2020年12月14日

からくりサーカス租税法 〜文言解釈VS趣旨解釈、そして借用概念論へ

 さて、前回までで小規模宅地の特例第三期三部作は終了しました。

【小規模宅地の特例(家なき子特例) 第三期三部作】
僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1
ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)

 そこでは、同特例の趣旨が、どう頑張っても「出戻り保護」にはならないことまでは分かりました。
 では一体何を保護しようとしているのか、というと結局分からずじまい。

 それはともかく、これら記事の裏テーマたる《文言解釈 VS 趣旨解釈》、次にネタにするとしたら、例のTPR事件の最高裁判決が出されたときになる予定です。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 以下は、いずれくるそのときまでの、《幕間》の地ならし・露払い記事です(不受理となったら泣く)。


 上記高裁は趣旨(と彼らが思うもの)重視の解釈をとったわけですが、最高裁が趣旨をとるか文言をとるかは正直予測がつきにくい。
 下記の最高裁が割と予測しやすかったのとは対照的。

解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決

 こちらの事件は、高裁の文言解釈(という名の司法権放棄)がアレ(ストレンジ・エキセントリック・ビザール)すぎるのと、所得税法の当該文言がシンプルだったため、最高裁は趣旨解釈を採用したわけです。

 他方で、TPR事件については、私自身は文言を重視すべきだと思うものの、正直どちらに転んでもおかしくない。
 第三小法廷とは別の小法廷に係属したとして、「直近で趣旨解釈をとった判決があるから今回もそれにあわせる」みたいな判決がでる可能性も十分ありうる。

 不正確なのは承知な上で、それぞれの解釈と結論を図式化すると、

  最高裁令和2年3月24日判決
   文言解釈 納税者有利 ←高裁
   趣旨解釈 納税者不利 ←最高裁 《私見》

  TPR事件
   文言解釈 納税者有利      《私見》
   趣旨解釈 納税者不利 ←高裁

となります。
 文言解釈/趣旨解釈と当該納税者の有利/不利が連動しているようにみえますが、これはたまたま。

 ですし、文言解釈なら予測可能性があって趣旨解釈は予測可能性がない、などということでもおよそないです。
 通説的な見解は、あたかも文言解釈なら予測可能性があるかのような物言いをするのですが、「お前税法条文読んだこと無いのかよ」と言いたくなる。

【納税者の予測可能性(気のせい)】
税法・民法における行為規範と裁判規範(その1)

 むしろ趣旨から説明してもらったほうがすんなり理解できることが多い。
 前者事件で最高裁が譲渡所得の趣旨から株式の時価の算定方法を導いているの、非常に説得力がありますよね。
(ので、複雑な要件によって居住保護・事業保護ではない何かを(も)保護しようとする「小規模宅地等の特例」、趣旨から各要件を説明できないのが相当に俗悪。)


 この、どちらに転ぶか予測がつかない根本的な原因、文言解釈をとるのか趣旨解釈をとるのかの使い分けの《指針》が何も示されていないところにあります。
 文言重視の判決書と趣旨重視の判決書を両方作成しておいて、当日くじ引きで選ぶ、とかでもご立派な判決を言い渡すことは可能。

 文言重視の判決書
  ・文言によれば○○
  ・この点、趣旨からすると××
  ・しかし××は文言から離れすぎ
  ・ので○○と解釈すべき

 趣旨重視の判決書
  ・文言によれば○○
  ・しかし、趣旨からすると××
  ・○○だと結論がよろしくない
  ・ので××と解釈すべき

 同じ材料使っても、全く逆の結論を導けてしまう。

 これでは、《自分が採用したい結論が文言どおりなら文言解釈をとる、文言から出てこなければ趣旨解釈をとる》といったように、結論にあわせて融通無碍に使い分けがされているようにみえてしまう。
 あるときは、「解釈の限界を超えている」とかいって文言解釈どまりにしておきながら、またあるときには、「文言はこうだが本来の意味はこっちだ」みたいに文言からでは導けない意味内容を趣旨から導き出したり。

 こんな具合なゆえに、従来型の法解釈学はお気軽にディスられがち。

太田勝造「AI時代の法学入門 学際的アプローチ」(弘文堂2020)

 事案が違う、といえばそのとおりではあるのですが、その使い分けをもたらす違いは一体何なのか。
 税法分野でも「納税者の予測可能性の観点から、原則は文言解釈だが例外的に趣旨解釈」などと言われたりしますが、その原則と例外はどうやって使い分けるというのか。
 文字通り「納税者が予測できるかどうか」で判定するのだとしたら、納税者には難しすぎるということで、大部分の租税法規は文言も趣旨も採用できずに解釈不能、となってしまうでしょうよ。


 話はやや脱線しますが、法分野における「原則例外モデル」、私にはとても胡散臭くみえる。
 というのも、「原則例外モデル」の実態をみるかぎり、《本来は「例外」のほうを前面に立たせたいが正面切ってそれを主張するのは憚られるため、身奇麗な「原則」を傀儡として表に立たせている》だけにみえるからです。

※ただし、近時は「要件書き込み」によって文言が趣旨の操り糸を断ち切りまくっているのは記事にしたとおり。

「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に

 分かりやすい例で、契約の成立・効力を判定する際に「公序良俗」(信義則でも)をどこに位置づけるか、で考えてみましょう(通説的には効力要件なので、以下そういう書き方をします)。

 通常の説明の仕方は、合意の一致からはじまって諸々検討した後に、例外的に公序良俗に違反していないかを検討するかのように書かれることが多いです。
 が、公序良俗チェックは、こっそりバックグラウンドで粛々と実施されているのが実情。
 表立って問題になることが少ないから、例外的に考慮しているように見えるだけで。

 もし「契約の成立・効力判定フローチャート」を作るとしたら、最初のほうの分岐に位置づけるべきでしょう。
 あれやこれや細かい要件を散々検討した後に、「公序良俗違反だから無効ね」とひっくり返すのでは無駄が多すぎますよね
 ので、プログラム上は最初に組み込むのがスマート。
 
 確かに現象としては例外則っぽくみえます。
 が、実相は決してそうではなく、契約の「大前提」「土俵」「基礎条件」などとして位置づけるのが望ましいポジションどりでしょう。
(なお、これはあくまで実体法レベルの話であって、主張立証責任の分配とは別問題)


