所の許可があってはじめて有償で行うことが許容されることになるのか。
印紙税訴訟における補佐人(民訴法)
ア 付随業務に該当し有償でやってもよい。
イ 付随業務に該当し、かつ裁判所の許可があるため有償でやってもよい。
ウ 補佐人活動は法律事務だから有償では行えない。
前回述べたとおり、印紙税が税理士業務に含まれていない理由。印紙の要否なんて誰でも判断できるでしょ、という制定当時の認識によるものだと述べました。問題は、印紙の要否ですら複雑な法的判断が必要となった現代においても、そのような位置づけのままでもよいのか、という点です。
租税を「税理士業務/付随業務」に振り分けるという現行法の建付けが、どうも現代にそぐわないように思うのですが。
◯
最近は下火になったのかどうか。
専門的な知見が必要な訴訟において、補佐人(民訴法)を積極的に活用していこう、というような論調が一時あったかと思います。が、弁護士法の規律との関係が明確にならない限り、現実問題として、積極的な活用が広がっていきにくいように思います。
◯
以上、現実の印紙税訴訟においては、「補佐人税理士」という表示のもと、補佐人として活動している税理士の方々がいらっしゃるのであり。実務的にはとっくに解決ずみの問題なのでしょう。
それはそれとして、前回・今回と記事を書いていて、どうにも引っかかる箇所があったので、次回で言語化してみます。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
◯
私が最初に思った疑問。
税理士が補佐人となった訴訟において、なぜ、判決文の当事者の表示が「補佐人税理士」と、肩書(資格)が記載されているのか、という点でした。
民事訴訟法上「訴訟上の任意代理人」の記載は、判決書において必要的とはされていないものの、慣例的に記載されているところです。
民事訴訟法 第二百五十三条(判決書)
1 判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
五 当事者及び法定代理人
そして、肩書を記載するかどうかについて、『10訂 民事判決起案の手引(補訂版)』(法曹会2020)には次のとおり記載されています。
「訴訟代理人は、法律上は必要的記載事項とされていないが、訴訟の追行者を明らかにすることと送達の便宜のため、これを表示している。訴訟代理人が弁護士であるときは、弁護士は、民訴法上特別の地位を与えられているから、それを示すために「同訴訟代理人弁護土A」と記載する。なお、支配人等の法令による訴訟代理人についても、その資格を記載するのが通例である。」
司法研修所「10訂 民事判決起案の手引(補訂版)」(法曹会2020) Amazon
たとえばですけど。
《印紙税法学》の権威・泰斗(◯◯大学法学部教授)に、裁判所の許可を得て補佐人になってもらったとして。「補佐人教授」と表示されるかといえば、されないでしょう。
なぜなら、「大学教授」であることは、訴訟手続において特別な地位を有さないからです。
では、なぜ「補佐人税理士」と表示されるのでしょうか。
これは税理士法という「特別法」において裁判所の許可を得ないで補佐人になった者、という意味で、「一般法」である民事訴訟法上の補佐人とは異なる地位を有しているからでしょう(以下、前者を「補佐人(税理士法)」、後者を「補佐人(民訴法)」といいます。)。
もしこれが正しいとすると、「補佐人税理士」と表示されるのは補佐人(税理士法)に限られることになります。
◯
では、印紙税法に関する訴訟(以下、「印紙税訴訟」といいます。)において、税理士は、補佐人(税理士法)となることができるのでしょうか。
前回記述したとおり、税理士が補佐人(税理士法)となれるのは、「租税に関する事項」に限られており、ここでいう「租税」には印紙税が含まれていません。
そうすると、印紙税訴訟において、補佐人(税理士法)となることはできないことになるはずです。
