2021年02月22日

税務訴訟におけるゴリ押しVS誉めごろし 〜税務トロイの木馬(Tax Trojan horse)

 税法分野における裁決・判決を眺めていると、

  ・あえてギリギリを攻めて租税回避チャレンジ狙っているんだろうな

とか、

  ・うっかりミスを後付けの理由でどうにか正当化しようとしているんだろうな

と感じる事案を見かけることがあります。

 もちろん、判決文に正面からそんなことが書かれていることはありません。
 が、15%未満までOKなところを14.99%に調整していたりすると、「チャレンジングだなあ」と思ってしまいます。

 巷に流布している判例学習法によれば、「判例は事案との関係で理解すべし」という教義が唱えられています。
 もちろんそれ自体は大事なことではあります。が、それを額面通りに理解して、必死になって判決文記載の認定事実だけを読み込んでも、その判決を十分に理解できるとは限りません。

 というのも、判決文記載の事実は、当事者が主張した中で理由付けに必要だと裁判官が思った事実が並んでいるにとどまります。
 実際に裁判所の判断に影響を与えた要素が網羅されているわけではない。もしかしたら、結論を左右した決定的な要素が、認定外のどこかにあるかもしれない。

 とはいえ、外野にはこれら事情は分かり得ない。あたかも認定事実だけから結論を導き出したみたいな書き方するし。
としても、なぜそのような紛争が起こったのか、その背景事情を推測できるだけの知識・経験があれば、理解はしやすくなるでしょう。

 税法以外でも、たとえば会社法における決議無効・取消・不存在の訴えなんて、表向きの無効事由等と本来争いたい事項が盛大にズレていることがありうるわけです。
 ここでも、そのような争いが起こる背景事情を理解できるだけの知識・経験があれば、当該判決を理解するのに、役に立つはずです。
 
 「判例学習本」にもこういう裏読みの技法を書いておいてほしいんですが、まあさすがにゲスの勘ぐりみたいなことを、公刊物に記載するわけにはいきませんかね。


 紛争系の納税者の皆様が、日常系税理士からすると「そんな後付けさすがに通用しないしょや」と思ってしまうような訴訟を提起してくれるおかげで、税務判決が充実していきます。
 当事者的には、漁夫の利感を強く感じてしまうかもしれませんが。

 法学学習において、判決中心の勉強をしてしまうと、頭の中が異常事例ばかりとなって日常的な処理の理解がおろそかになりがちになります。
 そんな中、「そりゃそうだろ」レベルの地に足のついた判決があってくれると、日常系税務にも非常に参考にすることができます。

【通常事例思考】
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)

 ただし、変な争い方をされて変な判決がでてしまっても、それはそれで迷惑。
 そんな判決があるせいで、税務調査時に納税者不利に援用されても困りますし。


 さて、ここまでは、本ブログでもたびたび言及される『判決(学習)論』の一側面。
 ここからは、今回参照する判決について。

平成25年判決分(税務訴訟資料第263号「順号12125〜12365、12379〜12381」)
 12315 東京地方 所得税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
 12314 東京地方 贈与税決定処分取消等請求事件、贈与税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
平成26年判決分(税務訴訟資料第264号「順号12382〜12583」)
 12461 東京高等 各所得税更正処分取消等請求控訴事件 平成26年4月23日
 12434 東京高等 贈与税決定処分取消等請求控訴事件 平成26年3月18日
平成27年判決分(税務訴訟資料第265号「順号12584〜12778」)
 12661 最高二小 所得税更正処分等取消請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日
 12662 最高二小 贈与税決定処分取消等請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日

 納税者の主張を見ているとどうにも後付感が強い。
 ではありますが、うっかりミスということではなく、一方当事者の意向で低額譲渡せざるをえなかったことの尻拭い、といった印象を受けました。
 あくまでも認定事実からの邪推にすぎませんが。

 なんとなくですが、納税者的には「だから否認されるって言ったじゃん」て感じで、頑張って理屈をひねり出したように感じます。
 でまあ、裁判所には通用しなかったと。

 外野からすると、込み入った所得税法9条、59条、60条、相続税法7条あたりの関係を理解するのに、いい参考例になっています。

・所得税法

第九条(非課税所得)
1 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)

第三十八条(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
1 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

第五十九条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
1 次に掲げる事由により居住者の有する譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は
  相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは
  遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その譲渡所得の金額の金額の計算上、なかつたものとみなす。

第六十条(贈与等により取得した資産の取得費等)
1 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一 贈与、
  相続(限定承認に係るものを除く。)又は
  遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡
4 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

・相続税法

第七条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。



 論点を単純化していうと、みなし贈与課税された資産を売却した場合の取得費は、実際の取引価額かみなされた評価額か、というものです。
 事件としては贈与税(みなし贈与)と所得税(みなし譲渡)の2ルートあって論点も複数ありますが、今回は所得税ルートの取得費のところのみ扱います。