 そうはいっても、公序良俗については単に置き場所の問題なので実害はあまりありません。
 別に、公序良俗を表に出すことに後ろめたさがあるわけではない。

 問題は、税法解釈において《文言解釈が原則、趣旨解釈は例外》と位置づけること。

 最終的に文言通り解釈したからといって、最初から趣旨をガン無視して文言だけで突っ走っているわけではない。「文言どおり解釈するから安心してね」と言っておきながら、裏では密かに趣旨チェックを走らせているわけです。
 「当社は○○の目的でしか個人情報を利用しません」と言っておきながら、あれやこれやの分析にデータ活用しているような話。

 文言が原則だといいながら「常に」税法の趣旨チェックを行なっているのだとしたら、優越とまではいえないにしても、趣旨と文言を同格扱いしているということでしょう。
 のに、いかにも文言重視なフリをするのは、それこそ「予測可能性」を害すること甚だしい。
 だったら初めから、《文言と同時に趣旨も考慮するよ》と説明しておくべきでしょう。


 これと同じ問題構造なのが「借用概念」。

 こちらも、「原則は私法準拠だが例外的に税法独自に解釈する」などと「原則例外モデル」で説明がされます。
 が、結果として私法準拠で解釈しているからといって、税法の趣旨を全く無視して結論を導いているわけではないです。
 その場合でも税法の趣旨から問題がないかは、常にチェックがかかっている。

 表向きは私法に従順なように見せかけておきながら、裏では「必ず」税法によるチェックをかけている。
 だったら、初めから《税法の趣旨により解釈するが、私法解釈も税法の趣旨に反しないかぎり取り入れます》と説明すべきでしょう。

【借用概念イリュージョン】
金子宏・中里実「租税法と民法」(有斐閣2018)


 では、文言解釈と趣旨解釈をどのように使い分けるべきなのか。

 極めて断片的ですが、これまでの記事で書いてきたことからすると、たとえば次のような指針が考えられるのでは(ついでに借用概念も絡めてみます)。

・文言通りに理解し、文言から読み取れない場合に趣旨で充填する。

・趣旨で充填するにしても、個別の条文とそぐわない趣旨は持ち込まない。
 (ダメな例:家なき子特例に出戻り保護、完全支配関係の適格要件に事業・従業者引継)

・明らかに私法準拠な法概念(親族など)は私法の理解に従う。

・それ以外の概念は税法の趣旨により解釈。私法解釈はあくまでも参照用として。

・どうしても文言に反する趣旨解釈(反制定法解釈)をせざるをえない場合は、徹底的に丁寧な説明をする。

 もちろん、これに尽きるというものではないです。
 ですし、これは絶対ルールではなく、文言/趣旨、私法/税法の使い分けの安定性・信頼性を高めるためのものです。法解釈の「本質」などというものでは、およそない。

 表向きは「文言解釈が原則だから予測可能性あり」などと言っておきながら、アトランダムに趣旨解釈を混ぜ込ませるのではなく、文言解釈/趣旨解釈を一定のルールに従って運用することこそが法的安定性・予測可能性を高めることに繋がるはずです。

 以上、タイトルには、煽り気味に「文言解釈 VS 趣旨解釈」などと書きましたが、決して対立概念ではなく、用法用量を守って正しく使い分けをしましょう、というのが本記事の結論。

2020年12月07日

あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)

 前回までの記事で、「家なき子特例」の各要件から立法趣旨が抽出できるか、ということを検討してきました(真面目に表現するとそうなる)。
 そういう個別要件のあれやこれやを検討しながらも、頭の中ではうっすら別のことを思い浮かべていました。

 今回は、それを表に出して一連の記事のまとめとします。

【小規模宅地等の特例】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正

関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)

タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に

白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1
ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

【家なき子の取得者要件】
(原則要件)
 1   被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
 2−1 相続前の3年間に
    ア 自分と自分の配偶者
    イ 三親等内の親族
    ウ 特別の関係がある法人
    の持ち家に住んでいない
 2−2 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
 3   相続から申告期限まで継続保有

(除外要件)
 2−1 「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く



 前回までで展開したこと、法における「趣旨解釈」と「要件書き込み」の相剋の一局面だったりします。
 牧歌的な草食系の趣旨の世界を、脳筋な肉食系の要件書き込みが蹂躙するさま。

 発生史的にどちらが先に発生したかは私には知見がありませんが、現状をみるかぎり、要件書き込みが「攻め」で趣旨が「受け」といってよいでしょう。

【法における攻めと受け】
小林秀之「破産から新民法がみえる」(日本評論社 2018)
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法

 本特例でも、形式要件増し増しによって、もはや出戻り保護という趣旨が維持できていない。
 美容整形を繰り返した結果クリーチャー化した、みたいな話。


 さらに焦点を引いて話を壮大にすると、「自然法主義」と「法実証主義」という英霊同士の抗争を背後に観測することができます。

 《法の本質》としてどちらが正しいか、などということは私には語り得ないところです。
 が、少なくとも税法世界では「法実証主義」ベースに考えるべきなんでしょう。
 それこそが、みんな大好き「租税法律主義」「租税法規の明確性」「納税者の予測可能性」に資するはずですよね。
 「自然法」の出番があるとしても、あまりにも租税正義に反するといった極限的な場面にかぎられるでしょう。

 立法担当者ちゃんが、みんなの予測可能性を高めてあげるために頑張って形式要件を集めてくれたのだから、今さら実質がよかったとか言わないであげて。
 実質論を展開するのは、余った実質要件のところだけにしておきましょうね。

 なお、税法とは違い「民法」では、かつては条文がゆるめで趣旨解釈の活動範囲が広めだった、のに、こちらも近時の改正により「要件書き込み系」が徐々に侵略しつつある、というのが私の見立て(大平原に着々と高層ビルが建設されていくイメージ)。


 個別論点にはあまり触れたくないのですが、ちょっと気になるのでさわりだけ。

 「実質論」を展開する余地がある箇所として問題となりうるのが、「所有」要件。
 要件2−1、2−2、3にでてくるやつです。

 要件3のほうは、遺産分割なりで相続していればいいんだろうな、と思います。
 厄介なのが要件2−1と2−2。

 「所有」と聞いて、我々がまず頭に思い浮かべるのは「登記」を持っている(登記名義人である)ことですよね。で、通常は所有権の所在と登記名義は一致するから特に問題はない。

 問題はズレがあるとき。

【名義と実質がずれる例(アトランダム)】
 ・売った(買った)けど登記移転していない
 ・割賦、リース
 ・所有権留保
 ・仮登記担保
 ・譲渡担保
 ・信託の受託者と受益者
 ・匿名組合の営業者と組合員