とすると、印紙税訴訟で補佐人になるためには、民事訴訟法60条に基づき裁判所の許可を得る必要があります。そして、この場合は、税理士という資格に訴訟上特別な意味はなく、「印紙税法に詳しい一般人」と同じ位置づけになります(その程度で許可してもらえるか、というのは置いておいて)。
◯
実際の印紙税訴訟において、当事者の表示がどうなっているかにつき、雑に検索してみたところ、「補佐人税理士」の表示があるものを2事件みつけました。
1 消費生活協同組合・領収書
東京地裁 令和5年3月8日判決
東京高裁 令和5年10月18日判決
最高裁 令和6年5月15日決定(上告棄却・不受理)
2 判取帳・お客様返金伝票
東京地裁 平成27年12月18日判決
東京高裁 平成28年6月29日判決
最高裁 平成29年2月23日決定(上告棄却・不受理)
いずれも、地裁・高裁の判決において、「補佐人税理士」と表示されていました。他方で、最高裁では補佐人の記載がなされていなかったのですが、これは「上告棄却・不受理」で終わったからなのでしょうか。
◯
印紙税訴訟では補佐人(税理士法)になれないはずなのに、当事者欄に「補佐人税理士」と表示されているのはなぜでしょうか。
いくつかの可能性をあげてみます。
・邪推その1
印紙税訴訟において税理士が補佐人(税理士法)になれないことを、裁判所が看過している。
・邪推その2
裁判所の許可なく補佐人(税理士法)になれるということで、とりあえずで選任しておく。そして、印紙税に関する陳述をする段階ではじめて裁判所の許可をもらう。
・邪推その3
国税通則法上の論点など、何かしら「租税に関する事項」を争点に紛れ込ませておく。そして、印紙税に関する陳述をする段階ではじめて裁判所の許可をもらう。
これらのような場合であれば、印紙税訴訟においても補佐人(税理士法)になることができることになります(なお、「陳述」といっても、現実には「主張書面」に名前を載せられる、というくらいになるでしょうか)。
◯
さらなる問題が、補佐人を「有償」(以下「業とする」も含めた意味で使います。)で引き受けることが、弁護士法違反(以下「非弁行為」といいます)にならないのかどうかという点です。
弁護士法 第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
まず、「租税に関する事項」につき補佐人(税理士法)となる場合は、「税理士業務」として実施するものであるため、弁護士法72条但書にいう「他の法律に別段の定めがある場合」に該当し、有償で行うことに問題はありません。
問題は、補佐人(民訴法)のほうです。
そもそもの話し。
「税理士」が印紙税訴訟において補佐人(民訴法)となる場面にかぎったことではなく。弁護士でない者が補佐人(民訴法)となり出頭・陳述をすることに対して報酬をもらうことは、非弁行為となるのでしょうか。
(なお、証拠方法としての「証人」に対して一方当事者が報酬を支払ってしまうとその証拠価値を損ねる、ということはあると思います。が、「補佐人」は一方当事者のための協力する立場であって、そういう問題はありません。)
たとえば、折り紙の著作権に関する訴訟において、「折り紙の専門家」が原告の補佐人(民訴法)となって、折り紙に関する知見に基づき陳述したことに対し報酬をもらった場合はどうか。
この場合は「法律事務」に関する知見ではないということで非弁行為とはならなそうです(が、著作権違反にあたる/あたらないのような法的判断を示した場合は怪しい)。
では、士業法に補佐人規定のない「司法書士」が、登記事件につき原告の補佐人(民訴法)になったとして。この補佐人業務に対する報酬をもらったら、これは「法律事務」にあたるということで、非弁行為になるのでしょうか。
折り紙に関する陳述 ⇒法律事務でない?
登記に関する陳述 ⇒法律事務にあたる?
