2024年02月19日

みんな大好き!倒産防(その5) 〜令和6年度改正法律案

 この時期になっても、税制改正ネタを税制改正大綱「のみ」を素材として記述している記事、信頼性は低いと決めつけてもらってもいいと思います。

 というのも、この時期になると財務省から「法律案」が公表されます。そのため、制度の正確な理解をするためには、法律案を読み込むことが必須となります。

第213回国会における財務省関連法律(財務省)
所得税法等の一部を改正する法律案
https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/213diet/st060202h.pdf
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21309001.htm

 もちろん、現時点ではまだ「案」だし。法律で全てカバーされているわけでもなく。これ以降に公表される政令・省令、通達もあわせて確認する必要はあります。
 が、少なくとも、法律でカバーされる予定のものは、法律案から読み取るべきものでしょう。

 とはいえ、成立後ですら条文を読まない節税ライターさんの記事が溢れかえっている現状で、法律案にまで目を通せというのは無茶な要求なのかもしれません。
 インボイスの8割控除でデマの拡散に協力した、という前科があるにもかかわらず。更生が見込めないのが哀しい現実。

【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 決定版

 今回、特にたちが悪いのが「定額減税」。
 成立前だというのに、先走って「特設サイト」なんてものまで作られていて。

定額減税特設サイト(国税庁)

 Q&Aワナビーの方々が大好きな「国税庁Q&A」もすでに出来上がってしまっています。
 法律案を無視して、「Q&A」だけみてあーでもないこーでもないと言うだけの記事が、これから雨後の筍のように溢れかえるのでしょう。

  理想:大綱→法律案→法律 (Q&A等は参考どまり)
  現実:大綱→Q&A (法律案・法律は見ない)


 以上は単なる前置きです。
 先日触れた「倒産防」の改正につき、法律案が公表されたのでフォローしておきます、というのが本論です。

みんな大好き!倒産防(その2) 〜令和6年度税制改正大綱
みんな大好き!倒産防(その3) 〜令和6年度税制改正大綱
みんな大好き!倒産防(その4) 〜令和6年度税制改正大綱

 法律案は次のとおり。

第六十六条の十一第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、法人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該法人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。


 これを現行法に溶け込ませると、以下のとおりとなります。

第六十六条の十一(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)
1 法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金

2 前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、法人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該法人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。

3 第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。


 あわせて適用時期に関する経過措置は以下のとおり。

(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例に関する経過措置)
第五十三条 新租税特別措置法第六十六条の十一第二項の規定は、法人の締結していた同項に規定する共済契約につき令和六年十月一日以後に解除があった後同項に規定する共済契約を締結した当該法人が当該共済契約について支出する同項に規定する掛金について適用する。


 まあ、特にサプライズもなく。大綱に規定されたとおりの条文となっています。
 とはいえ、インボイスにおける「8割控除」のときのような例もあるわけで。立案者がヘンテコなオリジナリティを発揮していないか、きちんと確認しておく必要があります。

【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺

 倒産防に関しては、大綱に書かれたことを素直に条文化したものと評価できるでしょう。しかしまあ、8割控除はなんで勝手に内容変えちゃったんでしょうかね。


 それはさておき。

 すでに記事にしたとおり、通達における前納1年限定ルールや、法人税法における益金ルールとの絡みが、相変わらずスッキリしないままです。

 法律案の書きぶりからすると、たとえば、解約後すぐに再加入した場合、2年間は損金不算入ですが、そのまま払い続けていれば2年経過後からは損金算入できることになります。
 別に解約後に即再加入することが禁止されているわけでなく。ただ単に損金算入ができないというだけですので。

 で、この状態から40か月分納付後に解約した場合、結論だけでいうと、最初の2年に対応する解約手当金は益金不算入、残りは益金算入とするのが妥当だと思います。
 が、このような区分を、法人税法22条2項の益金ルールだけから導くことが可能なのでしょうか。法人税法における益金ルールと損金ルールはそれぞれ別モノであって。《オセロ思考》によって結論を導くことはできない、ということはすでに論じたとおりです。

 また、解約後2年以内に再加入して1年分前納した場合はどうなるか。文言どおりなら「支出」の時点が2年以内かどうかで判定することになるでしょうか。

 このあたり、さすがに通達で何かしら触れるような気もしますが。さて、どうなるでしょう。

みんな大好き!倒産防(その6) 〜小規模共済もお好きでしょ
posted by ウロ at 11:23| Comment(0) | 法人税法

2024年02月12日

消費税法における実質と形式、そして計算へ 〜消費税法の理論構造(種蒔き編45)