 これらの場合に、どちらが「所有」していることになるのか。

 登記はあくまで「対抗要件」にすぎません。「国税庁に特例適用を対抗するために登記が必要」(対抗関係)などという関係は、ここでは存在しない。
 ので、実質判定でよさそうなんですが、その実質とやらは上記例ではそれぞれどうなるのか。

 ここでもし、要件2−1、2−2の趣旨が明確ならば「その趣旨からすればこういう基準で判定すべきだ」などと趣旨解釈できたのでしょう。
 が、すでに検討したとおりこれら規定の趣旨は謎なまま。趣旨解釈を展開できるだけの中身がない。


 こういう場面こそ、まさに通達に決め打ちしておいてもらいたいところ。
 のに、通達の、かゆいところに手が届かない感がもどかしい。

 法改正が頻繁すぎて、通達の目地埋めが追いついていないのでしょうか。
 「いろんな同居」のcルールもそうですが、法令とのカップリングがうまく噛み合っていないように思える。

【古き良き、牧歌的な通達世界】


 渡辺淑夫 通達のこころ (中央経済社2019)

 上記書籍で展開されているような、法令と通達とのきれいな役割分担は、現代型税法のもとでもはや存続しえないのかもしれない。

 同書は、過去制定の通達語りで一冊の読み物として完成されています。
 他方で現代型税法では、法令側の規律領域が歪なせいで、通達の規律領域もその影響を受けて歪にならざるをえません。結果、今どきの通達を題材にしても読み物として面白みがなくなってしまう気がします。

 再三掲載している「いろんな同居」ですが、そもそもの話として、法律・政令・通達を横並びのルールとして書けてしまうの、おかしいんですよね。
 
 【いろんな同居】
a どの範囲で特例の適用を受けられるかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (令40条の2第4項)
b 同居親族が適用を受けるために、同居しているかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (法69条の4第3項2号イ)
c 家なき子が適用を受けるために、他の相続人が同居していないかを判定するときの同居
 ⇒独立部分で判定 (通達69の4-21)
d 家なき子が適用を受けるために、被相続人が居住していたかを判定するときの居住
 ⇒???

 「法段階説」のピラミッドによる説明を想像してもらえればいいんですけど、本来の法律・政令・通達の関係は、法的効力において明確な優劣関係があって、自ずから規律レベルの棲み分けもきれいに分かれているはずでした。
 のに、「いろんな同居」においては、abcが同じようなことを規律している。

 まさしく、法令と通達が「ガチ同居」しちゃっている。「なんちゃって同居」ですらない。
 同じような、といいましたが、通達が法令側に越権しているのではなく、法令が通達側にはみ出しているイメージ。通達は、法令の抜けているところを埋めてあげただけ(が、dが抜けたまま)。
 法令のほうから、通達の住居に押しかけてきたと捉えてもらえれば結構です。

 『おめえ、通達みてえな法令だな!』
 
 括弧内の引用元を書かないでおいて、「どこに規定されているでしょうかクイズ」を出しても、全く見当がつかないでしょうね。
 結論がわかったとして、なぜそこに規定されているのかの説明もできませんし。
 レベルとしては「あだち充キャラクタークイズ」と同等の難易度(男主人公、女主人公、ふくよかな男友達、髭のおじさま、など)。


 と、文言アゲ・趣旨サゲな煽り文を書きながらも、これはあくまでも「日常系税務」レベルでの話にとどまります。

 例の東京高裁判決のようなものがあることからも分かるとおり、裁判所は時としてお作法無視の飛び道具的判決を出すことがあります(ただし上告受理申立中で正座待機中)。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

【こちらは東京高裁判決破棄差戻例(納税者敗訴)】
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決

 ので、条文突き破った裁判チャレンジをかますことまでもを、否定するものではありません。
 日常系税務と紛争系税務とでは、頭の使い方を切り替える必要があるということ。日常系のノリを紛争系に持ち込むべきではないし、その逆もまたしかり。

 この点、税法学者や弁護士が《税理士向け》という謳い文句で書く「税法本」が、時として税理士に理解しがたいのは、紛争系のノリを日常系に持ち込もうするから。
 税理士は通達大好きとか趣旨解釈が苦手とかリーガルマインドを知らないなどと煽られても、およそ卑下する必要はない。取り扱っている領域が違うだけで。

 日常系の税理士にとってもっとも必要なのは、通達ベースの「税務本」です。小難しい法曹解釈お作法は、不要とまでは言わないが二の次。「分かっている」よりも「知っている」が先。

 ただし、税務本の読み物としての超絶つまらなさは認める。特に表本。

【税務本における表と裏】
西村美智子 中島礼子「組織再編税制で誤りやすいケース35」(中央経済社2020)

 ので、退屈しのぎに要件を標語化したり、シザーハンズなどと擬人化(人?)してみたりするのですが、それもあくまでも制度理解をするための補助デバイスにすぎません。寓話はあくまで寓話であって、必ずしも現実とは一致しない。

 日常系税務で「趣旨」を活用するとしたら、未知の税制をお勉強する際に、(暗記ではなく)理解をするために使うものでしょう。
 まかり間違って、それをもって税務署職員との「交渉」に臨んでも、大した武器にはならない。水中戦に剥き出しのアンパンマンを駆り出すようなものよ(なお、ガンダム(RX-78)はアムロが異能なだけの超例外)。
 武器になるのは「書かれたもの」としての通達・国税庁のサイト、それから法令・裁決・判決。
 趣旨は紛争モードに切り替えるまで、「お守り」として心の中にしっかりしまっておきましょう。


 「趣旨からスタート」は、必ずしも納税者有利にだけ働くとは限りません。
 上記最高裁のように、趣旨解釈によって納税者敗訴判決も出されることもあります。どちらかに有利などということはない。

 そうすると、日常系税務においては『課税庁側が主張できるのは事前に通達で公表しているかぎりで、それ以上の書かれていない趣旨を課税の根拠として持ち出すことはできない』という制約を設けておくことにも意義がある。
 それにより、納税者の予測可能性・法的安定性も高まりますし。で、お互い納得いかなければ、紛争系にフィールドを移行すればいいと。

 日常系税務に趣旨を持ち込むことが許されるのは、日常を修羅道に貶める覚悟のある者だけよ。


 なお、上記最高裁の事案、「文理解釈(高裁)対 趣旨解釈(最高裁)」という文脈で語られることがありますが、これは不正確。

 最高裁判決のほうは譲渡所得課税の《趣旨》から解釈を導いているので、こちらはそのとおり。
 他方で、高裁判決のほうは文理解釈を自称しているものの、およそそうではない。

 高裁判決が文理解釈の対象としているのは通達であるし、文理解釈といいながら、とても文理からは出てこないような強引な解釈を展開しています。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