これについては、「裁判所の許可」というものがいったいどこまでの効果をもっているか、という観点からアプローチができそうです。
「裁判所の許可」は、単に当該訴訟手続きにおいて補佐人として活動することを許容するだけの効果しか持たないのか、それとも弁護士法上の違法性までもを阻却する効果があるのか。
裁判所の許可の効果
ア 当該訴訟手続きで補佐人やっていいというだけ。
イ 弁護士法72条但書に該当し、有償で補佐人やってもいいことになる。
では、税理士が、印紙税訴訟において補佐人(民訴法)となる場合はどうか。
印紙税に関する業務が「付随義務」になるのだとして。では、この「付随義務」の中に「印紙税訴訟における補佐人活動」が含まれるのか。
そして、付随業務に該当することで有償で行ってもよいことになるのか、それとも裁判所の許可があってはじめて有償で行うことが許容されることになるのか。
印紙税訴訟における補佐人(民訴法)
ア 付随業務に該当し有償でやってもよい。
イ 付随業務に該当し、かつ裁判所の許可があるため有償でやってもよい。
ウ 補佐人活動は法律事務だから有償では行えない。
前回述べたとおり、印紙税が税理士業務に含まれていない理由。印紙の要否なんて誰でも判断できるでしょ、という制定当時の認識によるものだと述べました。問題は、印紙の要否ですら複雑な法的判断が必要となった現代においても、そのような位置づけのままでもよいのか、という点です。
租税を「税理士業務/付随業務」に振り分けるという現行法の建付けが、どうも現代にそぐわないように思うのですが。
◯
最近は下火になったのかどうか。
専門的な知見が必要な訴訟において、補佐人(民訴法)を積極的に活用していこう、というような論調が一時あったかと思います。が、弁護士法の規律との関係が明確にならない限り、現実問題として、積極的な活用が広がっていきにくいように思います。
◯
以上、現実の印紙税訴訟においては、「補佐人税理士」という表示のもと、補佐人として活動している税理士の方々がいらっしゃるのであり。実務的にはとっくに解決ずみの問題なのでしょう。
それはそれとして、前回・今回と記事を書いていて、どうにも引っかかる箇所があったので、次回で言語化してみます。
posted by ウロ at 09:51| Comment(0)
| 税理士法
2025年12月15日
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その1)
以下、印紙税訴訟&税理士法エアプが、無知をさらけ出すだけの記事となります。
○
先日、Xにて、@taklawya先生が、印紙税に関する訴訟で税理士が有償で補佐人やったら弁護士法違反では、という疑問を呈されていて。
https://x.com/taklawya/status/1998304989413003438
そのことについて検討する前に、前提となる知識を整理するところから始めます。
まず弁護士法。
弁護士法 第三条(弁護士の職務)
1 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
弁護士法 第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
「法律事件」に関する「法律事務」を有償でお仕事にするのは、弁護士に限られますよと。
では、なぜ税理士が、税に関するお仕事ができるのかというと。
税理士法 第二条(税理士の業務)
1 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号イからヘまでに掲げる事項及び地方税(森林環境税及び特別法人事業税を含む。以下同じ。)に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
これが弁護士法にいう「他の法律に別段の定めがある場合」ということです。
(「租税法に関し」ではなく「租税に関し」と書いてあることから、「租税にかかる《法律》事務」は許容されていない(大人しく計算だけしてろや!)という見解も成り立ち得ますが、さしあたり許容されているものとして進めます。)
ポイントは、第1項で「租税」から除外されるものがあるとされているところです。
「その他の」政令で定めるものと書いてあるので、除外されるものが政令に網羅されていることになります。
税理士法施行令 第一条(税理士業務の対象としない租税)
税理士法(以下「法」という。)第二条第一項に規定する政令で定める租税は、印紙税、登録免許税、自動車重量税、電源開発促進税、国際観光旅客税、関税、とん税、特別とん税及び狩猟税並びに法定外普通税(同項に規定する法定外普通税をいい、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第二項において準用する同法第四条第三項若しくは第五条第三項の規定又は同法第七百三十四条第六項の規定によつて課する普通税を含む。)及び法定外目的税(法第二条第一項に規定する法定外目的税をいい、地方税法第一条第二項において準用する同法第四条第六項若しくは第五条第七項の規定又は同法第七百三十五条第二項の規定によつて課する目的税を含む。)とする。
では、印紙税等について、税理士は一切のお仕事ができないのかというと、そうではなく。