 なお、本事件では「通達による時価評価の合理性」も論点になっているところ、同族会社の判定時期については「譲渡前」とされています。
 まあ、そうですよね。

 ほんと、何だったんでしょうか、あの高裁判決。

【あの高裁判決】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決


 以下、本論。
 本事件の事案そのものではなく、モデル化したものを使います。

《前提事実》
・A→B→Cと転々譲渡。
・ABCはいずれも個人(みなし譲渡の出番は無しです)。
・取引対象は譲渡所得の課税対象となるものであれば何でも。
・相続税法上の時価と所得税法上の時価は同額と仮定します。
・時価はA→B譲渡時に50、B→C譲渡時に150。
・Aの取得費は10。
・B→Cの売買価格は150。
・消費税は考慮外。

 これら事実を固定し、これ以外のパラメータをいじることで、ABの課税関係がどう動くかを検討します。
 まずは基本事例から。

課税関係.png


《事例1》
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 時価通りに取引(この数字は取引価額)。
 この場合の課税標準は次のとおり。

 A 所得 40(50-10)
 B 所得 100(150-50)

 通算140の資産増加益に譲渡所得課税されると。
 まあ、普通ですよね。

 次に、A→Bを「贈与」に変えたらどうなるか。

《事例2》
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 140(150-10) 所得税法60条1項1号

 Aの取得費10がBに引き継がれます。
 課税繰延の典型例としてよく出てくるやつで、一般的に問題視されることはないはずです。

 では、《事例2》で現物そのものを贈与するかわりに現金50を贈与して時価売買したらどうなるか(お金をぐるっと回す)。

《事例3》
 A→B 贈与 現金50
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 50(現金50)
 B 所得 100(150-50)

 《事例2》とは、所得通算140で変わらないのですが、内訳がAB間で変動しています。

 譲渡所得が総合課税の場合とか、あるいは分離課税でも特例が使える/使えないによって、AB間の内訳をイジりたい、という誘因が働くことはあるでしょう。
 では納税者は、有利不利に応じて2と3を使い分けることが可能でしょうか。
 いわゆる『私法上の法律構成による否認』の一場面です。

 そもそも所得税法60条が課税繰延しているの、「贈与時に譲渡所得課税するのは贈与者に可哀相だから」という趣旨のはずです。
 であれば繰延を受けるかどうかは納税者の選択に委ねるのが筋です。

 ところが、同条では「みなす」などとして、選択ができない規定っぷりになっています。
 そうとすると、《事例3》は《事例2》の回避事例だとして、贈与に引き直されてしまうことになるでしょうか。

 この問題は完全に余談なので、この程度にしておきます。


 ここまでが露払いの前座で、次からが本題。

《事例4》
 A→B 売買 20 (低額譲渡)
 B→C 売買 150

 A 所得 10(20-10)
 B 贈与 30(50-20) みなし贈与 相続税法7条
 B 所得 130(150-20※) 

 時価50のものを20で売ったので、30は贈与とみなされます。
 問題が※のところで、実際の取引価額である20なのか、みなし贈与の評価額50なのか、ということです。

《評価額説だと》
  B 所得 100(150-50)

 資産増加益140(150-10)のうち、10はAに所得課税、30はみなし贈与課税されているんだから、Bが所得課税される残りは100じゃないのかと。

 《事例2》と《事例3》の関係同様、《事例4》のぐるっと現金バージョンも書いておきます。

《事例5》
 A→B 贈与 現金30
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 30(現金30)
 B 所得 100(150-50)

 AがBに現金30を贈与して残り20をBが自己負担した、ということです。
 こちらも、《事例2》《事例3》の関係と同じように、所得の内訳が変動しているので、やはり同じ問題が生じます。


 判決では、地裁から最高裁まで「実際の取引価額」でいくとされています。
(この論点につき実質的な判断をしているのは地裁判決(12315)なので、以下、同判決を念頭に置いて記述します。)

 みなし贈与課税された資産の取得の「経済的価値」と、譲渡所得課税される資産増加益という「経済的価値」は同一ではないというのが理由になっています。

 確かに、取得費引継ぎの典型例である《事例2》では、資産の取得50に(通常の)贈与課税ずみであるにもかかわらず、140に譲渡所得課税とされていることについて、特に異論が出されることはありません。
 このことからすれば、結論は「実際の取引価額」でよいのでしょう。
(このように、典型例を念頭に置けば無理がある主張をしているあたりが、納税者の主張に対する「後付感」を抱かせる所以です。)