 宮崎裕子最高裁判事は、補足意見にて通達の出来の悪さを論難しています。
 が、むしろ、高裁判決の無作法解釈を嗜めるべき。

 通達のほうは、非法曹が作成するものであるし、課税庁としてのお立場上、純粋な法解釈論によれないこともあるでしょう。
 どちらかといえば日常系税務で運用できることを主眼において作成しているものですし。
 法解釈論としては多少怪しくても、大量の事案を捌いていくためには、ある程度の割り切りが必要になるものです。

 それを法解釈の正しいお作法に従って是正をしていくのが司法の役割のはずです。
 のに、この高裁判決のように、《通達を文理解釈する》などという判決を出すのは、「こいつ司法の役割を完全放棄しやがった」と言われても文句はいえないでしょうよ。

 もちろん、「裁判官の独立」というお題目はあるわけですが、そもそも司法の役割を放棄しているんだから、保護すべき独立がそこにはないと思うんですけど。

 本件で文理解釈の対象となるのは「その時における価額に相当する金額」です。こんな抽象的な物言いのおかげで、譲渡所得課税の趣旨直結の解釈を展開することができるわけです。
 もし、法律レベルに時価評価についてのルールがあれこれ書き込まれていたとしたら、これら規定をガン無視した自由な趣旨解釈は展開しづらかったでしょう。


 以上、「出戻り保護」を掴みとしながら、直接関係のないところまで記述を広げてきました。

 私自身、家なき子特例については、過去にもいくつか記事を書いておきながら、実は腑に落ちていませんでした。
 今回、出戻り保護を軸としてあらためて検討することで、「うん、これは腑に落ちなくていいやつだ。」ということが分かったのが収穫。

 他方で、記述がふざけすぎていて数週間後には恥ずかしくなることが、予め見えている。

 事前確定黒歴史(津軽海峡冬景色と同じ発音です)。
posted by ウロ at 11:11| Comment(0) | 相続税法

2020年11月30日

ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2

 前回の記事で、「家なき子特例、出戻り保護してなくね?」と疑問を呈しました。
 今回は、そこから先の掘り下げです。

【小規模宅地等の特例】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正
関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

【家なき子の取得者要件】
(原則要件)
 1   被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
 2−1 相続前の3年間に
    ア 自分と自分の配偶者
    イ 三親等内の親族
    ウ 特別の関係がある法人
    の持ち家に住んでいない
 2−2 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
 3   相続から申告期限まで継続保有

(除外要件)
 2−1 「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く


  以下、相続人A、配偶者なし、長男B(同居)、次男C(家なき子)とします。


 前回の記事で家なき子特例の各要件を検討してみたところ、いずれの要件とも本気で「出戻り」を保護する気がなさそうに思えました。

 そもそも、出戻りを保護するならば、要件の組み立てとしては直接、
  ・出戻ったらOK
または、
  ・出戻る見込みならOK
とするのが素直でしょう。

 出戻りと直接関係のない回りくどい要件をあれこれ要求したところで、《出戻り促進税制》にはなりません。
 要件3以外は「ない」「ない」「ない」と、何か見えない敵から家なき子特例を守ろうと一生懸命で、肝心の出戻りそのものを積極的に保護しようとする気がない。

 「よーしお父さん、はりきって出戻り保護しちゃうぞー」とか言ってこんな消極要件詰め合わせを持ってきたら、娘からガン無視されること必定。
 金持ちCさんがよくて貧乏Cさんがダメな理由は、一体なんなのおじさん。

 「特例クイズ!一体何を保護しているのでしょ〜う、か!?」

 とかいって、何の特例かをいわずに要件だけを順番に出していっても、最後まで誰も正解できないんじゃないですかね。
 一般正解率、たぶんこんな感じ。

 第1問 原則要件1   一般正解率0%
 第2問 原則要件2−1 一般正解率0%
 第3問 原則要件2−2 一般正解率0%
 第4問 原則要件3   一般正解率0%
 第5問 除外要件2−1 一般正解率0%

 むしろ、相続直前で持ち家に住んでいようが、過去所有していた家に住んでいようが、将来出戻るなら適用受けられる、と設計したほうが、出戻り促進に資するでしょうよ。

 なお、「見込み」なんてあやふやな要件、課税要件としては許容できない、と思った方。
 もしいらしたとしても大丈夫です。
 組織再編税制における適格要件などという大事な要件で、支配継続の「見込み」が要求されていることに対して、定評のある教科書では、

 「事後の事情を考慮しないという意味で、法的安定性を重視した結果として評価できる」

などという評価が出されていますから、安心してください!安定していますよ!

中里実ほか「租税法概説 第3版」(有斐閣2018)


 同居者がいないとか持ち家がないという制約条件は、一見すると、保護すべき出戻りとそうでないものを選別しているようにみえるかもしれません。
 が、前回事例をあげて検討したとおり、規制範囲が雑すぎて、実際の出戻りを保護できなかったり、逆に出戻りするつもりのないものを保護したり、結論がめちゃくちゃでした。
 単純に、狭すぎるとか広すぎるというのではなく、いびつ(流行り言葉でいうと、偽陰性と偽陽性の両パターンあるということ)。

 が、めちゃくちゃ・いびつという評価は、あくまでも同特例を「出戻り保護」だという色眼鏡で見るから出てくるものにすぎません。
 なにか別の理由付けが見つかれば、救われる可能性はある(といいながら、私はもはや無理だと思う)。

 一応、要件を標語チックに書いておきましょう。

 1   同居者がいたら譲ってあげましょうね。
      でも二世帯住宅の場合はワンチャンあるから諦めないで。
 2−1 自分や親しい者の持ち家に住むのはやめましょう。
      直前に引っ越しても間に合わないので引っ越すならお早めにどうぞ。
      どれだけ不動産持っていてもいいから、とにかく自分で住むのだけはやめてね。
 2−2 自分が昔持っていた家に住むのはやめましょう。
      住んだことがなくても、一瞬でも持っていたらダメだからね。
      もし今住んでいるなら、相続直前にでも引っ越しましょうね。
 3   申告期限までは売らないでね。
      そのあとはどうぞご勝手に(ニヤリ)。

 なんなのこいつら。あらためて、同じ一つの制度の中の要件同士とは思えない。
 出戻り保護標語コンクールに応募したら、こいつら全員落選だわ。

 ちなみに、除外要件2−1はというと、

 除外要件2−1 でも被相続人が住んでいたところなら大丈夫だよ。

と、一人だけ全く性格が違う(イチジ・ニジ・ヨンジとサンジの関係)。
 でも、この子にしても出戻りを要求しているわけでもないので、そもそもデモコン(出戻り保護標語コンクール)への参加資格がない。