 法に定める要件として、しばしば「実質要件/形式要件」などと区別されることがあります。

 たとえば、保証契約においては、意思表示の合致(実質要件)だけでは足りず書面の作成(形式要件)が必要とされる、といったように、実質と形式とを区別して記述されたりします。

 税法においても、同様に実質要件/形式要件の区別が可能です。
 が、それに加えて、税法に特徴的な規定として「計算規定」というものを観念することができます(もちろん、民法でも「相続編」のように計算要素強めな領域もあります)。

条文解析《インボイスいらない特例》の法的構造について(その9) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編44)


 《インボイスいらない特例》の究極系と位置づけることができるのが、30条7項但書の「災害その他やむを得ない事情」のやつ(以下、これを「災害」と略することがあります)。
 同条括弧書きの「困難である場合」のような、せせこましい限定列挙モノとはスケールが違います。

消費税法 第三十条(仕入れに係る消費税額の控除)
7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。


 ここでいう「災害その他やむを得ない事情」というのが《実質要件》にあたります。で、このような事情があることにより、《形式要件》であるインボイスの保存がなくても税額控除できることになる、という構造になっています。


 さて、この場面における《計算規定》はどうなっているでしょうか。要するに「では控除額いくらだ?」ということです。

 長くなるのですが、該当規定をそのまま貼り付けます。

消費税法施行令 第四十六条(課税仕入れに係る消費税額の計算)
1 法第三十条第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この章において同じ。)の区分に応じ当該各号に定める金額の合計額に百分の七十八を乗じて算出した金額とする。
一 適格請求書(法第五十七条の四第一項に規定する適格請求書をいう。以下同じ。)の交付を受けた課税仕入れ 当該適格請求書に記載されている同項第五号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額
二 適格簡易請求書(法第五十七条の四第二項に規定する適格簡易請求書をいう。以下同じ。)の交付を受けた課税仕入れ 当該適格簡易請求書に記載されている同項第五号に掲げる消費税額等(当該適格簡易請求書に当該消費税額等の記載がないときは、当該消費税額等として第七十条の十に規定する方法に準じて算出した金額)のうち当該課税仕入れに係る部分の金額
三 法第三十条第九項第二号に掲げる電磁的記録(同項に規定する電磁的記録をいう。以下この項、第四十九条及び第五十条において同じ。)の提供を受けた課税仕入れ 当該電磁的記録に記録されている法第五十七条の四第一項第五号又は第二項第五号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額
四 法第三十条第九項第三号に掲げる書類又は当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を作成した課税仕入れ 当該書類に記載され、又は当該電磁的記録に記録されている第四十九条第四項第六号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額
五 法第三十条第九項第四号に掲げる書類の交付又は当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の提供を受けた課税仕入れ 当該書類に記載され、又は当該電磁的記録に記録されている第四十九条第六項第五号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額
六 第四十九条第一項第一号イからニまでに掲げる課税仕入れ 課税仕入れに係る支払対価の額(法第三十条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。以下この章において同じ。)に百十分の十(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の八)を乗じて算出した金額(当該金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を切り捨て、又は四捨五入した後の金額)

2 事業者が、その課税期間に係る前項各号に掲げる課税仕入れについて、その課税仕入れの都度、課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の十(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の八)を乗じて算出した金額(当該金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を切り捨て、又は四捨五入した後の金額)を法第三十条第七項に規定する帳簿に記載している場合には、前項の規定にかかわらず、当該金額を合計した金額に百分の七十八を乗じて算出した金額を、同条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とすることができる。

3 その課税期間に係る法第四十五条第一項第二号に掲げる税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額の計算につき、同条第五項の規定の適用を受けない事業者は、第一項の規定にかかわらず、前項の規定の適用を受ける場合を除き、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れのうち第一項各号に掲げるものに係る課税仕入れに係る支払対価の額を税率の異なるごとに区分して合計した金額に、課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等及び軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係る部分については百十分の七・八を、軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分については百八分の六・二四をそれぞれ乗じて算出した金額の合計額を、法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とすることができる。


 1項が「請求書積上げ」、2項が「帳簿積上げ」、3項が「割戻し」の規定となります。
 売上を「積上げ」で処理した場合は仕入「割戻し」を選択できないわけですが、条文上は3項のような書きぶりで差配しているわけです。


 それはさておき。
 どの処理方法による場合でも、税額控除の対象となるのは、「1項各号」に定める課税仕入れに限定されています。「災害」の場合もそれ用の計算規定が見当たらないため、この規定によって計算することになります。