税理士法基本通達 2−2(税理士業務の対象としない租税に関する事務)
法第2条第1項及び税理士法施行令(以下「令」という。)第1条の規定により税理士業務の対象としない租税に関する事務は、法第2条第2項及び税理士法施行規則(以下「規則」という。)第21条第1号に規定する財務に関する事務に含まれることに留意する。
通達様により「財務に関する事務」に含まれると解釈していただいているので、「付随業務」としてならできるのだとされています。
文言解釈としては、印紙税を「財務」というのは無理やりすぎるし、どうせなら正面から「税理士業務」に含めるよう改正したらどうかとは思いますが、いずれにしても現行法上はこのとおりとなっています。
・
なぜ印紙税が「税理士業務」から除かれているかというと。
「領収書」に印紙が必要かどうかすら、判断が必要な現代とは異なり。
キャッシュレス決済と印紙税法 〜第17号文書(領収書)該当性について
制定当時は、印紙の要否なんて、誰でも判断できるものなのだと認識されていたのでしょう。ゆえに、独占業務としておく必要はないのだと。
・
ちなみに、法2条1項において、「除く」から除外されている(=「租税」に含まれる)「第四十九条の二第二項第十一号」が何かというと。
税理士法 第四十九条の二(税理士会の会則)
1 税理士は、税理士会を設立しようとするときは、会則を定め、その会則について財務大臣の認可を受けなければならない。
2 税理士会の会則には、次の事項を記載しなければならない。
十一 租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定
「会則の記載事項」に関する規定を引用していることの違和感はさておき。「租税教育」をするにあたっては、印紙税等も対象にしてよいのだと。
○
次に「補佐人」に関する規定。
まずは、一般法としての民事訴訟法の規定から。
民事訴訟法 第六十条(補佐人)
1 当事者又は訴訟代理人は、裁判所の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
3 補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し、又は更正しないときは、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。
裁判所の許可があれば補佐人になれますよと。
で、税理士法の規定。
税理士法 第二条の二(税理士の業務)
1 税理士は、租税に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。
民事訴訟法と比較すると、
・裁判所の許可がいらない
・弁護士なしの「当事者+補佐人税理士」は許容されていない
ということになっています。
また、ここでいう「租税に関する事項」の対象ですが、2条1項における「租税」の定義づけのところで「第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。」と書かれているため、印紙税等は含まれないことになります。
余談ですが。
「以下同じ。」となっているので、2条の前の1条における「租税に関する法令」には、印紙税法等が含まれることになります。
税理士法 第一条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
本業としての「税理士業務」ではないにもかかわらず、印紙税等の「納税義務の適正な実現を図ること」も税理士の使命になっちゃっているという、不思議な位置づけ。
印紙税等に関して、
ア 納税義務の適正な実現を図ることがお前らの使命だぞ
イ でも本業ではなく付随業務だぞ
ウ 裁判所の許可なしに補佐人にはなれないぞ
これは一体、どういうポリシーなんでしょうか(藤間大順先生(@taxfujima)から「申告納税制度の理念にそつて」と書いてあるよとご指摘を受けたのですが、これをもって限定句と読むならば、「賦課徴収」「自動確定」にかかる租税は、税理士の使命には入ってこないこととなるのかどうか。)
・
ちなみに、他士業における「補佐人」に関する規定。
弁理士法 第五条(業務)
1 弁理士は、特許、実用新案、意匠若しくは商標、国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願、回路配置又は特定不正競争に関する事項について、裁判所において、補佐人として、当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができる。
2 前項の陳述及び尋問は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。
第六条
弁理士は、特許法第百七十八条第一項、実用新案法第四十七条第一項、意匠法第五十九条第一項又は商標法第六十三条第一項に規定する訴訟に関して訴訟代理人となることができる。
税理士と比較すると、
・弁護士なしの「当事者+補佐人弁理士」が許容されている
・陳述だけでなく尋問ができる
・補佐人ではなく訴訟代理人になることも許容されている
という点が、異なっています。