 ただ、その理由付けが「経済的価値が同一でない」というの、どうにも腑に落ちない。

 事例2と4を図で書くとこうなります。
 「A'」は、Aの取得費をBが引き継ぐという意味合いです。

二重課税.png

 かぶってますよね。

 もちろん、二重課税それ自体が悪いわけではありません。

浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)

 たとえば、不動産売買という一つの取引に起因して、所得税・法人税・消費税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・印紙税・登録免許税などなど、いろんな税金が発生します。
 「あの手この手で税金とりやがってふざけんな」という人はいるでしょうが、これを「理論的にみて二重(以上)課税だから違法だ」と主張している人は見かけません。

 この結論をそれらしく正当化したいならば、「経済的価値は別」などと苦し紛れの説明をするよりも、「経済的価値は一部かぶっているかもしれないが、贈与税は資産そのものののストック面、譲渡所得税は資産増加益というフロー面に課税しているからセーフ」という物言いのほうがまだましな気がします。

 確かに、「二重課税でも問題ない」と正面から言ってしまうと、あらゆる方面から批判されることは目に見えている。二重課税(らしきもの)に対する拒否反応には根強いものがあります。どれだけ数理によって不合理性が実証されようとも、そう簡単に納得してもらえるものではない。

 ですし、所得税法9条1項16号の解釈論を深堀りしなければならなくなります。
 ので、裁判所の表向きの理由としては、意地でも別のものに課税しているというしかないのでしょう。
 が、すんなり理解するのが難渋な、苦し紛れの物言いとなってしまっている。

 ちなみに、「みんな」に理解してもらうためには数学よりも自然言語、というのは森田果先生の法学入門書にも書かれているところです。

森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)


 ちなみに、「生命保険年金受給権」の相続税・所得税を二重課税とした最高裁判決も、この「ストック/フロー」の枠組みで説明することは可能です。
 すなわち、将来年金をもらえる権利というストック面に相続税を課税しておきながら、さらに実際にもらった年金というストックに一時所得課税するのは二重課税だ、という感じ。

 本事件の判決と年金の最高裁判決との結論の分かれ目がどこにあるのかといえば、譲渡所得と一時所得の所得の捉え方の違いにあるのだと思います。
 差額に課税するのか、得たものそれ自体に課税するのかという。
 何が所得であるかがそれぞれ異なるから、どのような場合に二重課税となるのかも自ずから違ってきます。
 ので、「所得税と相続税」という括りで年金判決をそのまま横流しするのは無理があります。

 さらなる余談ですが、このように譲渡所得と一時所得とで異なる内実を有しているにもかかわらず、これら違いを無視して統一的な所得概念をもって現行法の所得を定義づけようとする所作、私にはおよそ理解できません。
 そのような定義は、現行法上のすべての所得に当てはまる説明となっていないか、あるいはすべてに当てはめようとして漠然とした定義になるか、いずれにしても現行法に適合的な定義付けにはならないと思います。


 さて、どうやって正当化するかはともかく、本当に両方課税することに問題はないでしょうか。
 比較用に次の事例を追加します。

 《事例2》でAの取得費が40だったとしましょう。

《事例6》
 Aの取得費40
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 110(150-40) 所得税法60条1項1号

 《事例2》と比べてみて、Bにとっては、時価50のモノをもらっていることとそれを150で売ったという点で全く同じです。
 にもかかわらず、《事例6》ではBの所得が110に減っています。

 なぜそうなるかといえば、Bとは無関係の「Aがいくらで取得したか」という事情にBの譲渡益が左右されてしまうからです。

 これのどこが変なのかといえば、贈与税の時価評価がいずれも同じ50であるところにあるのでしょう。
 取得費引継ぎは60条に明記されているし、資産増加益がトータル110であることは間違いないし、ということで、残る贈与税の時価評価のところがおかしいんじゃないかと。

 では、贈与時において《事例2》と《事例6》とで何が違うか。
 資産の抱えている含み益が違うせいで将来譲渡したときに課税される額が違うという点です。

 《事例2》 将来譲渡したら譲渡益40上乗せされる資産の譲り受け
 《事例6》 将来譲渡したら譲渡益10上乗せされる資産の譲り受け

 将来の税負担が明らかに違うのに、このことが贈与税の時価評価に反映されていないのが問題です(今後はこれを『含み税問題』ということにしましょう)。

 ここで皆さんの頭をよぎったと思われるのが、純資産価額方式における「法人税等相当額」の控除。
 評価会社が保有資産を売ったとしたら生じる利益に課せられる法人税を引いて評価してよいと。

 「含み益に対する税金を考慮して評価すべき」という点ではここでの問題と同じですよね。
 この考えをこちらの場面に応用することができないかどうか。


 本事件の納税者は、「通達は不合理!」「二重課税だ!」と正面からのガチンコ勝負に徹しています。
 もちろん第一次的にはそのような争い方が正道でしょうが、ゴリ押し一辺倒では通用しないことがしばしば(実際、本事件では第一審から上告審まで一蹴され続けている)。