 では、実際にどのように計算されるでしょうか。

 この点、『インボイスの交付を受けたが災害により紛失。仕入先が連絡不能で再発行不可』というような事案であれば、1号の「適格請求書の交付を受けた課税仕入れ」に該当します。一度「交付」を受けさえすれば「保存」がなくても「交付を受けた」と言えますので。
 ゆえに、インボイスに記載してあったであろう税額をもとに、税額控除することが可能となるはずです。

   交付を受けた ⇒ 災害で紛失した ⇒ 保存できない

 問題は、『インボイスの交付を受ける前に被災。仕入先が連絡不能で発行不可』というような事案です。

   災害で交付を受けられない ⇒ 保存できない

 この場合、「交付」を受けていない以上は1号には該当せず、他の号にも該当しないため、税額控除できないことになりそうです。より正確にいうならば、『法30条7項但書に従い税額控除はできるが、施行令により算出される税額は0円』となるでしょうか。

 いかにも不条理極まりない。

 これに対して、『積上げではなく割戻しならいけるのでは』と思われる方がいるかもしれません。
 が、「割戻し」規定である3項においても、その計算対象は「1項各号」列挙の課税仕入れに限定されてしまっています。なので、やはり控除額は0円となります。


 以前に検討した、自販機特例などのせせこましいほうの《インボイスいらない特例》については、1項6号に専用の計算規定が用意されています。

 「入場券特例」以外は、そもそもインボイスが「交付」されていないことが前提となっています。それゆえ、計算方法は課税仕入れごとの「割戻し」でいくことが同号の中に記載されています。
 「割戻し」というと紛らわしいのですが、3項の割戻しとは違って課税仕入れごとに割戻しをします。

 ちなみに、「入場券特例」の場合は一度「交付」を受けているはずだから1項1号・2号も適用できるのか、という疑問もあります。が、ややこしくなるので深入りしません。

 何にしても、1項6号のような専用の計算規定が「災害」の場合には用意されていないということです。《究極系》のはずなのに、計算規定における待遇が悪すぎる。


 計算規定がこのような状態であることを前提として。

 翻って、法30条7項但書の《実質要件》としての適用範囲が問題となります。
 もし救済を想定しているのが、『交付を受けたが保存できなかった場合』だけなのであれば、現状の計算規定でも問題はないわけです。

  実質要件: 交付を受けたが保存できない場合
  計算規定: 交付を受けた場合

 これに対して『そもそも交付を受けられなかった場合』も救済の対象として想定しているのであれば、現行の計算規定は明らかに足りていないわけです。

  実質要件: 交付を受けたが保存できない場合
       +交付を受けられずに保存できない場合
  計算規定: 交付を受けた場合
        交付を受けていない場合は規定なし(?)


 法令上の規定がこのような構造であることを知ってか知らずか、運営の「よくあるお問い合わせ」では、《偽インボイス》を掴まされた場合も税額控除の適用を受けることが可能、という見解が開陳されています。

お問合せの多いご質問(令和6年1月26日更新)
【令和5年11月13日公表分】
問A (適格請求書発行事業者公表サイトの検索結果とレシート表記が異なる場合)

(注) 売手が適格請求書発行事業者以外の者であるにもかかわらず、自らの登録番号と誤認されるような英数字が記載されているような場合には、当該請求書等は適格請求書等に該当しないこととなりますが、適格請求書発行事業者以外の者がそうした適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類を交付することや、適格請求書発行事業者が偽りの記載をした適格請求書又は適格簡易請求書を交付すること、それらの書類の記載事項に係る電磁的記録を提供することは禁止されており、罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の適用対象となります。
 また、そうした書類や電磁的記録を受領した事業者において、災害その他やむを得ない事情により、請求書等の保存をすることができなかったことを証明した場合には、帳簿や請求書等の保存がなくとも仕入税額控除の適用を受けることが可能です。


 「偽インボイス記載の消費税額を控除してもよい」なんて計算規定は存在しないわけで。仕入税額控除の適用を受けたとて、偽インボイスからどうやって控除税額を算出するつもりなのでしょうか。

 確かに、税額控除を受けることができると書いてあるだけで、控除税額がいくらとまでは書いていない。ので間違ったことは書いていない、と嘯くことは可能です。
 が、当然のことながら、そんな物言いはただの詭弁でしょう。