 週刊「家なき子特例」。
 毎号付属の要件を組み立てると出戻りを保護してくれる特例が完成する。創刊号は特別価格290円(税込)。
 という謳い文句だったのでウキウキで定期購読していたのに、完成してもさっぱり出戻り保護機能が働かない。


 先に趣旨側を決め打ちしてから要件を解釈するの、正しいようでいて間違い、というのが私の見立て。

 正しくは、個別具体的な条文上の要件から制度趣旨を導き出す、その上でその趣旨解釈により要件の意味内容を充填する、というのがあるべき姿だと思います。
 実際の要件とは無関係な趣旨を勝手にどこかから持ち込んで、条文に書かれざる意味内容を要件に盛り込むの、解釈論を超えた「立法論」になっています。
 
  × 制度趣旨 ⇒ 要件解釈
  ○ 要件確認 ⇒ 制度趣旨 ⇒ 要件解釈

 これが、複数の要件のうち一つだけが「出戻り保護」とは逆方向を向いている、という場合に、他の要件と整合するように調整を施す、ならまだ有りだと思います。
 が、要件どれもこれもが出戻り保護のほうを向いていないのに、全員無理やり出戻り保護に向かせるのは"Over The Hermeneutics"でしょう。

 と、自分の中では考えていながらも、こんなの単なるスタンスの違いにすぎないかなあとも思っていたのですが、例の東京高裁判決が出たおかげで、税法分野における「趣旨からスタート」の実害がはっきりとしました。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 同判決では、趣旨から勝手に要件を創設する、などという禁忌を犯しています。
 要件側から解釈をスタートする、というお作法を守らないから、支配関係のルールを完全支配関係にまで持ち込む、などという横流しを実現してやがる。

 「趣旨からスタート」派の方からすれば、東京高裁様も自分たちと同じ立場だ、ということで有利に援用するのかもしれません。
 が、書いてない要件を付け加えるの、書いてある要件に反する「反制定法解釈」と同罪ですからね。
 もちろん、「絶対的に」許されないというわけではありません。が、相当慎重にやるべきことであって、カジュアルに発動してよいものではない。


 非専門家向けに説明するためには、細かい要件を云々するより「出戻り保護」と決め打ちしたほうが分かりやすい、という意見もあるかもしれません。
 が、もしも前回記事の各事例におけるCさん(ただし金持ちCさん除く)から、「出戻り保護だときいていたのに、なんで自分の出戻りは保護されないんだ!」と詰められたら、説明できないですよね。
 「趣旨はCさん保護してあげましょうと言ってくれているんですが、要件の奴らがいうこときかなくってですね…」などと言い訳したところで、納得してもらえるとはとても思えない。
 やはり趣旨と要件が仲違いしているのがおかしいんですよ。

 ましてや税理士向けの実務書ならば、なおさら、実際の要件を説明できない制度趣旨を掲げるべきではないでしょう。

 これがたとえば、交際費の損金不算入の趣旨を「冗費の抑制」だとかいうのは、個別具体的な交際費該当性の判定にはさっぱり役立たないものの、少なくとも条文解釈の邪魔にはなることはないです。
 他方で、家なき子特例を「出戻り保護」といってしまうと、正確な要件理解を妨げることになります。

 上で標語チックに記述したあいつらに「出戻り保護しろや!」ていっても、全然言う事聞かなそうじゃないですか。
 というか、彼らだって「今日から君たちには出戻りを保護してもらいます。」とか言われたら、「え、俺たちが?無理じゃね?」という反応になるでしょうよ。

 エドワード(シザーハンズ)に「お前の愛する出戻り抱きしめてみろよ」と煽るみたいな。
 珍妙な喩えと思うかもしれませんが、もし本当に家なき子特例の核に「デモドリ姫」が実在していたとしたら、要件2−1(右シザー)と要件2−2(左シザー)にズタズタに引き裂かれて瀕死の重傷な姿が、私にはありありと思い浮かぶ(ものすごい妄想力ですね)。
 瀕死の姫を救うには、聖剣や秘石などによる奇蹟(立法論に相当)に賭けるしかない(いろんなテイルズ要素が混入)。

 でも大丈夫。実際にはそんな姫いないから。

 『一体いつから 鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?』


 制度趣旨はあくまでも「出戻り保護」であってイタチごっこ改正のせいで歪になっているだけだ、という見方も可能かもしれません。
 が、イタチな要件のせいで出戻り保護が侵食されているのだとしたら、もともとの制度趣旨はもはや維持できない、と考えるほうが素直でしょう。
 そして、条文が解釈を施せないほど明確になってしまった以上、出戻り保護へ回帰させるのは立法論として展開するっきゃない。

 すでに重機が入ってあちこち掘り起こされているにもかかわらず、「ここは旦那様がいた頃の美しい庭園のままだ。」などと、在りし日のあの頃を思い浮かべている老庭師が思い浮かぶ。

 白井一馬先生が「組織再編税制」に対する評価として述べている『マニュアル化』、家なき子特例もそうみたほうがいいんじゃないですかね。


 立案担当者が開陳する見解、というのも必ずしもあてにならない。

 たとえば民法415条但書の帰責事由について、契約(=合意)を重視するか取引上の社会通念も重視するか、すでに解釈割れてますからね。改正したばっかりだというのに。
 それを外野が云々するならともかく、立法に関与した人の中でも争われているという。

民法第四百十五条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 そうすると、やはり出来上がった文言をベースに解釈するしかないでしょう。
 この場合だと、文言上優先劣後の関係をつけているわけではないのだから、どちらも重視すべきと解釈すると。


 さて、ここまで検討してきたのは、「家なき子特例」の立法趣旨などという極めて限局された論点にとどまります。
 が、その背後には、実は壮大な物語が広がっています(神々の大地)。

 そこで次回最終回では、壮大な物語へのプレリュードを奏でてみたいと思います(プレリュードなのに最終回なのは、未完成交響曲を意識)。

 ということで、恒例の次回予告ワード。

 ・牧歌的な草食系、脳筋な肉食系
 ・要件増し増し
 ・クリーチャー化
 ・英霊同士の抗争
 ・みんな大好き「租税法律主義」
 ・立法担当者ちゃん
 ・大平原に着々と高層ビルが建設されていく
 ・文言アゲ・趣旨サゲ
 ・お作法無視の飛び道具的判決
 ・条文突き破った裁判チャレンジ
 ・小難しい法曹解釈お作法
 ・剥き出しのアンパンマン
 ・こいつ裁判所の役割を完全放棄しやがった