 上述のとおり、評価通達には「法人税等相当額控除」という素晴らしい制度が内在されているわけです。
 そこで、いかに評価通達が優れているかを褒めちぎった上で、「法人税等相当額控除」のお考えがまさに本件でも当てはまります、ぜひこちらにも援用してみましょう、といった主張もできたんじゃないかと(これは所得税ルートではなく贈与税ルートのほうで主張することです)。

 若干厄介なのが、取引目的物が「非上場株式」だったらどう評価するのか、という問題(本事件がまさにそう)。
 というのも、評価会社の保有資産の含み益に対する法人税等相当額を控除しておきながら、さらにその株式の譲渡益に対する譲渡所得税相当額を控除するのは「二重控除」ではないのかと。
 「法人税等相当額」自体、局面によっては控除できないことになっているのは、そのあたりの考慮が働いているからでしょう。

 が、本件では大丈夫。
 本判決の立場からすれば同一の経済的価値ではないことになるので。

 というのも、実際に評価会社が保有資産を売却した後、株主が当該株式を売却した場合を想定すると、
 ・保有資産の含み益(だったもの)に「法人税」が課税される。
 ・その実現した含み益から法人税を引いた残りに「所得税」が課税される。
ことになりますよね(あくまで理念としての記述です)。

 もしこれを二重課税でないといいたいなら、本判決の立場からは「別の経済的価値に課税しているからセーフ」と説明するしかありません。
 とすると、その裏返しである控除を重ねて行っても、同じくセーフと言わざるを得ないはずです(対偶チックな発想)。


 このように、通達を褒めちぎって通達内部の制度をご利用させていただく、経済的価値が同一という理由を逆手に取って控除場面でご利用させていただく、といった「トロイの木馬」戦法が、本件では主張できたのではないかと思うのです。

 が、実際にはゴリ押し戦法一辺倒で終わってしまっています(もしかしたら争点整理で落とされたのかもしれませんが)。
 
 確かに、代理人弁護士一人の頭の中で、ゴリ押し志向と誉め殺し志向を両立させるのは難しいのかもしれません(ホコタテ)。であれば、複数弁護士に受任してもらって、それぞれ別側面から争ってもらうのも一考に値するでしょう(二頭体制)。

 トロイの木馬戦法が効くのは、正面突破してくれる本隊の働きのおかげですよね。
 こちらが通達が不合理だと強く言えば言うほど、課税庁側は通達の合理性を根拠付けなければならなくなります。そこで、課税庁にがっちり合理性を根拠付けていただいた後に、その合理性にフリーライドして自分の主張をのっけていくと。

 同じく、別の経済的価値なら課税OKという論拠をしっかり固めてもらってから、その延長線上に、控除も重ねてOKという主張をのっけると(もちろん、実際の訴訟では自由に後出し主張できるわけではありませんが)。

 訴訟戦略として、相手方の主張に正面からぶつかるだけでなく、相手方の主張の中に自分の主張を混入させる、という作戦が効いてくる場面もあると思うんです。


 と、理念上は上述の通り控除すべきだとは思います。

 が、実際には、贈与税評価と所得税評価とは必ずしも一致しないとか、贈与税評価は市場価格よりも低めにでがちといったノイズが入ります。
 ので、「含み税があっても個別に評価することはせず、ざっくり低めに出しているからセーフ」といった判断がでてもおかしくない。
 というか、今まで問題視されていなかったのは、暗にそういうふうに考えられていたからかもしれませんし。

 また、控除をやることになったとしても、すべての資産が対象になるのか、とか、実際にどうやって計算するのか、単純に譲渡所得税等相当額を控除すればいいのか、年金受給権的なややこい算出が必要なのか、といった検討も必要なはずです。
 そのあたりは頭のよろしい人たちにぜひお考えいただければ。
posted by ウロ at 10:59| Comment(0) | 判例イジり

2021年02月15日

タックスアンサー学習帳 〜やっててよかったTA式

 以前のタックスアンサーイジり記事について、追加燃料があったので追補します。

オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に

 下記別添のP.10。

資産課税課情報第1号
「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)(平成26年1月15日)

資産課税課情報(国税庁サイト)

【参考】
 本事例において、相続人である子乙が被相続人甲と生計を一にする親族である場合にも、丙が取得した乙の居住の用に供されていたB部分は、措置法令第40条の2第4項の規定により被相続人等の居住の用に供されていた部分に含まれることから、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして取り扱うことができる。
 したがって、乙が甲と生計を一にする親族である場合にも、丙が取得した乙の居住の用に供されていたB部分は、上記「(2) 丙が相続により取得した部分」と同様に特定居住用宅地等に該当することとなる。