 そもそも、「非適格者」ならば、災害があろうがなかろうがインボイスを交付すること自体がはじめから不可能であって。《実質要件》レベルの問題として、このような場合まで、法30条7項但書がカバーしていると解釈できるのでしょうか。
 もしかしてですが、『もしも非適格者が災害前に登録していてくれたならば』なんて妄想をベースにするってことですか。そうだとしても、租税法律主義の建前を遵守するならば、2割特例や8割控除のごとく『もしもシリーズ』の系譜にあることを明記すべきでしょう。

【もしもシリーズ】
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版余滴
調整対象固定資産と高額特定資産とインボイスと


 以上、法令上の文言をベースに読み取れたことを記述しているだけで、何らの裏付けを取っているものではありません。運営の見解とは真っ向から対立していますし。

 ではありますが、実質/形式要件とは区別して「計算規定」を独自に検討することが、税法解釈上重要である、という限りでは間違いないものと思います。
 「税額控除できる」だけで満足するのではなく、「ではいくら控除できるか」までフォローすべきだろうと。

 にもかかわらず、学者先生の中には、「数式ではなく息吹」(租税息吹主義かよ!?)「仕入税額控除は計算要素でなく請求権」などという感じで、計算規定を軽視する傾向が見受けられるところです。

三木義一「よくわかる税法入門 第17版」(有斐閣2023)
佐藤英明,西山由美「スタンダード消費税法」(弘文堂2022)

 この点、民法学者が『効果を度外視して要件論だけ論じている。』とか『実体法レベルの議論に終始していて、その実現まで考えてない。』みたいな傾向、おそらくだいぶ昔に払拭されたもののはずです。税法学の世界ではそこまで及んでいないということなのかどうか。
 一方で、課税要件レベルの議論が十分詰められているかといえば。税法分野での「要件事実論」の展開を見る限り、「う〜ん」て感じですよね。

伊藤滋夫編「租税訴訟における要件事実論の展開」(青林書院2016)
伊藤滋夫ほか「要件事実で構成する所得税法」(中央経済社2019)

 何にしても、一方で学者先生の計算軽視があり、他方で実務家の法解釈論軽視がある、という税法≒税務世界の不幸な取り合わせ、いい加減どうにかならないものでしょうか。

【税務本における法解釈のゼロ展開】
熊王征秀「消費税法講義録 第4版」(中央経済社2023)
posted by ウロ at 11:38| Comment(0) | 消費税法

2024年02月05日

みんな大好き!倒産防(その4)。 〜令和6年度税制改正大綱

 倒産防なんて、節税ライターの方々の鉄板ネタであって。
 私のような条文イジり屋の出る幕など、何も無いと思っていたのですが。

みんな大好き!倒産防(その1) 〜措置法解釈手習い
みんな大好き!倒産防(その2) 〜令和6年度税制改正大綱
みんな大好き!倒産防(その3) 〜令和6年度税制改正大綱


 意識が低いとなかなか気づきにくいだけであって。何ごとにも、何かしらの「イジり代(しろ)」があるものですね。


 以下、いきなり余談。

 近ごろは税制があまりにも複雑怪奇になりすぎて、節税ライターの方々の扱えるネタ、この倒産防と短期前払費用の特例くらいしかなくなっているんじゃないですかね。

 研究開発税制・設備投資税制・所得拡大促進税制あたりは、使えるものならガンガン活用していくべきもののはずですが。節税ライターの皆さんが免罪符として宣う「一般の方にも分かりやすく記述する。」という執筆方針では「給与増やしたら税金減るよ(詳しくは税務署へ)」程度のことしか書けず、適用要件も減税額も、記述しきることができなくなっているのではないかと。
 下手に単純化して書こうとすると、不正確極まりない内容になってしまうでしょうし。

 その手の記事、最近はおよそ目にも入ってこないので、単なる邪推ですが。
 

 話は戻って。

 上記一連の記事では、掛金納付の「損金」算入側をメインに扱っていました。
 が、解約手当金の「益金」算入についても、いまいちしっくりこないところがあり。

 素朴な《簿記脳》からすれば、次のような図式が思い浮かびます。

  A 掛金納付:費用 ⇒ 解約手当金:収益
  B 掛金納付:資産 ⇒ 解約手当金:△資産

 掛金納付時に費用計上したなら解約手当金は収益となる(A)、掛金納付時に資産計上したなら解約手当金は資産のマイナスになる(B)、と。

 が、税法の側ではストレートな「費用=損金」「収益=益金」という図式は成り立たず。それぞれ法令に定めるところに従います。

 損金・益金についての原則ルールが「法人税法22条2項・3項」です。

法人税法第二十二条(各事業年度の所得の金額の計算の通則)
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの


 これだけで済めば、まだよいのですが。残念ながらそんな単純な話ではない。
 各項にいう「別段の定め」によって原則ルールが歪められています。


 「歪められている」という言い方をしたのはなぜかというと。税法世界では、美しい簿記世界とは異なり、必ずしもプラス/マイナス、表/裏が一致するとは限らないからです。

 たとえば、「交際費」の損金不算入ルール。
 支払った側が損金不算入となるのに、もらった側(接待を受けた人ではなく利用店舗のほう)は普通に売上として益金算入しなければなりません。

  支払側:損金不算入(措置法61条の4)
  売上側:益金算入(原則)

 「一方がマイナスなら他方はプラスのはず」という素朴な感覚が、税法世界では通用しません。表裏を揃える必要がある場合には、「グループ法人税制」の寄附金・受贈益ルールのように、

  あげた側: 損金不算入(法人税法37条2項)
  もらった側:益金不算入(法人税法25条の2)

と、両面から規定しなければなりません。
 それぞれの条文の場所からも分かるとおり、「グループ法人税制における贈与/受贈ルール」という単体の制度があるわけではなく。益金ルールと損金ルールが別々に規定されています。


 ちなみに、グループ法人税制の寄附金・受贈益ルールが、条文編成において散らかってしまっている理由。

 税法の構成が
  本法; 恒久的・原則
  措置法:一時的・例外
の二本立てとなっていることが要因かなあと。

 というのも、グループ法人税制、「完全支配関係」にある法人間に関する制度という意味では、例外的な制度のはずです。なので、措置法に法人税法の特例としてまとめて規定してもよかったはずです。
 が、恒久的な制度でもあるがゆえに、法人税法本法に組み込まざるをえなかったと。で、寄附金・受贈益については、法人税法の中に個別ルールが書かれているから、それぞれ切り出してその中に配置せざるをえなかったのではないかと。


 もうひとつ余談。

 本ブログにおいて、『消費税法の理論構造』というサブタイトルのもとで長々と記事を書き連ねているやつ。あれこれ書いているものの、本当に言いたいことは唯一つ。

 「消費税法の条文をあるがままに理解するかぎり、売上課税ルールと仕入控除ルールはそれぞれ別の原理で作動している」

ということです。売上側は譲渡すれば問答無用で課税されるのに、仕入側は、あれやこれやの制約により控除ができるとはかぎらないことになっています。
 《両輪駆動》云々といった妄言は「だったらいいな」レベルの与太話であって。およそ現実の消費税法の構造を表す表現とはなっていません。

 法人税法における「益金/損金」も、消費税法における「課税/控除」も、素朴な《オセロ思考》は通用せず。それぞれの規定に従って要件該当性を判断する必要があるということです。

 ※オセロ思考とは:表が白なら裏は当然黒だろ、と思い込む考えのこと。


 で、話は「倒産防」に戻ってきます。

 まず掛金納付が「損金」となるかというに。
 「納付月数40ヶ月で返戻率100%に到達し、その後目減りすることがない」なんてもの、保険通達のノリからすれば、100%資産だと言われてもおかしくないはずです。それを措置法が100%損金に全振りしているというのは、措置法の政策立法としての面目躍如、ということでしょう。

 また、解約後2年は損金算入できないとしたり、通達レベルで前納1年までに制限しちゃっているのも、そもそも法人税法の原則からすればとても損金とはいえないものを、措置法様が損金にしてあげているだけのものだから、だとすれば納得がいきます。

 「別表添付しなきゃ損金算入させねえよ」(措置法66条の11第2項)というところも、一見傲慢に感じますが。もともと損金じゃないものを特別に損金算入認めてやっている、という点からすれば正当化できるでしょうか。


 そのことを前提として。問題は「益金」のほうです。

 もともと損金とならない掛金を措置法によって損金にしているだけ、ということを前提とするならば。その掛金の戻りである解約手当金も、何らかの規定がないかぎり益金とはなりえないのではないでしょうか。

 掛金納付: 資産(原則) ⇒ 損金(措置法)
 解約手当金:資産マイナス?(原則) ⇒(規定なし)

 表裏を揃えるには、上述の「グループ法人税制」のとおり、両面から規定しなければなりません。が、(私の見落としがなければですが)、解約手当金を益金算入する旨の規定は見当たらないですよね。
 「掛金納付が損金算入なら、解約手当金は当然に益金算入」というのは、文言上はいえないことになります。