(せっかく大げさな惹きで煽ったのに、これら用語で台無し)

あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 相続税法

2020年11月23日

僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1

 前回の予告どおり。予告詐欺にならずに済みました(しかし、以下の検証の結果タイトル詐欺となります)。

白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

 前回の記事で、当該書籍に記載の「立法趣旨」に疑問があると書きました。

 それは「家なき子特例」のところ。
 ただ、私が読み違えているだけかもしれませんので、以下では本書とは独立した一般的な見解、として検討します。


 家なき子特例特例の趣旨について、一般的に『いずれ被相続人と同居する予定だった者の居住の保護』だといわれることがあります(以下、これを「出戻り保護」と称します)。
 が、実際の取得者要件を見る限り、そのような趣旨にそった要件になっていないように思います。

【家なき子の取得者要件】
(原則要件)
 1   被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
 2−1 相続前の3年間に
    ア 自分と自分の配偶者
    イ 三親等内の親族
    ウ 特別の関係がある法人
    の持ち家に住んでいない
 2−2 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
 3   相続から申告期限まで継続保有

(除外要件)
 2−1 「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く


 順番に考えてみましょう。
 以下では、被相続人A、配偶者なし、長男B(同居)、次男C(家なき子)とします。

【小規模宅地等の特例】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正
関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)


 要件1:被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない

 配偶者・同居法定相続人(以下「同居者」といいます)がいないというのは、Cの出戻りの「露払い」のために必要かに思えます。
 が、次のような事例をイメージしてみましょう。

【事例1】
 BはAを介護するためAとガチ同居していたがAが亡くなった。
 Bは念願の夢だった海外移住をするため現金を相続し、A宅はCが相続・居住し実家を守ってもらうことにした。

 この場合、BはもちろんCも特例を受けることはできません。Bがガチ同居していたせいで。
 Cが「実際に」出戻りしているにも関わらずです。

 そもそも、相続時点で同居者がいる/いないと、Cが将来出戻る予定があるかどうかに直接の連関はありません。
 いないほうが出戻りしやすい、くらいの遠くて薄い関係。
 実際にCが出戻れるかどうかは、Bが相続後に居住を継続するつもりかどうかにかかっています。

 とすると、要件1はCの出戻りの要保護性の問題ではなく、同居者にCよりも優先的に適用を受けさせるための規定、と理解すべきでしょう。
 としても、事例1のように、Bが適用受けるつもりがなくてもCが排除されてしまうのは何なのか。
 せっかくBに受けさせてあげようとしたのに、受けないっていうならもう誰にも受けさせねえぞとへそ曲げちゃって。

 他方で、ここで「ガチ同居/なんちゃって同居」と同居概念を分裂させると、同居者の優先保護は途端に雲行きが怪しくなる。

【いろんな同居】
a どの範囲で特例の適用を受けられるかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (令40条の2第4項)
b 同居親族が適用を受けるために、同居しているかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (法69条の4第3項2号イ)
c 家なき子が適用を受けるために、他の相続人が同居していないかを判定するときの同居
 ⇒独立部分で判定 (通達69の4-21)
d 家なき子が適用を受けるために、被相続人が居住していたかを判定するときの居住
 ⇒???

 aとcの組み合わせにより、二世帯住宅(区分所有なし)のB居住箇所にも家なき子特例が適用できてしまいます。
 本来Bを優先させるためにはたらく要件1が、a+cルールで骨抜きにされている。
(だとすると、cは通達ルールにすぎないので法令解釈として間違い、と判断される可能性もありえます。が、おそらく問題はcだけにあるのではなく、各要件がうまく連動していないことにあると思われます。)

 で、同居特例と家なき子特例が重複する場合には両適用可能者間での特例奪い合いが勃発し、遺産分割デッドロックへ突入(丸の内サディスティックを意識)。

 ここで想起されるのは、節税屋さんがBに対して「ガチ同居しなくても小宅いけるよ。」とか言ってわざわざ二世帯住宅(区分所有なし)に建て替えさせた後、Cから「俺も受けられるらしいな。」などと言われる事態になること。
 税理士がBCから申告依頼を受けたとしたら、もしCが気づいていなかったとしても適用できることを説明すべきしょうし。

 なんにしても、要件1はCの出戻り保護を積極的に根拠付けるものではない。


 要件2−1ア:相続前の3年間に自分と自分の配偶者の持ち家に住んでいない
 
 本人(と配偶者)に持ち家あったらそりゃダメでしょ、と思うかもしれません。
 が、次の事例はどう感じるでしょうか(以下、「持ち家」とは自己所有の建物に居住していることを表します)。

【事例2】
 C宅は築古の中古狭小住宅。
 リフォームしようとコツコツ貯金をしていたが、Aが障害を負いA宅をバリアフリー化しなければならなくなった。
 そこで、Cは自分の貯金を使い果たしてA宅をリフォームしてあげた。が、二世帯住宅にするまでの資金は出せなかった。
 Aが亡くなったので、A宅へ引っ越すことにした。C宅はわずかばかりの代金で売却したが、建物取壊費用でむしろマイナスとなった。

 皆さんお分かりの通り、C宅がどんなものであろうと、他に何ら財産を保有していなかろうと、自宅を所有しているかぎりはダメなんです。

【事例3】
 Cは多数の不動産収益物件を抱えていてウハウハである。
 なのに、Cの住居は自己所有ではなく、とある高級賃貸マンション(レジデンス)である。
 Aは一人暮らしのためCに同居してほしかったが、Cに拒絶され続けたまま亡くなった。

 同じ記号「C」なのに所得格差ありすぎですね(金持ちCさん貧乏Cさん)。
 高低差ありすぎて耳キーンてなりますでしょうか?