 事例を簡略化すると次のとおり(情報では事例3ですが、ここでは事例1とします)。

《事例1》
  ・被相続人:甲、相続人:子乙、子丙
  ・土地 甲所有
  ・建物 甲所有(2世帯住宅・区分所有なし)
  ・1階(B部分)に乙居住、2階(A部分)に甲居住 (生計一or別)

 ア 乙が全体取得 ○(乙は甲となんちゃって同居しているので)
 イ 丙が全体取得 ○(乙は甲とガチ同居していないので)
 ウ 乙丙が1/2づつ取得 ○(アイの合成)

 本文ではウで乙が「生計別」の場合、上記引用の【参考】では同じく「生計一」の場合が書かれています。
 いずれの場合でも、乙丙の持分全体に特例受けられるんだと。


 こうなってくると、タックスアンサーの「除きます」ルール、ますます意味が分からないですよね。

 2 「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」が、被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」※を除きます。)の敷地の用に供されていたものである場合には、その敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分(上記〔特定居住用宅地等の要件〕区分Aに該当する部分を除きます。)を含みます。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

 情報の【参考】では「含まれる」としながら、タックスアンサーでは「除きます」としていると。
 穿った見方をするならば、一般に目の触れやすいタックスアンサーでは適用範囲を狭く、触れにくい情報では広く、説明を書き分けているということもできます。


 除きますルール、どの場面で働くか想像してみると分かるのですが、「家なき子」を排除する場面です。

 というのも、「@からAを除く」という物言い、《事例1》のように除かないと@に含まれてしまう場合を想定しているはずです。

 次の《事例2》のように、はじめから@とAが別建物であれば、わざわざ除きますという必要はない。
 適用範囲がかぶっていないので、@から除きようがない。

《事例2》
  ・土地 甲所有 (建物ABが隣接して建っている)
  ・建物A 甲居住 ←@
  ・建物B 乙居住(生計一) ←A

 また、《事例3》のように、Aを除いたら丸ごと@が無くなるような事例も想定していないはずです。

《事例3》
  ・土地 甲所有 
  ・建物 甲乙ガチ居住(生計一) ←@A

 そうすると、やはり《事例1》のように、生計一親族の独立部分があり、かつそこが@と重複している場合を想定していることになるのでしょう。

 で、生計一親族乙からすれば、除かれた部分はAでいけば済む話なので不都合はありません。
 除かれて困るのは家なき子丙のほう。

 これまでの改正では、せっかく創設された家なき子特例に対して、その適用を制限する取得者要件が盛り込まれてきたわけです。
 タックスアンサーでは、このような改正の「方向性」を汲み取って、勇み足をかましているのではないか、と思えます。

 が、条文から読み取れない立法担当者の「想い」から何某かの解釈を導くことの俗悪さは、これまでにも述べてきたとおりです。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
アレオレ租税法 〜立案者意思は立法者意思か?


 タックスアンサー、通常は、法令や通達などから直接読み取れることで構成されているものが大部分です。

 そんななかで、独自の解釈が混ざり込んでいると、その記述が浮き上がって見える。
 受験生の必需品、「暗記シート」で隠してみると、その部分だけ文字が消えない、みたいな。

 いまのところ、そのような暗記シートに対応するような便利グッズは出ていませんので、日々、法令通達をしっかり読み込んでおき、自ずから異常値を感知できるようしておくことが大事なんでしょう。
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 相続税法

2021年02月08日

支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について【追補】

 当ブログは、インターネット上に開陳しておきながら、基本的に閲覧者のニーズというものを考慮してません。
 頭の整理用に、自分が思いついたことを書きたいように書くだけで。

 にもかかわらず、ラッキーパンチ的に、多くの方に閲覧していただける記事が出来上がることが、稀にあります。

 1月中は下記記事のアクセスが急に増えます。
 あくまでも、平時と比べて、というにすぎませんが。

支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について

 ただ、せっかくアクセスしていただいても、当ブログの執筆方針が上述のとおりのものであるため、ご期待に添える内容とはなりえない。
 いわゆる「お役立ち記事性」が著しく欠如しているため、あれこれと「考え方」は書かれているものの、ちゃんとした「答え」が書かれていません。

 今回も上記記事の追補ではあるのですが、いつもの「お役立たない記事」の系列です。


 国税庁の「質疑応答事例」には、次のようなものがあります。

前払家賃の記載方法

 内容を抜粋すると、次のようなことが書かれています。

・「確定した対価の金額」とは、原則として、相手方にその支払を請求し得ることとなった金額をいうものと解されています。
・その年中に支払うべきことが確定している対価の金額は、10月分から翌年1月分の4か月分の家賃の金額となり、