 では、法人税法22条の解釈論として「掛金納付は3項の損金にあたらないが、解約手当金は2項の益金にあたる」ということを導くことは可能でしょうか。

   原則:掛金納付は本来は資産なので損金算入できない。
   例外:措置法が特別に損金算入を認めている。
という損金側の構成を前提としつつ、解約手当金を益金と解釈するのは、極めて困難です。

 掛金納付の資産性を根拠付けているのは解約手当金が戻ってくるからであり。預けた資産が戻ってきただけならば、益金とは言い難いでしょう。
 措置法は、掛金納付が会計上の「費用」だと解釈しているのではなく。ダイレクトに税法上の「損金」と扱っているだけです。

 この帰結を回避しようとして、解約手当金は預けた掛金がそのまま戻ってきたものではない、と性質が別だとして切り離そうとすると、今度は掛金の資産性を根拠付けるものがなくなってしまいます。
 掛金納付が資産でないなら、わざわざ措置法によるまでもなく損金算入できることになってしまいます。

 これらのことからすると、解約手当金が益金であることについて法令上の根拠は特にない、ということになりはしないでしょうか。


 解約手当金の益金算入を根拠付ける条文がない、などという畢竟独自の見解。一般の通念におもいっきり反することであり。

 私がものすごい思い違いをしているだけのようにも思うので、実務において主張するつもりは全くありません。仮に裁判になったとして、裁判所が「アクロバティック趣旨解釈」に依拠して『益金算入当たり前!』みたいな判決を出すことも、容易に想像できるところ。

 以下の高裁判決、私個人は、文言ガン無視の「アクロバティック趣旨解釈」の一味だと思っているのですが。残念ながら、一般には積極的に受け入れられているようですし。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 ということで、皆様方におかれましては、各自の信ずるところに従って税法解釈を展開されてみてください。

みんな大好き!倒産防(その5) 〜令和6年度改正法律案
posted by ウロ at 11:54| Comment(0) | 法人税法

2024年01月29日

みんな大好き!倒産防(その3) 〜令和6年度税制改正大綱

 前回の記事の中で、倒産防の掛金の損金算入ルールの構造を次のとおり記述しました。

みんな大好き!倒産防(その1) 〜措置法解釈手習い
みんな大好き!倒産防(その2) 〜令和6年度税制改正大綱

【倒産防】
 A 法人税法  (全額は?)できない。
 B 措置法   できる。
 C 措置法通達 前納1年まで

 今回は、この構造についてもう少し掘り下げます。


 まず、損金算入の大原則は、法人税法22条3項に定めるとおりです(以下では、損金算入できることを「費用性あり」などと表現します)。

法人税法 第二十二条(各事業年度の所得の金額の計算の通則)
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの


 この原則によらない場合には、同項にいう「別段の定め」が必要となります。


 若干まわり道をして、他の費用の扱いについて触れます。

【寄付金】
 A 法人税法 できる(22条)
 B 法人税法 制限される(37条)

 寄付金は、法人税法22条3項に該当するかぎりは損金算入できるはずですが、同法37条により制限されます。

【交際費】
 A 法人税法 できる(22条)
 B 措置法  制限される(61条の4)

 交際費は、法人税法22条3項に該当するかぎりは損金算入できるはずですが、措置法61条の4により制限されます。

 寄付金と交際費、法人税法の解説書の類では損金不算入モノとして並べて記述されることが多い。ですが、不算入の根拠法が本法か措置法かで異なっています。
 いずれにしても、法律レベルで「別段の定め」を設けることにより、一部損金不算入になるということです。

【保険料】
 A 法人税法  できるものとできないものがある(22条)
 B 法人税通達 できる/できないを形式で振り分ける(9-3-1〜)

 保険料(定期保険・養老保険等)については、ご存知「法人税基本通達」にびっしり規定されているところです。

法人税基本通達 第3節 保険料等

 保険料の中には、費用性のあるものと資産性のあるものとでごちゃまぜになっているものがあります(というか保険会社が意図的にそうしている)。これを割り振るにあたって、個別の保険契約ごとに判定なんてしていられないわけです。
 そこで、通達で「割り切り(決めつけ)」をしているということです。

 もちろん、所詮通達なので、納得のいかない納税者の皆さんは訴訟で争うことが可能です。が、裁判所が「明確性・安定性」といったマジックワードで保険通達を全肯定するであろうことは、火を見るよりも明らかです。

【マジックワード租税判決】
みずほCFC事件判決 〜最高裁令和5年11月6日判決 (雑感)