 C宅が第三者所有であるかぎり、どれだけ他に居住用不動産をかかえていようが、家なき子特例を使うことができます。
 ので、本件のA宅は、お安くCの不動産投資グループの一員となることができます。


 さて、事例2と事例3を並べてみて、要件2−1アは一体何を同特例から排除しようとしたのか、分かりますか?
 「持ち家がない」だけを要求して、その持ち家がどんなものか、持ち家以外の財産がどれくらいあるか、といった事情を一切考慮していないわけです。

 しかも持ち家があるとかないとか言っているの、あくまで「建物」だけの問題で、「土地」は自己所有でもいいことになっています。
 自分の土地に第三者に建物を建ててもらって住み続ける、というのが、特例狙い以外で一般的にあり得るのかどうか想像しにくいですが、規定上は建物さえ他人なら適用OKということです。
 土地活用ってことで借地権を設定してデベロッパーに高層マンションを建築してもらう、自分はそのうちの一室を賃借して住む、といった場合とかですか。


 この、相続時点で持ち家がある/ないという事情が、Cの出戻りの要保護性に影響を及ぼすでしょうか。
 事例2と事例3とでは、持ち家のある/なしと、出戻りの要保護性が反比例しています。
 これら事例は極端、だとしても、一般論として、相続時点の持ち家の存否が出戻りの要保護性に連動するといえるのかどうか。


 ましてや「3年」経てばいいというのも、それによって出戻りの要保護性が高まるとは思えないんですけど。

【相続時点で】
 × 持ち家に住んでいる
 × 持ち家に住んでいた(3年以内)
 ○ 持ち家に住んでいた(3年経過)
 ○ 持ち家に住んでいない(はじめから)

 この点、「事業用」や「貸付用」が3年縛りを要求するのは分かる。
 これまで一定期間にわたり事業等を続けてきたことの見返りであって、これから初めますじゃだめってことですよね。

 ただし誤解してはいけないのは、これらの継続が要求されているのはあくまでも「申告期限まで」ってこと。それ以降も事業継続していくことやその見込みすらも要件ではない。

 ので、これら制度の趣旨を「事業継続」というのは不正確。そのように捉えてしまうと、申告期限後も事業継続しなければならないと、過剰に誤解するおそれがある。

 とはいえ、相続したらすぐ止めていいわけでもなく、申告期限までは続けてねとなっていると。
 この、相続〜申告期限までの期間限定なことをどうにか整合的に説明するならば、

  ・できれば事業残してもらいたいな。
  ・でも、いきなりの相続だし難しい、かな。
  ・よしじゃあ、期間限定お試しでってなら大丈夫、だよね。
  ・続けられそうなら続けて欲しいけど、無理はしないでね。

 こんな感じになるでしょうか。
 立法担当者の当初の心積もりは、本気で事業継続を促進したかったのかもしれません。が、実際に出来上がった中途半端な要件に即した説明をしようとするならば、こういう説明にならざるをえない。

 ところが、こんな優しい気遣いお構いなしに初めから転売予定で相続したとしても、申告期限まで我慢しさえすれば要件は満たせてしまう。
 できれば継続して使ってね、というつもりで試供品を配ったのに、分解されて使えるパーツだけ転売されちゃうみたいな話。

 実は上記説明でもまだ、無理して事業継続におもねった内容にしています。
 実際の要件にピッタリと収まるような説明をするならば、「いきなり事業放置されるとその事業に関わってきた人達が困るから、せめて、せめて申告期限までは続けてね。」となります。
 なかなかの後退っぷりですが、要件を過不足なく説明するにはこう言うしかないんじゃないですか。


 ちなみに、このタイプの誤解を何の躊躇いもなく開陳しているのが、下記記事の「79 財産分与」のところ。
 離婚直前に居住用財産の贈与特例つかうのは法の趣旨にそぐわない、とか言っちゃっている。

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)

 なおこの本、第2版が出るらしいですが、編集方針が変わって「新々」にでもならないかぎりは、もはや読むつもりはないです。
 皆さんはぜひ、私のツッコミも含めてアクティブ・ラーニングの材料にして、チャレンジしていただければと思います。



 新 実務家のための税務相談(民法編)〔第2版〕(有斐閣2020)


 さて話は戻って、3年他人の家に住めば出戻りOKという点。

 なぜおかしいと感じるかといえば、「将来の」出戻りを保護するというのに、なぜ「過去の」他人の家への居住実績を要求するのか、というところにあるのでしょう。
 自社PRで「うちの会社は出戻りに手厚いよ!」と書いてあるからてっきり未来志向な会社かと思って面接にいったら、面接官にやたらと過去どこに住んでいたかを聞かれた、みたいな。
 え、これから出戻りするつもりがあるかどうか、全然聞かないんですか?

 出戻り保護という先入観を外して、この3年縛りを文字通りに理解するならば、『他人の家に3年住めば、見返りとしてAの家をお安く相続させてあげるね』と理解することになりますか。

 自分で書いておいてなんですが、何なのこれ?


 要件2−1イウ:相続前の3年間に三親等内の親族・特別の関係がある法人の持ち家に住んでいない

 アですらよく分からないのだから、イウなんてなおさら謎(ウは省いてイのみ検討します)。

 公式で想定している典型例は、《Cと一緒に住んでいる未成年孫Dへの遺贈》を適用不可とすること。

 が、実際の規制範囲は孫(=Cの一親等親族)にとどまらず、かなり広範囲。
 しかも、CD間に「同居」や「生計一」も「無償性」も要求されないので、単に親族関係があるというだけでアウト。

【事例4】
 Cは、叔父さん(三親等親族)がやっている賃貸マンションの一室に相場通りの賃料で住んでいた。

 叔父さんが不労所得でウハウハであることが、Cの出戻りとなんの関係があるというのか。
 叔父さん所有マンションに住むか、第三者所有マンションに住むかで、Cの出戻りの要保護性に違いがあるとは思えませんけど。

 C本人と同一視できる範囲内ならまだしも、ここまで広範囲に拡張した時点で、なにか別の考慮要素が入り込んだ、と考えるしかないでしょう。

 もう一つ事例あげておきます。

【事例5】
 Aに介護の必要が生じたが、A宅は手狭なため、Cは隣のA所有家屋へ引っ越した(生計別、建物別)。

 被相続人も「三親等内親族」に含まれるという罠。そしてこの罠に華麗に引っかかっているのが、最初にリンクを張った記事の本(ドッキリを仕掛けられる側のプロみたいな感じ)。



 被相続人(親)が三親等内親族に含まれるのは、言われてみれば当たり前のことであって、「罠」などというのは言いがかりかもしれません。
 が、ちゃんとした税理士法人がちゃんとした出版社から出版した本ですら欺かれているわけで。

 罠が言い過ぎなら、「人間の先入観を利用した意地悪ななぞなぞクイズ」とでも言っておけばよろしいでしょうか。

 そして、別居・生計別・建物別と揃ってしまうと、詰み。除外要件2−1も作動しない。

 ここまでくると、一体何から家なき子特例を守ろうとしているのか、もう訳がわからないよ。
 村が滅んだ後もプログラム通りに村を守ろうとする古代文明のロボットかよ(冗長な喩えツッコミ)。