 前払家賃は「支払期日ベース」で集計するんだと。
 「請求しうる」なので、実際に支払ってもらえなくても、支払期日がくれば集計すべきとなるのでしょう。

 じゃあってことで、報酬等も同じく「支払期日ベース」でいいのか、というと即断しがたい。

 というのも、ここの記述はあくまでも「前払い」の場合。
 「後払い」(1月分家賃を2月末に支払う)の場合に「相手方にその支払を請求し得ることとなった」がいつとなるのか、はっきりしない。

 私自身は「後払い」の場合も支払期日がくるまでは支払が確定していない、と思います。
 が、たとえば1月分家賃は1月末経過時点で「相手方にその支払を請求し得ることとなった」と読むことも、可能っちゃ可能。支払期日が来ていないだけで、請求しうる地位は取得ずみなんだと。

「相手方にその支払を請求し得ることとなった」
 A説 支払期日が到来してすぐに払ってもらえる状態にあること
 B説 期間が経過して請求権が発生した状態にあること(支払期日未到来でも)

 報酬等の場合も、同様に理解が分かれることになるはずです。


 他に手がかりとなりそうなものとしては、前の記事でも引用した所得税基本通達。
 それぞれ、役員賞与と配当に関するものです。

(支払の確定した日から1年を経過した日)
181−5 法第181条第2項に規定する「支払の確定した日から1年を経過した日」とは、その支払の確定した日(36−4に定める日をいう。)の属する年の翌年の応当日の翌日をいうことに留意する。

(支払の確定した日から1年を経過した日)
183−1 法第183条第2項の規定する「支払の確定した日から1年を経過した日」とは、その支払の確定した日(36−9に定める日をいう。)の属する年の翌年の応当日の翌日をいうことに留意する。

(配当所得の収入金額の収入すべき時期)
36−4 配当所得の収入金額の収入すべき時期は、法第36条第3項に規定するものを除き、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 法第24条第1項((配当所得))に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息(以下この項において「剰余金の配当等」という。)については、当該剰余金の配当等について定めたその効力を生ずる日。ただし、その効力を生ずる日を定めていない場合には、当該剰余金の配当等を行う法人の社員総会その他正当な権限を有する機関の決議があった日
(以下略)

(給与所得の収入金額の収入すべき時期)
36−9 給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等(次の(2)に掲げるものを除く。)についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日
(以下略)


 収入の年度帰属ルールと同じでいくんだと。

 これだけみると、「他の所得の支払確定日も収入の年度帰属ルールと同じだ」と即断しがちですが、決してそうではない。

 すべての所得区分において「支払確定日=収入すべき日」だというならば、総則部分にまとめて書けばいいはず。
 が、実際にはこの2つのことしか書いていないわけで、そうすると、ここにしか当てはまらないからだ、と理解することも可能です。

 また、前払家賃含めてよくよくみてみると、すべて「支払期日」なんですよね。

  不動産所得(前払家賃): 支払期日
  配当所得: 効力を生ずる日=支払期日
  給与所得(役員賞与): 支給期日

 ので、「支払確定日=支払期日」と理解することもできます。


 ここまで考えてみて、大元の「収入の年度帰属」ルールのほうにも何やら違和感を感じてきました。

 ということで、気力があればそちら側を検討してみます。
 典型論点を正面を扱うことは、実力的になるべく避けてきたところではありますが(強い相手と闘わない)。
posted by ウロ at 11:35| Comment(0) | 所得税法

2021年01月31日

原田尚彦「行政法要論(全訂第七版補訂二版)」(学陽書房2012)

 いまだに口の中がジャリジャリしている気がする。

高木光「行政法」(有斐閣2015)

 ということで、原田尚彦先生の教科書を読むことにしました。



原田尚彦「行政法要論 全訂第七版補訂二版」(学陽書房2012)

 最新版は2012年出版の「全訂第七版補訂二版」。
 最新の情報を追う、という点ではちょっと厳しい。

 が、この本はそういう使い方をするものではなく。


 ・横書きじゃないし
 ・ですます調でもないし
 ・具体例が豊富なわけでもないし
 ・二色刷りでもないし
 ・図表の類も(ほぼ)ないし

と今どきの工夫を凝らした教科書と対比すると、極めてオーソドックスな部類。

 なんですが、極めて洗練された文章で、非常に読みやすい。
 本当の意味で「初学者でも自然に読み進める」文章です。

 これと同じ印象を受けたのが、林屋礼二先生の民事訴訟法の教科書。



 林屋礼二「新民事訴訟法概要(第2版)」(有斐閣2004)

 こちらも、ひたすら文章が並んでいるだけですが、非常に理解がしやすい(残念ながら、品切れ→オンデマンドで高額化)。


 ものごとを理解する過程には、いろんなアプローチがあるとは思います。
 が、法学の場合、日本語の文章による説得というのが最終的に必要となります。

 その到達点が最高裁の判決文。
 もちろん、最高裁判決が常に説得的であることを意味するものではありません。

【他方で「数理」による税法理解】
浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)