 なぜ、寄付金・交際費は法律レベルで「別段の定め」が設けられているというのに、保険料は通達レベルで差配しているのかというと。
 寄付金・交際費の損金不算入は、そもそも費用性が備わっているものにつき損金算入を否定することから、法律レベルで規定することが必須です。に対して、保険料は資産性/費用性の区分を通達使って解釈入れている、という位置づけになります。
 費用性があるのに通達で資産として扱う、ではなく、通達が資産としているものは最初から資産なんだと。で、多少のズレがあったとしても「明確性・安定性」を言い訳にもってくればセーフになると。


 で、倒産防に戻ってきます。上記を踏まえて表現を少し修正します。

【倒産防(改正前)】
 A 法人税法  できる部分とできない部分がある(22条)。
 B 措置法   できる(66条の11)。
 C 措置法通達 前納1年まで(66の11-2)。

 倒産防についても「解約返戻金」があることから、費用の部分と資産の部分の両方があることになるはずです。これを措置法では政策的考慮を入れて、損金側に全振りしています(なお、法文上は損金算入「する」ですが、便宜上「できる」と表現します)。
 寄付金・交際費については、費用を損金不算入とするための「別段の定め」だったのに対し。倒産防は、費用でないものを損金算入とするための「別段の定め」だということです。

 ところが、通達では前納1年までに限定してしまっています。
 措置法が全額損金算入するとしているのに、通達が勝手に限定してよいのか、ということが一番最初の記事で検討した論点となります。そこでは、「充てるため」の読み方を工夫することで、通達を拡張規定と捉えることができるのでは、というアイディアを示しました。
 
 今回、ABCと並べてみて、
  A 費用性のあるものだけを損金算入する。
  B 資産部分も含めて全額損金算入できる。
  C Bで広げすぎたのでA方向に微調整。
と通達を位置づけることができるかも、と思いました。
 B・Cだけ見ていると、CがBに反すると思いきや。Aまで視野に入れれば、必ずしも違法ということにはならないのではないかと。

 が、A・Bとの関係は「前法/後法」あるいは「一般法/特別法」であって。法解釈のお作法どおりの理解からすれば、Bが優先適用されることになります。
 ので、CがAに適合しているからといって、やはりBに反することは許されないはずです。何かしら、Bに反しないようにCを位置づける必要があります。

  B>A≒C


 さて、今回の改正事項である、解約後2年間は損金算入できないというルールについてですが。

 措置法第66条の11に、単純に制限規定を追加することになるでしょうか。もしそうだとすると、通達の書きぶりも、若干修正を入れることになりそうです。

【倒産防(改正後?)】 
 A 法人税法  できる部分とできない部分がある。
 B 措置法   できる。ただし解約後2年はできない。
 C 措置法通達 前納1年まで


 2年という期間で区切るということは、掛金のうち資産の部分にとどまらず費用の部分も損金算入が否定されることになります。
 交際費や寄付金は、それぞれ損金算入を制限する実質的な根拠があったわけですが。倒産防の2年ルールにはそのような実質的な根拠が見いだせるでしょうか。「損益調整は許さない。」という、どちらかというと「役員報酬」のルールに近い理由つけが採用されることになるのかもしれません。

 もし、掛金がそもそも費用性を有しないものであったならば、措置法が損金でないものを特例で損金算入できるようにしているだけ、原則は損金不算入なのだから2年制限したとしても問題ない、といえたところです。

【費用性がないとしたら】
 A 法人税法  できない。
 B 措置法   できる。ただし解約後2年はできない。

 が、一部とはいえ損金性も有しているものの損金算入を否定するには、何某かの実質的な根拠が必要になるはずです。まあ、40ヶ月分たまれば返戻率100%になるということで、もともと費用性は極めて弱い、ということなのかもしれませんが。


 なにか思い違いをしているような気もしますが。私が理解するところの、改正後措置法の構造。

倒産防2年ルール.png


 通常の場合、費用部分は法人税法の原則どおり、資産部分は拡張規定。解約後2年間については、費用部分は制限規定、資産部分は原則どおり。
 というように、原則・拡張・制限が入り乱れたキマイラ感溢れる規定になってしまうのでしょうか。