 要件2−2:相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない

 公式が想定する典型例は、《持ち家を他人に名義移転しておきながら住み続ける場合》を適用不可とする、というもの。

 が、ここでも「譲渡取引の合理性」「居住の無償性」「譲渡前からの居住の継続性」といった事情を要求しておらず、単に昔所有していた家に住んでいる、ということだけでアウトになります。
 昔所有していた家に住んでいることそれ自体が、将来の出戻りを保護しない理由になるとはとても思えません。

 他方で、要件2−1と違って本人以外所有ならOKなのも謎。


 要件3:相続から申告期限まで継続保有

 申告期限まで「所有」するだけでいいと。
 申告期限までに実際に出戻ることまで要求しないにしても、出戻る「見込み」すら要求していません。

 ので、相続直後から他人に貸し出してもいいし、申告期限後なら売却することすら可能です。
 仮に、二世帯住宅(区分所有なし)に「なんちゃって同居」しているBがいたとしても、です。で、BがCと賃貸借契約を締結していなければ(引渡はある)、買主には居住権を対抗できないでしょう(The 地震売買)。
 もちろん、民法上の例外則の発動はありうるでしょうが。


除外要件2−1:「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く

 この要件、次のような事例を想定するなら意味は分かる。

【事例6】
 Aの土地にCが建物を建ててACが同居していた。Cが転勤で借家住まいとなり、Aが一人暮らしになって寂しくなったのか、すぐに亡くなってしまった。

 Cは自分の持ち家に住んではいたけど、そこではつい最近までAと同居していたわけです。
 ので、この場合のCを保護すべき、というのは納得はいきます。

 ただ、「同居」と書いていることからも分かるとおり、これはどちらかといえば「同居特例」の系列です。
 「同居特例」から漏れ出づる「さっきまで同居」を保護しているだけで、「出戻り」とは毛並みが違う。

 他方で、次の事例のように「同居」要素がない場合でも、この要件を使うことが可能です。
 
【事例7】
 Aは自分の土地に建物(旧)を建てて住んでいたが、Cが同建物を取り壊して同土地上に建物(新)を新築した。
 AはCが新建物で同居させてくれるものと思っていたが、CはAにボロアパートをあてがい、新建物にはC一人で住んだ。
 Cが転勤することになったので、Aに新建物に住まわせて維持管理をさせることにした。
 高齢の一人暮らしには住みにくい造りであったり、慣れない環境であったこともあってか、Aは居住後すぐに亡くなってしまった。

 書いているだけでなかなか胸くそ悪くなる事例ですね。もっと盛れそうですがこの程度にします。

 この事例で何が言いたいかというと、CはAと同居する必要はないってことです。

  C居住開始⇒C借家転居⇒A居住開始⇒A死亡(C転居から3年以内)
 と、居住期間がかぶっていなくても要件満たせます。

 この事例に関しては、事実認定の問題として、Aの「居住」を否定する、という考えもありうるかもしれません。
 が、他に住むところがなかったならば、やはり同建物に居住していたというしかないですよね。
 《心のふるさと》理論で、「Aの真の住処はすでに取り壊されてこの世に存在しない旧建物にある」とでもいいますか。

 そもそもこの要件、「同居」なんてことは一言も言っていない。
 単に相続時にAが居住していればいいだけ。ので、こんな胸くそ事例でも適用ができてしまう。
 ゴリゴリの親不孝案件だというのに、Aを住まわせておけばそれでいいんだと。

 原則要件と除外要件の両面が揃っているのだから、そこから何がしかの趣旨が見えてきそうなものですけど、私にはさっぱりわかりません。


 以上、家なき子特例における各要件と出戻り保護との親密度を検証してみました。
 結果、「なんか関係なくね?」というのが私の抱いた感想。

 このズレが生じる原因、要件見ないで先に趣旨を決め打ちしちゃうところにあると思うのですが、次回でこのあたりを掘り下げます。
 前回に引き続き、次回予告としての意味深なキーワード列挙をどうぞ。

 ・よーしお父さん、はりきって出戻り保護しちゃうぞ
 ・消極要件詰め合わせ
 ・特例クイズ!一体何を保護しているのでしょ〜う、か!?
 ・安心してください!安定していますよ。
 ・偽陰性と偽陽性
 ・出戻り保護標語コンクール
 ・週刊「家なき子特例」
 ・Over The Hermeneutics
 ・ただし金持ちCさん除く
 ・今日から君たちには出戻りを保護してもらいます
 ・お前の愛する出戻り抱きしめてみろよ
 ・デモドリ姫
 ・いろんなテイルズ要素
 ・一体いつから 鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?
 ・イタチな要件
 ・壮大な物語へのプレリュード

 それでは次回、お楽しみに!

ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
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2020年11月16日

白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

 小規模宅地等の特例、第2期3部作で一区切りつけたはずでした。

【小規模宅地等の特例】
・第1期
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正

関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)

・第2期
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に

 が、白井一馬先生の本が出たということで、読んでみることに。



 白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)


 以前の記事で、税務本には表ものと裏ものがある、ということを書きました。

【税務本の表と裏】 
西村美智子 中島礼子「組織再編税制で誤りやすいケース35」(中央経済社2020)

 本書は裏のほう。

 表本だけでは見落としがち・誤解しがちな箇所を、Q&A形式で解説してくれています。
 他方で、知識・情報が網羅されているわけではないので、本書だけで本特例を理解できるわけではない。
 あくまでも、表本で得た知識の補強・目地埋めとして利用するものです。

 また、「立法趣旨」を重視した記述をされているので、暗記に頼らない制度理解を進めることができます。
 ただし、その「立法趣旨」が本当に正しいか、疑問に思わないでもない箇所が。

 その疑問について、特例の立法趣旨の検討から始まって、一気に書き上げました。
 が、書評記事というにはあまりにも脱線しまくっていたり、もしかして私が読み違いをしているだけかもしれません。
 ので、次週以降に別記事として掲載いたします。

 意味深なキーワードを背景に流す次回予告のイメージで、登場する重要用語を列挙しておきます。
 ただし番組内容は変更する可能性があります(いわゆる次回予告詐欺)。
 
 ・露払い
 ・へそ曲げちゃって
 ・遺産分割デッドロック
 ・節税屋さん
 ・レジデンス
 ・金持ちCさん貧乏Cさん
 ・高低差ありすぎて耳キーン
 ・試供品
 ・うちの会社は出戻りに手厚いよ!
 ・ドッキリを仕掛けられる側のプロ
 ・人間の先入観を利用した意地悪ななぞなぞクイズ
 ・古代文明のロボット
 ・The 地震売買

 次回、お楽しみに!

僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1
ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
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