 ということで、本書のような、文章(のみ)による丁寧な説明がされた本を読むことが、法学トレーニングには必須だと思います。


 具体例が豊富というわけでもないのに、理解がしやすかったのはなぜかと思ったんですが。
 たぶん、以下のようなところにあるのではないかと。

 すでに他の行政法の教科書を読んでいて、ある程度の知識が備わっている、というのもあるとは思います。
 が、それだけではなく。

 抽象的な記述の場合、抽象的なまま理解するか、自分の知識・経験でイメージできるものに置き換えるかすると思います(「1+1」からそのまま2を導くか、リンゴに置き換えてイメージするか)。

 他方で、具体的な記述ならすんなり理解できるかというと、そうとは限らず。
 やたらと具体的な記述であっても、自分の中でイメージができないものについては、やはり理解が追いつかない。

 よくあるのが、「判例は事案との関係で理解する必要がある!」とかイキって、裁判所の認定した事実をペチペチ長々と貼り付けている系の判例解説もの。
 が、事実を延々と引用してみても、それは裁判所が判示に必要だとして認定したものにすぎません。

 確かに、「判例の射程が及ぶ・及ばない」を検討する際には、(表向きは)裁判所の認定事実から見極める必要があります。
 が、初学者が当該判決を理解するという段階においては、そのような事実だけ貼り付けられても、まあ理解できないのがほとんど。

 会社法判例なんかが特にそうで、裁判所が認定した事実だけをベタベタ貼り付けたところで、まともに理解できるものではないと思います。

 大垣尚司先生の教科書の記事を書いていて思ったのが、会社法の知識だけがあっても、会社法(判例)を理解するのは困難だということ。

大垣尚司「金融から学ぶ会社法入門」(勁草書房2017)

 会社法以外の法律知識が必要なのは当然として、なぜそんな争いがおきるのか、とか、なぜそういう争い方をするのか、といったことが分からなければ、やはりその判決を理解するのは難しいと思います。
 そして、それは裁判所の認定事実の中に、必ずしも表立って現れるものではない。

 ので、当初の学習段階では、下手に生の判例から始めるのではなく、そういった背景事情もイメージしやすいモデルケースから勉強したほうがいいと思います。

 学生さんが法学の勉強を始めるなら、イメージがしやすい領域から足を踏み入れるのがいいはずです。
 せっかくそういった領域を扱っているのに、全然活かしきれていない本もあったりしますけども。

内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)


 例によって話が盛大にずれたので、少しだけ本書に戻ります。

 私人と行政の関係を「侵害排除請求権」「受給請求権」「行政介入請求権」といった権利義務で説明するのは、初学者にとっては理解しやすいと思います。

 もちろん、権利義務のみによって全ての関係性を説明しきれるとしたり、これら権利義務から何かしらの解釈論を導くというのであれば、それは正しくないのでしょう。

 が、典型的な関係性を理解するための説明概念・思考モデルとしては、有用だろうなと。

 私法理論を生のまま行政法に持ち込むのは問題だとしても、民法でいう「私人と私人の権利義務関係」の応用から学習をスタートさせるの、学習法としてはいいと思う。
 いきなり私人と行政の混沌とした法関係に飛び込んでいくのではなく。

 その上で、そこから崩しをいれていくと(守破離)。
posted by ウロ at 17:25| Comment(0) | 行政法

2021年01月25日

高木光「行政法」(有斐閣2015)

 これほどの、砂を噛むような記述に出くわしたのは久しぶり。

 しじみ・あさりのジャリジャリだって、最近は当たらずに済んでいたのに。
 どんなに砂を抜いても、自分だけ当たりがち。
 あと、自分だけ傘、風に飛ばされがち。



高木光「行政法」(有斐閣2015)

 このところ私が、難解・難渋な書籍を避けていた、というだけかもしれません。
 それなりに読書経験を積んできたことで、難渋回避センサーが自動発動していたと。

 今様の税法条文を素読するよりもしんどかったというのが実感。
 今どきは、各自工夫をこらした教科書が執筆されているので、逆に希少種といえなくもない。

 最初に《設例》が掲げられていたので、それを軸に具体的な記述が展開されるかと思いきや。
 ときどき思い出したかのように、設例のあてはめがでてくる以外は、延々と抽象的な記述が続く。

 てっきり、米倉明先生の民法入門書的なコンセプトかと期待したものの、およそそうではなく。

米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)

 判例の説明も、事案の記述が薄くて意味が取りにくい。
 学生がこんなレジュメ作ったら、「判例を一般化しがち」と怒られる感じの。

判例の機能的考察(タイトル倒れ)