【キマイラ税法】
「合計所得金額」に退職所得は含まれるし含まれない。〜令和4年度税制改正大綱を素材に

みんな大好き!倒産防(その4) 〜令和6年度税制改正大綱
posted by ウロ at 11:30| Comment(0) | 法人税法

2024年01月22日

みんな大好き!倒産防(その2) 〜令和6年度税制改正大綱

 みんな大好き!!倒産防。ですが、ちょっと嫌いになる人が増えるかも、というお話。
 
みんな大好き!倒産防(その1) 〜措置法解釈手習い

 令和6年度税制改正において、「解約したら2年は再加入できないよ。」という規定が入ることになるようで。
 正しくは「加入するのは勝手だが、損金算入させねえよ。」ですが、現実世界においては、哀しいかな同義でしょう。

5 その他の租税特別措置等
(国 税)
〔廃止・縮減等〕
(13)特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については、本特例の適用ができないこととする(所得税についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後の共済契約の解除について適用する。


 単なる繰り延べだし、個々の金額も可愛いものだし、わざわざ改正するほどのものかと感じるところ。機構の側からしても余計なことしやがって、ということでしょうし。

 改正いれるぐらいだから、相当な金額が実施されていたのでしょうか。改正されたとして、機構への金員流入がごっそり減るのか、それとも解約のほうが減ることになるのか。

 お国の方針としては、抜けて入ってで益金調整に使うのは認めないんだと。そうだとして、同期中に限らず、2年も制限されるのはよく分かりませんが。
 解約したけど事情が変わって翌期には再加入したい、という場合もあるだろうに(最初に述べた通り、再加入自体が禁止されるわけではないでしょうが)。

経営セーフティ共済(独立行政法人中小企業基盤整備機構)


 なお、大綱の読み方ですが、「本特例の適用ができない」と書いてあることから、『前納が損金算入できないだけで毎月分は損金算入できるはず』みたいな読み方をされる方がいるかもしれません。

 が、倒産防の掛金の損金算入ルールは、

 A 法人税法:(全額は?)できない。
 B 措置法:できる。
 C 措置法通達:前納1年まで

という構成になっています。
 「前納1年」というのは、措置法本体ではなく通達が勝手にそう言っているだけで。損金算入できること自体が「特例」にあたるので、これが適用されないのであれば、掛金は損金算入できない、ということになります(「全額は?」と書いたのは、疑問を留保している点があるからです)。

 もちろん、今後できあがる実際の条文がどうなるか次第ではあります。が、大綱の記載に従うかぎりは、前納だろうが毎月分だろうが2年間は損金算入できないという意味になるはずです。


 ここまでは、そのへんの《税務お役立ち記事》と同じ、単なる大綱のご紹介です。
 当ブログにおける関心事は、「法令/通達の規律範囲」の問題です。

 上述したとおり、前納による損金算入の範囲が「1年」であることについては、法律ではなく通達に記載されています。
 この通達が、法を「拡張」しているのか「制限」しているのか、いずれの読み方も可能ということを、上記記事では示しました。

 で、今回の改正にあたって、通達に外出しされていた「1年前納ルール」を法律に取り込むのかどうか、ということが、私の個人的な関心事となります。

 法令/通達の規律範囲の変更に関しては、以前、《インボイスいらない特例》でも検討したところです。通達に規定されっぱなしだった《いらない》場合を、政令・省令に取り込む改正が行われたと。

条文解析《インボイスいらない特例》の法的構造について(その3) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編38)

 余談ですが、税務においては、通達が相当幅を効かせているというのに。法令/通達の規律範囲について、それ自体を題材とした研究というのが見受けられない(私が知らないだけですか)。

【労務における法令/通達】
吉田利宏「実務家のための労働法令読みこなし術」(労務行政2013)

 それはさておき。このような規律範囲の見直しが、倒産防に対しても行われるのかどうか。

 私の見立てでは、おそらく何も触れられず、単に「2年不算入ルール」だけが法律に付け加わるのだと思います。「1年前納ルール」を法律に取り込もうとすると、では、なぜ今まで通達で勝手に1年に限定していたのか、ということの問題が可視化されてしまうからです。
 もちろん、通達を《拡張ルール》と読むことで問題は回避できます。が、そういう議論が巻き起こること自体を回避しようとするのが、運営側の生態(と私が邪推している)。

 ということで、自販機特例における氏名省略と同様、法令には取り込まないままにするのではないでしょうか(というか、そういう意思決定すらせずガン無視を決め込む)。

条文解析《インボイスいらない特例》の法的構造について(その9) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編44)


 もう一つ検討したい論点があるのですが(「全額は?」と書いたところ)、余裕があれば次回以降で。

みんな大好き!倒産防(その3)。 〜令和6年度税制改正大綱
posted by ウロ at 11:46| Comment(0) | 法人税法