弁理士のできることがやたらと《強め》なのは、知財訴訟では「技術」勝負になることが多い、という認識によるものでしょうか。
社会保険労務士法 第二条の二(社会保険労務士の業務)
1 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
2 前項の陳述は、当事者又は代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。
税理士と比較すると、
・弁護士なしの「当事者+補佐人社労士」が許容されていないのは同じ
・「労働社会保険諸法令」がフルカバーされていて、税理士における「租税」のような除外はなされていない
ということになっています。
フルカバーされているということは、「租税」と違って素人がつけ入る隙はないよ、という認識だからでしょうか。
○
以上、ここまでは単に条文を陳列しただけです。
次回、ほんのり考察を交えることで、エアプが恥を晒しにいくこととします。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
○
先日、Xにて、@taklawya先生が、印紙税に関する訴訟で税理士が有償で補佐人やったら弁護士法違反では、という疑問を呈されていて。
https://x.com/taklawya/status/1998304989413003438
そのことについて検討する前に、前提となる知識を整理するところから始めます。
まず弁護士法。
弁護士法 第三条(弁護士の職務)
1 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
弁護士法 第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
「法律事件」に関する「法律事務」を有償でお仕事にするのは、弁護士に限られますよと。
では、なぜ税理士が、税に関するお仕事ができるのかというと。
税理士法 第二条(税理士の業務)
1 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号イからヘまでに掲げる事項及び地方税(森林環境税及び特別法人事業税を含む。以下同じ。)に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
これが弁護士法にいう「他の法律に別段の定めがある場合」ということです。
(「租税法に関し」ではなく「租税に関し」と書いてあることから、「租税にかかる《法律》事務」は許容されていない(大人しく計算だけしてろや!)という見解も成り立ち得ますが、さしあたり許容されているものとして進めます。)
ポイントは、第1項で「租税」から除外されるものがあるとされているところです。
「その他の」政令で定めるものと書いてあるので、除外されるものが政令に網羅されていることになります。
税理士法施行令 第一条(税理士業務の対象としない租税)
税理士法(以下「法」という。)第二条第一項に規定する政令で定める租税は、印紙税、登録免許税、自動車重量税、電源開発促進税、国際観光旅客税、関税、とん税、特別とん税及び狩猟税並びに法定外普通税(同項に規定する法定外普通税をいい、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第二項において準用する同法第四条第三項若しくは第五条第三項の規定又は同法第七百三十四条第六項の規定によつて課する普通税を含む。)及び法定外目的税(法第二条第一項に規定する法定外目的税をいい、地方税法第一条第二項において準用する同法第四条第六項若しくは第五条第七項の規定又は同法第七百三十五条第二項の規定によつて課する目的税を含む。)とする。
では、印紙税等について、税理士は一切のお仕事ができないのかというと、そうではなく。
税理士法基本通達 2−2(税理士業務の対象としない租税に関する事務)
法第2条第1項及び税理士法施行令(以下「令」という。)第1条の規定により税理士業務の対象としない租税に関する事務は、法第2条第2項及び税理士法施行規則(以下「規則」という。)第21条第1号に規定する財務に関する事務に含まれることに留意する。
通達様により「財務に関する事務」に含まれると解釈していただいているので、「付随業務」としてならできるのだとされています。
文言解釈としては、印紙税を「財務」というのは無理やりすぎるし、どうせなら正面から「税理士業務」に含めるよう改正したらどうかとは思いますが、いずれにしても現行法上はこのとおりとなっています。
・
なぜ印紙税が「税理士業務」から除かれているかというと。
「領収書」に印紙が必要かどうかすら、判断が必要な現代とは異なり。
キャッシュレス決済と印紙税法 〜第17号文書(領収書)該当性について
制定当時は、印紙の要否なんて、誰でも判断できるものなのだと認識されていたのでしょう。ゆえに、独占業務としておく必要はないのだと。
・
ちなみに、法2条1項において、「除く」から除外されている(=「租税」に含まれる)「第四十九条の二第二項第十一号」が何かというと。
税理士法 第四十九条の二(税理士会の会則)
1 税理士は、税理士会を設立しようとするときは、会則を定め、その会則について財務大臣の認可を受けなければならない。