 もちろん、学術的にはとてもとても高度なことが書かれているのだと思います。

 確かに、お紅茶も用意せずに『濃厚バームクーヘン』をひたすら食べまくっておきながら、「口の中の水分全部もってかれるわボケ!」とクレーム(バームクレーム)をいうとしたら、それはお門違いだと私も思います。
 お前がクーちゃんのこと知らないだけだろうと。

 が、見てくださいよ、amazon記載の宣伝文句。

 わかりやすい行政法教科書の決定版!
 行政法をわかりやすく学ぶ人へ最適のテキスト。初学者でも自然に読み進めることができるよう,基本的な事項を中心に説明。行政救済法を中心に,行政組織法と行政作用法の関連事項にしぼることでメリハリをつけた叙述に成功!

 新しい大地を切り開く基本書の決定版!読みやすいUNIT構成で基本的な事項を分かりやすく解説。行政救済法を中心に、行政組織法と行政作用法の関連事項にしぼることでメリハリをつけた叙述に成功!


 「お紅茶もこちらでご用意しますからお気軽に手ぶらで来てくださいね」ということを言ってますよね、これ。
 むやみやたらとエクスクラメーションマークまでつけちゃってさ。

 これが美辞麗句・社交辞令だとも気づかず、真に受けてお土産も持たずにお伺いした私が世間知らずなだけですか。

【期待だけが高まる宣伝文句といえば】
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅

 およそ「初学者でも自然に読み進める」なんてことはなかったです。

 最初の数ページでしんどくなったものの、この宣伝文句を心から信頼し、もしかしたらどこかから急に面白くなるのかも、と期待してどうにか読みました。
 が、最初から最後まで同じ調子の。

 この宣伝文句を書いた人、ガワだけ眺めて中身をしっかり読んでいないんじゃないですかね。
 制作・編集部門とは別個独立した、宣伝文句クリエイション部門があるんですかね。
 クリエイション部からの御宣託(The Oracle)があると、誰もそれに異を唱えることができない。

 そうとでも言わなければ、ここまでのズレ文を書くのは逆に難しいと思いますよ。
 高木先生ご自身にも失礼なような。

【流れ弾】


 これを「つらい」と言っちゃうのもどうかと思いますが。
 「売らんがな」とのせめぎ合い、ということですか。


 当ブログでは、どんなにアレな本であっても、どうにかネタとして昇華してきました。
 むしろ、ありがとうアクティブ・ラーニング系。逆に、自分で考えながら勉強することができました。

【アクティブ・ラーニング系】
後藤巻則「契約法講義 第4版」(弘文堂2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第15版」(有斐閣2020)
小林秀之「破産から新民法がみえる」(日本評論社 2018)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民まとめ)

 が、今回は無理。バームクーヘンまでが限界。

 一点プラスの評価をするとしたら、カバーデザインが素敵です(本当のガワ)。


 念のため、誤解のないように。

 本書の内容を分かりやすくしろ、などというおこがましい意見は一切主張しておりません。
 ではなくて、内容に即した宣伝文句にしろ、ということを言っております。

 素朴に考えるならば、宣伝文句で釣っても継続的な信頼は得られないのだから、盛る意味ないのでは、となるはず。
 やはり、大学の講義の「指定教科書」としてもらうことが重要であって、個々の購読者の信頼は二の次、ましてやネットで購入する野良ユーザーの信頼なんかゴミクズだと思われているんですかね。

法学研究書考 〜部門別損益分析論


 このように心がかき乱されたときは、お口直し・調子を整える用の入門書を読み直します。



藤田宙靖「行政法入門 第7版」(有斐閣2016)

 ガンシューティングゲームでリロードする、あるいは、リングフィットアドベンチャーでリングコンを下に向ける、的な所作だと理解していただければ。



リングフィット アドベンチャー(Nintendo2019)
※いわゆる定価(8,778円)以上でご購入されないように。


 昔から不思議でたまらないのが、後発の教科書ほど優れたものになるはずだ、という《素朴な》進化論的発想が、法学教科書には通用しないということ。
 単線的な進化をしない、とても現実の生物界っぽいですね。
 
 しかし、後出しジャンケンで負けるってなんなのよ。
 首が短いと高いところの木の葉が食べられない、よーしじゃあ首を長くしよう、が教科書ならできるはずですよね。

 とはいえ、これもあくまで宣伝文句どおりの書物ならば、という前提があっての難癖です。
 そもそも学生にわかりやすい教科書なんか目指していないよ、というならば、それはそれで構わないわけです。宣伝文句で盛らないかぎりは。

 今どきは「試し読み」できるものもあるので、「宣伝文句騙され」は減ってきているのでしょうが、まだまだ根絶には至りません。
posted by ウロ at 11:20| Comment(0) | 行政法