2 税理士会の会則には、次の事項を記載しなければならない。
十一 租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定
「会則の記載事項」に関する規定を引用していることの違和感はさておき。「租税教育」をするにあたっては、印紙税等も対象にしてよいのだと。
○
次に「補佐人」に関する規定。
まずは、一般法としての民事訴訟法の規定から。
民事訴訟法 第六十条(補佐人)
1 当事者又は訴訟代理人は、裁判所の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
3 補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し、又は更正しないときは、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。
裁判所の許可があれば補佐人になれますよと。
で、税理士法の規定。
税理士法 第二条の二(税理士の業務)
1 税理士は、租税に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。
民事訴訟法と比較すると、
・裁判所の許可がいらない
・弁護士なしの「当事者+補佐人税理士」は許容されていない
ということになっています。
また、ここでいう「租税に関する事項」の対象ですが、2条1項における「租税」の定義づけのところで「第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。」と書かれているため、印紙税等は含まれないことになります。
余談ですが。
「以下同じ。」となっているので、2条の前の1条における「租税に関する法令」には、印紙税法等が含まれることになります。
税理士法 第一条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
本業としての「税理士業務」ではないにもかかわらず、印紙税等の「納税義務の適正な実現を図ること」も税理士の使命になっちゃっているという、不思議な位置づけ。
印紙税等に関して、
ア 納税義務の適正な実現を図ることがお前らの使命だぞ
イ でも本業ではなく付随業務だぞ
ウ 裁判所の許可なしに補佐人にはなれないぞ
これは一体、どういうポリシーなんでしょうか(藤間大順先生(@taxfujima)から「申告納税制度の理念にそつて」と書いてあるよとご指摘を受けたのですが、これをもって限定句と読むならば、「賦課徴収」「自動確定」にかかる租税は、税理士の使命には入ってこないこととなるのかどうか。)
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ちなみに、他士業における「補佐人」に関する規定。
弁理士法 第五条(業務)
1 弁理士は、特許、実用新案、意匠若しくは商標、国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願、回路配置又は特定不正競争に関する事項について、裁判所において、補佐人として、当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができる。
2 前項の陳述及び尋問は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。
第六条
弁理士は、特許法第百七十八条第一項、実用新案法第四十七条第一項、意匠法第五十九条第一項又は商標法第六十三条第一項に規定する訴訟に関して訴訟代理人となることができる。
税理士と比較すると、
・弁護士なしの「当事者+補佐人弁理士」が許容されている
・陳述だけでなく尋問ができる
・補佐人ではなく訴訟代理人になることも許容されている
という点が、異なっています。
弁理士のできることがやたらと《強め》なのは、知財訴訟では「技術」勝負になることが多い、という認識によるものでしょうか。
社会保険労務士法 第二条の二(社会保険労務士の業務)
1 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
2 前項の陳述は、当事者又は代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。
税理士と比較すると、
・弁護士なしの「当事者+補佐人社労士」が許容されていないのは同じ
・「労働社会保険諸法令」がフルカバーされていて、税理士における「租税」のような除外はなされていない
ということになっています。
フルカバーされているということは、「租税」と違って素人がつけ入る隙はないよ、という認識だからでしょうか。
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以上、ここまでは単に条文を陳列しただけです。
次回、ほんのり考察を交えることで、エアプが恥を晒しにいくこととします。
『印紙税法は弁護士にお任せしなさい?? 〜税理士法解釈序説』(その2)
posted by ウロ at 10:16| Comment(0)
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